nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

新潟県の養鶏場が破綻 現行の経営モデルと今を比較してみましょう

東京商工リサーチによれば、1月29日新潟県柏崎市の養鶏業鎌田養鶏が事業を停止し、事後処理を弁護士に一任したと報じています。
にいがた経済新聞1月31日版では、今後破産申し立てを予定しており負債総額は5億5000万円であるといわれます。


同社は1976年10月設立で近年はネット通販の他、スイーツ等の販売も行っています。
報道では、2017年に鶏舎を立て替えし、21年に同県内に新規出店等で積極的な事業拡大を行っていましたが、22年9月期の売り上げは減少、多額の赤字計上により債務超過となり、23年の業績回復もせず今回破産となったといいます。


さて、養鶏家である皆さんから見て普通の事業展開ではないかと感じると思います。

 

2017年と言えば平成では29年ですが、この時期近辺の鶏卵情勢について確認してみますと、その昨年28年は一昨年26年の相場情勢で年始は例年の180円程度で春の上昇と夏季の低下、9月以降の上昇を描き12月は250円近くまで上昇しています。
年平均は200円を超えており、今と違い相場高と言えます。


この状況は鶏舎改築時期の2年前26年も同様で、26,27,28年は養鶏にとってまさに春と呼べる好景気でした。


29年も年始は強い上昇で200円割れは6月から始まる典型的な相場展開でした。


恐らく長い好景気であるこの時期に改築、新規農場落成といった、規模を見直す時期であったところも多いと思います。


また、6次産業化も話題になる時期でもあり、デザート、クッキー等焼き菓子といった鶏卵を使用した付加価値のある商品として利益拡大を期待した農場も多いでしょう。


報道でもB級卵を使用したスイーツ販売といった、傷玉の二束三文になる鶏卵が、付加価値となり利益を底上げする、六次産業の夢のスタイルです。


鶏舎の建て替えは新規農場建築と違い、基礎はそのまま使用する、餌タンクをそのまま使用する、集卵設備には変更がないといった予算に合わせた建て替えが可能で、建築費も抑えることも可能です。

ですが安いといえるものではありません。


鶏舎にかかる費用の大半はウインドレス鶏舎であれば、換気システムや集卵設備費が費用の大半になり、ゲージといったメイン品はそれほど高額な分野ではありません。

ですから面積を決めて、どれくらい鶏を入れるのかで建築費は抑えることもできるでしょう。


問題は返済です。

数年前養鶏場の破綻が多く見られました。


その多くは経営不振、赤字増加と配合飼料価格の急上昇からのコスト負担の限界といった事例が多いと思います。


今回は赤字の解消が見込めないという典型的な経営破綻ですが、養鶏ではこのように返済の増加に配合飼料価格の上昇が、利益を圧迫し体力を失い破綻に至るということが多いものです。


または、鳥インフルエンザからの回復で販路先減少から収入低下が続き、コスト高に耐えきれないで破綻という事例もこの平成後半には発生しています。


つまり、この数年景気が良く更なる販路拡大や規模拡大はこの先もこの状態が数年以上続くという見込みがあって行うものです。


読み違えると、負担だけが増えていき収入増加のための方策がないという業界特有の問題に至ります。

 

この経営モデルは多くの養鶏家が追い求めるスタイルかもしれません。


自社鶏卵の販路先以外にも展開先を増やす。
そのためには自社で加工し販売する。

加工品は規格卵以外の鶏卵を主体に使用することで、規格外の著しく低い引き取り値とは違い、採算の取れる商品となり無駄がない。

相場に左右されず、安定した経営と農場ブランドが確立できるきっかけにもなる。


ですが、そのためには加工生産であればその設備、衛生対策に要するコスト、そもそも集客できる味や広告といった出費も相応に必要です。
これにつまずくと、短い期間で撤退ということもありますし、現実一定数は発生します。


それだけ厳しい世界でもあります。


ネット通販も、特筆するような鶏卵でない限り近隣のスーパー、仕事帰りにドラックストア、急ぎならコンビニといったこの鶏卵の良さが見えないと、ただの鶏卵でしかないという現実がありますし、ネットは世界とつながるから販路も多くなるといった言葉で始めるもその先まで進めないということもあります。


この養鶏場ではブランド展開した「赤たまご養生卵」を作り、19年には農場HACCP認証を取得し衛生対策の強化を消費者にアピール等差別化をはかっていました。


20年以降新型コロナウイルスによる巣ごもり需要、令和に入り2,4年の鳥インフルエンザ大流行による鶏卵相場の大きな上昇も本来は追い風になるじきではありました。


でも負債があり、支払いが多い場合、その収入は返済や高騰を続ける配合飼料代金に消えていき、なかなか赤字から抜け出せないという構図になります。


固定費が高くなりすぎ、餌、返済、加工設備、人件費といったものを削る、免除することも難しいことになり体力消耗しながら、経営が改善できることを期待して農場を動かしていたのかもしれませんが、困難に至るということなのかもしれません。

 

弊所でもこのように固定費が増大し、負のスパイラルにもがく農場も見てきています。
経営コンサルタントの支援を受けながらコスト減を図る状況も見てきましたが、養鶏ではコストを図ることは相当困難であり、間違えると農場そのものが傾くという厳しいものである感じます。


少し話がそれますが、ある農場では経営が傾き経営コンサルタントに依頼しコスト削減を進めました。
お約束の人件費削減、残業の申告許可制、コスト減のため餌の格落ち銘柄の使用の推進、飼養期間の更なる延長といった目先の方策で進んでいく事例を見ています。


でも、人件費を削ると、有能な方から離脱していき、ただの人足が残り、頭を使うらしい仕事程度に変わり、餌グレードダウンによる変化がわからず、生産が減少し傷玉が増えていく、更に実入りが悪くなり加工向け出荷専用農場とし、低額であっても安定した経営を目指し、餌代支払いも難しくなり、いよいよ延滞し餌メーカーから取引停止、貸付金の返済訴訟でいよいよ終わるという流れを見ています。


それだけ、生き物を相手に経営を組み立てることの難しさがこの畜産業にはあります。
ただ削る、なくすでは運が良くなり実入りが改善しない限り困難なのです。

 

配合飼料価格の高騰で、一気に倒れる養鶏場が多かった数年前と同じ構図ですが、規模拡大するためには収入が増えることは当たり前であると同時に、餌代が高いのであればどのように削ることができるのか、頭を使い実行しなければ生き残れません。


多くはこれを想定しておらず、売り上げが増えるから大丈夫というある意味どんぶり勘定に近い状態で事を進めてしまうのかもしれません。


収入が増える方法は、餌代をどのように「効率よく」使い無駄をなくすのか、二束三文のB級卵を作らない鶏舎環境や、設備の点検と修繕を早くできるのか。

人を育て人足程度で満足せず、気づき対処できるように育ていかに早く異常を察知できるのか、本当はこのような点にコストダウンという見えるだけでの対策以外にも同時に進めるべきものなのです。


工業品と違い、金型に入れて鶏卵を作っているわけではありません。

事務用品と違い、鉛筆が短いからサックをつけてさらに使うという程度では解決できません。


頭を使い、見えない無駄を徹底的に取るのです。


それは専門家でしかわからないかもしれません。
でもそれしか方法はないのです。

今日のお話を、ただの養鶏場の破綻の話としてこのお話を読むのか。
それとも養鶏が求めるモデルケースは今も通用できるのか。
本当に勝算はあるのか。
六次産業は魅力的であり、一度は展開したい。

そんなあこがれだけでこの先も安泰なのか。


ではどうするのか。


諦めて足元を固めていれば大丈夫なのか。
いや人口減少から販路先維持のためにも拡大は必須なのか。


では、その方法はどうか。


この思考で皆さんの農場を点検してみてください。
未来予想図は今実行しなければならないわけではありません。
情勢が変われば予想も修正するはずです。
一度引いた青写真は10年先もそのままで良いということではないのです。

PDCAを活用した改善の取り組みを コストだけの意識以外にも改善という取り組みで結果収入を増やすという考え

配合飼料工場渡し価格が再び1トン10万円にかなり接近しています。
背景には円安、輸送コスト増が主になるようです。

昨日から円高方向へ向かい始めていますが、今週のドル円終値は147.08円となり、2月初めごろの為替水準で終えています。

この先は、米国基準金利が下がる政策に変わるとされ、日本は金利上昇へ向かい始めるような政策に舵を切るという思惑もあり一時的な円高になりつつあるといわれますが、長期的に見ては一時的とされます。

 

大事な収入源の目安となる鶏卵相場は年初から緩やかですが上昇しております。

8日時点210円(東京M規準値)となり、年初から30円の上昇です。


飼料要求率は多くの農場で2.0程度が多いでしょう。

もちろん鶏舎設備(ウインドレスより高床式のほうが保温性が劣り数値は上がることが多い)や鶏種(白系統より赤系統のほうが要求率は高めに推移する)により変動すると思います。


白のウインドレスであれば1.8から2.0程度、赤は1.9から2.2の範囲というところでしょうか。高床式であればそれより0.2程度高いということもあるでしょう。
そう考えると、鶏卵1キロ当たり白では1.9キロの餌とすれば1トン9万円と見ると、1キロの餌は90円となり1.9では171円で1キロ収入は210円(基準値)と試算できます。


もちろん210円ということはなく、通常安値が参考価格となることも多くこの場合204円が最大価格になるということもあると思います。
傷があり、汚れがあれば規格落ちとなり容赦ない減額15円、20円といった所もあると思います。

そうなる場合189円、184円まで値段が下がり餌代は賄えても採算割れは必至です。


ざっくりですが、傷等規格外になると一般的には採算割れの商品になります。

餌代は同じですからそうなります。


農場では、この規格外対策にかなり力を入れている農場も多くあります。


平均的に見て傷発生(規格外出荷)率は5%から25%と幅があり、大規模鶏舎ほど数値は大きくなる傾向があるように感じます。
小規模である場合、手集卵により破卵が少ない、大規模ほど機械集卵になりメンテナンスしだいで破卵率が大きく変わるという傾向です。


またゲージ飼育より平飼いのほうが、ネスト以外で放卵することも多いため破卵率は高いという傾向もあります。


今日のテーマであるPDCAを活用した改善の取り組みをするという意識が改善を考える最初の一歩になりますし、とても大事であることがわかります。


確かに何をしても破卵率は0になることはありません。

ですから多くは仕方ないもの、取り組みしても取り組み費用の方が高くなり費用対効果から意味がないと考える農場も多いでしょう。


ではそのままで良いのかということですが、先ほどのように収入は210円(基準値)でこれを変えることは農場ではできません。
ブランド卵にして価格を決めることも可能でしょうが、多くはこの基準値を参考に値決めしていくと思いますし、今は高い設定でも定期的な見直しがありゆくゆくは規準値に近づく動きになることもあります。


ですから210円がどうのこうのではなく、参考価格に対し農場がどのように耐性を作ることができるのかという意識が大事です。


経営者は特にお金の出入りにはとても敏感で、この問題を意識するところも多いでしょう。
ですが従業員は別で、多くは月給や日給制であり改善があったとしても収入に変動がないこともありますので、意識を持ちにくく関心度は低めです。


良く聞かれる事例としては、自動集卵で、メンテナンスが不足しており鶏卵が割れるような状態でも多くはその鶏卵を取り除き1日100個程度の壊れだから何もしないという所もあります。


個数が問題ではなく、その意識が改善する余地があるということです。


確かに1個の鶏卵が60グラム程度であれば、1個の収入見込み額は約12円程度です。100個でも1200円です。

1時間分の人件費程度かもしれません。


でも1200円のお金をわざとゴミ箱に入れるような人はいません。

現金は大切だけど商品はどうでも良いというその意識に改善の余地があるのです。


お金という価値以外に興味がない場合の多くは、このような異常として表れる生産量や規格外発生には関心を持つことはできないといえます。


この状態で、やれコスト対策をしろ、コストを削れでは目先の数値改善程度しか見えないのも納得できます。


何かを改善するということは、何が悪くどのように対策をとればよいのかという方法を先に考えるはずです。
でも多くは、目先の数値のために削り、それが答えになるという思考が多いように感じます。


弊所のPDCAサイクル研修でも最初に参加する方々の多くは、方法まで十分な検討をする視点がないという方も多かったと感じます。
この視点がない状態で何かをするとどうなるのかと考えると、皆さんも想像できると思います。


この視点が大事なのです。


でもその改善のためにはどのような形で取り組むのかという方法を学ぶと、意外と改善が早く進みます。
それは、そのための答えを多くの方が既に持っていて、正しく検討しリスクまで評価しておくと多くは成功へと進んでいきます。


少しのきっかけがまだ足りていないというのが実情に感じます。


多くの方が知っているPDCAサイクルは改善するための方法としてとても参考になる手法です。


農場展開には速度が遅いこともあり向かないとも言われますが、畜産では手法経営や農場スタイルを今にあわせる「リフォーム」方法の方が、1から新規構築する場合より無理がなく、安心して応用できる利点があります。


基本の農場スタイルは時代が変わっても大きくは変わりません。

そのための方法やそこまでに大きく発展させた手法は農場にノウハウとして既に存在しています。


新しいイノベーションを切り開くということも大事ですが、先ずは足元を固めて、そのうえで新規取り組みをしていく方が間違いのない発展方法です。


そのPDCAは、必ずPから始めるというルールはありません。


プランは物を始める方法を最初に考えますのでとても大事です。

でも農場の多くは既に実行している事項も多く存在します。
餌の削減であれば、既に削ったという段階もあるでしょう。

 

つまりPから始めるというより、すでにDに発展していることも多いというのが農場の実情ではないでしょうか。


ですから、大事なのはCになります。


PDCAの一番の要はCなのです。


チェックとも言われる段階ですが、その実行に対してどのような結果になったのか、それは良かったのか・悪かったのか。という評価をします。
これがないと、やったから成功した、生産量が下がったけど仕方がなかった、そもそもこの実行に効果があったのかという次に生かすための方法を見つける事ができません。


いわゆる「やりっぱなし」になり、これがあらゆるシーンで散見される結果になります。


この状況の多くは、新しいことを初めて実行したけど、いつの間にかやっていなかった、そもそもその方法を知らなかった、うまくいかない場合「それは私が決めたものではない」という責任転嫁のような発言がある組織に良く見られます。


つまり、良くしていきたいと考えた時、できる人が率先すれば解決できるという意識では成功しないということを知っておくと何となく失敗し続けている、改善が何年たっても見られない、そもそも改善というキーワードが出てこないというのも納得できると思います。


そうです。

現場にその意識が育っていないのが要因です。


多くの方はPDCAは大事であるということを話してくれます。

でもその方法ばかりにとらわれ、視点が方法論ばかりに向かいがちです。


先ほどのPDCAのうちPをしっかり検討することが大事であるという方法も間違いではありませんが、すでに動いている場合はそこが解決の第一歩ではありません。


つまり最初の関所となるCが大事になります。でもPDCAとかかれているのでPから入るものと考えてしまうのでしょう。
私自身はこのCがしっかり検討していれば次のプランはかなり精度が高くなると感じています。


皆さんの農場もきっとそうなるはずです。


今更PDCAの方法を熱く語ることもしませんが、大事な視点は本当にそこなのかという視野です。
それがあれば、この方法はきっとうまくいきます。

 

それが先ほどのような規格外鶏卵の低減につながり、コストを結果的に下げる取り組みなります。
収入は農場サイドで解決できるものではありません。

 

でもコストは農場サイドの理解度、取り組み姿勢で下げることができます。


そのためには方法論も大事ですが、その方法をどの視点で見ることができるのかということです。
その1つがPDCAサイクルを取り入れるというものですが、繰り返しますが必ずPから始まると言うことではありません。


農場の多くは既にDまで発展しているはずです。であればCから始めるのです。


皆さんの農場もコストが、餌代がと考えることでしょう。
でも意外と取り組みがまだ十分でない設備や規格外対策はこれから取り組みをするだけでも、この1年だけではなくこの先未来永劫まで農場に利益として貢献してくれるはずです。


この取り組みを更にPDCAサイクルで改善していけば、更なる高い成果として農場にもたらすでしょう。


さあ、PDCAサイクルを取り入れて農場を大きく育てていきましょう。
でもそのためにはその意識がとても大事なことであると知っておいてから始めてください。

 

3月を迎え養鶏業界を見渡すと何が見えるでしょうか 未来を描く時期に入っていませんか

2月も終わり寒暖差があるとはいえ、少しずつ春が近いづいていると感じます。
弊所の近隣も梅が咲き、早咲き桜が足元まで来ている春を教えてくれています。

皆さんの地域はいかかでしょうか。


さて、2月29日時点の鶏卵価格は205円(東京M規準値)となり、初市180円から見て25円の上昇となります。
2月は1日から成鶏更新・空舎延長事業が発動されました。

幾分の農場が賛同したと聞きますが、標準取引価格は下旬には安定基準価格を上回り26日で事業が終了しました。


この先3月中旬ごろまでは急激な上昇はないものの、緩やかな上昇トレンドに乗り鶏卵相場の底堅い動きを確認することになるでしょう。


ですが、4月以降は相場の値動きには注意が必要になりそうです。

昨年からお話ししています通り、昨シーズン鳥インフルエンザによる被害にあった農場からの回復がほぼ全量回復する時期になるといわれます。

つまり供給側はフル全開で消費者に安定した商品が供給できる体制が完了するわけですが、消費される需要側は昨年からの高卵価による影響や、経済情勢、人口動態等あり以前と同じような消費体制には至っていないという現状があります。


スーパーでの購入頻度が低下(来客数の減少)しているとも聞きます。

ある準大手スーパーでは明らかに買い物頻度が下がっていると感じるといいます。
客単価は上昇しているが、頻度が少なくなったこともあり、例えば1回買い物金額4000円のお客様が週3回から2回に変わり1回5000円程度購入されていて実質2000円程度の購入機会を失っているといいます。


その理由は鶏卵価格の上昇ではなく、食品全体が高くなっており必需品、ストック品を中心に購入している傾向があり、まとめ買いをすることで、ついで買いを抑えている傾向がみられるといいます。


鶏卵は10個入が基本販売ですが、たとえ1個26円程度であっても1購入は260円と10倍になりますので価格に対し敏感になっている傾向があります。

ですから1個30円と割り増しであっても6個180円のほうが負担感が小さいため受け入れやすいという傾向があります。

6個でも売れれば店舗は特に異論はありませんが、生産者側は注意が必要です。


10個の鶏卵を例えば7日程度で消費する家庭では、6個入りでは5日もあれば在庫がなくなり買い物をすると考えがちです。
ですが、消費動向を見ると6個でも7日程度かけて消費している傾向が意外と多くあります。

これは鶏卵は毎日食べるものかもしれないが、毎日食べなくても良い物という位置づけの変化があるということです。


つまり値段が高い物であっても毎日食べたいという意識が薄れていくことで、潤沢な食材の1つにすぎないという特色がない食品に格下げられるということです。


鶏卵は大きいものでなければ売れないという時代も終わりを迎えています。


今の時代小玉(MSやSサイズのミックス)鶏卵は1パックで200円、特売扱いで150円程度という店舗もありますし、通年販売している店舗が多く集客目玉商品としているところもあります。
鶏卵販売がサイズミックス卵販売の影響とも言えますが、Lサイズといった大きいからこそありがたい、価値があると感じる消費者は少なくなったということでしょう。


それに呼応するようにジュリア、ジュリアライトは数年前に比べ飼養管理を大きく変更しないとしても、生産量は変わらず、重さだけが小さくなったという傾向が多くなったと思います。


弊所でのパック卵重量検査でもサイズミックスの平均個卵重は58グラムとMサイズが中心でそろえた詰合せになっていますが、やはり小さくなったという傾向が見られ、これがさらに小さい小玉ミックスであっても小さいと違和感を感じることがなく購入シフトできたのであろうと感じます。

 

値段が安ければ毎日食べても良いが、高ければ別に毎日でなくても代替品で用が足りるということで、業界の1日2個以上食べましょうというスローガンも消費者に届きにくくなるということを知っておく必要があります。


たまごは手軽なたんぱく質の補給源になる、バランス栄養食品であるという業界は見ていますが、消費者側は必ずしも同じ思考ではありません。


手軽なたんぱく質は、鶏卵以外にも大豆も代替できますし、卵の代わりに色どり野菜や胸鶏肉等代替品に置き換えることもあり得ます。


要は身近で絶対に消費者から見放されない鶏卵が絶対的王者ではないということです。


消費人口の減少も危惧されています。

人口の一定数を外国人技能実習生といった長期滞在者が最寄りの市町村に住民登録をするはずですから、今の人口の一定数は外国の方が住民として存在していると考えると、消費動向は、人口推計だけで論じると、実際はもっと少なく、為替による魅力を失うと流出し元に戻らないというリスクもあります。


また、一昨年以降ブランド卵へ移行した農場も多く見る機会がありました。

他社より魅力があり知名度を上げるという目的があったと思います。
ですが昨年、今年もそうですが、ブランド移行したもののこれで大丈夫なのかという声も聞きます。

 

弊所でもブランドに対する市場動向に関するお問い合わせをいただきます。

また自社の市場価値を上げるための戦略をコンサルしてほしいといった農場運営以外にも、その先の販路の未来をより強固な状態で次の世代に譲りたいという本音が見えています。


お客様であれば精一杯弊所も応援し希望する未来への鉄路を引いていく戦略を描き具現化していきますが、必ずしもそこまで必要としない又はそんな大げさな世界にはならないと考える農場もあると思います。


その思いは間違いではなく、見当違いではありません。

ですが未来は本当にわからないというのが本音です。


一般的に先まで見る目がある経営者は、あるべき姿を想像しそれに向かって準備を進めていくといわれます。

ですから、あるべき姿になったからと言って「ほらそうなっただろう!俺の言った通りではないか」とは言いません。

粛々と準備をして次に手のために動き現実化していくのです。

それに乗れるのか、そうでないのかの違いです。


多くは、乗り遅れるということもあるでしょうが、先にたどり着いた農場は先駆けの農場として既得権益を得ることでしょう。

 

いまのエイビアリー鶏舎の展開もそのような1例になると思います。

おそらく5年先、10年先もバタリーゲージが廃止されることはないと思います。

でも世界と取引する店舗や外資系店舗は本国の意向や世界の常識に近づき先に経営を進めていきます。

損して得取れではありませんが、今はこれで大儲けできるとは考えていないでしょうが、この先15年、20年には気づけばバタリーゲージも存在するが、世論は、世界は、店舗はエイビアリーといったアニマルウェルフェアの考えを取り入れていた、その時代に乗れていたということもあるでしょう。

 

慌てて乗りに行く農場もあると思います。

いわゆる後発組ですが先駆者が築いたシェアは崩すことはできないでしょう。残り少ないシェア、パイを争奪していく戦国時代に入る可能性もあります。
でも先駆者は一定の販路がすでにあり城壁を厚く高く築いており高みの見物といった時代になるでしょう。


でも先のことは誰もわかりません。

でもわかるとすればこの先春以降昨年以降多く餌付けした鶏達が卵を産み始めていき、需要先が加工向けをはじめ大きく増えていかない可能性が予見できるという背景から何が見えるのでしょうか。


餌代が高いから、エネルギー価格が高いから経営が大変ということは昨年、一昨年からわかりきっています。

今更大変、どうしようと頭を抱える農場は未来の戦略が描き切れなかったのかもしれません。

昨年まで鶏卵が高く実入りが良かった。

自宅用の外車を買った、鶏舎を新築した、軽自動車を5台も購入したといった使い方の未来を描き実行したのかもしれません。


昨年から鳥インフルエンザの発生は少なく鶏卵高騰ということはないと昨年からお話ししています。

そんなつまらない記事見てもしょうがない、経営者の利益が取れる喜ぶ記事を書けという声も聞こえそうです。


でもこの先の未来を考えると、鶏卵相場年末500円になります、餌代は1トン4000円程度になるでしょうとは言えません。

そんな条件は1つもないのです。


であれば、今の養鶏業界をどのような角度で見ていくのが、皆さんが築いた農場を守ることができるのでしょうか。

鶏卵相場だけ見れば良いのでしょうか。

それとも配合飼料価格の動向だけ見ていれば良いのでしょうか。


農場を動かす人材はただの人足(にんそく・力仕事だけできればよい人材)で用が足りるのでしょうか。

鶏が変わり管理が変わると考えた時その人足で用は足りるのでしょうか。

そもそもそれを管理する管理職人員は人足から卒業できているのでしょうか。

 

そんな気づきも農場経営には必要なことかもしれません。


この春多くの人たちが養鶏の世界へ希望を持って入ることでしょう。

それと同時に違う業界へ転職したり、同業に引き抜かれる人もいることでしょう。

一昔はご法度とも言われた引き抜きですが、今の時代そんなものは普通にある時代になりました。つまり農場体力が外部同士で値踏みされており、格上、格下と遠慮が美徳という時代ではないということです。

 

力があり、知識がある人材は人足(にんそく)ではなく人足(ひとあし・人が流れていく様)のように発展を求める農場へ行き来していきます。


人が足りないといわれる産業は人足が不足しているといわれますが、この養鶏の世界ではまだ人足が足りないではその先の未来どころではないでしょう。


既に人足ではなく、移動できる人足(ひとあし)を求める農場と既に差が生まれています。

このコスト増の時代では、目先で手いっぱいで乗り遅れていくのか、次の一手を打ち進んでいくのか、経営体力に差をつけられる、まさにふるいにかけるような時代に入ったように感じます。

皆さんはどのような未来を描いていますか。

鳥インフルエンザが疑われる事例とは 通報ルールはありますか

今年の鳥インフルエンザの被害は、昨年に比べ少なく推移しています。 ウイルスの感染力が弱い等様々な憶測がありますが、一番は農場自身の衛生管理が向上したことが大きいと感じます。 今年度の鳥インフルエンザ発生状況は7日時点8県8事例約70万羽の鶏が殺処分されています。 傾向としては関東から西側の地域に見られますが、依然として偏りがあるような状況でもありません。 この先も発生するリスクが残っていることを知り引き続き衛生管理を続けていただきたいと思います。 さて、今年度の発生した農場のうち、香川県の発生事例では関連農場を含め11万羽が殺処分されたのですが、朝日新聞デジタルによれば、養鶏場からの異常報告が遅滞していたことを報じています。 報道では、県の指導となる2倍ルール(過去21日間の斃死が平均の2倍を報告する目安)を遵守していないというものです。 農場から通報があったのは2月5日朝とされます。通常遅くとも前日には異常として認識され(通常と異なる斃死数があることで異常と判断せざるを得ない状況)通報するものですが、今回の事例では1月31日に相当数の斃死があったとされます。 農場側も意図的に隠ぺいしていたわけではないと思いますが、農場での状況・過去の経験則や鳥インフルエンザではないという思い込みから、結果的に通報を遅らせてしまったという状況に変わりはありません。 県の報道は、5日農場管理者から西部家畜保健衛生所に西讃支所に死亡羽数の増加連絡があります。 同日立ち入り検査を行い13羽の検体のうち10羽が簡易検査で陽性であると確認し翌6日農林水産省から確定を受け殺処分となりました。 さて、このような通報の遅滞は数年に1度は報告として聞くことがあります。 昨年の大流行でも関東地方で遅滞事例が発生しています。 理由としては、他の病気を疑いまずはその病気の治療を優先したというもので、飼養管理から農場内に定着している病気を疑うのだと思いますが、結果として見間違いとなり、通報が遅れるという一番よくない事態に陥ります。 弊所のお客様には通報ルールについて数年前から研修としてお話していますが、一番大事なことは「高病原性鳥インフルエンザの症状は、外見でわかることは困難である」ということを最初にお話ししています。 よく言われるものとしては、多くの鶏が死んでしまう、数が多くゲージ内にまとまって死んでしまう、又は場所が特定した状態で固まっている状態等が言われます。 そのほとんどは、数を話していますが、では症状的に何かあるのかと良く聞かれます。 弊所では経験はありませんので、様々な方々から伺う内容や、一般的な症例を基にお話をしたりスライドで視覚からイメージを知り、内容を知り理解するようなものとして研修をしています。 でも多くの農場ではそのような症状を見ることはほとんどありません。 通常農場生涯1回あるのかどうかの事例とも言えますので、実感がわかないというのが本音ではないでしょうか。 では、通報するために何を知り疑うのかということについてお話しします。 一般的に高病原性鳥インフルエンザの症状を知ることは難しいことで、よく言われる異常だから現場が解剖して原因を探すという、通常では通用できる方法が裏目になるということを知っておくと良いでしょう。 高病原性鳥インフルエンザは異常と感じさせる数の鶏が死んでしまうということが症状であるということです。 症状を見ると、数多く死んでしまう、解剖すると腸に変化がある場合があるとも言われます。 過去の報告遅延事例でもこのような腸に変化があるという点から判断を間違えるということがあります。 今回も同じで、報道では「別の病気を疑い、投薬を進めていた」と説明しています。 その結果、通報前日の2月4日は1000羽の死亡となったと言います。 この農場は1日平均10羽前後で、1月31日146羽で14倍相当になります。恐らく規模が大きい鶏舎であっても100羽から死亡することを正常であると認識することはないと思います。 異常ではあるが、解剖してみたら腸に病変が認められた。だからコクシだクロストだと思い込み治療せねばとなるのだと思います。 確かに病変が認められることもあります。 ですが、季節がこの時期で鳥インフルエンザの疑いが否定できない時は、自己診断や管理獣医師へ相談し現認しないまま治療を指示することは間違いと言えます。 獣医師が到着せず、確認せず、状況から許可をすることも感心しません。 確かに冬季の鶏舎への立ち入りは遠慮したいということもあるでしょうし、そもそも当日中に鶏舎に行くことができないということもあるはずです。 では、現場から申し出があるから「投薬許可」だけ与えるのは治療は開始できるでしょうが、結果的にそれは正解になるのかと考えると、少し変わると思います。 弊所では、管理獣医師が参加している研修であっても、通報は同時で構わないが、管理獣医師が現認できないのであれば家畜保健衛生所が優先確認し、獣医師はその結果を受け取ることが望ましいとお話ししています。 つまり、早期通報で早期に動ける側に措置を任せるという原則を徹底してもらうことが、ルールの前提であるとし、その方法を定めていきます。 もちろん先に管理獣医師が到着する場合、診察をして場合により簡易検査を行い陽性が疑われる場合は速やかに通報し家畜保健衛生所の指示を受けるようになります。 通報までの速度は、朝死亡鶏の確認後2時間以内に管理獣医師が到着できるのか確認し、不可であればその時点で、家畜保健衛生所へ通報し経営者が管理獣医師の窓口として情報を共有することにしています。 通報は早く、疑いがあればすぐに通報し行動することが大事になります。 でも家保にいきなり通報は躊躇すると考える農場もあるはずで、ルール上はしなければなりませんが、僅かな猶予時間を与え、それでも時間以内に到着が見込めない場合は、観念して通報に至るようにルールを作ります。 これを猶予時間と呼び、農場が決断する時間としています。 もし管理獣医師が身近にいないという場合は、家畜保健衛生所への通報が一番です。 鳥インフルエンザの疑いであっても簡易検査をして陰性であれば、その原因をある程度までは推察し指導してくれます。 ですから、鳥インフルエンザの疑いだけが家畜保健衛生所の仕事ではなく、死亡鶏が多いだけでも相談に応じてくれます。ある農場では鳥インフルエンザの疑いで通報したところ、 簡易検査で陰性が確定され検体を持ち帰り調べてくれます。この時は大腸菌症が疑われるのでと、このような対策をしてみてはと助言をしてくれます。 用事がなければ相談先でもない家保という先入観から、農場のノウハウが絶対になり結果その判断が間違っていくという事例は今回の農場以外にもあります。 季節がその被害が発生しやすい時期であれば、死亡数が多ければ先に通報になることを知っておき、農場すべての人がその早期通報を徹底できるように研修でも良いでしょうが浸透させることが大事です。 そして遅滞は農場にとってマイナスでしかないということも知っておくと良いでしょう。 農林水産省が公表している「過去発生における手当金の交付状況」では手当金の減額について説明があります。 それによれば「飼養衛生管理基準に違反している場合」「早期通報違反である場合」「虚偽の報告をした場合」には外部有識者の見解を踏まえ2%以上の減額率を算定しています。 また減額の上限はなくそれ以上の減額もありえるとしています。 例えば、採卵鶏農場では、令和2年に「農場で手指消毒や手袋の交換がなく、特定症状確認から1週間以上経過し、簡易検査で陽性を確認するまで通報がない」として、手当金及び特別手当金の6%を減額しています。 また、令和3年では「農場では衛生管理区域専用の衣服の着用がなく、飼養管理者が異常と認知していたにもかかわらず、家畜保健衛生所へは翌々日まで報告がなかった」ことで、手当金及び特別手当金の5%を減額しています。 その金額は皆さんが思うほど小さいということはなく、手当金の意味を理解していただくとわかります。 令和2年は52発生事例のうち27農場は法令違反、通報遅延等により減額交付となりました。 令和3年は17事例のうち8農場が減額交付となります。 通報ルールは農場が自ら定めることはできます。 そのためには早期に通報できるように農場自身が知り、行動をおこすように定めることです。 遅滞なく・経営者の判断を仰がない(現実は無理だと思いますから、経営者は遅滞させる行動を慎み、先ずは家畜保健衛生所へ通報という相談、そして管理獣医師への相談という行動をおこすことを第1にします。 季節によっては農場特有の病気を疑う前に、その疑いを農場自身が解明・治療を行うのではなく家畜保健衛生所に委ねることが大事になるということも想定してください。 まだ散発発生が続く鳥インフルエンザですが、皆さんの早期通報ルールはどのように定めているでしょうか。 まだ定まらない、臨機応変で動く等いろいろ理由はあるでしょうが、通報ルールは飼養衛生管理基準にも定められており、通報が遅いほど後々農場の再開に支障がでることもあります。 安易な考えが、実は後になって大変なことにもなりかねない早期通報は、他人事として考えるのか、実情から早期にできることを想定しておくのか、自身の都合の良い考えではなく、元になるルールを自身に合わせる思考を持ち日々取り組みを続けていただきたいと思います。

気を抜かず飼養管理をお続けください 鳥インフルエンザの被害が少ない時こそ農場の点検を

まず始めに、令和6年能登半島地震で被害にあわれた皆様方に心よりお見舞い申し上げ、1日も早い復興を心からお祈り申し上げます。 さて、1月も下旬になり、昨年と違い鳥インフルエンザの被害も少ない令和6年が始まりました。 鶏卵相場は東京M規準値180円から始まり、例年より良いスタートで始まっていると感じる農場も多いと思います。 新聞報道を見ますと「たまご値下がり2年ぶり1キロ200円下回る」といった急落したような記事も見られます。 特売価格で180円を下回り値ごろ感を感じる消費者がいるという話題ですが、考えてみますと昨年はそれだけ鶏卵価格は高い物と認識され続けていたと改めて感じます。 一昨年から昨年を中心に様々な物の値段が上がり、私たち養鶏家のみならず消費をする皆さん方も何も意識せず購入するという時代から吟味し有益な物を求めるという取捨選択を一層厳しく見ているように感じます。 一部報道にもある通り、現在加工向けは昨年から消費回復が遅れています。 理由としては鶏卵商品の見直し、値上げによる受注の変化といった値上げによる影響が顕著に表れているとされます。 1月も例年通り年末以上の加工受注は発生しない傾向にあるため、相場としては緩やかな上昇となる早春ではないかと思います。 配合飼料価格の見直しもあり、養鶏経営にコスト増が意識しやすい時期でもありますが、お金のみならず鶏達の飼養管理にも意識を向けてお過ごしいただきたいと思います。 1月は鳥インフルエンザの被害が最も多く報告される時期でもあります。 ですが、本年は6事例6農場約60万羽の殺処分(うち採卵鶏は約55万羽)となり、昨年に比べ少ない傾向です。 昨年が大流行でもありましたので、少ないという比較も正しくないと思いますが、大流行期の裏年と同じような少なさで推移しています。 その中、昨年同様2年連続発生農場もあり、飼養管理に対する意識を高めていただく必要性を感じます。 昨年12月下旬疫学調査チーム検討会会合では、消毒に関する事例、動物の鶏舎への侵入、再発農場の継続的な衛生管理の実効性の懸念等遮断すること、衛生管理を継続する意識等について提言がされています。 弊所の管理農場でも衛生管理への取り組みは年を数えるごとに意識度は高くなっていると感じますので、恐らく意識度の大小が隙をつかれてしまう最初の1歩になっているのかもしれません。 靴・衣服の交換以外にも、手指足の消毒とその薬剤の適正な濃度の維持は基本でもあります。 ご指導最初の農場ではこの基本も従事者により意識度の高低差を感じることが多く、基本をもう一度考え直す機会でもあると思います。 見えないウイルスだからこそ、わからないだろう、見ていないだろう、やっていないこともわからないだろうという意識の薄さがまん延すると、ある日被害があるということもあります。 濃度も同じで、一昔と違い希釈割合は節約のため色がついていれば・泡立ちがあれば良いという考えを持つ経営者は見ることはありません。そんな数円の節約で何千万円の損失リスクを負う方が割が合わないという手間より実損額を天秤にかける意識が大きくなったと感じますし、経営者の代替わりで経営というものに真剣に取り組む農場が増えていることが大きのだと感じます。 ですが、従事者は経営者ではなく雇われでもあり経営意識はいりません。だからこそ基本をしっかり理解してもらい実行するように進めていかないとある日足元をすくわれるということもあるのです。 実際、昨年被害農場のうちどれくらいが経営者が朝から晩までその農場を管理しているのでしょうか。 多くは雇われの人たちが農場を回しているはずで、経営者は報告でこの重大さを知る機会が多かったように感じます。 そして、再発農場の「再発」についても考える必要があると思います。 ご存じの通り、被害農場はただ殺処分され消毒し再検査して導入しているだけではありません。 その中には法令の不適合対応がありこれを満たし始めて再検査をしてやっと導入時期を決定していき再稼働が始まります。 多くは、家畜保健衛生所疫学調査からの指摘、管理獣医師の指導、有識者の作業性の指摘といった小さい検討会を開き真剣に考え従事者へその提言を説明し再稼働を誓うわけですが、弊所指導農場ではありませんが、ある農場はそんなことすら面倒で、言われたことだけして、体裁を整えて再稼働するという農場もあると聞きます。 ですから、壁が壊れている、防鳥ネットがない又は損傷していると言われればそれを修繕し、養鶏再開基準を満たすだけというものです。 本来はそこに、先ほどの消毒はどうか、遮断するという方法はどうかといった細部検討をして見直しをするべきなのですが、そこはしなさいとは言われないのでしないということになり、餌付けを開始し成鶏舎編入日を決めていくという流れもあるようです。 当然、作業は旧来の方法をそのまま行うので、遮断はそこそこ、防鳥ネットは直したが、その後の補修は想定外、何より遮断する意識が高くなく時間がないから靴の履き替えは消毒だけすればよい、薬剤も1日1回程度でよいから消毒液は汚れても1日1回、濃度は適量という適当で・・となれば、またいつか足元をすくわれるということも容易に想像できます。ですがのど元過ぎれば忘れてしまい、とにかく再稼働、そうしないと販路先、従業員の給与といった金銭に比重を置いてしまいそれどころではないという経営になります。 先ほどのように見えないものだからこそ意識をしないと、いつしかそれが王道になり、多少の意識低下は問題ないという自分勝手な解釈に至るということもあり、やはり足元をすくわれることになります。 分割管理を推奨する自治体が増えてきています。ですがそのための費用は莫大です。 1万円、100万円という額ではないはずです。 敷地内に農場1つ作るような値段の半分程度は必要になるでしょう。 だから普及しにくいでしょうし、まだその時期ではないという模様眺めの農場も多いのです。 では、何ができるのかと言えば、提言のように「隙間のない家きん舎であっても飼養衛生管理に関する有識者家畜保健衛生所や獣医師等)と連携し、客観的に再度確認して、野生動物の鶏舎への侵入防止対策を継続的に行う」といった遮断方法の見直しも必要です。 そして、作業は現場が知っていることはその通りですが、その作業は手間を与えているから疎かになるのか、そもそもそれは正しいのかという客観的に見ることも大事です。 それは現場から声が上がればよいのですが、多くはその景色を毎日見ておりそれをおかしいと指摘できる人も多くはないように感じます。 人は手間を惜しみます。それは時間の損得で物を見ているからです。従事者はこの意識であると考えると、皆さん経営者とは異なる視点であることがわかります。 では、作業方法は今まで同じで十分かと考えた時、そうでないから足元をすくわれたと考えれば、やはり見直しは必須になるはずです。 1月鶏卵相場は例年とは違いまだ良い相場値です。恐らく持ち合いが続くことでしょう。 コストだけ意識せず、ただ消石灰を撒くだけではなく、人の流れと手間と遮断という方法を見直しすることもこの時期だからこそできるのではないでしょうか。 来年度令和6年度の大流行もあり得ます。その時右往左往してそれだけなのか、3年連続発生農場が現れるのか。 養鶏経営の継続が試される最初の分かれ道が目の前にあるのかもしれません。

災害時の飼養管理をする 最低限出来ることを継続するという意識を持つ

令和6年能登半島地震では、多くの人的被害のほか、建物・インフラといった様々な甚大被害が発生しており、被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。 養鶏家にとってインフラ機能を失った状況は、地震による不安もあると思いますが、鶏達の心配も大きいことと思います。 餌がない・水の供給が止まり・電力がないといった農場機能が停止している状況では、鶏達への対応も限られ、場合により生産減少や斃死の増加という良くない状況を想像してしまうことと思います。 農場は電力供給があって活動ができる設備を持っています。 多くはウインドレス鶏舎ですから、電力があって鶏舎環境を維持していきます。そして水の供給も電力があって地下水のくみ上げの他消毒作業もして鶏舎へ配られますが機能を失います。 餌も同様で、多くは数日分以上の餌を保有していますが、電力があることで鶏舎へ搬送したり、鶏達へ配るという動作もできるのですが、停電すると困難に至ります。 集糞も電力があることで鶏舎の外へ運び出せるのですが、停電すると機能を失います。 ウインドレス鶏舎の多くは補助電源を保有していることで、燃料が枯渇するまでの数日は通常通りの機能を維持できるという農場も多いことでしょう。 維持できるためには、燃料の確保が必須になりますが、インフラ被害の多くは停電により給油所が停止して購入できないこともあり、困難を極めることもありとても不安なことでもあります。 では、被害が発生したから何もできないのかという悲観的なお話を聞きますが、そう言うこともありません。 私自身は東日本大震災の際震源地より遠いとはいえ、停電があり飼料も必要とする餌が入手できない中での対応をしてきました。 その中で感じたことは、停電だから何もできないではなく、最低限の飼養管理をすることで、鶏達の命を守るという意識がとても大事であるということです。 経営者であれば、鶏の他にも働く方の安全も意識し、ライフラインの復旧見込み、餌の配送見込みといった再開への情報を収集したいと思います。 だからこそ農場は現場に任せたいというのが本音です。でも現場は受け身であり停電であれば何もできないから何もしないでは少し残念です。 現場は、制限がある中で何をして鶏を守るのかという意識を持たせることが大事になります。 今日はこの「最低限できること」についてお話しします。 ウインドレス鶏舎では、先ほどのように電力があって水・餌・空気・温度を維持していきます。 万一の際には補助電源(自家発電)があり、数時間から数日にかけて機能を維持するように設計していることでしょう。 東日本大震災での教訓から、補助電源設置の補助金を出して導入を呼びかけておりこれを機会に導入したという農場も多いことでしょう。 でも燃料がないと、やがて機能を失いウインドレス鶏舎であれば、鶏が発する熱・鶏糞から出る熱や湿度もあり鶏舎温度は上がっていきます。 多くは酸欠と言いますが、実際は空気が動かず熱死に至るような状況になっていきます。 このため、補助電源が失われる際には、最低限維持できる方法として空気の確保をするため鶏舎内の出入り口、入気口と排気口を開けて自然換気をさせて空気の入れ替えと熱・湿度の低減を図ります。 当然鶏舎温度は外気温に近づくため寒くなりますが、緊急時の最初は空気の確保をまず行います。 次に大事なのは水の確保ですが、先ほどのようにウインドレスであっても開放鶏舎であっても水は地下から汲み上げるという農場がほとんどになりますので、電源がないとポンプは止まりますので水は汲み上げられず鶏舎に送り込むことはできません。 でも単相(100V)ポンプであれば、成鶏舎でのワクチネーション作業でガソリンタイプの小型発電機があると思います。 これを活用すると、最低限の給水ができますので、開放鶏舎ではこれがあれば安心できることと思いますが、最近のウインドレス鶏舎は3相(200V)を採用した器具が多くなり、水だけ単相という農場も少なくなってきました。水ポンプをくみ上げてから鶏舎に送るだけという構造から、溜めおいて圧力をかけて送水するという余力保持タイプの農場も多くなり、緊急時の送水を困難にしているところもあります。 ですが、鶏舎近辺に手洗い用等水道蛇口があれば、その水源が単相である場合このポンプからホースを伸ばして給水することもでき何もできないこともないのです。 ただし、給水するためには、そのホースが鶏舎に配るための配管があるかどうかがカギになります。 一昔は各ゲージにフロートがついた溜め置き給水方式を採用していましたから、そこに水を流し鶏に与えるという技もありましたが、近年は直結式が主流になり緊急時に水を与えるという前提の配管組み上げをしていないところも多くなります。 そのような場合は、バルブを取り付けてバイパスを組み水を送るようにすると給水も可能になります。 ホームセンター等でバルブや接続配管を購入し組上げてください。緊急時でもスーパー同様ホームセンターも開いていることが多いはずです。 通常に戻ればバルブを閉じるだけで大きな変更を生じさせず戻る事ができます。 これで、空気と水は確保できましたが、問題は餌になります。 餌は餌タンクにあって確保できても搬送するためには電力が必要です。 餌タンクから取り出し手で配餌することも可能ですので農場の多くは昔ながらの配餌車(手押し車)に入れて鶏に与えるという作業をすると思います。 多段式等それができないという場合、餌を与えず鶏を守るという最低限の作業をすることになります。 最低限というのは、与えないということです。 それだけでは、鶏は斃死してしまいますので、余計なエネルギーを使わせないで守るという意識です。 ここで大事なのは、強制換羽の方法を知るということです。 まだまだ一般的な方法である強制換羽は、餌を止めて水だけで管理をして鶏の若返りを期待する手法です。当然生産量は0になりますので、老鶏に行う一般的な方法です。 もちろんノーリスクではありませんが、産卵を継続するほうが餌を与えない場合リスクは格段に大きくなります。 この時期は日長時間は短いこともあり、冬に向かう季節として鶏も認識しやすいこともあり点灯管理を止めて日長管理にするとストレスなく移行できると思います。 餌の停止は、餌工場が稼働しだい再開されると思います。メーカーによっては関東地域等広域の工場から移送させることもありますので、長い期間停止することはありませんが、スタンダードの餌のみ取り扱うことが多くなるため、時期により必要な餌が入手できないということもありますが、緊急時であればそれはやむをえませんが、成鶏の餌を使用していた場合、育成期の餌は使用しないように注意してください。 育成期の餌との違いはカルシウム配合量の違いです。鶏が卵を産むためには最低限必要なカルシウム量があります。これを餌から補い、体から補って鶏卵が生まれます。ですから餌から補う量が少なくなると、体から補って産卵をしますので、時間が経過するほど鶏の減耗につながるため育成の餌を使用するのであれば、むしろ強制換羽させた方が安心となる場合もありますので必ず検討したうえで実施してください。 道路の状況で農場まで入れるのであれば時間がかかることなく再開も不可能ではありません。あとは農場が鶏舎まで搬送できるのかという設備面の問題だけになりますが、多くは搬送機械まで補助電源で対応できるところは多くはありません。空調管理までの電力を賄うまでが限界ということもあるでしょう。 燃料も購入しにくくなると思います。最近は停電時対応のガススタンドが増えました。一昔のように手回しして給油して1リットル10分かかる給油はいつもと変わらない程度の速さで販売してくれるところも多くなりました。 でも被災された方や、給油したいという自動車が道路にあふれ、従業員が給油に出かけると半日近く戻れないという場合も珍しいことではありません。 また販売量の制限もあり、第2便、3便と人を多く送り込む必要もあり人でしだいで確保できる量が決まってしまうということもあるでしょう。 補助電源は最近の物であれば、50リットル程度で満タンになる省エネ式も多いと思いますが、出力が大きいタイプでは1時間20リットル消費型というものも多いと思います。 販売制限がかかることが多いなかで、半日かけて購入で何とか入手した20リットルが1時間程度の補給にしかならないということもあるでしょう。 そうなると、どのように使うのかやはり検討しなければなりません。 このように、災害発生時は電力消失による損害は大きいものですが、それを補う補助電源に必要とする燃料の確保も同時に心配することになります。 災害発生から時間が経過すると、人への支援が本格化し、燃料といった必需品も少しづつですが流通してくるはずです。 東日本大震災でも5日、10日には長い時間並んでもガソリン等必需品は入手できるまで変化をしてきています。 多くの物が不足し不安もあることと思います。また生活する場所を自宅ではなく避難場所で過ごすという従事者もいるかもしれません。 不安が続く中ではありますが、鶏達を守るために皆さんができることを今一度考えて行動してください。 余震が続く中、心配は尽きないかと思います。でも報道から多くの人は皆さん方を本気で心配し出来ることを考えているはずです。 それは今は必需品ではない支援金という形かもしれませんし、ボランティアとして困っている方に寄り添うという行動もあるでしょう。 物資を提供している人たちもいます。そしてそれを1個でも届けようとする人たちも皆さんのことを想っています。 弊所も皆さんのご不安に少しでもお応えできるよう尽力してまいります。 1日も早い復旧や復興を心よりお祈り申し上げます。

人の雇用とは 何が目的で会社にとって有益なことですか

最近話に聞く人材確保には派遣人材が一番いいという話題ですが、弊所から見ると少し危険なことではないかと危惧しています。 その要因を見ると、日本人求人を行うと多くは採用はできますが、1年や2年在籍すれば良いがそうもいかないという現実もあるようで、在籍しているものの仕事覚えが・・、仕事の能力が・・ 遅刻、早退、休憩時間の概念が少し異なる等何かが違うということもあるかもしれません。 一昔の派遣さんと言えば、労働契約が調整しやすい、依頼すると間違いなく人が来るという確実性が売りでもありました。 しかしこのところの派遣さんと言えば、労働時間は調整しやすい、依頼すると確かに人は来るということ以外に、畜産業を知らないため軽作業と紹介されて来るようですが、鶏舎が熱い、埃が多い、臭い、その割に労働する方の賃金配分が少ないと言ったこともあるのでしょうか、人は来るが、同じ人が長く来るとは言っていないといいましょうか、今週いっぱいでその方は終わりになり、次週は違う人という事例も散見され、いつまでたっても同じ作業ですら教え続けなければならないという従事者側の負担がいつまでも解消されないという本末転倒な農場も見るようになりました。つまり畜産業にとって作業の有益性から見ると少し難があるということです。 求人状況を見ますと、軽作業の鶏舎清掃・集卵・鶏糞の掃除といった紹介でその農場へ派遣させる会社さんが多いように見えます。この利便性もあるのでしょうか、畜産業の人材不足感は昨年、一昨年と比べ少ない又は充足しているという指標が多いと弊所では見ており、人の数としては十分になっていると考えております。 そして、慢性的にこのような業務を行ってくれる作業員を募集続けているという派遣元も散見され、人の数をどれくらい確保できるのかという目線しかないように見えます。 当然数合わせですから、先ほどのような軽作業なのにキツイ・汚い・危険といった3K職場へ派遣されてやる気を削られてしまい今週でお終いという流れになることもあるように見え、まさに負のスパイラルに入ってしまった農場と派遣元というように見えます。 農場は、今週で○○君は終わりで、来週からは△△君が来るそうだ、よろしく面倒を見てくれという伝達だけが届き、現場は来週も新人教育を継続していくという繰り返しに至ります。 昨年から聞こえる、現場の疲弊感を何とかしたいという相談の1つに雇用が変化したことによる疲弊があります。 この原因は何だろうかと考えると、問題は2つあると感じます。 1つは、人の雇用を諦めた原因を究明できていないという農場側の姿勢、2つはそのために人材派遣であれば確保はできるという頭数だけを意識したことによるミスマッチと言えます。 まず1つ目であるなぜ人はこの農場に来ないのでしょうか。または来たとしてもなぜ長く務めることができないのだろうかという視点です。 その要因は後述しますが、人のとり方が頭数を揃えることしかないという視野の欠如が原因です。 「いや、覚えが悪いからでしょう」という意見も聞きます。あるいは「難がありそうだけど、その人しか応募がなかったからとりあえず採用したから、結果そうなっただけなのだよ」という話もあるかもしれません。 近年新卒を採用して、幹部として育て上げるという農場経営者も増えてはいます。ですが、多くは中途採用を前提にした採用に比重を置いているはずです。 その理由には新卒はまず応募はない又は限りなく少ないという現実があり、人材育成と言っているほど余裕がないという現実です。 確かに規模が大きい、福利厚生がしっかりしている等企業としての知名度があり、農場規模も大きいところではそれなりの企業価値があり、新卒サイトに登録すればいくつかの応募があり採用も可能でしょう。 ですが、そうでない規模であれば、新卒サイトに登録しても新卒側がその企業に目を留めることはまずありません。それは、その企業より知名度、規模、賃金すべてが上である企業にまずは応募するはずです。何もなく仕方がないとなれば別でしょうが現実の就職市場は買い手側(学生側)が有利になのは皆さん知っているはずです。 そして、春先に内々定を出すという企業をよそに、夏になっても秋になっても募集を続けていかなければ、人が応募すらないという現実があります。 良い人材程、大卒であれば4年次早々には内々定をもらい多くは就職活動を終えます。つまり良い人材は早い段階で就職市場から撤収していきますから、少しづつ良い人材は欲しいが現実は少しづつ乖離していくという厳しい現実を見るようになります。 秋口以降やっと応募があり面接をして採用に至るということもあるでしょう。でも少し考えてみれば、4年次の春先以降順次内々定をもらっている学生が多いのに、なぜ内定がないのか、内定を1つでも多く勝ち得たいという人ほどその農場を本命にして選考しているのかということです。 でもその学生に欠点はありません。大事なのは採用する側が、その人をどのように育てたいのかという視野があるのかどうかということだけです。 秋以降の採用に得なしと言う人もいますが、それはありません。 大事な視点が抜けているだけです。 それは「採用してその人をどのように育て企業に利益をもたらすのか」という視点です。 中小以下の農場で多くみられるのは、昭和時代の潤沢な人材がうようよしていて、人はいくらでも来る・ダメなら他があるという人余りの時代の背景しか知らないという残念な視点です。 繰り返しますが、人は優秀であれば相応の業種に就職し、常に人生博打をしているわけではありません。何でも不満で転職をするという風潮があるとされますが、多くはそんなことはありません。 俺は有名企業に就職したが、組織が不満で養鶏業に転職するということはないのです。 ですから、採用を続けていればそのうち、良い人材に巡り合えると信じて、何人も何人も面接をして採用し、仕事は現場に任せているだけでは、実際は何も変わらないというのが実情になります。 人を頭数合わせて採用しているのであれば、仕事はそれなりでも構わないというのが採用基準になるはずです。そんなものに条件を付ければ人が来ないのはわかりきっているからです。 それより、採用して運が良ければ覚えてそれなりの戦力になることを確率10分の1,100分の1に期待した採用になっていて、それが定着率が悪くなることに気づけていないのです。 人の定着は宝くじの末等当選の確立より低いということではありません。これは新卒・中途同じことです。人をどのように育てるのか、ただの数合わせなのかという基準でとっているかどうかだけです。 人は目的があって採用するはずです。でも最近はまず頭数を揃える、その先はその先考えれば良いという安易さが、企業価値を更になくしていき、慢性募集の企業と認識されてしまいます。 でも慢性なのかどうかは、農場側はわかりません。必要だから募集しているから期間は定めていないからでしょう。でも求人側は中途であれば、あれ?この企業先週に続き今週も折り込みチラシに求人入れている、掲載料無料の求人サイトに公開して、公開して90日以上たっても掲載を続けている等違和感を感じるかもしれません。 では2つ目、そのために人材派遣であれば確保はできるという頭数だけを意識したことによる弊害についてお話しします。 先ほどのように自社で人確保ができないとなれば、技能実習生や人材派遣業から人を補充することになります。 技能実習生は確実に来てくれる人材ではありますが、日本語の壁もあり最初は軽作業のうち、基礎的部分しか作業に担えないという声も聞きます。 つまり、将来幹部候補としての人材育成ではなくこの先3年、5年程度までの労働人材として採用するということです。 人が入れ替わり、その都度教えることになり、やはり農場現場の負担は大きいものになります。 そして、人材派遣からの労働者であれば日本語もわかり労働も可能でしょうが、畜産業専門ではないということが多く、程度によりますが技能実習生が車の運転ができる程度までの業務しかできません。 そうなると、現場の疲弊度はさらに上がります。 例えば、畜糞を耕種農家さんに販売する際田畑にスプレッター車を使用し散布しますが、現場がわからない、特殊車両でもあり操作方法が覚えられない、車両がマニュアル車で免許条件を満たしていない等畜産業特有の業務を行うほどの人材はあまりいないように見えます。 そうなると、現場社員が乗り業務をし不在になります。確かに農場作業の基礎部分は作業はできます。でも機材トラブル・鶏の正常異常の判断、生産減少への対応はできません。それは誰が行うのかと考えれると、やはり現場社員になります。 田畑散布が終わり残業させても修理すればよいと考える経営者や経営幹部が多いのですが、その人の作業キャパはその職務層より高くなり、ただでさえ賃金格差があるのに、とりえのない幹部より仕事量だけが多いという不満に至ることが多くなります。 残念ながら、人は潤沢にあると考え続けている経営者、仕事が増えると困る幹部から見ると、その不満をわかることはありませんし、それが悪いと考える機会もありません。 だから、仕事をこなし、責任感ある人は低賃金だからこそ転職していくのです。畜産業以外の業種も低賃金ということはないのです。だから労働移動がしやすいのです。 でも人はいくらでもいる、そう考えてしまうといつまでも何も変わらず作業ができる人材だけが抜けていき衰退していくだけです。 だから安泰は衰退であるということなのです。 安泰は穏やかで、心配がないことを言います。昨年の高相場で心配もないという農場も多いでしょう。 でも何も考えず、何も変わらず、何もしないでは、衰退していきます。 鶏の品種改良が進み、高産卵が可能になり、設備も最新になる。 でも農場の管理は何も変わらない、何もしないでは、変化に対応できる人材もいなくなります。 時代は変わり続けています。それは養鶏も同じです。 だから衰退した養鶏場は低卵価に至ると、コスト削減だけ一心不乱に行い、生産減、人の減少、それが売り上げ減、販路の変更等更に悪化し破綻ということもあります。 一昨年より前にいくつかの養鶏場が経営破綻しました。 多くは、飼料コストが高く負債返済の見込みが立ちにくく破綻を選択しています。 でも良く見ると、飼料コストが高いから全ての養鶏場が破綻したわけではありません。 経営のかじ取りが悪いだけであり、業界全体が破綻したと言うことではないのです。 ここが生産維持できた、販路を死守した、コストを無理なく抑えたという人が関わっていたことまで良い見とれる人も多くはないでしょう。 そうです、人が見えない中でも動いていた農場ほどこのような時代が訪れても養鶏不況を乗り越えたのです。 この視点を持って経営をしているのかということをもう一度考えてみると、採用は頭数合わせだけでいいのか、人は育てるものではなく数なのか。 答えや視野が変わるきっかけになるはずです。 でも教えるほどの力をもはや持たない農場もあります。だからこそ教える・知る人から教わるのです。 本年の相場はどうでしょうか。低価格だから融資を受けてしのぐという選択もあるでしょう。 でもしのぐだけでは、数年低卵価相場が訪れると、やがて力尽きます。その事例が一昨年からその前の破綻劇にあるのです。 今年は、餌の上昇から始まり、電力料金も一部大手は僅かですが値上げを発表しています。 1円でも削減したい、そう考える1月になるかもしれません。 その時、何を削るのでしょうか。 何も考えず餌でしょうか、何も考えず電気代・ガソリン代でしょうか。 その削りは安全な削り方でしょうか。 その適否は誰が判断できるのでしょうか。 最終的に損を被るのは誰でしょうか。 それは鶏でしょうか、従業員でしょうか、餌会社でしょうか、それとも経営者でしょうか。 それはわかりません。でもわかることは人の考えが本当に大事であり経営に大きく左右されるということです。 さあ2024年が始まります。我慢の月ではなく、我慢の年となるのかどうか、その時融資だけでしのげるのか。 考え始める1月であっても良いのかもしれません。