nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

アニマルウェルフェアと養鶏

JGAPの取得を目指す養鶏家の皆さんには大変関心があると思います「アニマルウェルフェア」今後定着するといわれるこの制度について考えます。


国際獣疫事務局(OIE)のアニマルウェルフェアに関する勧告の序論では、
「アニマルウェルフェアとは、動物が生活及び死亡する環境と関連する 動物の身体的及び心理的状態をいう。」と定義されています。


「5つの自由」は、アニマルウェルフェアの状況を把握する上で役立つ 指針とされています。

この「5つの自由」とは、

① 飢え、渇き及び栄養不良からの自由、

② 恐怖及び苦悩からの自由、

③ 物理的及び熱の不快からの自由、

④ 苦痛、傷害及び疾病からの自由、

⑤ 通常の行動様式を発現する自由
からの構成になっています。


5つの自由に基づき鶏が健康で自由な活動をし家畜本来の能力を発揮し人間にも貢献できるというもので、具体的には
①餌・水を適切に与えること、②家畜の取り扱いが乱暴でないこと、③暑熱や寒さの対策を講じること、④病気予防や適切に治療すること、⑤行動に制限を与えなこと、となります。


EPAが発効したEUはこれにより、ゲージに止まり木を設置し、砂浴びができ、暗い場所で産卵できるようなスペースを設ける等経済性より家畜の自由に主眼を置いてます。
このため、経済性を考える国からは、現実的でない・そこまでの自由を求めると生産活動ができないためその分のコストを消費者が負担するのか等疑問が出てしまいます。


現実、日本では経済性も考慮したアニマルウェルフェアを示しており、必ずしも設備を第一に考えることを求めていません。(蜜飼いは禁止です)
このことから、アニマルウェルフェアの考えに対応した採卵鶏(畜種全て)の飼養管理指針に関するチェックリストに従い適合するか確認してどこまで対策を講じているか
確認することが出来ます。


注意したいのは、EUの基準と異なるためEU向け輸出に適合しているかは別の問題です。


アメリカやアジア諸国への輸出には現在影響がないように感じますが、世界の流れが変わり始める可能性もあり、今のアニマルウェルフェアの考え方が主流になるかは不透明です。

では、現状を加味してこの考え方の取入れ状況を示します。


① 飢え、渇き及び栄養不良からの自由(餌や水を適切に与えることを指します)

養鶏に携る方には当たり前かもしれませんが、成鶏では水を切ることは生産性低下に直結することから実行する方はほとんどいないと言えます。
餌に関しては、栄養レベル高低は体重調整で良く実施されると思います。体重や卵重調整をさせる際一部の栄養分摂取を下げるため食下量を減らす行為をします。

よく見られるのは、経験不足や減量の適量を見誤ることによる生産性の低下や場合により骨軟化症を発症させるという作業ミスが原因で誘発することが良く見られます。このことから、育種の改良次第ですが、卵重や体重抑制のための取り組みをなくすことが必要であろと思います。


②恐怖及び苦悩からの自由

作業従事者に教育することが重要ですが、最近は外国人技能実習生に管理の基本を十分教えることが出来ていないと感じます。教える日本人(先輩)も適切な鶏の取り扱いが出来ていないようにも見えます。捕鶏の方法や大声で鶏舎内を歩き回る等「鶏」を中心とした考えが薄くなっており「伝承されていない」ところが多いので再度確認する必要があると思います。


③物理的及び熱の不快からの自由

多くの養鶏家が実行しているもので、暑熱対策は特に鶏の死亡にもつながることから対策を講じているのです。(寒冷対策も同じです)


④ 苦痛、傷害及び疾病からの自由

適切な治療をして、鶏に苦痛を与えないこと、ケガをしないよう配慮すること、病気予防のための鶏舎環境やワクチン対策を行うことを指しています。
現在の状況から見えるのは病気予防のワクチン対応は概ねどこの養鶏家もされていると思います。ゲージもよほどのメーカー製品でない限り突起物がある等はありえないのが現実でしょう。
ただ治療の場合は少し違うはずです。治療をする場合多くの理由として、鶏卵出荷に影響が出る場合があり、安易に実施できないことがあります。例えば近年見る機会が増えていますコクシジウム・クロストリジウム対策の場合多くは抗生剤を投与しなければ治療はできません。しかも状況が悪い場合鶏の死亡につながり生産性も落とします。
しかし薬剤投与は鶏卵へ移行するため廃棄処分が長く続く経営的なデメリットが生じます。ですので使用に躊躇する方が多く簡単に治療をするとは言えないのが現実でしょう。

このことから、衛生管理の向上に力を入れ、鶏舎内で増やさないようシステム鶏舎の改造や十分な水洗と消毒を行う等農家さんの意識が必要になるのではないでしょうか。


⑤ 通常の行動様式を発現する自由
日本のゲージは鶏が並んで食すれば良いという考えで省スペースで飼育する考えが根底にあります。ですので身動きは自由といえば自由でしょうが他の鶏をよけながら入れ替わりをしたり等制限があるのが現実です。
現在、日本版アニマルウェルフェアの考え方は立ち上がれないほど狭い等でなければよいという考えですので問題になる鶏舎は少ないのではないでしょうか。

しかし動物の自由に感心ある国ではこの考え方が通用するか疑問です。恐らくそれらの国とは取引はできないと言えるでしょう。(自国基準を満たさない場合、自国の養鶏を守れないと同時に世論が許さないと考えられます)


では、アニマルウェルフェアを受け入れる日本の養鶏家の方はどうするのでしょうか。


まず言えることは、経済性だけでは難しい可能性が高いということです。最も厳しいであろうEU基準である必要がないといえば「EU」向けの鶏卵を輸出しなければ問題ないと言えます。しかし、アメリカも経済主義の考えですがゲージ飼育の鶏に関して日本と同じ考えでないことに留意する必要があります。グアムへ350㎏の鶏卵が輸出しましたが、大きく伸びるかは今後の考え方次第です。


当分の間、アジア向けは問題ないでしょう。しかし時代と共に動物愛護の考え方が浸透してくる可能性もあり、自国の考えで商売することはとても心配です。


世の中は「数の世界」です。EU基準が良いという風潮であればそれに従うのが経済の考えです。我が道行くのも良いでしょうが世界相手の商売になるか「生で食べられるから絶対の品質があり日本の鶏卵が最高」というのは恐らく日本人だけです。

生で食べられる程の品質が高いのは日本の他EUアメリカも十分可能です。ただ生で食べる習慣がないだけで世の中生食が主流ではないのです。


ですから、日本版アニマルウェルフェアの考え方はここ10年20年は良いとしてもその後は恐らく違う道を模索しなければならないと思います。


今の考えをいくつか紹介しましょう。
「アニマルウェルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針 チェックリストに関するアンケート調査結果 」
公益社団法人畜産技術協会発行した平成29年の資料からです。


(問1)けがや病気の鶏、病気の兆候が見られる鶏がいる場合は、可能な限り迅速に治療を行っていますか?
は い264件(93.28%)、いいえ11件(3.89%)、無回答8件(2.83%)と答えました。
皆さん「はい」が多いと感じるでしょう。しかし問題なのは安易に治療が出来ないのが現実なはずです。まがった解釈として「病気の兆候が見られるので強いワクチンを投与することを治療と解釈する」というのも現実あります。ある意味治療ですが前述の通り抗菌剤や抗生剤の使用までの治療をするのかという問いにした場合どれくらいの方が「はい」と答えるのでしょう。経済的損失を算出したとき決断できるのかということです。
十分に対応できない場合ポジティブリストに違反する等社会問題化することもあります。(県の買い上げ検査で検出される場合、市場に流通している物を買い上げて検査しているため回収と実名公表のペナルティーを科されます。)

 

さらに、鶏舎構造も経営コストを意識したウインドレス鶏舎が主流になっています。

 

(問2)ケージを使用している場合、上段の鶏の排せつ物が下段の鶏の上に落ちないような構造になっていますか?
は い264件(93.28%)、いいえ5件(1.77%)、無回答14件(4.95%)と答えます。
前述のコクシジウム等の問題の答えとも言えます。ニワトリの習性からすれば当たり前ですが、動く物や珍しいものに鶏は興味を示しますので、ついばむことは普通の事です。
狭いスペースに効率よくゲージを配置するとこのような問題が出てしまうのはやむをえません。ですので、はっきり「いいえ」と答えられず「無回答」を選ばれたのかなと推察される結果に見えます。

 

また、ビークトリミング(デビーク)についても質問しています。ビークトリミングは日齢が早いほど鶏への負担(嘴からの出血しにくい部分で切除できる等)が小さいことから7日齢近辺での作業が多いと言われます。最近は初生雛に対しレーザービークトリミングも主流になりつつありますので作業員が手で切る作業より費用は掛かりますが正確に作業が出来出血しない等鶏への負担が小さいと言われる技術も普及しています。

 

ビークトリミング(実施している場合はお答え下さい) (問3)ビークトリミングは、餌付け後 10 日以内の鶏に実施していますか
は い171件(60.42%)、いいえ12件(4.24%)、無回答100件(35.34%)と答えます。

ここで見えることは、ビークトリミングを実施する40%程度の養鶏家は育雛期には作業していないことが分かります。先ほどの通り、早い期間で実施することが鶏への負担が小さいことを説明しました。正確な作業が出来ないと小さい雛であっても出血による死亡や成長不良による淘汰鶏の増加に直結します。ですのであえてこの期間を避ける養鶏家もいます。育成期での作業を実施することがあるのでしょう。(捕鶏しやすい等のメリット)
鶏を考えれば早いほうが良いというのは、育種メーカーのマニュアルにもあります。しかし作業性を考えると実施できない。ですので鶏を基準に考えて遅くなって作業するのであれば費用は掛かるでしょうがレーザービークトリミングを実施することを検討できれば考え方も変わるのではないでしょうか。

 

まとめとして、アニマルウェルフェアを考えるには


①動物の自由を尊重するためには経済性だけで解決できるか再考しなければなりません。(日本国内であれば消費者からの理解があれば問題ないと言えます)


②外国向けの販売を予定されている方は、日本版アニマルウェルフェアの考え方が国により理解が得られない可能性があることに留意します。(動物愛護の考えが強い国からは理解が得られない可能性が高い)


③いずれアニマルウェルフェアを導入することは避けて通れません。ですので先ほどの質問のようにできるところから改善を始めていくとこの流れに遅れず乗ることが出来ると思います。(動かなければ何も変わらないということです)
(OIE(国際獣疫事務局)が公表した「巣箱」や「止まり木」が必須となる採卵鶏 のAW条項の修正 2 次案ではなく、日本の気候風土や生産システムを踏まえたいわば日本型アニマルウェルフェアの策定を求めて、昨年 12 月 20 日に農林水産省に 要望書を提出して審議してもらうわけですがこの陳情が強く影響を与えるものでないことに留意します)

 

時代の変化が大きく動く平成最後の年、皆さんの考え一つで養鶏の未来が大きく変わり次の時代へと流れていくのでしょう。明るい養鶏時代であるよう頑張ってまいりましょう。

鶏卵供給過剰による養鶏経営受難な時代

3月に入り年始から叫ばれています鶏卵相場の低迷が続いています。
生産量が多いことによる消費量とのバランスが崩壊していることが原因ですが、「需要に見合った生産体制構築のお願い」が生産者等に再度配布されました。(2月19日)


生産量を抑制することは大変な痛みを伴うことがあり、中々手を挙げることが難しいのだろうと思います。
できれば、「生産調整は他所にお願いしてうちは、当初計画通り進めたい」

「2019年の餌付けは既に決定しており、今さら変更はできないし、しない」

「設備更新が完了しており支払いに入っている。今さら変更はできない」等
様々な意見が出そうです。


2019年の鶏卵相場は、低調に推移しているのはご承知の通りです。
昨年の相場傾向はすでに供給過剰現象が起きており、春先は今年よりはよかったでしょうが「低価格」となり夏以降からの上昇となりました。
これは西日本地区の災害や猛暑による生産量減少が要因で、毎年災害が起きるわけでないため夏季から鶏卵相場が盛り上がると考えるのは危険です。

猛暑による生産減少は毎年あることですが、正直大規模まで猛暑による影響はあまり考えることは現実ではありません。


東から西への供給移動のおかげで東地域は過剰な鶏卵を移動することが出来相場が維持できたと考えるべきです。


ちなみに、昨年12月は14年ぶりの相場低下を示しました。

 

さて、鶏卵供給過剰の影響はいつまで続くのでしょうか。
先ほどの通り、今大規模養鶏家(10万羽以上飼育している養鶏家を指します)は全体の70%からの世界です。
今の時代10万羽以下の小規模養鶏家は年々減少しており、その方が市場から退場しても、その施設を他が買取し経営を続ける構図は今後も変わらないと感じます。
つまり、小規模の経営者の代わりに中規模以上の大きい養鶏家が生産シェアを取るだけで、今後は大規模が中規模養鶏家の生産シェアを取ることになるのではと危惧しています。


現実規模が大きいところほど有利と言えます。
餌付け羽数は昨年暮れから前年比割れを示すようになりました。しかしそれでも鶏卵相場が回復できるか見通しは、はっきりしません。

 

この5年程度の鶏卵相場が良い時期、設備更新に投資した方や増羽のため鶏舎新築や改造等に投資した方様々と思います。
心配なのは増羽したことで、販売先に異変が起きないことを願っています。
久しぶりに販路調査をしました。大手販売店の鶏卵陳列ケースに今までと異なる会社の鶏卵が入りました。以前からのメーカーが姿を消したのです。
この店舗は系列店でも同様に入れ替えを行っています。何らかの理由により入れ替わったのでしょうが、それは当事者でしか分かりませんので推測ですから真相は不明です。


心配なのは、消費者は何を基準に鶏卵を選ぶかです。鮮度や安全安心では当たり前で競争になりません。では価格となるのか、
正直そうでないことを願っています。

価格競争が発生した場合大規模・中規模・小規模の各養鶏家のうち悪影響が強く出るのはどの分野でしょうか。


ほとんどの事業者は大手と言えるか分かりませんが、中規模の養鶏家と思われるのであれば、増羽して勝利を得られるか
もう一度考え直すのもありかもしれません。
大手は、これから大手となる方よりも前から大手として君臨しています。新参者が隙いる余地があるのか分かりません。
大事なのは規模拡大もあると思いますが、自社製品の差別化が出来れば新たな活路を見いだされるかもしれません。


その方法は何か、経営受難な時代と割り切る前に、皆さんの考えや気づきが養鶏の新しい時代への道を切り開くかもしれません。

鶏卵の回収事案と問題点 鶏卵品質の向上を目指して

食品衛生法違反の事例がまた発生しました。
養鶏に携るものとして、このような報道が出ると悲しく思います。


今回もサルファ剤の残留品が市場に流通し、県の買い上げ検査で検出されるというものでこのような事例は数年前にも発生しています。

埼玉県の発表では、「2019年2月19日に南部保健所が実施した収去検査の結果、鶏卵から動物用医薬品スルファモノメトキシンが検出されました。これを受け、鶏卵の選別包装者を所管する狭山保健所は、当該品の流通状況を確認するとともに、2019年2月23日に当該事業者に対して回収命令を行いました。」

この会社は、何かの資料で拝見したことがありますが、販路がしっかりしていて、多様な企業に出荷し加工販売も手掛ける安定した経営をされているようでした。


多くの養鶏場は、市場価格に左右される販売が基本となり、加工販売を行い安定した収入を得る取り組みをする会社は多くないのが実情です。(実際加工販売が軌道に乗るまでにはリスクがあり取り入れない養鶏家が多い)

ましては、6次産業化が軌道に乗るには並大抵の努力では成功できないことでお手本ともなる経営体であったはずです。
従業員の週休2日制を取り入れるなどさきがけとなる存在でもあります。

(現実まだ養鶏では隔週2日が最も多いのです)
そのようなところが、今回の事故を起こすとは正直驚きがありました。

 

今回の回収事案から見える問題点は、サルファ剤(薬剤)の使用が徹底されていなかったのではないかということです。
そもそも、採卵鶏には使用できない薬剤です。使用した場合卵への移行があるため効果があっても安易に使用できないのです。

寄生虫(腸管に寄生しているのでしょうか)対策の投与と推察されますが、採卵鶏には使用できないと指示書にはあります。
使用した場合鶏卵を廃棄しなければなりません。恐らくしばらくの期間は廃棄となります。投薬を中止しても、卵胞(卵の黄身の部分)は相当数体内にあるため、1カ月若しく用途転用も含めて検討し基本廃鶏にするのが自然です。

抗生剤は使用しないのが基本です。しかし、衛生環境が良くない場合や鶏に危険が生じている(死亡している)場合はやむなく使用するのも現実です。
十分に期間を設けたので安心したのか、廃棄期間を守らず出荷をしたのか、そもそも抗菌剤の使用に抵抗がなかったのか。
再発防止を行い鶏舎環境の見直し、信頼回復を目指していただきたいものです。

 

最近の建物はウインドレス鶏舎と呼ばれ窓がなく、狭い建物に効率よく機材を配置したもので環境が人為的に操作でき管理しやすいよう設計されています。
しかし鶏舎内の環境が悪化した場合の被害は大きく、環境汚染が発生した場合は昔の設備の鶏舎より鶏のいる場所と鶏糞が近いことで汚染度が格段に上がります。


昭和の時代多く見られていた建物(地べたに鶏がいてそのわきに鶏糞を排出し、鶏が食べてしまう環境)が、少し昔の鶏舎では鶏糞が鶏から離れるのでついばむこともせずこの病気が少なくなっていましたが、近年の最新鶏舎(ウインドレス鶏舎)では、集糞ベルトのすぐ下に鶏が活動しベルトにこびりついた鶏糞をついばむことで運が悪い場合寄生虫を取り込むのです。そして、その鶏が排出する糞から・・と広がっていくのです。


また洗浄と消毒が十分でない場合再発しやすく結果常態化しやすい危険性が付きまといます。環境の悪化は鶏に対し病気として現れます。
近代建物は効率面も重視しているあまり、このような病気がまた増え始めているという話もよく聞くようになりました。

鶏卵を効率よく少ない人員で運用するには、このように最新鶏舎にしていかなければならない現実を踏まえると管理方法次第では、このような事故が今後もいろいろな企業から出てくる可能性があるのです。

千葉県でも買い上げ検査によって2017年7月に「スルファモノメトキシン(サルファ剤)」が検出し基準値(0・01ppm)を超す0・14ppmを検出し鶏卵回収命令が発せられています。


是非、衛生管理と鶏に対する危害を防ぐよう対応し、流通しないよう安心安全な鶏卵を出荷していきましょう。

鶏卵品質の向上を目指すためには、鶏舎環境と薬剤使用の適正化が重要なのです。

 

農場主の資質を考える

私が特に思う人材について考えてみます。人材は、労働力となると同時に多くの利益を上げてくれる人でもあります。


利益を上げるとは、営業で顧客を増やしたので上げたのか、生産性を向上したので上げたのか、コスト削減して上げたのかにより、表現が変わります。
最も分かりやすくてき面にわかるのが、営業で顧客を増やしたことの利益増加でしょう。生産性向上も同じでしょう。心配なのがコスト削減による支出の減少によるものです。


ある養鶏家の農場で飼料価格の高騰により5%程度の摂取制限が発動されました。農場主2名が各農場に指示を出し削減をし、翌月報告しました。
A農場は「5%削減が到達できました。生産性が低下したものの問題ありません。」、B農場は「3.1%の削減でした。生産性は変化せず畜産に影響はありません」


さて、どちらが良かったのでしょう?という相談です。
詳細はお伝え出来ませんが、私はB農場主にこう尋ねました。「なぜ3%の削減しかできなかったのですか?」彼はこう答えました。
「はい3週間かけて日数グラムの削減を試みました。しかし、3.1%以上の削減では鶏の仕草に変化が強く表れ危険と判断したため私の責任で取りやめました」
彼は、鶏の健康を踏まえて少しずつの削減で鶏に変化を与えないよう時間をかけて確認していたのです。


A農場主は「5%なので〇グラムの削減ですから、人為的に操作し2日程度で完了しました。ただ生産性はその4日後から低下し始め6%落ちましたがわずかなので問題ないです」
飼料代と生産利益はどちらが高いのでしょうか?また6%は大したことではないといえるのでしょうか。
この分野に数字をよく見ることのできる人が本当は収益を上げる最も優秀な人材ではないかと私は思います。しかし、その技量は決して短期間で会得できません。まねることは誰でもできますが・・


数字を知りその数字が何を表すのかそしてそれがどれくらいの利益を結び付けたのか。ここまで論じなくとも資質のあるB農場主は、直感的にそれを知っていたのだと感じました。
「鶏を知り、数字を知る」何かの格言みたいですが、農場主はこのような資質は必要と感じました。それ以外にも。束ねる力(マネジメント力)は必要です。この力もその人により左右されます。(親分肌すぎて何かが違う人、人に伝える能力がいまいち足りない人、そもそもなぜ農場主?という人までいます)

農場主の能力=経営者の能力といえます。人は同じ基準の人物を採用する傾向があります。ですので、農場主を見て、従業員を見ればその農場の実力はおおむねどれくらいか

わかります。恐らく第三者もよくわかるはずです。

 

基礎研修でそのスキルを習得してほしいものですが、
この時代教育にお金をかけることに消極的な方もいますが自然に習得することはその人の素質次第となり高確率で期待通りにはならないと感じます。


農場主をどう位置づけるかによって、教育するのか、俺(経営者)がいるからいらないと考えるかによって考え方が変わります。農場主はいわばその組織(農場)の責任者。
現場の問題を解決したり、人員配置したり、家畜の健康管理・生産性の推移と計画など多岐に渡ります。そのような人が大した人材ではないが適当でいいといえるとも思えません。


しかし、その養鶏家は、あまり重要視しませんでした。馬が合うというか話が合えばよいという程度で決定し歯車が狂い始めたのだと筆者は感じます。狂い始めた歯車はもう止まりませんでした。
だって、経営者の一任で自分の考えで動かしているからです。(本人はよく考えているが、本当に正しいかどうかの能力は有していないと感じました)

数年前の話ですが、とある会社に経営が譲渡されたと風の便りで聞きました。
人選はむずかしいのです。仲良しこよしで成り立つ業態はありえません。一度据えたポストは撤回もできません。だってあなたが指名したのだから。

農場HACCP認証を取得してみませんか

畜産家の皆さんは一度は聞いたことがあると思います「農場HACCP認証」

平成23年からもう8年経過している制度です。平成31年1月時点で241農場(農林水産省発表)が認証を受けています。

当初からこのシステムを多く取り入れたのは養豚家(117農場)でした。ついで、採卵鶏(58農場)肉牛35農場となります。

私も構築に携りましたが、今も時折農場HACCP認証に魅力がないという言葉を聞くことが多いのですが、本当に魅力のない・価値のないものなのでしょうか。農場HACCP認証は、いったい何者なのか?そこに焦点を当てて考えてみたいと思います。

まず、農場HACCP認証はどんな認証制度なのでしょうか。教科書的解説ですが、農場現場にhaccpシステムを取り入れて危害を事前に防ぐ手法になります。
農場HACCP認証のための要求文書に基づき、手順を文書化し、必要なシステムを構築・実行を記録する。実行中の事故や問題点を記録して分析し次に生かす。年に1回はシステムの検証を行い正常なシステムであることを確認する。といったところでしょうか。
詳細は農林水産省ホームページをご覧ください。

では、なぜ魅力がないと感じるのか。それは、普段の作業には事故が起こる可能性が低いからです。それは、haccpを意識したシステムでなく、各農場の作業方法がかなりリスクを低減していたのです。つまり、昔から問題があればその問題の解決策を考え構築し運用していたのです。それを文書化したり記録を付けたりして次に生かすという考えが必要なかったことにあると感じます。

だから、農場HACCPには興味がないのです。
なんでも記録いつも記録。記録の人生はいやだという人もいます。記録がないと生産性が低下するわけではないことも要因でしょう。でも待っていただきたいのです。今までの意見は一理あります。しかし、事故はいつ発生するかわからない現実があります。

事故発生したら対策を講じればよい。その通りなのですが大事なのはなぜ事故が発生したかなのです。人為的だ機械の故障だと推測は可能です。その原因を根本から洗うことは次の事故対策にも使用でき、原因は人為的かもしれないが作業の方法が事故を呼びやすかった。などあらかじめ文書にしておくと確認しやすく、
記録があることで例えば、機械の故障がいつから発生していて品質問題は2日前から起きていた。結果事故は2日前から発生しており、製品回収は出荷前日分からと出荷先に連絡することも可能です。それは、事故といえば事故ですが、製品不良をすぐに対応できることで、結果品質に対する誠実な対応で信頼を勝ち得ることも可能なのです。


事故は起きるもの又は起きてから考えればよいことではなく、未然に防ぐこと、起きた場合は迅速かつ丁寧に対応することが畜産にかかわらず大事なのではないでしょうか。

そのためにも記録は大事であると同時に農場HACCP認証の文書作成(作業手順と予測できる危害の抑制方法)という手法なのです。いわば保険のようなものと指導先にはお伝えしています。事故が起きていない方法を文書化し危害を予測する一見無駄なことをしているのだから。

PDCAサイクルを回すことも大きな利点です。回しだすように工夫するのは構築・指導側からすると大変です。でも回りだすと会社の雰囲気は変わります。少しずつですが、何かを考えるようになります。
始めは精度が高くないと思いますが、うまく誘導してあげますと、よく考え・行動するような動きにかわります。人の意識向上に効果があると感じています。

農場HACCP認証も通常は、前述の通り不要と思われる無駄な作業かもしれません。でも万一何か起きたらすぐに原因にたどり着けるのか。
「取引先に原因はわからないのだ、次回は気を付けるから」といえるような信頼関係があれば良いですが。そこがお分かりいただいても不要だよという方はやはり農場HACCP認証は魅力のないものかもしれません。

農場HACCP認証は畜産業を行うには必須ではありません。なくても経営は可能です。第三者機関が衛生管理システムの認証という評価をもらう農場と普通の農場は一見差がないかもしれません。

しかし、法規制(飼養衛生管理基準)を満たしていることを客観的に説明できるシステムでもあります。飼養衛生管理基準は畜産業を行う方の遵守事項です。昨年筆者指導の農場に家畜保健所の立ち入りはありました。
定期的に立ち入ることで不備を指導しています。なにかの指導はありませんでしたか?と尋ねると、何もないよ、金網を眺めたりと指摘されやすいところを見ていったよ。と話されました。
おそらく農場HACCP認証農場では指導はないと思います。(筆者の指導した農場はありませんでした)

それは、法規制に従った作業をしているからなのです。その記録もありますし定期的に確認する事項もその通りシステムに組み込むことをしています。飼養衛生管理基準は病気を入れない考えのもと作られた基準で罰則も当然あります。JGAP畜産を取得される方にはこの認証があると審査項目の一部除外が認められておりスムーズな認証取得ができます。

ぜひ農場HACCP認証も畜産経営の一つに組み込んでみてはいかがでしょうか。ただ膨大な文書作成をします(平均100頁は作ります)ので大変苦労されると思いますが、衛生管理・従業員の意識向上を願う経営者の皆さんにはお勧めしたい認証制度です。

畜産業の課題 日本人がいないこと

皆様、本日より日本の畜産に思うことや課題・解決のための考えなど、畜産の未来を綴ります。nogutikusanです。

コンサルタントをしており、家畜指導や人材教育・農場運営指導と農場HACCP認証取得の支援・JGAP畜産の認証取得支援等幅広く活動しております。

専門は養鶏ですが、家畜指導以外は専門外でも対応しております。

現在は、会員様以外のご指導をしておりませんが、畜産にかかわり20数年、いろいろなことを学ぶことが出来ました。

この経験をお伝えし、次世代の皆様に畜産に対し良いイメージや今の問題を共有できればと思っております。たくさんの思いを綴りますので是非ご覧いただければ幸いです。

 

本日は、畜産業の課題の一つ人手が足りないことについて考えます。


3k(きつい・汚い・危険)と呼ばれた畜産業。今もそのイメージは払拭されていないと感じます。この産業には日本人は集まらないよ。とある畜産家の方は呟きます。

たしかに、3kに当てはまる農場もあることも事実です。過去相談を受けた畜産社長の会社労働は1日実働7時間30分で週6勤務で時間外は月20時間程度で賃金は同業他社とほぼ同水準。(労働法では、週40時間の労働ですが、畜産業は適用外なので法令違反になりません)
最初の頃の発言に日本人は根性がない。やりがいがある仕事なのにそれが連想できない。だから外国人技能実習生を採用したんだ。と言われました。

しかし、よく考え見ると日本人に根性がないとも思えません。労働人口が少なくなっているのは現実です。日本人は賃金や労働環境などを天秤にかけ最適な就業先を見つけて就職していきます。外国の方も同じなはずです。
母国より日本に働き賃金を送金するという天秤にかけ就業先を見つけているのです。

私どものいわゆる一次産業は、残念ながら魅力があるようには映りません。他の産業が同じ境遇であれば労働者の確保も可能でしょうが、前述のように最適な就職先を見つけていきますので畜産業まで人が流れてこないのです。
私はその社長に、「人は川と同じです。上流から人が流れてきます。魅力ある産業は上流にあり、就職できる人材から順次上流で就職活動を終えます。ですので、私どもは適正ある方を採用しなければならないのです。
「そのためにも、働きやすい環境がないと、まず求人票すら目を通してもらえません。」
「根性を理解する人は待遇面も御社の根性を見せて頂かないと集まりません。そのような人は他社でも好待遇で迎えるからです。」

結局、待遇面や雇用環境を改善して日本人を採用することが出来ました。しかし、1人採用しただけでは、業務が回ることが出来ません。やはり、外国人技能実習生に頼ることは外せないと感じます。
しかし、3年の在留で帰国(今後5年となり、条件でそれ以上)となります。以降は不足分を補うように人が入れ替えしていく状況で日常管理は恐らく回るでしょうが、それ以上のことはできないと助言しています。

管理には餌やり、空調があればその管理と単調に思われます。しかし相手は生き物であり健康観察は特に大事でわずかな変化を見つけることが出来るかはその人の技量により大きく影響を受けます。1日1カ月程度で会得できることはありません。
その昔、人が十分にいた時代は先輩(特に何十年というキャリアで大体農場主で大抵無口で怖いこともある(筆者体験))が、指導してくれました。

しかし、年月が経過し長期働くいわゆるキャリアある人が少ない農場では、技術移転ができず結局、日常管理で手一杯となり、より良い収入が途絶えてしまいます。

収入減は、そのまま労働者賃金(待遇条件)に反映され日本人は退職か応募の見送りとなり、外国人技能実習生又は人材派遣による短期雇用に頼るという流れになります。
ここが畜産業の課題であり問題になる部分でしょうか。

外国人材で未来は明るい畜産と思われますが、長期に日本にいてもその人たちは、日本が好きでも生涯日本に住むことはないはずです。それは、日本に来る目的は「お金を稼ぐ」ことだからです。
恐らく、外国人技能実習生を採用された企業様は「将来は母国でお店を持ちたいです」「父親の貿易店を継ぎます」などのような発言を聞いたことはありませんか。

単調でマニュアル管理が可能な労働力確保には、この制度は画期的です。しかし、単調であって単調でない畜産は恐らくキャリアのある人の有無(又はその能力がある方)により、会社の命運が左右されると感じます。

そのためにも、日本人が一番かもしれませんが、前述のように潤沢にこの産業に流れることはないと感じます。マニュアル化できれば作業が均等になり、作業品質に左右されませんが、この産業では完全に取り入れるのは難しいと感じます。

農場HACCP認証を構築した方は分かると思いますが、このシステムにはマニュアル(分析シートといいます)があり、その手順で行うことをルールにしています。しかし、そのマニュアルも緊急事態以外は通常の業務について定めているはずですので、あと少しの技術について網羅されて作ることはできないと痛感していることでしょう。

私もそうですが、現状作業を記載しますから、特性ある文書にはならないのです。結局日常管理のみで解決できないと感じています。日本人がいいとは言いません。しかし、大事なのは、家畜を管理できる能力が重要で、長く勤労すれば環境によりますが、キャリアのある人材が育ちます。

従業員は、毎日同じ仕事が出来ればよい。特別な能力はいらない。という経営者の方もいます。それも正解でしょうが、これから競争が進むであろう畜産業界。それだけで生き残れるのでしょうか。あとわずかな努力に報いてくれる人材はいらないのでしょうか。

畜産業を変えるには、今いる人の教育(仕事にやりがいを感じてもらうこと・人に教えて束ねることが出来るマネジメント力)と待遇の改善になるのではと考えています。

賃金=その従業員の資質・能力と言われますが、しっかりとした教育をすることで労働者でもあり・考えて利益を出す人財となります。AIが普及し機械が人に置き換わるとされますが、導入には多額のコストがかかることには、畜産家皆さんよく理解されています。

そのことから、必要な機械化はすでに導入されているのが現実でそれ以上のこと、家畜の健康観察の自動化・健康不良の家畜の診断や畜舎からの排出等人でないとできないことは、機械に置き換わるにしてもコストが増大することは明白であり、導入に慎重になります。将来も人による管理は必要になる畜産業。稼ぐためには省力化もそうですが、考えて利益を出すことも重要です。それは、GAPや農場HACCP認証取得で製品に付加価値をつけることを考えるというのも一例として挙げられます。

人口が減少し労働者確保に苦労することが明白な現在、すぐに利益は出ないと思いますが、教育を施し、一人でも長く・スキルを持たせてやりがいを感じてもらう人材を育ててみてはいかがでしょうか。