nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

採卵鶏の給餌 養鶏の基本

近年、鶏卵相場のサイズ別取引の横並びが進んでいます。一昔はLサイズが高く、順にM,LL.MS,Sとなる傾向がありました。
しかしこのところ相場はL,M,MSあたりまで同じ取引値になりました。
現在はM、MSあたりが高くなりましたが、できれば高い取引に近づけるサイズに揃えたいというのが本音でしょう。


その中、最近の鶏は餌を食べないのだよ。

とか体重が揃えきれなくて困るのだという声をいただく機会が増えました。
確かに、この1~2年位からそのような傾向を管理から感じたり、ご相談をいただくこともありました。

 

鶏は小さいほうが良いという時代があり、それは鶏卵の重量が小さいことでM,MS当たりを中心にそろえて利益を上げたいと考える方、それによる餌コストを抑えて一挙両得を目指している方。

あるいは、小さいことで初生雛から育成期までのコストを抑えて成鶏舎に経営資源を投じる方もいましょう。


その中、問題として見えるのは、成鶏ピークごろに散見される斃死の増加でしょう。

よくある事象として、産卵による事故死亡が見られます。

鶏体は様々でやや細い骨格の鶏も見られることからピーク差し掛かりの少し長い期間斃死が多く表れその数が多く問題視する方もいます。


また、小さく育てたはずなのに異常と考え体重増加をさせる管理に変わり、体重増加と卵重の増加というスパイラルに陥ります。(生産量は一時的に上がるが日齢相応の低下を示し始めることが多く持続に寄与できていない)


生産量は増えるので問題ないと見えるのですが、卵重64g、65gということも珍しくなく結果サイズがLL,Lが中心となり一般的な生産者が多い市場供給のサイズとなり相応な価格になります。


今の相場であれば、サイズは二の次であり1個でも多く供給したいと考えますが、不需要期のような相場では採算ラインも意識して目標サイズを維持したいと考えるはずです。


その中、各養鶏家皆さん独自の管理技法で小さく管理することを意識した取り組みがあるのも事実です。


種鶏メーカーも養鶏家の意見を取り入れたり、市場動向を意識した育種改良を進めています。実際ピークから持続までを長く管理することは多くのメーカーが表明しています。


つまり、今の鶏は、相応の管理さえすればピークから安定しその高い産卵能力は長く続くというのが普通でありどこの養鶏場もできるということです。


しかし、その表明までは年単位でずれがあることが多く鶏種が改良され思うとおりになったときにはじめて公表することもあります。
ですから、改良途上である場合、生産者側に違和感を感じて鶏を見ることが出来ればリスクを回避できるのですが、そうでない場合なんだかわからないがうまくいかない又はそもそもうまくないと思っているという状況です。

 

生産量を意識する時代でなく、自社のサイズ管理をどうするのか、生存率をどのようにするのか、病気や寄生虫被害を防ぐ手法等数でなく、質を考えることが重要となりました。


今日のお話となる、給餌から見た鶏を見る力と考える力をご紹介しましょう。


鶏がエサを食べないという声をいただき、鶏舎を歩きますと様々な状況が見えます。
温度、環境、餌の量、育成期からの問題や影響等がすぐに見えます。


鶏は食べないという先入観が多いのですが、実際は温度による影響で食べる量が少ないこともあります。

また餌の配餌量が多すぎて鶏がダレるという症状を呈していることもあります。


育成期の影響も見られます。

明らかに成長が遅い場合産卵活動が始まらず餌が多すぎてダレるのですが、これを管理異常と捉え、餌を食べさせるための管理に仕向けるという先ほどのスパイラルに突入する方もいます。

 

配餌の基本を考えて見ましょう。
餌の適量はいくらでしょうか。1日の摂取量目標はいくつで何回配餌するのでしょうか。


多すぎた場合は、配餌の方法が適切でしょうか。

 

鶏の観察力が大事なのですが、近年10年管理している方でも中々判断できない方が多くなったと感じます。
管理に自信がないのか、上からの指示が絶対で何もできない風土があるのかわかりませんが、少し時代が変わったと肌で感じることがあります。

 

餌が多すぎる場合、鶏は餌が配餌されるということを何でわかるのか考えるとまた違う見解が出来るはずです。


つまり、配餌しないで給餌機・コンベアーを動かして餌を流していることを意識させるというのも一つの手です。


鶏は時間概念はあるようですが、多くは機械音に反応することが多いはずです。人の気配や機械音で騒ぐのはその理由です。

 

鶏のスクールもありますが、管理技術はスクールでは何とかならないのが実情です。先輩から教わり腕を磨きそれが技術になるのが一般的ですが、今の時代教える人材がいないのが実情です。


ですから、簡易化した管理に変わり簡易なので外国人技能実習生で要件が済むことで、最低限の管理ができるが、それ以上はリスクが大きく思い通りの結果が結びつかないというある意味そうなるしかない結果と現れるのです。


そのこともあり、最近のエサを食べないということについて、十分でない技術を持ち込み結果思い通りに進まず生産量が年間と違い、廃鶏まで続く不採算ロットに陥るという話も聞きます。

 

餌は、鶏へ与える基本です。

水・エサ・空気は管理の三大基本です。

 

これが出来なければ何もできません。

最近はウインドレス鶏舎が主流で機械管理になりました。


しかし、管理させる命令(設定)は人が行います。この点から間違えた管理は結果まで間違えたまま進むことが多くなります。


外国人技能実習生が主体となる農場では、この点を意識されているところとそうでないところで大きな差があるのも事実です。


今後、生産量は安定して増えていくことでしょう。

また管理技術も平準化していくはずです。例えば強制換羽はもしかすると数十年後にはないかもしれません。
動物愛護の観点もありましょうが、多くは育種改良で必要としないという状況です。


強制換羽も技術が必要です。再立ち上げで思い通りにならず結果うまくいかないということもありますし、私自身失敗して青ざめたこともあります。

 

餌は基本管理です。

ただあげればいいわけではありません。

必要量があり、配餌方法があり、食べ方を見て適切を見出さなければなりません。


配餌は機械が管理しましょうが、基本は人がかかわり管理をしています。

そのことを考えて管理できれば今日お話したことは、大した話ではないと言えるのでしょう。

鶏の管理とは何でしょうか 養鶏の基礎

採卵鶏を管理されている方とお話することで、様々な考えを持って日常管理をされていると感じることがあります。


ある人は、病気の有無が分かり自身の判断がいつも正しいというスタンスで鶏や作業者に接する方。
ある人は、鶏の仕草で餌が足りていない、仕草からストレスを感じている等動作から見て判断できるスタイルを持っている方。
ある人は、日常作業の正確さに定評があり、給餌や給水等生産性に影響ある基本部分の危険回避を常に行っている方。


様々な特性を持つ従事者のおかげで、鶏たちは安心して鶏卵を産出しているのでしょう。


では、管理をするとは何でしょうか。


病気を発見できることでしょうか。

それとも作業の正確さが一番でしょうか。
何人かの人に伺うと、多くは作業の正確さと言います。

しかし一部は病気が分かるようなことが重要であり、管理できることは当たり前なのだという解答です。


私自身20数年養鶏の世界に身を置いて感じることは、管理が出来て病気が分かるというのが感覚的に感じるものです。


その管理が出来て当たり前という方も10年はこの世界にいるわけですが、少し観察すると、鶏の仕草の変調に特に敏感でないことが分かります。
このような状況で、管理が出来て当たり前と言われても・・というのが本音です。
病気が分かる根拠を伺うと「本で調べた」とか「知っている人に聞いた」というものです。
そして、解剖が出来るので「特定が可能だ」と自信を見せます。
本当にそれは正しいのか。


私は獣医師ではありません。

ですからそこまで病気と思われる症状を自信もって答えることはできません。


確かに、腸管の変調から、コクシジウムやクロストリジウムではないかという症状、肝臓肥大や肝出血等や脂肪肝、腎臓の変調からの呼吸器病予知等分かりやすい症状はわかります。
しかし、大事なのはそれから何を学ぶのかというものです。病気は突然発生することはそう多くありません。多くは何らかの環境からそうならざるを得ないというプロセスがあるはずです。
それが特定できることが管理者の技量であり管理を改善して鶏の立場で考えるというのが本当の鶏の管理で技量がある者と認められるのではないかと感じるのです。


病理鑑定は専門的な方しかできません。

正しい判断ができるはやはり専門家以外にはいません。

逆にそうでない方が胸を張って発言することが問題と感じることもあります。


専門家と素人はしょせん本物とまがい物といえるくらい正しい答えを導く力に差があるのです。ですからそれが特定できれば原因や対策が見えてきます。


そうでない方からの見解で原因や対策は多くは正解に結び付くことは稀かほぼないといえるのが現実です。

 

しかし、結果を待つまで数日や数週間かかることも珍しいことではありません。その間症状が進行したり、消失したりしてわからないということもあります。


私自身は、20年からこの世界の現場第一線にいることを自負するわけではありませんが、常に自己研鑽し様々なことを学ぶ姿勢を今も取り続けています。


このことで、鶏を見るということ、五感を活用して異常を察知することに注視していること、鶏から見て今はどうなのか、鶏の目線で考えるということを、ご指導する際にお伝えしています。


これが出来ることで基本が出来上がり、応用発展に鶏病の予測が出来ると考えています。しかし病気を正しく判断できるのは獣医師の方々であり私たち管理者が発言できることではありません。
予測は可能ですが、それは経験から言えることで、経験がない者には真似事しかできないといえます。


最近思うのは、他の人より上にいたいという願望を持つ作業者が多くなり人より抜きんでている内容として鶏病の判断できると発言する方を見る機会が多くなりました。


繰り返しますが、正常である日常を知らない方が異常を察知できることは経験から見てあり得ません。それなのに、分かると断言できるその自信にはある意味脱帽します。


これが横行する農場ほど、管理力がやや低いと感じることが多く、生産性があまりすぐれません。

理由を伺うと「ワクモがいるので仕方ない」「外国人技能実習生が管理しているので手を抜いている又は出来る力がない」「台風による影響」と、本当に分析した結果なのか又は現実から目をそらせたいのかという内容が多いと感じます。


経営者も右腕がそういうのだから間違いないというスタンスで、生産性も問題あるのですが、社内風土も悪くなり改善点を見つけることすらできない悪いスパイラルに陥っているところもあります。

 

鶏の管理とは何でしょうか。
今日のテーマですが、私の経験と知識から言えることは、
鶏の管理とは、鶏の目線で考え管理することが管理の基本である。
ということにつきます。


基本から応用が生まれそれが知識になり経験となる。ある先輩が言う言葉です。


私もこの考えを持ち20年以上の期間養鶏に携りました。

今もこうしてご指導させていただく時に教えるというスタンスでなく、一緒に考え共有していくことで私自身も成長していくと感じるのです。


鶏は正直な生き物です。管理をミスれば生産量を落とす。断水させれば日齢によりますが大きなダメージを与え廃鶏まで低産卵になる現実。
不快な環境を与えれば、弱い鶏は生産をやめて自身を守る体制に入り生産量が減少していくこともあります。

 

一昔までは、この考えを持つ従業員が農場に一人二人いました。しかし時代は変わり仕事に情熱を持つ人ほど退職したりと技術が途絶えることが多くなりました。
それどころか、労働力補充が第一となり外国人技能実習生に頼る農場運営となるつつあります。


技術の消失は、鶏の生産能力(遺伝能力)でカバーできることもありますが、管理はその能力を最大限に発揮させる最低限の技術です。それが難しいとなったとき、技術を再度呼び込むことはほぼできません。

多くは経験者を雇用するのでしょうが、短期の経験者が多いのが実情で、本当に技術を持つ人は再度この世界に戻ることはありません。


自社での教育もそもそも何ができるのか分からず結果従業員に任せきりとなり運が良ければ考える従業員が生まれましょうが、多くはいつまでも作業者の延長でなんら変わらない。

変わるのは社員の在籍年数だけというのが多いと感じますし、本当に危機感を持つ経営者はこれでは自社の将来が後10年どうなのかというぐらいの危機を持って相談されているのも現実です。


失った技術を、再度戻すには私どものようなスタッフからの技術の買戻しのような状況になるのかもしれません。


優れた経営者と先輩がいることで初めて生まれる技術力を持った人材は、今はそう多くないのかもしれません。


いくら大金をつぎ込んでも本当に価値ある人材は取得できないといえましょう。
自社で育てるもその土壌がすでに荒れ果てた風土ではいくら大金をかけても何も育ちません。


しかし時間と共に技術は消滅していくのは現実。


ウインドレス鶏舎の管理ですら難しいといえるのであれば、いよいよ技術を育てる環境は失われたか、もう間もなく失われていくのかもしれません。


それは、セミナーでどうこうなりません。

一緒に考える人が必要でしょう。

それにお金をかけるほど無意味と感じる方もいます。


しかし、選択一つの間違いで少しづつ違う世界へ進んでしまうこともあります。選択はその人農場の問題で社会的に見てその判断の適否は大きな影響を与えません。
結果、その世界から退場することもある非情な世界でもあります。

 

それを船の航海士のように導くことが出来るような人材がいるのか船長と船員だけでこの世界を渡り合えるのか・・
最近感じる鶏の管理というキーワードから見える農場の考えの多様化した現実のお話です。

ウインドレス鶏舎の管理 衛生管理の基本

最近は、ウインドレス鶏舎による飼養管理が多くなり養鶏経営の基本となりつつあります。
病気の遮断と人工的で適切な環境維持から、採卵鶏の生産能力を最大限に引き出すことで生産性の向上と、作業に従事する人のノウハウや職人技と呼ばれる技も必要なくなり、最低限の人員配置と作業従事で運用できることから建設費用は増大であっても最終的にコストを回収できる見込みもあって建設されている農場も多いことでしょう。


衛生管理の基本として、病気を入れないと言う点では遮断した環境ではとても効果が期待できます。しかし小動物による汚染や換気システムの方法等により汚染された菌類が拡散し蔓延することもあり、一般的に環境汚染度は高い鶏舎と位置づけされており便利である反面十分に認識なく取り扱う場合、大きな損害を及ぼすこともあります。


特に小動物からの汚染対策はとても重要でいわゆるネズミの対策をおろそかにした場合の損害は大きいと言えます。
建設時からその点を意識して部材の選定や工法を指示する農場もありますが、多くは開場時には想定しなかったネズミの行動に驚かれていることが多いのが本音かもしれません。


農林水産省が平成19年に採卵鶏農場の菌保有状況調査では、338農場400鶏群のうち、農場サルモネラ保有率は21%で、無窓(ウインドレス)鶏舎は52%が保有していると公表しています。(開放鶏舎では10%)
つまり、保有している21%農場の半分はウインドレス鶏舎での汚染であると言えるのです。


サルモネラ菌保有していると言う話ではありません。

大事なのはそれだけ常在化しやすいということなのです。


換気システムを見ればわかりますが、特定の換気窓から空気を入れて特定の出口で排出するため、開放鶏舎と比べ空気の入れ替えが頻繁でないことが分かります。

空気に混ざり菌類が排出され鶏舎内に0%の菌の残存ではなく、いくらかの菌は鶏舎から離れ増殖度が変わるのです。
そうでなければ、温度調節もできませんでしょうし、最適な環境を整えることはできません。


採卵鶏に最高のパフォーマンスを与えるには、「良いエサ」「良い水」「良い空気」と言われます。


それは、開放鶏舎からの話と言えましょうが、実は無窓であっても同じです。

なにしろ鶏は同じだからです。


しかし、近年は作業者の十分な衛生管理の基本が薄くなり、ねずみの繁殖から汚染はもとより、器具の破損(多くは断線による故障)もあり、バランスよい環境が損なわれて結果開放鶏舎のほうが成績が良いという皮肉も聞かれます。


また鶏を見るということを忘れる農場も多くなり、数値(餌の摂取や飲水量、生産性)を追い求めるに特化し、大事なポイントを見落とすという基本部分が薄れる農場も見られます。


このことから、一部の養鶏家の方々は鶏のパフォーマンスより低いが安定した生産性を求めるという現状に合わせた基準を示すところもあります。どちらが経営上得なのかはわかりませんが、ひところに比べ人の能力により生産性の方針が結果下方修正している(しなければならない実情)ところもあります。

 

鶏の生産の能力は年々向上しています。

親鶏メーカも自信をもってピーク産卵率93%~96%といいますし、ピーク後の持続率も良くなっているといいます。

実際その通りで強制換羽しなくても安定した生産が期待できるような時代になりました。


鶏卵の重量も63g生涯というところもあり、日本での消費者を意識した改良が進んでいると感じます。

 

さて、本日の衛生管理の基本ですが、鶏舎内を清掃することは当たり前の話です。

ホコリの搬出は基本でもありネズミの巣材にもなり良いものがないからです。


それより、ねずみの対策や鶏へのストレス軽減に意識を向けることが重要というお話です。


ネズミは様々な汚染をまき散らす小動物と言われます。そのためにも巣を見つけ破壊し巣を作らせない環境を整えなければなりません。

 

しかし農場には高いところに巣をかけるクマネズミが主流のはずです。
手を入れるような場所に巣をかければ良いのですがそうでない場合もあります。

相談いただく農場もその点に不安があり周辺の対応等助言をして対策を講じるような手法を提示しますが、本当に苦労されることと思います。


衛生意識が低い従事者である場合の多くは、何もできないから何もしない又は手が届かないから周辺に粘着シートを付設すればよいという、対処療法にしかならない方法を取り、はみ出したネズミだけを捕らえて満足しているところもあります。


意識がある農場は、できることを考え対策を講じています。

 

この差が衛生管理の差となり生産性や保菌の有無を分けるのかもしれません。


鶏へのストレス軽減も大事です。飼料コスト削減のため温度環境を操作しコストを下げるというところが今は一般的です。

しかし多くは猛暑のような環境を作り結果生産性の低下や斃死というバットエンドとなるような構図になるところも多く、技術の保有が低い農場ほど功を奏していないと言えるのかもしれません。

 

また、サルモネラワクチンを接種している農場が多いのが実情です。つまり鶏が保菌するリスクをかなり軽減されるわけです。


しかし先の調査では、サルモネラワクチンを接種していると回答した無窓鶏舎58%と開放26%と2倍以上の差があってもワクチンでどうこうなっていないと言う結果があります。


つまり、保菌した汚染でなくそれ以外の要因で汚染しているということです。


それを裏付けるための質問では、強制換羽を行う63農場のうち38農場はサルモネラ陽性農場という結果であり、鶏の健康次第で大きく汚染するような可能性もあるのです。


農林水産省の調査では、今回の調査農場市販の鶏卵からは卵殻に0.3%のサルモネラが汚染されていると言う結果があります。インラインGPセンターの衛生問題もありますが、農場でも汚染があると広がりその鶏群以外にも伝播しかねないと言う警告でもあるといえます。


衛生管理の基本は衛生管理をするということと捉えてしまうかもしれません。しかし本当の衛生管理の基本は、なにが衛生的になるのかそして何ができるのかという考えを持って取り組むことだとつくづく感じます。

 

ある農場では、鶏糞の排出機能にトラブルがあり7日、10日平気で鶏糞を貯留するところがあります。

アンモニアガスで目がしみてしまうのですが、農場担当は「そうですか? ガスぐらいで鶏はどうこうなりませんし、修理業者が来ないから仕方ないですよ」と言います。

確かにその通りでしょう。修理ができないからガス臭くても良い。なにしろ当の本人は、夕方には帰宅するのですから。しかし鶏たちはそこが自宅です。一緒に1ロットを自宅に招き入れてくれればよいのですが、その鶏たちは目がかすみ息苦しい中昼夜を過ごし、産卵というストレスを与えている状況です。

 

ご承知の事でしょうが、人が不快と感じた場合のアンモニア指数は25ppm以上ある可能性が高いということです。

この数値では、呼吸器が弱い鶏には病気を呼び起こすに十分な数値になるのです。

後は、ワクチンで十分跳ねのけるような抗体を獲得しているのか又は健康な鶏なのか。

それが病気誘発するのかどうかわかれるのです。

 

呼吸器病は、鶏舎全体に一気に奇声を上げることはないのは経験者であればわかるはずです。

特定の場所から始まり徐々に全体に広がる。又は転々と鳴き始め広がっていくということもあります。

つまり、免疫の状況、健康状態、感受性様々な要因で始まるのです。

そして、重篤であれば生産性の低下となるのでしょう。

 

ここまで解説してお分かりだと思いますが、衛生管理の基本である「良い空気」になっていませんよね。

 

しかしガス臭ぐらいで影響がないと言えるその発想も大変ある意味感心します。

優れた経営者は、アンモニアガスからくる産卵低下の怖さを知っています。

だから、環境が崩れたときはまずは換気を優先しそのリスクを回避するのです。

 

それを知らない又は知っていても数値に現れないから平気という考え。

数値がすぐに表れた事故の場合は、正直管理者として大きな失態を犯しているといえます。

数値に現れるのは、なんであれ数日後であるのが一般的です。

 

わかっていて、平気であると言えるのであれば管理者として自覚が十分でない可能性が大きいと言えます。

繰り返しますが、衛生管理の基本は掃き掃除だけではありません。

それは当たり前の基本作業であり、ねずみ対策や換気作業も衛生管理の一つです。

 

そのためには、考えてもらうことが重要なのですが、その素材を提供できなければ何もできないのは当然ですし、農場によりましょうが考える力が少なくなっている場合はそこを補うような技量があることが大事なのかもしれません。


最終的には管理者・従事者次第になってしまいますが、その管理力は個々により大きく異なると言うのは間違いないことです。

 

高額で整備したウインドレス鶏舎。

できれば最高のパフォーマンスで建設費の回収と利益を上げてほしいものですが、一歩正常でない状況になったときは容赦なく脅威に変わり、それを回避できるような技量が求められると言う現実。

それにはシステムの特性と問題点を考慮しなければなりません。

多くの方が言う、ウインドレス鶏舎の管理は容易であり機械の読み取りが主作業であると言う正常時の対策がいつもあるという錯覚。


考えてもらい、行動できることがとても大事と感じるウインドレス鶏舎の管理。

その考えることが出来るのが、衛生管理の基本に発展するのでしょう。

産卵率が上昇しない時に確認したいこと 養鶏の基本

今年は台風による畜産被害が甚大になっており、養鶏のお客様より産卵率が上昇しない等家畜の変調についてご相談をいただくことが多くなりました。


多くは、病気によるものというより生産農場の設備、管理技法、災害からの復旧過程での鶏のストレス等家畜の影響があげられます。
実際農場を拝見し鶏、鶏舎、データ、管理方法をお伺いし指導員の経験を踏まえてアドバイスさせていただいております。

 

鶏の変調は獣医師にご相談いただくことも大事ですが小規模の農場で獣医師に知り合いがない場合等は家畜衛生保健所への相談をお勧めしております。


しかし、鶏を見ている経験者ではない場合が多く病理鑑定が中心となる助言が多く、依頼側からすると知りたいことに答えていないと少し不満を感じることもあるようです。


現在、病気による鑑定がぴったりとあてはまることは少なくなりました。

農場常在感染もありますが、複合感染といわれる事例が多く特定しにくいといいます。


しかし、何らかの原因で生産量が下がるということは病気によることもありますのでこのような鑑定は重要です。

病気によるもの、管理によるものと合わせて考えることが大事なのです。


その管理によるものを探す方がほとんどいないと言うのが実情です。

多くは経営者の経験で判断し満足できる答えでなくてもそのまま放置したり、知り合いの経験者を呼び見てもらう等をされているのでしょう。


そんな中、経験のあるアドバイザーがいる私たちを知っていただくのかもしれません。


鶏はストレスに弱い動物です。

安定した生産が出来るよう改良が進んでいますので些細な変化で生産量が下がることは生産現場の方は肌で感じることも多いでしょう。


多くの方は異常と感じた場合、数値の変化から感じることも多いはずです。しかし例えば生産量が下がる数値が現れたということは、その日急激に変化したのか、予兆が他の数値で明らかになっていたのか分けて考えて見る必要があります。


今日お話したい「確認したいこと」とは、農場によりましょうが多くある数値からどのように確認し、いち早く異常を察知するのかご指導している際によくお話する内容をお伝えします。

 

1、なにが異常と感じるのか
まず、異常と感じたのは何の数値から発見したのでしょうか。産卵率、摂取量、斃死の数、飲水量、気温、鶏の仕草、体重の増減、卵重の増減、鶏舎の環境と少し考えるだけでもこれだけデータが存在します。もちろんそれ以外の数値もあり重要な場合もありましょう。


それは農場によりデータは異なり、そこを気付く方がいるのかどうかで早期発見と早期対応できるのか分かれ道となるのでしょう。


見つけ出したデータ1つで原因究明はできないことが多いことに注意をしてください。


例えば産卵が上がらない又は下がった場合、それ単体が主因で発生したことではなく、付随してなってしまったと考えなければなりません。

例えば餌を食べなければ栄養不足となり少しずつ産卵を下げていきますし、上げ基調の時期は押し上げることが出来ず停滞となります。


ですから、合わせて餌の摂取はどうなのか確認しなければなりません。


そして、餌も影響あるとした場合、水はどうなのか?、明かりはどうなのか?、そもそもエサ配餌量は適正なのか。

温度が高すぎて餌を食べないのか、体重が著しく小さい場合、性成熟が開始されていない遅れた鶏なのか等これだけ多岐に渡ります。


その変化を知るためには鶏を観察して状況を整理しなければなりませんが、観察眼がなければ鶏は元気ですで終わり原因を見つける機会を逃します。


このため先に鶏を見て異常と感じる方も多く、すぐに鶏舎内の確認やデータの収集を行い対策を講じていきます。

多くは経験がそれを裏付けるのですが「科学的でない」という理由で一蹴する方も多く、そのような農場ほど逆に理由が見つけられずなんだかわからないけど仕方ないと言う考えが先行し結果何もしていないと言う状況が多いと感じます。
生産性に不満があると言う「ないものねだり」というに近い状況にいる方もいます。


では、異常と感じた感覚又は数値を読み取りそれはいつから始まったのか、さかのぼりしてみましょう。

 

2、さかのぼりをして起点を見つける
多くは、少しづつ変化をしてある日生産量に現れるということが多く、今日産卵率が5%下がったぞ異常だ異常だというのもある意味正しいのでしょうが実際は予兆があってそれが引き金になっていることもあります。


餌の摂取量が低下していることで3日後から産卵の低下が現れた事象ということもありましょう。

あるいは、ピークが終わり下降期にいる鶏群に餌摂取量が多くなり14日くらいで産卵低下が顕著に表れたということもありましょう。
さかのぼりを見ていつ頃変調があるのか確認しましょう。

 

3、起点に何があったのか推定しましょう
データは結果です。ですからその底にある真実を示しているわけではありません。そこを探すのが管理者の腕の見せ所です。


先ほどの通り、変調はさかのぼりにより起点が特定できることもあります。その起点には何があったのでしょうか記録を拾い読みしてみましょう。


例えば、餌摂取量が少なくなったとすれば「気温が高くなった」「給水量が少なくなった」「工事が敷地内にあり騒音や振動が多かった」「外部業者の立ち入りがあり鶏が終日騒いでいた」等記録に記載があることで特定できること多いのです。


例えば、農場内に常在感染があれば日齢情報から感染しやすい時期と推察も可能でしょうし、このような場合過去の生産量記録から同じ状況であることもありえましょう。

 

4、起点が見つからない場合
多くは少しづつ変化があることで異常が表面化することが多いのですが、緊急性が高い場合その日突然に表れることもあります。

この場合に多く見られる、断水していること、鶏舎の温度が異常に高い等鶏にとって強い危険が訪れていることが多いと言えます。


鶏舎や鶏の仕草を見て見ましょう。ピックやニップルを激しくつついている場合は断水していることがすぐにわかります。(多くの鶏がつつく音を立てているのでわかるはずです)


温度が高い場合は、鶏舎温度でわかるでしょうがパウンディングしている等の仕草を観察するとわかります。最悪斃死しますから温度異常の場合は要注意です。
このように前日まで異常と見られないものの明らかに今日がおかしい場合は今日の管理内容を確認してみましょう。

 

5、数値記録は結果であり、振り返りには重要である
その日の結果を記録として機械や紙台帳に記入していきます。記録は後に活用することで初めて記録した価値があります。記載した日は記録して良かったと感じることはないでしょう。
しかし、振り返るときには記憶では思い出せないことも多々あり、記録されていることで、その日の作業内容では異常として感じていたメモ書き等があれば、その時は異常と認識していなくても実は異常の始まりだったと後で感じることもあります。


このように後から注意すべき事例となったら、その時の意識では異常を察知できなかったと新しく自身の基準にすればよいのです。


振り返りと言いますが、あの時こうすればと後悔することが振り返りではありません。

起こった事実は変えられませんので、次回同じことをしないためにも振り返りをするのです。


振り返りをするためには、記録をきちんととることが必須です。欠けた記録は欲しい情報が漏れていることもあります。


私自身も経験がありますが、機材の故障で数日記録できなくてやむなしという意識で記録していた時期がありました。
しかし、なんだか生産量が右肩下がりとなり、今のように振り返りを始めたときこの時期のデータが重要であったという悔しい気持ちがありました。軽い気持ちが油断を招き後で苦労すると言う典型的な失敗例です。


どうか皆さんも同じようになりませんよう機材故障は早いうちに解決しましょう。

 

6、PDCAサイクルを意識しましょう
よく言われるPDCAサイクルですが、考える方は無意識に回しています。私も仕事柄回すのですがこの意識を持つことが重要です。原因が分からなければ何が原因か(c)、その対策はどうすればよいか(a)、その方法を策定(p)、そして実行(d)となります。

 

これが出来る管理者の農場は察知力が高く対処が早い傾向が多いと感じます。
しかし多くはそのような管理者がいないと言うのが実情です。農場では育成できる環境がもうほとんどない状況かもしれません。実際多くの農場ではコンピュータが入力数値から異常と表示するシステム等を導入し、異常とした原因を探りに歩くことが多いことでしょう。


今後は種鶏メーカーのマニュアル管理である程度の生産性を求めるような時代になるかもしれません。

コストを削減するために餌の配餌量を工夫したり栄養価を下げることで飼料代金を節約したりとしていきますが、多くはうまくいかず本来の鶏の能力を引き出すことが出来ず、生産性に欠け卵重の増加で規格外卵やB級卵(壊れ卵等)になり収益を結果悪化させてしまいます。

良く管理できるような人材がいれば変化を見て助言したり配合変化を修正したりと傷口を広げる前に手を打つことが出来るはずです。


しかし、先の通りそのような管理力を有する経験者は少なくなっており今後はこのような技術伝承は途絶えると見ています。


今後は生産母体数を増やすことで生産量を維持する方向で進むと思われます。(例えば10万羽9万個の生産で90%のヘンデー産卵を、100万羽で80万個の生産で80%のヘンデー産卵であっても個数は80万個と多いので出荷として良いという考え)


技術伝承はその農場の今後を占う意味で大切なことですが、すでに時代は外国人技能実習生の労働力を投入しなければ成り立たないという農場も多いはずです。


その期間が長くなるほど伝承は途絶えていき、自社では一工夫も何もまずは生産量をあげることに注力しなければなりませんし、餌をあげれば解決というわけにもいかない養鶏業です。それだけでは卵重の問題もありましょうし、それに伴う斃死の問題もありえましょう。ですからノウハウはないよりあったほうが良いのです。無駄な労力をかけなくても対処療法があるからです。


今日お話したことは、一昔前までは普通に行われていた技法です。

しかしこれ以外にも難解な事例はいくつもあるはずです。その問題にどう向き合い生産量を確保するのか、そこが生き残れるのか一つの目安になるのかもしれません。

 

私たちは、社員研修を通じてこの大切な技術伝承をお伝えしております。

 

ワクモの被害について考える 養鶏の技術

残暑も少しづつ治まり秋が近づくころとなり、養鶏家の皆さんは秋に向けた対策を講じられていることでしょう。


摂取量増加による鶏体の増加や卵重の増加、生産量が増えるはずですが日齢や体調の不出来によっては生産個数より生体体重に変わり、脂肪肝による斃死もあり気が抜けない季節です。


それと同時に寄生虫による生産低下、斃死の増加となるワクモの被害が深刻化するのもこの季節から冬、春と続くのです。


今日は、多くの農場で聞かれる「ワクモ」について考えて見ます。


ワクモは養鶏での被害が大きい外部要因の一つですが、対策が十分でない場合鶏舎内に広がり昼夜問わず吸血し鶏が貧血してしまいやがて斃死するというものです。


ワクモ対策は農場独自の方法を取られていることでも有名でしょう。


一般的な薬剤散布による殺虫方法、ハーブを主成分としてワクモの吸血を防ぐ方法、石灰等粉や洗剤等の粘りを使用して活動を抑え込む方法、手荒い方法ですが火を使用して焼却する方法等あります。


しかし、いずれもある程度の効果はあるものの根治出来ず、結果元に戻り被害が継続するのが一般的です。


大変高価で有効性が高い薬剤も販売していましたが、そう期間がたたずに効力が薄れていくという耐性の問題もあり養鶏家の皆さんは日々情報を仕入れ良いものをお探しの事と思います。


ただ、くれぐれも農薬(農業用等明らかに動物向けでない薬剤の使用)の使用はされないようにしましょう。

家畜や畜産物に影響を及ぼすこともあり後々面倒になることもあります。

 

さて、そのワクモですがなぜ被害があると認識されているのでしょうか。
まず第一に斃死を伴う被害が甚大になることです。

重度の寄生が続くと貧血となり、食欲不振となり生産を中止し死亡するというものでほとんどの養鶏家は同じことを言われることでしょう。


また、病気感染の原因といわれます。免疫が低下することで鶏病に感染しやすくなり鶏舎内に蔓延したり、周辺鶏舎や農場へ被害を広げることもありましょう。


その他、鶏痘と呼ばれる顔や近辺が虫刺されのようにかさぶたができ、目が開けられないようになったりして鶏へのストレスが大きくなります。


このように、ワクモの寄生は養鶏の皆さんにとっては死活問題となるのです。


しかし、その対策方法はどれも決定打に欠け一定の効力はありますが持続が難しいのが実情です。

では、そのワクモをどのように対応していくのでしょうか。


一般的な薬剤殺虫を使用されている方が多いと思います。

私自身も最も効果的な対策と考えています。


一昨年あたりに販売された新薬を使用された方も多いと思いますが、最初は大変優れた効果があり月1回の使用で持続でき、まさに夢の新薬と呼ばれました。


しかし、使い方問題等もありすぐに抵抗力が付与され効果が減じてしまうという声も聞きます。


このように、薬剤の過剰な使用は抵抗力を付与してしまい、その薬効成分に対して効果を減じてしまうという基本的なことかもしれませんが、お困りの方々にはこれが実情であると思います。


また、濃度も重要です。一般的な薬剤は薬効成分500倍から1500倍で使用すると書かれています。

この場合薬剤を安く使用したい場合濃度を薄めれば1薬剤を複数使用できることも可能なのですが、残念ながら抵抗力をつけてしまう原因となります。
濃度は指定された濃度の濃い状態(この場合500倍となります)で使用すべきでしょう。

 

使用方法も重要です。
薬剤の繰り返し使用は多くの場合コリンエステラーゼ阻害作用があり1週間以内の反復使用はしないこと。と書かれているはずです。


しかし多くの農場は1週間に2回や3回、なかには毎日散布する方もいましょう。

どちらもメーカーは使用方法として推奨していません。


薬剤成分によりますが、薬剤中毒を起こしてしまう可能性もあり注意が必要です。


薬剤に関する問題を農林水産省所管の動物医薬品検査所で公開されていますので読みますと、ワクモ駆除を目的とした薬剤にはさまざまありますが、斃死を伴うような薬剤散布とワクモの寄生により健康状態が悪くなり斃死した場合と区別がしにくいこともありそんなことより、散布して被害を止めたいという考えもありましょう。


しかし、健康な鶏が重度の被ばくにより死亡する可能性もこの報告書にもありますので適正な期間に適切な濃度を使用するのが安全で効果的と言えます。

 

では、使用方法のうち注目する散布方法ですが、ここが問題を考える点となるかもしれません。
私自身も、散布のご指導を行い可能な限り有効な方法をご提案していますが、多くの農場は以下の要因により散布方法が不適切なことから結果抗体を獲得し長期にわたり被害が続く一つの要因と感じています。
1、散布を簡略化したことが中心で必要な個所への散布を行わない。
2、水溶剤ですので、電気系統への被害(漏電)を防ぎたいので散布個所を限定する。
3、安く作業するので薄い薬剤を使用して少量を散布する。
4、経営者と現場の温度差が激しく、作業の重要性が低く簡単作業で短時間で済ますような作業。
5、寄生虫による被害より人(作業時間や作業の労力が耐えられない等)の被害を防ぎたい。

多くの方はそんなことないと思うのでしょうが、重度の汚染が進んだ農場は上記のうちいずれか1つまたは2つ以上の理由によりやるべき作業が行われず結果抵抗力を獲得してしまうことが多いと感じます。

 

重要なのは、ワクモはどこにいて、どのように活動しているかになるのですが、
ワクモは日中活動せずゲージの裏側等物陰に隠れて夜間に活動します。しかし生息箇所が多くなると人が目視できるところでもコロニーを形成し潜んでいます。
重度の汚染となると、生息場所が目視できるもなにも関係なく潜み、昼夜問わず活動し鶏へ寄生している状態です。
この頃になると、鶏はトサカが白くなり貧血になっていることが分かります。

 

恐らく斃死が通常に比べ2倍又はそれ以上に近い状態で推移しており1ゲージに固まって死ぬこともありましょう。
また取り残した死亡鶏を繁殖地となり近辺の鶏に寄生続け周辺の鶏が固まって死ぬということもあるのです。


重度になった場合は正直、生息箇所を消毒するというレベルではありません。そんなことより全体を消毒しなければ対処できないという状態なはずです。
しかし、作業を簡潔に行い時間をかけない作業となれば十分でない消毒作業となり、先ほどのようにどんな新薬が登場したとしてもすぐに抵抗力を獲得してしまい、元に戻っていくことでしょう。

ですから、消毒方法を考えるには濃度や薬剤選定も大事なのですが、それ以外にもどこまで時間をかけて散布できるのか考えるのが重要です。

 

それ以外にも水洗中に温水を使用するのも効果的と言われます。しかしボイラー機能を使う農場は大変少ないもので、ほとんどは水になりましょう。
その水であっても十分に水洗することが出来れば温水に負けない効果が期待できます。


それは時間をかけて隅々まで洗浄することです。


しかし、そんな時間をかけるほど無駄な時間とお金はかけないと言う方もいて、温水を導入したり夜間も水洗できるようにロボットを導入する方もいましょう。
資金力があればそれも良いと思います。しかし結果が全てです。
それで効果があれば最高ですが、多くは現状とあまり変わらないというのが多いのではないでしょうか。
それは、十分に鶏舎からワクモを排除できていないということです。

 

農場によってコントロールが出来ている農場と残念な農場とある会社もあります。
私自身も視察して感じることですが、比較すると作業方法やその散布に今お話した考えを取り入れていることが分かります。

 

そのような比較が出来る幸運な会社であればその原因を考える良い機会でもあります。


しかし、多くの経営者はそんな比較をしない方も多いはずです。そのような比較は意味がないと言い比較をしません。
恐らく競争させることで人の問題があるからと推察されますが、そういう問題を直視できない場合は後々ご苦労されてしまうことが多いと感じます。

 

いかがでしょうか。
ワクモは基本的に繁殖が弱い時期には人に見えることがなく、重度になった場合鶏への被害、生産量の低下、斃死、免疫低下により農場常在ウイルスの罹患もあり悪い状態に陥ります。


それは、仕方ないと考えられればそれは解決でもありますが、多くの養鶏家は問題と考えます。それは鶏が死ぬということはその生産量が廃鶏するときまで少なくなったことを意味します。
10000羽で1000羽死んでしまってもヘンデー産卵率は90%、10000羽で9000個出荷しても90%です。
どちらが、良いのでしょうか。


通常ヘンデー産卵率は100%になることは経験から見てありません。
それは、鶏は24時間に1個産出しますが全ての鶏ではないのです。中には休産日があり中には完全休産しているからです。
ですから、10000羽のうち1000羽死んでも90%の生産はあり得ません。

ですから家畜を死なせる農場は問題と考える経営者がいるのです。
このためヘンハウス産卵率を見て農場の衛生管理状態を見ている方もいますし、ワクモ問題はヘンデー産卵率では大きな問題として見えるときは、生産量が著しく低下した時しかわかりません。

 

「結果は全てである」よく言われますが、ワクモ対策もまた同じです。


ですから、専門家に相談される方もいますし、養鶏年数の長いベテランに相談し解決策を考えることもありましょう。
いずれであっても、大事なのはどのようにワクモを退治するのかそこに時間とお金をかけることができるのか


そこの覚悟が解決への第一歩になると経験から見て言えることですし、助言して解決に向かった場合は喜びに感じます。


王道がないこの作業であり、いかに向き合えるかがポイントです。

 

最後に、ワクモ根治する作業全てに完全な解決方法は経験から見てありません。


しかし提案するとすれば、
1、水洗は本当に時間をかけて洗い流し、生息数を低減させることを第一に考える。
2、低減できれば、空鶏舎に時間をかけて多めの薬剤を使用し生息場所をなくしていく。
3、導入しても完全に根絶していないことを意識し、巡回し死亡鶏に付着している・巡回時長靴等衣服に付着がある場合は早期に全体を消毒する。
4、ひどくならないように、定期的に散布消毒し目視発見が出来なくても継続する。

これに限ると感じます。


私たち事務所もなるべく労力をおかけしないような方法を現場に即した提案していますが、皆さんも現場に合った方法を見つけて根治しにくい生物であることを第一に考えて頂くと解決できる道が見えてきましょう。

 

私たちの畜産に対する考え方を公開しております。是非ご覧いただき御社にとってなにができるのか考えるきっかけになればと思います。

 

 

 

成鶏更新・空舎延長事業が終了しました 秋相場の展望

9月2日成鶏更新・空舎延長事業が終了しました。
今年は2回発動し年初は大変不安のある出だしでしたが一応一安心です。

9月3日は全サイズの相場価格が10円高となり、秋相場が活況であってほしいと思います。
強制換羽による生産調整を行っていた農場では鶏が回帰してくる時期になるでしょうが、学校給食等大口需要が旺盛であれば安心でしょう。


今年の猛暑は地域によりましょうが、強く影響を受けたところも多かったことでしょう。

しかし、季節は秋に近づいており朝晩はだいぶ過ごしやすい時期になりました。

鶏にとってもストレスが多いこの季節が間もなく終わることはとても良いことです。


さて、その秋相場ですが建設工事が活況である関東は何十万羽の単位で新規導入される鶏舎もあり予断を許さない状況でしょう。


いわゆる固定価格卵出荷が主でしょうが、10割全てが出荷ではないはずです。そのうちの何割かが市場価格を参考とした一般鶏卵として出荷していましょう。
その流通量が多くなると結局相場に左右される事態になるのでしょう。
ですからうちは相場の影響はないと言える農場は多くないはずですし現実です。

 

相場は、加工向けは例年程度の需要でしたので大きく相場が崩れることなく安定した8月でした。小玉が進んだこともあり大玉高にはなりましたが、
例年の相場展開でした。


一般消費者向けでは季節通りのやや弱い需要でしたが、想定の範囲以内なのでしょう。
秋は、3連休が多く外食や中食向けの加工筋引き合いが進むことで安定した相場になるのではないでしょうか。


しかし、昨年もそうでしたが増羽の影響は秋口より最も活況である冬にその影響を及ぼします。


9月は下旬にかけてそれなりの強相場となることでしょう。
依然中食・外食向け需要に頼る鶏卵相場ですが、市場価格の更なる上昇のためには増羽より依然減羽することが大事なのでしょう。


相場は例年12月にかけて上昇するのが一般ですが、昨年12月は上昇から減少に転じ業界内には激震が走りました。
翌1月は例年にない低相場で始まり心配しました。


相場は通常1月が最も安く上昇に転じ6月を境に低下し9月から12月にかけて上昇するパターンが一般的ですがその上昇度が低いことで相場安でご苦労されている状況です。

 

鶏卵は日配品の中でも人気ある商品です。しかし相場が安いということは年中特売しているようなもので価格が安いことにマヒしてしまうことで価格上昇が進むと購入頻度を
下げることにもなり心配です。


日本経済は好景気であるという言葉も聞かれましたが、消費者の財布はきつめであることにはかわりがありません。家族のためや旅行等思い出には消費を惜しまない傾向が続いていることから、外食や中食は今後も好調でしょう。


消費はテーブルエッグと加工の両輪で相場価格が反映されます。そのテーブルエッグを加工向けが比率を上げるのですが、殻付き鶏卵以外にも粉卵等輸入に置き換えることが出来る材料もあります。


足元は円高水準であり、相場が高くなった場合輸入に置き換える商社も出て来ることもありこの点にも注意が必要です。
相場が高いとは3~5年前の相場高ではなく今の価格より10円等過去は通常であった価格でも高いと感じてしまうことです。


すでに豚肉は相場高であって輸入に置き換える販売店が多いことから国産は苦戦気味と言われます。(TPPやETA等の発動)
これと同じことが鶏卵にも起こらなければと思います。

 

相場だけで一喜一憂できなくなりつつある畜産物である鶏卵。
外国相手では有利と言われ続けていましたが、テーブルエッグの比率が下がることは、価格に有利になるものに影響受けやすい中食・外食に左右されることもありましょうが、そもそも加工筋は商社から直接相対価格で買い付けることもあり、相場=加工向け取引価格とならないこともありましょう。

畜産物の価格のあり方が変わりつつある現在。

収入の目安になる相場は、秋から冬に向けてどのように推移するのでしょうか。

鶏卵相場から見える 鶏卵の実情

夏季になり、日本列島は猛暑や台風の報道が多く聞かれます。
その中、夏季といえば鶏卵相場の低調と答えるのは養鶏家の皆さんのお話でしょう。


今年は、年始から鶏卵相場の低調が叫ばれ、成鶏更新・空舎延長事業が発動しています。
鶏卵相場の適正化に効果があるこの制度では、6月30日現在およそ400万羽の早期出荷が発表されています。
10万羽以上の規模農場110件の交付件数で325万羽の出荷があった模様です。


さて、その鶏卵相場ですが夏季は少し変化が見られるようになりました。
夏季特有の大玉高の傾向が見られます。LL、Lサイズが比較的高い値水準になっています。
全農福岡、名古屋ではLLサイズが加重平均180円と上昇が続いています。(大阪は185円、東京は165円)


夏季の鶏は暑さからの影響を受けるため、餌摂取量の減少からサイズの小型化と生産量の減少が起こります。
特にピークを迎える時期の鶏は暑さのストレスと産卵するストレスが重なり生産量が伸び悩むこともあります。

 

一般的に夏季期間中1g~2gの卵重低下をすることも珍しいことではありません。


最近は白色採卵鶏でも小型サイズを中心に産出する傾向が進んでおり平均卵重は61gや62gといった生産を中心にしている施設もありましょう。

 

参考程度ですが、1ロット平均卵重61gの鶏卵のサイズ分布は以下の通りです。

最も多いのはMサイズで48%、MSサイズが25%、Lサイズが23%、LLサイズは2%と言われています。大玉高の恩恵を受けるのは全体の25%程度と推定できます。

もちろん、破損した卵や傷卵・汚れ卵は鶏卵価格が大きく下がりますのでこのような恩恵を受けることができません。

また、夏季はパウンディング(はぁはぁする等過剰呼吸)することで血中のカルシウムが少なくなり、餌からのカルシウムも十分補充できない等により卵殻が薄くなったりして、傷卵等から規格外としてはねだされることもありましょう。

一般論ですが、卵の殻は大きいサイズになるほど薄くなる傾向があります。風船が大きく膨らむと、薄くなる原理と同じで小型卵は卵殻が厚い傾向があります。


さて、大玉高となる要因は暑さからくるサイズの低下が要因にあります。
消費者はサイズの大きい卵を好むことは以前から言われており、MサイズよりLサイズを好みます。
しかし、価格に大きな変動がある時期は安価を求めるため、サイズミックス卵を購入する方もいます。


現在、この時期でも一定の引き合いがあるようですが、6月のスーパーマーケットでの鶏卵の動きは鈍い傾向があります。
まだ需要が強くなる時期でありませんが、鶏卵の小型化が季節要因で進んでいるため大きいサイズの価格上昇が一定程度続くと思われます。


しかし、関東はほかの市場と異なり上昇はあるものの価格に差がついている状況です。
これは生産量が多い地域であり、先ほどのように生産量の減少が相場を押し上げる要因になっていないのが現状でしょう。


全国的に8月6日近辺から大玉高があることから、全国的に猛暑であり卵重減少が進んでいるとみられます。
それ以外のサイズには価格変動がないことから需要があるものの供給が多く価格上昇に至らないと感じます。

 

今後も、暑い日が続くということから、生産量がやや減少があると推察されますが価格を押し上げるかどうかは未知数でしょう。


9月は全般的に相場が上昇する傾向が過去はあります。秋物需要と呼ばれるものですが関東はその恩恵があるか注目されます。


生産量の上昇が需要を上回るのか、餌付けの動向次第でしょうが成鶏農場の新築や改造は多くの現場で見られますし、建設業者やシステム業者は忙しい傾向です。

年末需要に向けてのものかわかりませんが、昨年は西高東低の相場展開でしたので今年はどのように推移するのでしょうか。


成鶏更新事業では廃鶏業者の業務が目一杯と言われます。廃鶏のスケジュールが成り立たなければこの事業に賛同することも難しいと思います。
また廃鶏の食肉が例年に比べ販路が広くないという噂も聞きます。


食鳥相場は低調気味です。この状況でどこまで成鶏の生産調整が進むのか、進んだ分を今工事を行っている施設がどれだけ戻していくのか駆け引きも注目します。