nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。

ビークトリミング 養鶏の未来

養鶏に携る方にとって検討している課題の一つと思います「ビークトリミング」ですが、作業者が少なくなり外部委託をしている方も多いのが現状で、近年は「レーザーでのビークトリミング」が少しづつ普及していると感じます。


今回は、ビークトリミングについて考えて見ます。


まず、なぜビークトリミングするのでしょうか。簡単に説明しますと、
鶏がゲージ等に群で飼養されていると、鶏が尻近辺をつつき、いわゆる「尻つつき」をして、出血させさらにつつくことで、腸などを引き出だし死亡に至ることから、嘴を切ることでそのようなことを防ぐ目的で行うものです。


しかし、鶏種が改良されており、育成中にこのような行為を行う鶏は少なく最近では餌の無駄を省く目的で行うことが一般的でしょう。
無駄とは、先端がとがる嘴で餌を食べるとうまく口に入れられずむしろ、こぼしてしまうことから先端を平たくして、うまく口に入れることが出来るようにする経済的な目的が主な理由といえるのです。


さて、そのビークトリミングの方法ですが、
嘴を先端から数センチ程度垂直に切り落とし上嘴と下嘴を揃えます。この時、上嘴を長く切り残してはいけません。


人間が、熱で嘴を焼き切る方法が主流で、600℃程度の加熱した刃で焼き切ります。(一般的にチェリーレッドの刃色といわれ、色で温度の目安にするのです)
刃が嘴を切り落とした際に数秒(一呼吸程度)刃の熱で止血をしますが、
低い温度で焼き切りますと、出血が止まらず成長不良となる原因を作ります。逆に高すぎる場合は、嘴が火ぶくれた様なこぶを作り餌を食べることが上手に出来ずやはり成長不良になります。このためにも温度調整は必要なのです。

人によりますが、切り落とす際の手の感覚で、温度が高いのか低すぎるのかがわかります。
ですので、作業者は常に切り落とす嘴の状況と過熱している羽の色で温度を確認しながら作業することが重要です。


ですが、この感覚を身につけるには慎重さと几帳面でないと会得できないことから、近年は従業員に教える養鶏家は少なくその技術は養鶏場から姿を消しつつあるように感じます。

 

代わりに「レーザービークトリミング」が普及しつつあり、初生雛の時にくちばしの先端にレーザー照射することで、ある程度の日齢で嘴の先端が取れていくもので、農場での手間がかからずまた、特別なことをしないため普及しつつあります。


これもまだ課題が残っていると言われます。餌付け開始から数日後ある程度の数死亡が見られるというもので、レーザービークトリミングが原因とされています。ですので、手間はかからないがヒヨコを餌付けて最初の4~5日間の死亡数(初期落ち)は人による作業と変わらない程度の死亡が発生する傾向が多くまた、レーザーの場合1羽数円でしょうが、切るための手間賃を支払います。(羽数が多いので結果手間賃が高額になり魅力を感じないことが原因とされます)

切り口は人による作業以上の出来で好評な場合もあれば、捕定の仕方が悪く、下嘴が短く上嘴が長い斜め切りとなるような事例もあります。


人によりますが、人で切ったほうがコストが低く、初期落ちに変わりがないことで導入をしないとする方も多いのです。
他方、ビークトリミングは不要であると考える養鶏家もいて今後アニマルウェルフェアの考え方次第でしょうが、EUのように実施しないということもあるかもしれません。

 

さて、ビークトリミングを自社で行いたいという養鶏家もいます。これは、外部委託先の人員が少ないため短期間で作業を終えることが出来ない又は人手がないことで廃業する等環境が変化していることがあげられます。


また、コスト削減として自社で行うことで外注費を節減できる狙いがあるようで導入する方もいるのです。
しかし、先ほど述べましたがその技術は高いもので、では明日からやりなさいとは言えないのです。


切り口の出来栄えでその鶏の将来が決まるとはいいませんが、鶏が小さくなって鶏卵を生産しないことや、死亡してしまう等経済性にマイナス効果があるため、よほどの裕福な養鶏家でない場合以外、一度やめた技術を復活することはコスト削減につながらず逆の展開に至ることも珍しくありません。


また、この技術を教える方もいないというのも現実あります。このため高度な技術をもつ社員を育成することは大変な苦労があるのです。


ビークトリミングをテーマにお話をしましたが、大事なのは一度失った技術は再度社内に持ち帰れないということです。


真似事はできますが、同じコピーすらできないと断言できます。
それは、教える者が十分な指導力を持っていないことやそもそも技術を有していないことで、真似事はできるがコピーはできないのです。

人材がいないということで、外国人技能実習生に頼るビークトリミングする会社もありましょうが、予後の良しあしはその時に決まるわけでなく、あと4カ月先等で明らかになります。

切ることは誰でもできますが、その切ることに技術があることを理解してい頂きたいと思います。

ビークトリミングをテーマにしてお話をしましたが、近年の養鶏家の一部は、コストに趣を置いてしまうことから、目先のコストは改善できても少しづづ生産性等違う角度から減収になるような問題が発生しているように感じます。

いずれも、人材の理解度が低いことが原因であることが多いように感じます。


本当に将来を心配される養鶏家は4月からの外国人技能実習生受け入れ拡大に期待をしていません。
今の人材を最大限発揮できるように教育に投資をしています。そこの重要性を見いだせないと少しづつ変化に対応できず競争の波にのまれてしまうかもしれません。

 

軽作業が多い畜産業と言われますが、内容を見ますと必ずしもそうではないのです。
その技術を失ったとき、スポットで入る人で用が足りるとは言えない現実が目の前にあるのです。