nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

畜産統計から見る養鶏 7月2日公表版から

農林水産省大臣官房統計部が平成31年2月時点での畜産統計を公表しました。

それによりますと、平成30年の全国での採卵鶏飼養戸数は2200戸で、廃業等により前年比150戸(6.4%)の減少でした。


しかし、飼養羽数は1億8195万羽で、前年比588万羽(3.2%)の増加でした。
うち、成鶏めす(6カ月以上)の飼養羽数1億3903万6000羽で前年比293万羽(2.2%)の増加です。


なお、1戸当たり成鶏飼養羽数は6万3200羽で前年比5300羽の増加です。

 

これらのデータから見えるものを考えて見ます。


2月といえば、成鶏更新・空舎延長事業が発動した日でもあります。(3月31日で終了)
再発動は5月20日から始まり現在も発動しています。


まず、飼養戸数は年々減少が進んでいます。
平成28年は2440戸で1戸当たりの成鶏めす平均飼養羽数は55200羽で、本年2月時点は2200戸、63200羽で8000羽の増加と増加が強い状況です。


飼養羽数規模を見ますと、10万羽以上の飼養をしている戸数が全体の75%と大規模化が進んでおり、次いで1万羽以上5万羽未満が11%となります。
また、小規模(1万羽未満)はあまり減少が見られず、むしろ1万羽以上10万羽未満の規模に減少が見られることから、ただの増羽だけでは市場に立ち向かうに厳しい時代のように見えます。


養鶏にとって好景気であった数年前に規模拡大を考えて増羽したものの、その後のシェア拡大には貢献できず市場価格に左右され、結果減羽又は廃業となる農場もあるようです。


飼養戸数の減少は、農場経営者の減少のみで、生産には影響を及ぼしていません。むしろ、その廃業した施設を活用し既存の第三者が農場名を新たに付けて開業しているだけで、養鶏の現実を数値化しているように見えます。

この流れは今後も続くを思われますし、業界内ではそれが流れ(定め)なのかもしれません。


その結果、規模拡大したもののシェア拡大が見込めなかった農場はこの低鶏卵価によってふるい分けされていく可能性があります。

 

実際、鶏舎の新築・改造は現在も好調のようですから、増羽することで生き残りをかけていく農場はいくつかの確立で事業の見直しを迫られるかもしれません。


しかし、金融機関は特に地銀・信金等地域密着型の銀行は貸出先があることで利益を得ることが出来ますのでしばらくは新規融資・支払い猶予等を行いましょうが、一部地銀等は「回収が見込めない場合は自然淘汰されざるを得ない時代が到来する」とレポートでまとめています。

ですから、この相場安に耐えることが出来ない農場は、場合によりその業界から退場することもあると思われます。

その結果資金力がある大規模農場に事業が移管されるという現在の構図は続くと言えるのです。


増羽だけで自社が生き残るという戦略は大変危険であると同時に何らかの生き残り策を見つけることが急務となると感じます。

 

次に、飼養地域のシェアを見て見ます。
生産戸数が多い県は皆さんご存知の通り、1位茨城、2位鹿児島、3位千葉となります。
それを裏付けるように、生産シェア第1位関東24.5%、第2位九州20.1%、第3位東海15.8%となります。


関東の生産拠点であるシェア第1位では前年比107%増の481万羽が飼養されています。次いで東海103.4%増、九州も100.1%と前年を超えた飼養羽数で生産活動をしています。ですから、今年度は低鶏卵価となる一つの要因といえるのでしょう。

 

では、現在の状況はどうでしょうか。
令和1年5月までの当年のひな餌付け数は全国平均で昨年より95.2%の減少と一見少ないように見えます。


しかし、細部を見ますと茨城は前年比95.8%、千葉98.7%と少ないようですが、群馬110.9%、神奈川109.8%と関東では結果少なくなっていません。

ちなみに関東は全国の30%の生産規模を持っています。


なお、北海道は前年比99%と少ないように見えますが、689万羽の飼養と多い地域です。基本道内で消費される傾向が過去ありましたが今は東北にGPセンターを構えて関東への鶏卵移動を予定していることもあり、
関東の大産地は混戦模様です。

昨年同様市場の価格によって荷物が動きますので、関東は価格が大きく動きませんので変動がある場合、他地域からの産地から鶏卵が運ばれてきて値段が下押しすることもありましょう。

 

現在、季節による不需要期に入っている鶏卵。学校給食が休みになり大口需要が一時休止されます。夏休み・盆休み等で中食等加工向け需要があることを期待したいのですが、加工向けは動くのか気になるところです。

 

一部の問屋は需要が鈍いため鶏卵の受け入れに頭を抱えているところもあると聞きます。

実際受け入れしてもストック場に保管するのが精いっぱいで排出先を探すのに苦労してると聞きます。

実際養鶏場からも鶏卵を入れる容器の稼働が鈍く荷動きが弱いと感じるといいます。

特に今年は早い段階からこのような状況が続いており、今後が心配というものです。


今年は冷夏になると言われますが、他方梅雨明けは冷夏にならないという予報もあり分かりにくい状況です。天候は外食やレジャーの動向に左右される要因ですので鶏卵も他人事でありません。


また夏休み中の天候も見通しにくい状況です。晴天が多ければ外食向け等に期待が出来ますが分かりずらいようです。
今後も、動向に注視したいと思います。