nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鶏卵相場から見える 鶏卵の実情

夏季になり、日本列島は猛暑や台風の報道が多く聞かれます。
その中、夏季といえば鶏卵相場の低調と答えるのは養鶏家の皆さんのお話でしょう。


今年は、年始から鶏卵相場の低調が叫ばれ、成鶏更新・空舎延長事業が発動しています。
鶏卵相場の適正化に効果があるこの制度では、6月30日現在およそ400万羽の早期出荷が発表されています。
10万羽以上の規模農場110件の交付件数で325万羽の出荷があった模様です。


さて、その鶏卵相場ですが夏季は少し変化が見られるようになりました。
夏季特有の大玉高の傾向が見られます。LL、Lサイズが比較的高い値水準になっています。
全農福岡、名古屋ではLLサイズが加重平均180円と上昇が続いています。(大阪は185円、東京は165円)


夏季の鶏は暑さからの影響を受けるため、餌摂取量の減少からサイズの小型化と生産量の減少が起こります。
特にピークを迎える時期の鶏は暑さのストレスと産卵するストレスが重なり生産量が伸び悩むこともあります。

 

一般的に夏季期間中1g~2gの卵重低下をすることも珍しいことではありません。


最近は白色採卵鶏でも小型サイズを中心に産出する傾向が進んでおり平均卵重は61gや62gといった生産を中心にしている施設もありましょう。

 

参考程度ですが、1ロット平均卵重61gの鶏卵のサイズ分布は以下の通りです。

最も多いのはMサイズで48%、MSサイズが25%、Lサイズが23%、LLサイズは2%と言われています。大玉高の恩恵を受けるのは全体の25%程度と推定できます。

もちろん、破損した卵や傷卵・汚れ卵は鶏卵価格が大きく下がりますのでこのような恩恵を受けることができません。

また、夏季はパウンディング(はぁはぁする等過剰呼吸)することで血中のカルシウムが少なくなり、餌からのカルシウムも十分補充できない等により卵殻が薄くなったりして、傷卵等から規格外としてはねだされることもありましょう。

一般論ですが、卵の殻は大きいサイズになるほど薄くなる傾向があります。風船が大きく膨らむと、薄くなる原理と同じで小型卵は卵殻が厚い傾向があります。


さて、大玉高となる要因は暑さからくるサイズの低下が要因にあります。
消費者はサイズの大きい卵を好むことは以前から言われており、MサイズよりLサイズを好みます。
しかし、価格に大きな変動がある時期は安価を求めるため、サイズミックス卵を購入する方もいます。


現在、この時期でも一定の引き合いがあるようですが、6月のスーパーマーケットでの鶏卵の動きは鈍い傾向があります。
まだ需要が強くなる時期でありませんが、鶏卵の小型化が季節要因で進んでいるため大きいサイズの価格上昇が一定程度続くと思われます。


しかし、関東はほかの市場と異なり上昇はあるものの価格に差がついている状況です。
これは生産量が多い地域であり、先ほどのように生産量の減少が相場を押し上げる要因になっていないのが現状でしょう。


全国的に8月6日近辺から大玉高があることから、全国的に猛暑であり卵重減少が進んでいるとみられます。
それ以外のサイズには価格変動がないことから需要があるものの供給が多く価格上昇に至らないと感じます。

 

今後も、暑い日が続くということから、生産量がやや減少があると推察されますが価格を押し上げるかどうかは未知数でしょう。


9月は全般的に相場が上昇する傾向が過去はあります。秋物需要と呼ばれるものですが関東はその恩恵があるか注目されます。


生産量の上昇が需要を上回るのか、餌付けの動向次第でしょうが成鶏農場の新築や改造は多くの現場で見られますし、建設業者やシステム業者は忙しい傾向です。

年末需要に向けてのものかわかりませんが、昨年は西高東低の相場展開でしたので今年はどのように推移するのでしょうか。


成鶏更新事業では廃鶏業者の業務が目一杯と言われます。廃鶏のスケジュールが成り立たなければこの事業に賛同することも難しいと思います。
また廃鶏の食肉が例年に比べ販路が広くないという噂も聞きます。


食鳥相場は低調気味です。この状況でどこまで成鶏の生産調整が進むのか、進んだ分を今工事を行っている施設がどれだけ戻していくのか駆け引きも注目します。