nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。

産卵率が上昇しない時に確認したいこと 養鶏の基本

今年は台風による畜産被害が甚大になっており、養鶏のお客様より産卵率が上昇しない等家畜の変調についてご相談をいただくことが多くなりました。


多くは、病気によるものというより生産農場の設備、管理技法、災害からの復旧過程での鶏のストレス等家畜の影響があげられます。
実際農場を拝見し鶏、鶏舎、データ、管理方法をお伺いし指導員の経験を踏まえてアドバイスさせていただいております。

 

鶏の変調は獣医師にご相談いただくことも大事ですが小規模の農場で獣医師に知り合いがない場合等は家畜衛生保健所への相談をお勧めしております。


しかし、鶏を見ている経験者ではない場合が多く病理鑑定が中心となる助言が多く、依頼側からすると知りたいことに答えていないと少し不満を感じることもあるようです。


現在、病気による鑑定がぴったりとあてはまることは少なくなりました。

農場常在感染もありますが、複合感染といわれる事例が多く特定しにくいといいます。


しかし、何らかの原因で生産量が下がるということは病気によることもありますのでこのような鑑定は重要です。

病気によるもの、管理によるものと合わせて考えることが大事なのです。


その管理によるものを探す方がほとんどいないと言うのが実情です。

多くは経営者の経験で判断し満足できる答えでなくてもそのまま放置したり、知り合いの経験者を呼び見てもらう等をされているのでしょう。


そんな中、経験のあるアドバイザーがいる私たちを知っていただくのかもしれません。


鶏はストレスに弱い動物です。

安定した生産が出来るよう改良が進んでいますので些細な変化で生産量が下がることは生産現場の方は肌で感じることも多いでしょう。


多くの方は異常と感じた場合、数値の変化から感じることも多いはずです。しかし例えば生産量が下がる数値が現れたということは、その日急激に変化したのか、予兆が他の数値で明らかになっていたのか分けて考えて見る必要があります。


今日お話したい「確認したいこと」とは、農場によりましょうが多くある数値からどのように確認し、いち早く異常を察知するのかご指導している際によくお話する内容をお伝えします。

 

1、なにが異常と感じるのか
まず、異常と感じたのは何の数値から発見したのでしょうか。産卵率、摂取量、斃死の数、飲水量、気温、鶏の仕草、体重の増減、卵重の増減、鶏舎の環境と少し考えるだけでもこれだけデータが存在します。もちろんそれ以外の数値もあり重要な場合もありましょう。


それは農場によりデータは異なり、そこを気付く方がいるのかどうかで早期発見と早期対応できるのか分かれ道となるのでしょう。


見つけ出したデータ1つで原因究明はできないことが多いことに注意をしてください。


例えば産卵が上がらない又は下がった場合、それ単体が主因で発生したことではなく、付随してなってしまったと考えなければなりません。

例えば餌を食べなければ栄養不足となり少しずつ産卵を下げていきますし、上げ基調の時期は押し上げることが出来ず停滞となります。


ですから、合わせて餌の摂取はどうなのか確認しなければなりません。


そして、餌も影響あるとした場合、水はどうなのか?、明かりはどうなのか?、そもそもエサ配餌量は適正なのか。

温度が高すぎて餌を食べないのか、体重が著しく小さい場合、性成熟が開始されていない遅れた鶏なのか等これだけ多岐に渡ります。


その変化を知るためには鶏を観察して状況を整理しなければなりませんが、観察眼がなければ鶏は元気ですで終わり原因を見つける機会を逃します。


このため先に鶏を見て異常と感じる方も多く、すぐに鶏舎内の確認やデータの収集を行い対策を講じていきます。

多くは経験がそれを裏付けるのですが「科学的でない」という理由で一蹴する方も多く、そのような農場ほど逆に理由が見つけられずなんだかわからないけど仕方ないと言う考えが先行し結果何もしていないと言う状況が多いと感じます。
生産性に不満があると言う「ないものねだり」というに近い状況にいる方もいます。


では、異常と感じた感覚又は数値を読み取りそれはいつから始まったのか、さかのぼりしてみましょう。

 

2、さかのぼりをして起点を見つける
多くは、少しづつ変化をしてある日生産量に現れるということが多く、今日産卵率が5%下がったぞ異常だ異常だというのもある意味正しいのでしょうが実際は予兆があってそれが引き金になっていることもあります。


餌の摂取量が低下していることで3日後から産卵の低下が現れた事象ということもありましょう。

あるいは、ピークが終わり下降期にいる鶏群に餌摂取量が多くなり14日くらいで産卵低下が顕著に表れたということもありましょう。
さかのぼりを見ていつ頃変調があるのか確認しましょう。

 

3、起点に何があったのか推定しましょう
データは結果です。ですからその底にある真実を示しているわけではありません。そこを探すのが管理者の腕の見せ所です。


先ほどの通り、変調はさかのぼりにより起点が特定できることもあります。その起点には何があったのでしょうか記録を拾い読みしてみましょう。


例えば、餌摂取量が少なくなったとすれば「気温が高くなった」「給水量が少なくなった」「工事が敷地内にあり騒音や振動が多かった」「外部業者の立ち入りがあり鶏が終日騒いでいた」等記録に記載があることで特定できること多いのです。


例えば、農場内に常在感染があれば日齢情報から感染しやすい時期と推察も可能でしょうし、このような場合過去の生産量記録から同じ状況であることもありえましょう。

 

4、起点が見つからない場合
多くは少しづつ変化があることで異常が表面化することが多いのですが、緊急性が高い場合その日突然に表れることもあります。

この場合に多く見られる、断水していること、鶏舎の温度が異常に高い等鶏にとって強い危険が訪れていることが多いと言えます。


鶏舎や鶏の仕草を見て見ましょう。ピックやニップルを激しくつついている場合は断水していることがすぐにわかります。(多くの鶏がつつく音を立てているのでわかるはずです)


温度が高い場合は、鶏舎温度でわかるでしょうがパウンディングしている等の仕草を観察するとわかります。最悪斃死しますから温度異常の場合は要注意です。
このように前日まで異常と見られないものの明らかに今日がおかしい場合は今日の管理内容を確認してみましょう。

 

5、数値記録は結果であり、振り返りには重要である
その日の結果を記録として機械や紙台帳に記入していきます。記録は後に活用することで初めて記録した価値があります。記載した日は記録して良かったと感じることはないでしょう。
しかし、振り返るときには記憶では思い出せないことも多々あり、記録されていることで、その日の作業内容では異常として感じていたメモ書き等があれば、その時は異常と認識していなくても実は異常の始まりだったと後で感じることもあります。


このように後から注意すべき事例となったら、その時の意識では異常を察知できなかったと新しく自身の基準にすればよいのです。


振り返りと言いますが、あの時こうすればと後悔することが振り返りではありません。

起こった事実は変えられませんので、次回同じことをしないためにも振り返りをするのです。


振り返りをするためには、記録をきちんととることが必須です。欠けた記録は欲しい情報が漏れていることもあります。


私自身も経験がありますが、機材の故障で数日記録できなくてやむなしという意識で記録していた時期がありました。
しかし、なんだか生産量が右肩下がりとなり、今のように振り返りを始めたときこの時期のデータが重要であったという悔しい気持ちがありました。軽い気持ちが油断を招き後で苦労すると言う典型的な失敗例です。


どうか皆さんも同じようになりませんよう機材故障は早いうちに解決しましょう。

 

6、PDCAサイクルを意識しましょう
よく言われるPDCAサイクルですが、考える方は無意識に回しています。私も仕事柄回すのですがこの意識を持つことが重要です。原因が分からなければ何が原因か(c)、その対策はどうすればよいか(a)、その方法を策定(p)、そして実行(d)となります。

 

これが出来る管理者の農場は察知力が高く対処が早い傾向が多いと感じます。
しかし多くはそのような管理者がいないと言うのが実情です。農場では育成できる環境がもうほとんどない状況かもしれません。実際多くの農場ではコンピュータが入力数値から異常と表示するシステム等を導入し、異常とした原因を探りに歩くことが多いことでしょう。


今後は種鶏メーカーのマニュアル管理である程度の生産性を求めるような時代になるかもしれません。

コストを削減するために餌の配餌量を工夫したり栄養価を下げることで飼料代金を節約したりとしていきますが、多くはうまくいかず本来の鶏の能力を引き出すことが出来ず、生産性に欠け卵重の増加で規格外卵やB級卵(壊れ卵等)になり収益を結果悪化させてしまいます。

良く管理できるような人材がいれば変化を見て助言したり配合変化を修正したりと傷口を広げる前に手を打つことが出来るはずです。


しかし、先の通りそのような管理力を有する経験者は少なくなっており今後はこのような技術伝承は途絶えると見ています。


今後は生産母体数を増やすことで生産量を維持する方向で進むと思われます。(例えば10万羽9万個の生産で90%のヘンデー産卵を、100万羽で80万個の生産で80%のヘンデー産卵であっても個数は80万個と多いので出荷として良いという考え)


技術伝承はその農場の今後を占う意味で大切なことですが、すでに時代は外国人技能実習生の労働力を投入しなければ成り立たないという農場も多いはずです。


その期間が長くなるほど伝承は途絶えていき、自社では一工夫も何もまずは生産量をあげることに注力しなければなりませんし、餌をあげれば解決というわけにもいかない養鶏業です。それだけでは卵重の問題もありましょうし、それに伴う斃死の問題もありえましょう。ですからノウハウはないよりあったほうが良いのです。無駄な労力をかけなくても対処療法があるからです。


今日お話したことは、一昔前までは普通に行われていた技法です。

しかしこれ以外にも難解な事例はいくつもあるはずです。その問題にどう向き合い生産量を確保するのか、そこが生き残れるのか一つの目安になるのかもしれません。

 

私たちは、社員研修を通じてこの大切な技術伝承をお伝えしております。