謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
本年もよろしくお願いいたします。
さて、2020年は養鶏にとってどのような年になるのでしょうか。
鶏卵相場は2019年1月の初市はM基準値は100円で始まり驚いた年明けでした。その後低推移で相場は進み人件費が捻出できるか心配されたことでしょう。
その後夏になり台風等災害が発生し相場高になり12月は相場変動はなかったものの一息つけるような相場でした。
今年2020年の初市は6日になります。昨年のような初値にはならないというのが多くの見方ですがどうでしょうか。
今回は、養鶏管理の基本の失敗編として私自身が失敗したこと、多くのお客様から伺った失敗事例を何回かに分けてご紹介します。
失敗から学ぶものは多く、失敗は成功の基とも言います。
しかし無理に失敗するのも危険ですし、知識があればわざわざ同じことをしなくてもよいでしょう。
そのような期待を込めて、失敗編をお届けいたします。
育すうの管理はどのようなものでしょうか。
多くの養鶏家の皆さんは自社育すうを完備し成鶏まで管理されているところもありましょう。
その中、育雛の部門に配属された方からよく伺う失敗例を今回取り上げます。
恐らく、同じ担当の方から見ればその通り、あるあると言われそうですがこのような失敗をわざわざ公表する方もいません。
しかし多くの方と言ってはいけませんが、それなりの方は経験した失敗例があると思います。
これから学ぶ若い方や外国人技能実習生が主体となり担当させる場合には良い教材ににもなるはずです。
育すうは成長をさせる場所です。
小さく数十グラムのヒヨコは本当にかわいいものです。
しかし10日、15日と経過すると黄色のヒヨコはもはや白色となり体重も何倍も大きくなり成長していると感じます。
成長に合わせてピックラインの高さが変わるはずです。
多くの方々は経験からベストな高さを見つけるのですが、慣れない方や意識がない方は高すぎて水が飲めない環境を作ったりして気づくまで何日も経過してしまうということもありましょう。
実際、高すぎて失敗したという声も伺いますし、私自身も失敗した経験があります。
では、そのベストな高さとは何でしょうか。
農場によりましょうが、一般的にヒヨコの目線とピックの先端部が同じ高さが良いとされます。
水を認識しやすく、成長がばらついていても遅い鶏にも飲めるチャンスを与えます。
首を伸ばして飲水するというのが成鶏では一般的です。
しかしヒヨコはそれもできますが、個体差が成鶏以上に大きいためなるべく均等にチャンスを与える必要があります。
少し前は、小さい個体を小さい個体専用ゲージに収容しばらつきをなくすという手法もありました。しかし何千、何万の中からそのような個体を抽出するのも大変です。
ですから、多くは小さいにしても生命が維持する飲水には注意を払いチャンスを与えます。
これが、おろそかになると高すぎて水が飲めない個体が発生し衰弱したり、成長に遅れが生じ淘汰したりしなければなりません。
成鶏舎へ移動できた鶏はそのような境遇に耐えた又はそのような環境にさせなかった努力結果により、鶏群でばらつきが小さくなっていることにより可能にしているのです。
体重が軽くなり、肉眼でも小さいと感じることが出来ます。
特に成鶏と異なり数日飲水できないことで斃死することはないはずです。
多くは、元気をなくし、日齢が進むと首の後ろを逆立てて不調である感じを出します。
これが分かればよいのですが、分からないとそのまま斃死し、ひどいとゲージ内で何羽も同時発生します。
ピックは列単位で設置されていますので、多くはその列単位で最悪被害が出ます。
昔はそこまで重篤化しませんでしたが近年は担当者の経験が伝承されないこと、外国人技能実習生が主体となることでそれが異常と認識されず見逃すこともあるようで、このような相談をいただくこともあります。
懐かしく伺うのですが、農場長や経営者からすれば懐かしく思う暇あれば対策を示せと言われてしましますが、先ほどお話しました通り目線とピックは同じ高さにするという意識を持つと改善が見込めます。
実際、高いより低いほうが被害が少ないというのもあります。
私の失敗で恐縮ですが、高くするワイヤーが切断してしまい数日放置してしまったことがありました。鶏は胴体と同じ高さになったピックでも首をすぼめて飲んでいる姿を見て安心した記憶があります。
飲みづらいでしょうが、飲めないということではないようで安心した記憶があります。
当然上司から後日怒られたのはいうまでもありません。
また、水が飲めない鶏はピックの前にいることはなく、常に人がいるゲージの前にいることが多くなります。しかも逃げる行動が遅いという特性もあります。
動けないというのが本音でしょうし、元気な鶏が人を見て奥に隠れる等動作もできないほどなのかもしれません。
このような鶏がいる場合で、点在しているときはピックの高さを念のため確認します。
育すうは、日齢と共に成長していきます。水の高さは成鶏と異なり高さを変えていきます。しかし、そのベストの高さは今お話したことが一番でしょうがそれをわかるような知識と観察力は必要です。
また、育すう期は点灯も下げていくことが多いと思います。下げることで来るべき成鶏期に光線管理を行うために実施しなければなりません。
多くは7日毎に一定時間行うのでしょうが、意外と忘れる管理者が多いと言えます。
それ以前に点灯タイマーそのものが大きくズレているにも気づかないという方もいます。
ウインドレス鶏舎ですから、人がいる時間が点灯していなければ異常と感じるでしょうが、そうでない場合忘れていることに気づくこともないという事例もあります。
気付くこと、異常を察知する能力がないと後になって大変です。
水・エサ・空気は養鶏管理の基本ですが、光も育成期は重要です。忘れたことで後から3時間、4時間一気に下げたという農場もありました。大きな異常にならないと思いますがそれを心配する無駄な心労も無意味でしょう。
そもそもそれを察知できるように教えていれば問題なかったのですから。
教えていても、気づけなければ同じ問題に突き当たります。
管理は簡単といえばその通りですがそれは正常が前提です。
異常を誘発する管理ではいつも危険が伴います。
それを回避できるすべをもっているのか、そうでなく偶然を期待するのか。
そう考えると、昔の言葉ではありませんが「バカの鳥養」といわれるような産業でないことが分かります。
今後、気づける方はごく一部の方々になるかもしれません。
多くは指示通りの管理が中心で異常を察知できるかわかりにくいようにも感じます。
その気付く機会をどのように提供でき、共有化できるのかそれが失敗しない確かな管理につながるのかもしれません。
鶏の管理は30日後その結果が出ると、私自身当時の先輩から言われました。
育成期は、判断する材料が少なく、餌量・水の量・体重・斃死・糞の量や状態・減耗等少ない情報から予測し組み立てるため技量が必要で、結果として明らかになるのは30日後なのだと。
失敗は5日もあればわかる。しかしわかったときは時すでに遅しなのだと。
何か、怖いなと感じながら管理をしていたころを思い出します。
しかし、その怖いを忘れると、初歩を忘れ慣れからくる怠慢に変わります。
人にとって毎日同じ管理でも、鶏には1日1日は違うのだといつも心に留めていたことをいつもお話しています。
失敗は成功の基と先ほど言いました。
しかし、失敗したことによる損失はそのような言葉で片付けることはできません。あくまでも次のロットに対して言える言葉だからです。
毎日が真剣勝負ではありませんが、今お話したような失敗を悔いるような管理をしないことを意識するのが重要でしょう。
新年早々失敗を題材に困ったことかもしれませんが、1つ知識を持ち気づいたことがあればそれは、最高のお年玉になるはずです。