nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

品質維持向上するには農場HACCPが有効です

暑い夏で鶏たちも大変つらい時期になりました。

鶏卵の重量が小さくなり鶏卵相場も大玉高となり一部市場の小玉は下落となり生産状況が相場に現れています。


生産重量は収入に直結するため事態を把握されている農場も多いと思います。

しかしこの時期は鶏卵にとって品質保持が難しい時期でもあります。


昨年8月は千葉県で腐敗卵がスーパーで販売され消費者より販売店を通じて苦情がありました。


自社パッキングが主流となった時代、検卵技術が十分でない場合不良卵のはじき出しが甘いことから市場へ流通することもある一例です。
また9月には同じ千葉県でも過少重量のパック卵が市場へ流通し消費者より苦情があり回収となった事例もあります。


夏は、生産重量が少なくなります。

農場や気象環境によりますが、1個1gや2,3g小さくなることもありましょう。


サイズは6グラム刻みのクラス分けですが、一般的に1クラス変化することも珍しいことではありません。
LサイズであればMサイズが主流になるということもありましょう。
但しすべてが1クラス移動ではなく、そのうちの30~60%が移動ということであり、多くの割合が移動するという意味です。


さて、今お話したように鶏卵の品質保持はパッキングに頼ることも大事ですが、できることであれば農場で不良卵の排除ができるようなシステムを構築することで、2重の安全対策が講じられ品質への信頼が高まります。


私たちは、認証取得商売のように見えるかもしれませんが根底は品質保持による生産物への安全と安心をご提供しております。


養鶏事業は星の数ほどある農場のうち品質や重量違反が発生するのほんの一部です。
残留薬剤残存による品質回収事案もあり、ただ鶏を飼育し卵を回収し売り上げるだけという時代ではないことが分かります。


その中には、鶏病対策もありその中で薬剤残存があり県の検査等で発覚し告知され回収ということもあります。
昔と違い薬剤への関心が薄い場合事故に発展する事例でもあります。


食品という観点で鶏卵生産活動を見ないと、主体は鶏なので関心が薄くなりますが生産工程の中で人が危害を与えていることがわかります。


鶏卵回収の事例はあまり報じられることはありません。

回収した大変なこと、その後の経営再開のご苦労は報じることはありません。
ですから、発生農場への興味はありますが自社では昨日まで発生がないことから関心が薄くなりやすく又発生確率も低いこともありその大事さが伝わりにくいと感じます。


ブログでもいくつか回収する大変なこと、納品の打ち切り、廃業を決断されたこと等その大変さをお伝えしています。


しかし、自社で発生がない場合中々分かりにくいのかもしれません。

しかし品質管理の不備は消費者まで不良品が流れた場合重大な事例になります。


例えば、9月の過少重量の事案では、2日間出荷分計3800パックが東京や千葉県の販売店から回収しなければならないことになりました。

出荷パックのほとんどに重量に満たないものが混入しパッケージ化されたとしています。


8月の品質不良についても5000パックが回収対象になります。

もしかすると1パックのみの不良卵混入の可能性もありましょうが、外見から判断するのは困難であり、なにより品質失墜状況で他は安全であり販売可能とはなりませんし、何より販売店が納得できないため該当出荷日全てが回収対象になるのです。


そのような状況に陥る可能性がありますが、1日そんな少ない数出荷してないので影響がないという方もいましょう。


しかし、1日数千パックが安定して出荷していたそのうち1つが停止になるとその過剰分はどこに行くのでしょう。
相場基準の出荷先があると答えることでしょう。

そうであれば今後相場に左右される経営になるという不安が付きまといます。
それより、その後再出荷できるのでしょうか。

相手はそれを望んでいましょうか。


代替品が多くあるこの業界ではどうしても御社の製品でなければ困るということは今の時代あるのでしょうか。

 

そう考えた場合事故が出る可能性を未然に防ぐほうが、いらない心配をするより安定した経営が出来るのではないでしょうか。


では、品質維持するにはどうすればよいのでしょうか。


それは「仕組みを作る」に限ります。


今までは、特に仕組みはなく事故はなかったというのが本音です。

仕組みがなければ行き当たりばったりとなり、今日明日1週間程度は品質保持の作業はできますが多くは自然消滅します。つまり仕組みがないので忘れたり、安全であり作業不要と認識したり、めんどくさいことからやらないということもありましょう。


実際多くは今の3つのいずれか又は全部が理由になることが多いと言えます。

 

農場HACCPはシステムを構築し今のような品質維持を大事と考えた場合それにあった作業方法を構築します。

つまり仕組みを構築します。


仕組みができれば、作業をしますので作業をしたことについて記録をさせます。
記録があり、事故が発生した場合はその内容を精査し次に生かし同じことを繰り返させないことを認識します。


三者にも、仕組みがあり記録をしており事故発生は起きていませんと説明しやすくなります。


ただ、昔から事故はないですよという説明より説得力があります。


衛生管理対策に重点を置いた農場HACCPは、認証による利益拡大を狙う人たちには理解が得られていないのが実情です。

実際、目に見える収益拡大に貢献していないというお声もいただきます。

費用ばかりかかり費用対効果から見ても意味を持たないというご指摘もあります。


現実、認証を取得していない農場の製品は昔から実施しているシステムが良好なので事故として見えないことが現状でありその解釈は間違いではありません。


しかし、時代や作業者の質が変化していることは現実です。

これにより作業が伝承されなくなったり、作業者や管理者の質が変わり衛生について理解が薄くなり、効率重視や手間ある作業の廃止からおろそかになり昨日まで事故なくても今日発生してしまったということもあります。


実際事故が起きてしまった農場の多くはいい加減な作業ではありません。
むしろ、今のように考えの薄くなったことが少しづつ農場の衛生管理レベルを下げていて気付かないうちに事故を呼ぶような環境に変化していたというのが実情です。


それはどの農場でも当てはまるはずです。

それは、少しづつ変化することには気づくことが難しく、通常の管理に影響なく日々無事に過ごしていきます。

しかし一定の管理レベル分岐点を超えると少しづつほつれが発生し事故として現れます。発生したところで異常として初めて認識されバタバタとしてしまうのが多くの実情ですし現実なのでしょう。


考えることの大事さはブログにも書きましたが、常に考えることができなければ農場の生産ではなく、衛生管理の低下、結果病気や寄生虫の発生の誘発とコントロールが出来ないという形で現れ、薬剤により残存事故や品質低下する工程が発生し除去できず消費者へ渡してしまうという最悪の展開に至ります。


そのことで、生産量に現れたり出荷先の減少という一番の関心事にあてはまってしまいます。


ですから、農場HACCPが完ぺきとは言いませんが考える力を作業者に与えて事故の防止に一翼を担ってもらうわけです。
認証ですから、第三者の基準を満たす必要もあり、認証費用も掛かります。


その時間やお金がもったいないという方もいますし、その解釈は農場規模や従事者の力量によっては間違いではありません。


しかし、安全を維持するには偶然に期待するのもリスクはあります。

確率は低いのでお金を投じることに無駄を感じることもありましょう。


ですが、発生したときは甚大な損害があります。

 

品質に関すること以外にもあります。
それは鶏インフルエンザもあります。
農場HACCPには飼養衛生管理基準が法規制の根底にあります。

この基準は飼養管理する方全てが実行する決まりです。
しかし、100%完ぺきという方は多くはありません。基準のうちいずれかが不備を指摘された方もいましょう。


病気の発生を防ぐ、農場に広げない、農場外に持ち出さないという考えがあるこの基準に適合できるように農場の仕組みを考えると対策効果が大きくなります。
それでも完全ではありませんが、出来る限りの対策を講じているのは事実ですし行政機関も理解をしますし万一発生した際の負担金や助成金の満額支払いを受ける条件にも
あてはまります。


ですから、認証で商売繁盛とは言えませんが、今の経営に安定した安心をプラスできるのです。
それが、品質維持に貢献し結果商売が繁盛し長い年月安泰となるのでしょう。

 

まだ暑さが残ります。

品質に不安が多くなるこの時期安心して乗り切るためにも農場HACCPの取得を考えても良いのではないでしょうか。