nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鶏インフルエンザが発生していますので、出来るだけの防疫措置を取り家きんを守りましょう

香川県では、鶏インフルエンザの発生が続き20日時点で7例での感染が確認されました。高病原性でH5亜型の斃死が多いタイプです。


国内での感染は2年ぶりとなり近年にはなく早い感染となっています。


渡り鳥では、同型ウイルスが北海道での検知もあり、野鳥が運び人間や動物が家きんの近くまで運び発症するとも言われますが、そのメカニズムは不明です。


香川県での発生では、最初の1例目と2例目は異なる市で発生し直線でも40㎞離れており接点がない状況でした。

以降3例目以降は同じ市内で移動制限区域内での発生で近隣農場は大変心配されていることと思います。


感染した鶏の鶏卵は食べたとしても人への感染はないとされており、人への被害はないと言われます。


しかし、家きんは感染を広げない観点から、高病原性鳥インフルエンザではその鶏群を殺処分しなければなりません。

近年は養鶏場の規模が大きくなり農場での飼養羽数は大きくなる傾向があります。


最初の養鶏場では33万羽が飼養されており殺処分されました。

今回の発生例も80万羽は殺処分されると言われ大変な被害が発生していることが分かります。

 

感染経路が解明できないウイルスなのですが、見えないため消毒したり、家きんの近くまで消毒して持ち込ませないような対策が重要と言われます。


報道映像の通り、昔ながらの平屋建て(いわゆる高床式鶏舎のオープン鶏舎)の古い鶏舎構造物でないことが分かります。


近年はウインドレス鶏舎が主流となり窓や換気口から野鳥が入り汚染させるような印象はなく、人や小動物が媒介している可能性が高いことがわかり、疫学調査でも鶏舎構造(金網が破損し野鳥が侵入する簡易鶏舎による被害)によるものより、人が鶏舎入り口での消毒が十分でないことや、小動物が侵入している形跡から間接的に感染源を侵入させている可能性を指摘しているように見えます。


養鶏作業に従事されている方には必須の衛生対策を指摘されるわけですが、そのすべてを防ぎ侵入を防止することは大変な困難と、作業者の慢心を抑える自己意識が必要になります。


多くの農場では、鶏舎ごとに長靴や衣服を交換するというところは多くはないと思います。

種鶏農場の大規模的な施設は衛生対策は大変意識が高いこともあり率先して実行していることもありましょうが、採卵農場では一部を除いて実施しているところはないと思います。


農場内は同一の履物を使用するのが一般的であり、鶏舎の入り口で消毒して入室するのが一般的でしょうし、現実ではないでしょうか。


それで発生がない農場もありますから、その差は僅かなのか運の良しあしなのかはわかりませんが、紙一重であることは分かります。

 

また、ねずみや侵入動物多くは猫もありましょうが、その個所を点検し巣等を破壊し壁面等の補修をされるところも多いと思いますが、一部の農場では誤った認識もあり、
巣の破壊はネズミの活動範囲を広げるだけ(巣にいたねずみが違うところに移動し巣を作り結果広げるだけ)であり破損せず、周辺に殺鼠剤の散布で十分と布教するコンサルタントもいます。


しかし、殺鼠剤は活動がなくなるまで実行し続けなければねずみの駆除はできず、結果作業効率・手間から作業がおろそかになり、知らない間に実施せず薬剤耐性を持ったねずみができたり、被害箇所が多くなったりと良いところが多くなく、むしろ失敗に終わるというのが実情に感じます。


また、従事者の間でも手柄(社長賞を狙うがごときの)を狙い、その辺のネット記事から出来るかもしれないような参考にならない情報を引用し実施するところも見られ、
その多くはその記事の本質や注目点まで読み取れず、結果失敗し被害が拡大するという事例もあり、この問題点の本質まで理解している方が意外と多くないことがわかります。


このような緊急事態に本題に沿った行動が出来る農場と、そうでない農場の差が分かり、それがひいては生産性や組織の優劣があることが観察する者からすると分かります。


鶏インフルエンザが発生すると、その農場の鶏は拡散防止の観点から殺処分になることは養鶏家皆さん知っていることです。


しかし、移動制限がかかり鶏卵や鶏の移動に制約がかかり広い範囲に影響を及ぼすことまで考える農場はそう多くはありません。


天災であり仕方ない。

国が決めたことであり従うのが道理という方もいましょう。


しかし、十分な対策を講じて発生したものは天災と呼べましょうが、管理が十分でない事例ではむしろ人災となることもあります。


管理の十分・不十分は農場の意識や組織の能力によりその差は生まれ、気づくこともありません。


通常管理では不自由していないからというのが本音であり、その変化まで読み取れるような人材もいないというのがその農場の本音かもしれません。

 

しかし、発生を防ぐことを意識した農場運営ができるかどうかは、緊急時に初めて力量がどこまであったのかが分かります。


鶏インフルエンザ発生農場への風当たりは以前に比べ和らいでいるように感じ、発生悪と言われるような時代ではなくなりました。


誰もが感染してしまう可能性が浸透したことによると感じますが、それに乗じてそれなり管理で過ごしている農場もあるかもしれません。


施設を良くすることは視覚から見ても解り、努力している・建物が綺麗・そうでないところは分かりますが、農場内の衛生管理までは見えません。


飼養衛生管理基準の徹底を各家畜保健衛生所から通達されていますが、保健所のニュースに目を通す方がどれだけいるのか、それが分かるだけでも農場の衛生意識の高低は分かります。

 

農場経営者は無収入になるリスクと近隣との関係等を意識し衛生意識は従事者以上に高いことと思いますが、従業員が同じであるかはわかりません。

それは、無収入になるリスクは分からないからです。


ですから、現場を動かす方の意識が高くない場合は今お話したように設備は良くても(ウインドレスで侵入リスクが小さい可能性がある建物)必ずしも、防ぐことが出来るのかは別物であるということを改めて考える機会になるかもしれません。

 

石灰散布も重要で農場よってはこまめに散布されているところもありましょう。


しかし、よく見ますと重要なところには散布されていないところも見られ、その作業は何が目的で、どのようにリスクを低減できるのかという視点がない作業者もいます。


ですが、一面が雪景色になることからよくやっている。

自分は仕事しているという自己満足になっている方もおり、発生がない場合はよくやったと片付けられますが、そうでない場合は、その作業が無駄であるということになります。


石灰も重要です。鶏舎への立ち入りも重要。しかし野生動物侵入防止策も重要。


見えないものですから、すべてが重要でありどれかが欠けると紙一重で感染もありえます。

何しろ見えないウイルスだからです。


農場へ入れない、農場で広げない、農場から持ち出さないという視点で考えて見ると何が重要で、どのように防ぐ策が構築できるのかヒラメキがあるかもしれません。


大事な家きんを守ることは、大事な収入を守ることになり、大事な人材も守ります。


衛生管理は管理者の大事な仕事です。

その指示も大事なことです。


それが分かるように、どのように守るのかその方法まで良く説明できる人材が皆さんの農場にどれだけいるのか。


冬はこれから訪れます。

発生の長期化や広範囲への拡大も心配されます。


近隣は消毒の徹底に着手しており、これからの季節に向けての対策を強化しています。


関東のような大規模産地では発生は大きな損失につながります。


近年は農場の大規模化が進んでいます。

ウインドレス鶏舎により管理者の人員が少なくできるメリットもあり大きく進めているところも多い現実から、
発生時の損害は10万羽、30万羽、50万羽と桁違いに多くなる可能性もあります。


過去は、通報を遅らせたり、検体採取妨害をしたりして発覚を免れるようなこともありました。
いずれも殺処分という大損害を回避したいという思惑があるからと推測できますが、罰則もあり企業公表、関係者の訴追、殺処分後の補償金等の減額や不支給というペナルティーを受けることで、目先の数百万円の時価損害を大きく超える損害を受け、信用低下もあり販路の縮小や撤退もありえます。

 

感染メカニズムはまだ解明されておらず、野鳥から何等の方法により農場へウイルスがたどり着き、家きんへ感染し高病原性であれば斃死が増加し、異常を検知するという流れです。

 

大変な冬になる可能性もあります。

 

他人事のようにとらえるのか、自社農場はどうなのか点検する良い機会でもあります。


発生もなくこのまま穏やかな新年を迎えるのか、全国農場の対策と意識の持続が大事になるのかもしれません。