nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

採卵鶏の飼養状況 2020年農林業センサス結果を読む

農林水産省が4月末発表した昨年2月1日時点で採卵鶏を150羽以上を飼養している農家数は3010経営体で減少傾向が続いています。


逆に飼養羽数は増加が進んでいる状況で総飼養羽数1億7416万羽でした。


飼養羽数の上位3県は例年と同じ顔合わせになりましたが、順位が変わります。
1位千葉県、2位茨城県、3位鹿児島県と千葉県が1位となりました。
千葉県の飼養羽数は1336万羽、2位茨城県は1240万羽、3位鹿児島県は1002万羽となります。


生産地シェアは関東地方が全体の約27%、次いで九州地方の15%、東北地方12%となります。以降は東海地方、中国、北陸と続きます。

昨年の2月ですから、今の状況と少し異なります。


昨年2月最初の鶏卵相場M基準値(東京)180円で始まり家庭需要が旺盛になる時期でした。2月末日は192円になり12円高となりました。
1月の初値は160円で、春先にかけて上昇を続けていきます。


この時期から春先は新型コロナウイルスによる影響が外食から家庭需要が中心となり
夏まで相場は良い状況でした。

しかし夏以降東京オリパラの延期、供給過剰が顕著になり相場は下がります。その後冬以降本年3月まで鳥インフルエンザによる被害が九州から始まり西日本地域まで広がりますが、供給過剰から昨年末まで相場への影響はありませんでした。


その結果年平均相場価格は前年比2円安171円となり、2016年より5年間見ても最も低い年平均額となりました。


これもあり9月には実情に合った供給をお願いする日本養鶏協会の告知もありました。

そんな中の情報になりますので、まず供給が過剰になりうる飼養羽数であることが分かります。


現在の相場高は鳥インフルエンザによる供給の減少(全国で約980万羽の被害)があることで、本年最初より強い相場展開になります。

 

さて今回のデータから見える飼養羽数の状況ですが、
まず生産者の寡占化が現在も進んでいることがわかります。


少し前にもお話しましたが、現在の養鶏家は小規模生産者より何万羽も飼養する生産者が過半数以上を占めている現状が更に進んでいることが今回のデータからも見えました。


皆さんの周りにもあることでしょうが、近くの○○農場経営者が変わり、中堅規模の△△ファームが経営していて鶏舎の建て替えをしているとか、
餌メーカーがその農場を経営しているとか、
□□農場が昨年で経営を終了していて鶏舎が空いているというのもあるかもしれません。

 

昨年も結果的には相場が良いとは言い切れない年でもあり、資金力から大変厳しい農場もありました。
その要因を示していたのが先ほどのデータになります。


この飼養羽数は、少なくともこの量まで餌付けて生産できることを意味しています。


しかし、現実は増羽を進めている農場もありますし、新築や改築受注も多くで見られますのでこの数値以上に増えることも可能性としてあります。

ですから、今は生産体制の不安から相場が高くても、今この瞬間 鳥インフルエンザによる被害を受けた農場が再稼働を進めていることから、
夏や秋にはデータと同じにはならないにも、その8割、9割まで回復すると言うのは非現実的な話ではありません。


現実九州地方は回復が見られています。

千葉県では再開を進めている農場もありますので、いつまでも生産量が少ないということはないようです。


1月の餌付けは全国的に少ない傾向であったとされますが、3月以降は鳥インフルエンザによる影響はなくなり相場高もあることから増加に転じる可能性があります。
鳥インフルエンザによる影響があった地域でも導入餌付けが遅延するだけで、餌付け計画そのものが停止したわけではありません。


多くは、幼雛を移動できないため他地域の育成業者へ委託する、中雛を委託管理し大びなを導入する等計画そのものを白紙にしているところは逆に珍しいと見えます。
国のインフル助成制度もありますのでただ単に導入時期が遅くなるだけで、ヒヨコを急遽発生してもらい、急いで成長させてから導入(編入)ということは私自身見たことがありません。

 

相場は西日本が比較的東日本と比べ安くなり「西安東高」でいつもの逆です。
生産量が多い通常の「西高東安」でないということは、主要産地関東の影響が大きいということです。

 

ですが結局はまた供給過剰感から相場展開が2019年のように低い価格で採算が合わないということもありえて毎年のように成鶏更新・空舎延長事業が発令され、誰かが賛同して相場の回復を願うということもあり得る話になります。


新型コロナウイルスによる経済影響が治まれば、すべて回復と言う感じはないように見えます。


すでに、鶏卵需要先外食や酒類を提供する店舗は大きな影響を受けました。

倒産した業種で多いのが飲食業です。
ついで、宿泊等観光をすることで、食事や土産物等の原料消費を期待できる観光業も倒産した業種で多いのも特徴です。
この不随産業の交通も深刻で移動から滞在や食事まで広い産業が影響を受けています。


また、産業によっては好不況がわかれており K字型回復と表現する人もいます。
このことはその業種で働く方、輸出等に引き合いがない産業の賃金や生活設計に大きな変化を与えています。


国内の状況を見ると、生活保護受給世帯が増加しており、完全失業率も上昇がないから安泰ではなく、国の政策で有償の自宅待機等雇用調整助成金による予備軍的様相もあるように見えます。
このような状況が一気に解決に向かうのかは不透明です。


まもなく1年遅れの東京オリパラが開催されるようですが、すでに外国人観光客は今のところ観戦できないことで入国する必要性がなくなりました。
つまり今お話した産業が好転する可能性が大変低い状況です。


既にアメリカのように日本の旅行に慎重な判断を求める状況でもあることから、ワクチン接種は急務ではありますがあと2カ月もありません。
コロナによる収入に変化がないと答えた約70%の方々が消費を牽引していただかない限り経済は少しづつ悪化していくのは避けられません。既に30%近くは所得が減ったと答え世帯により影響が出ています。


それは、畜産物であっても価格を第1に考える消費者が増えていくことになります。


鶏卵の消費はこれから夏までは一般的に家庭消費は減少します。

外食も昨年に比べれば良いほうですが、既に店舗の統廃合を進めていたりと納品先が細くなっている可能性もあり外食も安泰ともいえません。

昨年に比べ良いは比較になりません。

それ以前と比較してどうなのかという視点で見ないと、多くは前年比2倍、3倍、10倍増しと答えることでしょう。
昨年の異常事態と比較することにあまり意味を持ちません。

 

テイクアウトが良いと盛んに報道されますが、鶏卵は半熟であれば保存状態により品質に不安もあります。
ですから、すべてがテイクアウトに鶏卵とも言えませんし、飲食販売店も品質劣化による店舗の信用低下も心配になります。


現在、相場高で大変な好景気という方が多いと思います。
全農の配合飼料は6月4~6月は高い金額ではありますが、まだ最高飼料価格に到達したとは言えない状況と言えます。
今後トウモロコシや大豆は先物を見る限り3月よりも現在の方が価格が高いことから、価格転嫁があると見られます。
為替相場は米ドルは1月104円でしたが5月は109円ですからだいぶ円安が進みました。これも為替による価格転嫁の要因になります。
コンテナ運賃も高止まりしており、現状維持は難しいデータがそろいます。
今後の価格情報に十分注意してください。

 

生産体制が増加している現実から、施設を廃止する農場はまずないことは業界にいる方は分かると思います。
施設は動かしてナンボだからです。
経営者の体力、資金力が尽きたとき、違う業主体がその施設を買上げ増羽していくと言う現実。
ただ闇雲に増羽して有利な販路が見つからない農場もあることでしょう。
また外食等に向けての生産を増強しこのコロナによる販路縮小に苦労されているところもありましょう。

 

農場経営はただ鶏がいて卵があれば安泰と言えなくなりました。


このような経済状況や供給状況により「昨日までの安泰が不安に変わる」そう話す経営者もいます。


相場に左右される経営は好景気には有利です。

ただ毎日安定して高い収入が入ります。通帳に0がいっぱいの現金が転がり込むのでしょう。
しかし、安い状況では、餌代も賄えないという話もよく聞きます。
だからこそ、テーブルエッグに1個でも多く自社の鶏卵を供給するそして販路先をガッチリ確保する。
そんな今までの当たり前の経営戦略だけでは安泰といえるのか、不透明な時代でもあります。


今回このようなデータが示されると言うのは、増やすことで何とか販路をつなぎとめる、そして他社より優位に立つ
そんな思いが織り込まれているようにも見えました。