nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

代替卵が開発されました 時代に合わせた商品が誕生しました

日本経済新聞6月10日付にキューピーが卵を使用しない卵商品を開発したと報じました。


大豆を原料とした「スクランブルエッグ」を下旬から販売するというもので、鶏卵の代替品となります。
業務用として宿泊業や飲食店を対象に従来の商品の3倍価格で販売する想定で、一般向けも検討しているというものです。

 

さて、代替畜産物といえば肉類を大豆等植物由来を使用したハンバーグやパティーがあると思います。
近年は健康志向から肉類を食さない方や環境から畜産物を遠慮する方もいて時代は、肉と言えば畜産物由来と言えないようになりました。


家畜の成長過程で多くの二酸化炭素の排出があることを懸念する方や世界的考えもあり、時代は環境を意識し考えるようになりました。
またアレルギーの観点から卵を使用しないことは、様々の方々に新しい飲食の世界を広げることにもなり、必ずしも代替品が誕生したことによるネガティブな印象を持つことはありません。

 

畜産に携る方は分かることですが、家畜を飼養するということは、多くの水や餌を使用します。
水は衛生的な飲用水を使用するのですが、世界を見ますと安心して飲める水がある国は世界で15か国しないとWHOが報告しており、世界22億人の方々は安心できる水を得ることができないと警鐘を鳴らしています。


餌も同じで、日本は家畜の飼料の多くを輸入に頼るのが実情です。


トウモロコシは日本でも生産されます。

しかし多くは人が食する目的で家畜に与える飼料はほとんどありません。
近隣の畑で生産されるトウモロコシは市場へ納品され最終的に消費者が購入します。「採れたてモロコシ」です。
ですから家畜の餌として供給を目的としていません。

 

一部は自社の畑で生産し自家配合飼料として使用していますが大変少ない事例です。


参考までに、カロリーベースで見た食料自給率では鶏卵は11%となります。
餌の多くは輸入コーンや大豆等があります。

コーンは世界的需要があり食用の他、飼料として、燃料としても需要があり先物では投機筋が世界状況を見て資金を投入することもあり、実需と異なる価格になることも珍しいことではありません。


コーンの成長過程では二酸化炭素の吸収を行っていることから、燃焼する際に発生する二酸化炭素はコーンが吸収していたものが排出されると考えられており、地球上の二酸化炭素を増やす要因でないという考えから、これがバイオ燃料として有用であるという根拠になり、積極的に使用すべきと考えている国があります。

 

このため食用に転用されるべきコーンが燃料用として使用されることから、
市場価格は生産地の状況や消費動向から値段が大きく変動し直近は相場が高い状況が続いています。
消費が増える時多くは農地を開拓したりします。

その際森林等が伐採され、二酸化炭素の吸収が減ることで温暖化が進むと考える方からすれば、畜産物に大量の飼料として使用することに心配を感じる方もいます。


それを、代替品を利用することで二酸化炭素の排出を抑制しようと考える方もいるわけです。
また、排せつ物の分解過程の排出を心配したり、牛ではゲップによる排出を問題視したりと、畜産物の生産過程での温暖化対応に懸念を示す方もいます。


鶏卵ではありませんが、牛等畜産物には多くの現地の水を消費し成長し輸入してきます。先ほどの飲用水の問題はこの点を懸念しています。
自国で生産していないので生産国の水や餌や使用し、現地で二酸化炭素を排出して輸入されることの問題を提起しているのも事実です。


鶏卵は、飼料の自給率は11%で餌のほとんどは輸入で成立しています。

 

しかし鶏卵の生産はほぼ100%近くは国産です。

水は自国の物を使用していますので世界的な水不足に懸念を与えるものではありません。

 

このような環境意識の高まりにより代替品が誕生し、健康意識からタンパク質を肉類から積極的に摂取することから、低カロリーの植物由来を使用することで健康を持続するという流れが進んでいる中で、時代が求める商品が誕生しています。


肉類は味、風味、見た目はだいぶ本物に近づいたとされます。

鶏卵の代替品もこれと同じで本物に近づけていると言えます。
どちらも開発費用もあり市場が小さいことから割高ではありますが、一定の需要はあるとされますし、あるからこそ開発し販売されるわけです。

 

今後鶏卵の代替品は、ホテルでは特に高価格帯の宿泊施設では導入されると思われます。
それは、様々なお客様にご提供することから必須となると感じるからです。


飲食店も同様で他店との差別化、アレルギーをお持ちの方への配慮、そして時代からそれを求める方々と様々な目的やシーンで活用されると感じます。

 

但し、当面は価格での折り合いから急激な普及はないと思われ、鶏卵相場への影響はほぼないと言えます。


しかし、鶏卵の価格が著しく高いという仕入れ価格次第では必ずしも影響はないとは言えません。
一定の需要に相場価格での折り合いもあります。


味が違うから消費者は選ばないと考える方もいますが、先ほどのように一定の需要は容易に想定できます。
そして、味が著しく違うということはないと言えます。

商品に大きく「大豆由来品」ですとか、「卵のようですが、卵は使用していません」等但し書きがなければ感じないという方が多いと言えます。
開発時の多くは味、見た目は大事にしているからです。

 

急激なシェア拡大はないにしろ、鶏卵を常日頃ご愛用頂いている消費者の方々に本物はおいしい、「安全であり家族と食卓のそばにある商品でありたい」そのことを広げることが大事になります。

 

新しい時代は始まりました。

世界は消費に限らず、環境も意識した時代でもあります。
自社ブランド卵をもっと知っていただき、多くのお客様と出会い、リピーターであるよう努力していくことも頭の片隅に置いて、皆様と共に努力してまいります。