nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

消費者の動向 毎日食べる鶏卵の実情

暑い夏、その中を鶏卵を買い求める消費者の皆さんと、暑いこの時期鶏の体調を気にする生産者、皆さんそれぞれの夏を過ごされていることと思います。

ご存知の通り鶏卵はこの時期にしては高い相場展開と販売価格が続きます。


相場は毎週月曜日(又は翌市場開催日)には下押しする相場展開ではありますが、例年に比べ高い状況には変わりません。
しかし高いことの恩恵もありますが、出費も多くなっているのも事実でしょう。


その代表が飼料価格で4期続いての値上げが続いており、全農の場合は9月までは今の価格が続きます。
利益の半分が飼料代金というのは少しづつ昔の話になりつつあります。
今では6割もしかして7割を占めるというのもあることでしょう。

そして電力代も設備により最大になるところもありましょう。


現在の多くはウインドレス鶏舎ですから換気、配餌、集糞装置全てが電気により作動します。
概ね1年を通じて一定になる傾向が多い(季節による緩急動力運転が少なく一定速度でモーター等が動くため)ので、電力費を下げるというのはとても大変です。


また高温になりやすい地域は地下水を汲み上げ活用した、冷水シャワーを空気取り入れ口に流し、少しでも涼しい風を鶏に与える方もいましょう。

 

その時代であっても、セミウインドレス、高床式鶏舎もあり、そのような設備では、いかに風を鶏たちに与えることで何とか暑い夏を乗り越えようとご努力されていることと思います。


その代表が、大型ファンになりますが、これもまた電力費が高くなるアイテムです。


何しろ、大型の扇風機で暑い時間だけ運転と言っても日中の他夜間深夜まで暑さが続くというのもあります。
そうなると1日中運転し停止できるのは深夜から早朝までの短時間のみで、翌月の請求が高額で・・
請求予定額を見たとき、外気温より自身がよく冷えるという寒くなる話も聞きます。

 

さて、今日は業界の話ではなく日々消費している方々の動向を、ファイナンシャルフィールドの記事と私どもの販売調査と合わせて見て見ましょう。

 

まず、私どもの販売調査から見える今の状況をご説明しましょう。
会員の皆様には定期的に販売調査の状況をご説明していますが、本日はその一部になりますがご紹介します。


私どもの販売調査は大手流通業と地方販売店の実勢販売と仕入れを調査し、生産地域と販売店の傾向、購買層とその値段、購入頻度を調査し消費の今を紹介しています。


まず販売価格と購入頻度ですが、春と今の夏を見ますと、だいぶ状況が変わります。


春は原料卵が少ないことで、入荷不安が生じそして数量制限が発生し欠品も生じ価格が高いというもので、報道も多く取り上げられるような状況でした。
町のケーキ屋さんが困るという話、町の店舗も毎週仕入れ価格が上昇しコストが吸収できないという話、消費者も高いと感じるという話もありました。


その中、相場高もあり実勢価格は毎週や隔週1パック10円や15円の上昇となり、1月は1パック160円前後の価格は4月190円台、5月220円台と相場高に比例し高くなりました。


7月も価格に変化はなく、20個入り等まとめパック卵を扱う大手倉庫店も380円台から420円台と大手倉庫店も1カ月間にプライスカードの書き換えが見られました。


価格転嫁は比較的スムーズに進んだものと見られ、販売店から価格転嫁に関する不満は聞かれませんでした。
価格転嫁に消極的な店舗は、昨年あたりから多く見ることは少なく、他食品の値上げが続いており引き上げしにくい環境ではないと見えます。


消費者も値上げという報道に敏感ではあるものの受け入れるような状況で、食品値上げ報道が多い経済状況に一定の理解があります。

 

しかし、鶏卵を選ぶ第1位は価格であることから、スーパー等比較的安価な店舗からの購入をしている選別が進んでいます。


この背景には、販売店の特売セールが控えることで、安く買える鶏卵から少しでも安く買う鶏卵と消費者の心理が変化したことが大きいと思われます。


安い物という消費者心理に変化はないものの、特売100円の鶏卵から190円、220円と価格転嫁が進んだと言えます。


また、10個入りが高いのでやや割安の6個入りを購入する消費者が増えると言うわけでなく、必要な個数を購入する傾向に変化がないというのも注目されます。


なお、所得が高い世帯はこれ以外に高級価格帯10個400円台、500円台、それ以上の価格帯を購入する世帯も減少する傾向は見られませんでした。


このことから、多くは価格を意識するが必需品であるため買い控えするのではなく安いところを探し購入をするが、所得が高い世帯では美味しさ、珍しさ、高級感を感じる
等付加価値を追い求めている傾向も見られ今も続いているように見えます。

 

では、記事はどのように紹介しているのでしょうか。
1、消費者が鶏卵価格差をどう見ているのか
1パックの鶏卵販売価格が高くなったと感じるのが56.2%と答えました。
意外でしたが、価格変化を感じないが42.6%と高い数字でした。

1個当たりの価格は数円の変化ですが、10個20個とまとめて購入する商品のため数十円の価格変動が生じます。
ですので、高く感じるという傾向が多くなるのですが、変化を感じないと答えた4割の方々は変動しにくいブランド卵を日々購入されていたのでしょうか。
このブランド卵(生産者シリーズや、ビタミン等添加品を鶏に与えた特殊卵)は取引価格が予め決められているため大きく価格改定をすることが少なく一定になります。

 

2、鶏卵を選ぶ基準は何でしょうか。複数回答で尋ねた結果
価格を重視するという方が、61.2%と最も多く、私どもの調査と同じです。
次いで、味が56.2%、鮮度51.5%と5割台が続きます。
その次には、大きさ39.7%、特売やタイムセールが23.9%となりました。


鶏卵は、長い時代安く買える食品でした。

ですから安いのが普通で高いと違和感を感じるということでしょう。


それを見越した、タイムセールや特売は店舗の集客の目玉で、一昔は家族総出で買い出しして1パック1名様限りに対応した方も多かったと思います。
その後1家族1パック限りと制限するのが多くなり、家族で別会計して入手するということもありました。
その後、1000円購入時1パック100円といった対策もあり、消費者と販売店の攻防も見られた風物詩でしたが、価格高騰で特売そのものを取りやめている店舗が多くなりました。


一部ではそれが集客過密を呼ぶことで、できないという事情も聞かれます。

 

サイズに期待する消費者が少なくなっていたのが特に印象的です。
この調査ではサイズを選ぶに39%と4割程度で上位4番目であったということで、
少しづつ大きい鶏卵がお得であるという消費者心理に変化がみられている可能性があるように感じます。


大きいLサイズの目玉焼きが良いという声が一昔前にはよく聞かれました。Mサイズや、MSサイズの鶏卵で作る目玉焼きは小さくお得感がないという時代がありました。
ですが、時代は変わり一定のニーズはあるものの消費者はサイズより価格が選定基準になっているという現実が見えるようです。

 

鮮度を重視する方が5割で私どもの販売調査でも価格に次いで2番目に多い項目です。


最近は、手前どり(商品を手前から手にしてもらう農林水産省が推奨する名称)を推奨している時代ですが、店舗も賞味期限がばらつく傾向はだいぶ少なくなり同一期限のみ陳列と弊所調査では見えます。


売店も一定数の発注をして売り切ることで、食品のロスを意識している表れと見られています。

一昔前の大量に仕入れ消費者から欠品という信用低下を意識する時代から、フードロスを少なくすることが、結果消費者から信頼されるという時代の変化があると見られ、今後も続くと思われます。

 

3、鶏卵の食べる頻度はどれくらい
最も多いのは週1~3日で30.3%と多く、
次いで、週の半分27.5%、毎日27.2%となります。

 

弊所調査でも毎日から週2~3日が多いので、概ね調査の範囲と同じでした。


コレステロールが高く健康に・・という誤った印象が多かった食品ですが、子供から全ての方々が好きな食品のうち鶏卵は上位にいます。


このこともあり、鶏卵を多く消費し安価な食品という不動の地位を築いたわけですが、食べる頻度は週の半分から2~3日に1回が卵料理として消費されるという流れは変わりません。


これは、家庭消費がそれだけ安泰であることの裏付けでもあります。


中食や加工向けも調査や統計からも順調で、恐らく多くの消費者は家庭で、中食で、加工品の中で鶏卵を消費してくださっている現実から、今後も消費動向に大きく減少させることはないでしょう。


ですが、消費人口次第で消費の延べ量が少なくなる可能性は否定できません。


昨年、日本養鶏協会の鶏卵の需要と供給予測には人口減少による消費量の低下が危惧される予測を示しています。
供給と需要のアンバランスが価格動向に大きな影響を与えるとしており、頻度が変わらない中にいかに消費する場面を作れるのかが課題になりそうです。

 

このように、鶏卵を消費する方々は価格を重視していますが、安いもの以外を購入しないというより、安い物を探し週1~3日の頻度で卵を消費しています。

記事を見ると、購入者5割は標準的な鶏卵(いわゆる産地・農場を表記しない国産鶏卵)を購入し、4割の方はブランド卵を購入していると見ることもできます。


また、味、鮮度を意識していますが、鮮度は採卵して数日には店舗に並ぶのが標準となり、賞味期限を記載することがメジャーになり鮮度選定基準になりました。
大きいサイズ等好みのサイズを選ぶ傾向は続いていますが、以前に比べ重要度が低くなりつつある可能性というのもあります。


弊所調査では見えることがなかったもので、私どもにも新しい視点を見つけたように感じました。


生産し販売するだけでなく、消費者は何に関心を持ちそれに合わせた生産が可能になるのか。
その歯車がかみ合ったとき新しい需要と供給が生まれるのかもしれません。