nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鶏卵の未来 卵の消費はどうなるのか、作り手はどうか

9月は相場の転換期といわれます。

夏の消費低迷から上向きがある時期とされ、家庭消費、外食等加工向け消費が上向き始め年末まで続くのが通年のことです。


外食向けは2019年ほどでないものの外食店舗に鶏卵を採用したメニューを実施する取り上げをしています。
月見○○やお月見○○といった商品を様々な店舗で見るようになりました。

売り上げが伸びたファーストフードは広告をよく見ますが、ファミリーレストランなどは広告で行うより特番での取り上げも散見され、売り上げに影響を受けた産業ほど広告を打つようなものを見る感じがありません。


テレビ側の製作コスト削減と取材側の商品紹介や味対決等を絡めた商品紹介というもので、放映側の利害が一致しているように見えます。


今日は鶏卵の消費動向と生産者側の未来について考えて見ます。


9月は多くの方は相場上昇を予測されていると思います。

例年9月東京M基準値は相場上昇し8月と比べ12円程度の上昇が見られます。
月平均は227円、月末価格は235円程度となるのですが、連休明け9月21日は215円となり、先週金曜日に比べ保合となりました。


8月に比べ需要が高まりましたので、上昇こそないですが下げ止まりと見ることができそうです。
来週以降の相場に注目したいところです。


消費動向を見ますと、一定の需要がある現在、消費者が購入する頻度は増えてきています。残暑はありますが猛暑と呼べるような状況でもなく消費減退を防いでいます。


朝夕は涼しい日も多くなり、食の変化も見られます。

暑いからパンや冷麺から米を消費し卵も使用する。

夕食はもう少し温度が下がりますと家庭での温かい食事に鶏卵、おでんというのもあります。

家庭消費が伸びる頃年末の加工向け仕入れが始まり相場は需要動向に左右されながら上昇していきます。

鶏卵消費の5割(現在は5.2割程度)は家庭消費向けで食事やお弁当といったご家庭での消費向けになり2019年以降上昇があり高水準で推移しています。


小売鶏卵価格は上昇し平均価格は228円になります。(鶏卵10個入り1パックのサイズミックス価格)

228円を超える販売値は2018年1月以来の235円になります。(2017年12月の相場が平均234円の影響)


今後も小売販売価格は下がる要因が見られず、鶏卵相場は2017年の9月から12月の相場高になると予測していますので、販売価格は2017年のように年末から年始まで上昇し235円前後の推移が予測されます。
また、鶏卵価格上昇による購買意欲は減退することはなく価格転嫁はスムーズに進むと考えています。


加工向けは外食が今後の経済状況消費者心理等の影響を受けます。


9月末までの予定で緊急事態宣言が発令されています。

最大消費地東京は新規感染者数が減少傾向になり、いよいよ出口が見え始めているのかもしれません。
首都圏の周辺観光地はこのシルバーウイークは訪問客が多かったとされ、消費が回復し始めているようにも見えます。


ですが、観光や付随する産業(交通、土産物、地域の食材提供先)や外食産業の回復がまだ十分ではなく、観光業のうち宿泊業は大変深刻な状況です。
宿泊業は素泊まり、朝食のみ、2食付き等食事を提供する・しないがあります。

このうち畜産物の消費に貢献するのが食事つき特に夕食が提供される場合です。


夕食は宿泊単価が高くそれだけ良い食材を提供する傾向があります。

多くは国産の畜産物(肉類)に付け合わせ等に鶏卵という場合が多く、地域の食材と共に宿泊客に提供されます。


鶏卵は朝食にもよく登場しスクランブルエッグ、オムレツ、生卵、温泉卵もあるでしょう。


高級施設の場合は地元産の鶏卵を使用することが多く、それ以外では問屋から購入する大手商社の加工済鶏卵を購入する傾向が多くこれも国産で相場値に影響します。
宿泊者が多いほど食材も多く消費されますので、宿泊先が大口になるのも頷けます。
また宿泊する場合でも、日帰りでも観光地での飲食が行われますので、食材が消費されます。そして土産物の原料(○○に行ってきましたクッキー等)に鶏卵が使用されます。
これも加工向け原料を使用しますので観光地が盛況であれば消費も増えるのです。


宿泊がある場合は多くはその地域の観光地に長く滞在します。

ということは消費する機会が増えてくれるということでもあります。
ですから宿泊は畜産業のみならず周辺経済に大きな影響を与えるのです。

 

このように観光は鶏卵や畜産物の消費に大きく寄与する産業の1つなのですが宿泊業は大変な状況になりつつあります。
鉄道は前年度の決算はJRや私鉄が大幅な赤字でした。

本年も一部私鉄を除き赤字決算を見通しています。
観光需要やビジネス需要のある新幹線も臨時列車の設定を取りやめたところもあり需要が回復しないことを想定しています。
航空業も同様で減便を実施しており回復を見通していないのも実情です。

 

高速道路も大規模渋滞も散見されず、コロナだから鉄道を避けて自動車での観光地訪問にシフトしているとも言えません。
シルバーウイーク20日夕方に上り線で渋滞が散見されたと報じますが、例年より渋滞距離は短めです。
道路の割引がない、外出を控えた等要因ありますが、多くの人々が移動し消費行動をされていますが、まだ様子見をしている消費者もかなりいると感じます。

外食産業はファーストフードを除き売上げ高と客単価が減少しています。

ファミリーレストランでは来店者が少なくなって売り上げが伸びきれないという状況で、鶏卵の需要があるにしても大きく貢献していない可能性もあります。

ファーストフードの場合は契約農家が多いはずですので市場に寄与するようなことでもありません。


居酒屋等酒類を提供する店舗は大きく影響を受けました。

畜産物の消費に貢献する産業ですが既に2019年より前から影響を受け始め2021年まで影響が続いています。
鶏肉や鶏卵が良く消費される業態でもあります。


現在鶏肉は小売価格が上昇しています。

それは消費が影響しているとも言えますが、多くは輸入品の仕入れが影響しています。
タイではコロナの影響もあり冷凍鶏肉の供給が停止や減少すると8月から言われ供給不足分を国産に切り替えている状況とされいることが要因と見られます。
タイ産の鶏肉や加工品は中旬以降の再開とされていますが、まだ見通しできない状況です。
なお、ブラジル産の鶏肉が9月以降順調に入荷されるもののタイ産の減少を補うほどではないとされ不透明でもあります。

 

大手マヨネーズメーカーは皆さんの業界から総生産量の鶏卵1割を購入する最大のお客様です。
原料の仕入れのあり方についてコメントもしており、今後数ありきの仕入れではなく良い製品のための仕入れにしていきたいという従来とはまた違う世界を作る発言あります。

サラダとたまごのリーディングカンパニーを目指して進んでいるように、良い製品は良い原料からしか生まれないという社の考えをさらに推進していくのでしょう。
このことも意識しなければなりません。

 

卵があれば買い取ってもらい安泰であるということもありましょうが、大事なのは良い製品をこちらも作り続ける意識を持ち続けることが大事になります。
ただ昔からそうであるからという常識にとらわれず、自社製品を磨き目に留まる製品にしていく発想が今後必要になるということです。


お世話になった方への恩義を大切にするという創業からの教えに私たちもこたえなければなりません。

 

今後の卵はどのように消費し生産されていくのか。
生産量は今後も増えていくことは皆さんも感じることでしょう。

それは飼養農家数が減少しても1農家の生産羽数が増加している事実があるからです。


農家の規模拡大が今後も進み規模が大きいほど販路先が開拓できることで(相手先の納品量に十分対応できる生産能力)有利になりやすいという状況になるのです。


しかし、消費者は今後少なくなっていきます。

日本の人口が減少しておりこれが少なくともあと最低数十年続きます。その後は少ないながらも一定に近づくとされ、小規模の商になります。


消費量は今より減少し、今と同じ年間消費量で計算しても2030年には269万トンで2019年比で6万トンの減少が試算されます。
これが人口減少と共に増えていきます。


家庭消費は今後も堅調に進んで行きますが人口減少と共に総量は減少していきます。
中食は増え続けていきますが、外食は減少していく可能性が高く試算以上の減少も予測できます。


観光地への消費も鈍くなり観光地向け消費も減少に転じます。

アフターコロナ次第ですが外国人観光客が多く来日しないと産業として衰退する懸念があります。その場合更なる減少が見込まれます。


どのシナリオである場合でも家庭消費だけでは今の供給量を維持できる消費が難しいため、国の政策や観光と言った副産物に期待しなければなりません。

 

生産量は先ほどの通り供給は農家数が少なくても増加していきますので日本養鶏協会では増羽が続くと試算しています。
2030年には年間273万トンになる見込みとしています。(相場高になる場合多くは増羽し更なる増収を目指すためと言われます)
2019年と比較すると3%程度増加していると見込まれます。


なお、世界的な傾向にあるアニマルウェルフェアが浸透する可能性もあり、この場合総餌付け羽数は減少する可能性もあります。
飼養形態が変わり、バタリーゲージからの転換が国の政策でなく消費者側特に販売店からの要望が強くなる場合にはその改造に手当てができず廃業する農場も一定数あると予測できます。


中堅より大きい農場では転換が進み、販路の維持ができますがその中でも品質や何らかの差別化が発生しふるい分けがなされると感じます。

生産者側にも雇用の影響が現れ人の確保に苦労されると推察されます。
生産も集約化できたところからこの先数十年まで安泰に生産活動ができましょうが、人口減少により生産量の調整や雇用確保や維持が困難になります。


既に多くの農場は外国人技能実習生を雇用されています。

コストは安く作業に最適と考える方が多いと思いますが、この先も安泰化は国力や賃金によります。
今はコロナによる入国制限等もありますが、本来は潤沢に人が入国し労働をします。しかし近年の日本以外の外国人労働者を受け入れる国は多くなり又日本と異なり労働しやすい環境を整えています。
諸外国でも賃金は上昇しており、日本が清潔な国で安全でお金持ちという時代ではありません。


人の資源は有限であり、条件次第で他国に流れます。

日本は人気な国で安泰と言うわけではありません。

 

実習生の質を問われるような事例も散見されます。
既に犯罪に関しては過去になく深刻化しています。多くは相手国の問題ではなく個人の質の問題と言えます。
皆さんも感じましょうが、現地で採用面接される際依然と比べ質を意識されてみていますでしょうか。
国によりますが、日本が最大の仕事先と考える人が多いと言うわけではありません。
年齢基準を超えており仕方なく農業を選ぶ、第1候補先が不採用になり日本を選ぶ、希望仕事先が条件に合わずに日本を選ぶ、とりあえず手短にお金を稼ぐと言った理由が多くはありませんか。
日本で働きたい、過ごしたいと感じる方が以前とは違うということも考慮しなければなりません。

 

多くは3年働けば入国までに必要な資金を返済し相応のお金を持ち帰国します。

試験を受けて延長してまで働く方は多くはないのでしょうか。
5年まで雇用できますが多くは3年で終了している傾向が多いと感じます。

理由を考えるとこの先の人の課題も見えてくることでしょう。

 

質も深刻で、少し前の家畜盗難と不法に解体しコミュニティ内で販売する行為や農業では研修生同士のけんかによる犯罪、周辺住民への暴力事件や失踪。


ただ労働者があれば良いという安易さが後々大変な状況に陥るように見えます。


人がいないということは魅力がないということで、どのように改善するのかもはや忘れてしまった農場も近年はよく見ます。
「外人は真面目に働く日本人はいらない」と言い切る農場責任者もいます。


すでに日本人側もこのような産業に関心を持たれていない傾向があります。

他産業と同程度の給与体系が増えましたが、なかなか畜産が良いと言い切る方も多くはないように感じます。
一部は流れますがやはり質はどうなのか感じることもあります。


先ほどの、やるものがないからとりあえず働くという構図と同じです。

 

農場勤務時代には「息子が働かないので、とりあえず養鶏なら働けるだろうから採用してくれ」と頼まれて困惑したこともあります。
しかし多くは長く勤務することはなく、短期雇用になり結局外国人技能実習生に頼りそれが当たり前になり、原因を忘れていき最終的に「外人は真面目に働く、日本人はいらない」という考えに至るのでしょう。


この構図は今後も起こりえる話です。

 

このように人が少ないことは消費が少なくなると同時に会社の原動力も下がるという良くない状況も発生します。
同時に外国人観光客と言ったお金を落とすような方々が一定程度なければ消費先が疲弊し更なる消費減少を引き起こします。


しかし生産拡大を続けなければ安定した販路が維持できないというジレンマ。


消費が弱くなると、付加価値には違和感を感じる消費者も多くなり少しでも高く鶏卵を引き取ることも難しくなります。
そうなると団栗の背比べではないですが、抜きん出て販路が拡大することが困難になり、何かの付き合いで販路維持ができたりと農場の力が経営に左右されることにもなり、農場は市場から撤退もありうることでしょう。


それだけこの先が不透明であり見抜ける力が経営陣には求められることでしょうし、従事者の質も向上しなければなりません。


ただ卵あれば未来も安泰。食品産業だから安泰。
そんな安泰がこの先あるのでしょうか。


安泰という言葉はそもそも安泰だったのか。

 

そんな再確認しなければならない時代に入りました。