nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鳥インフルエンザが発生しています 飼養衛生管理基準の適合を再度確認しましょう

11月に入り養鶏業界は騒然となっています。
11月10日秋田県で本年初となる高病原性鳥インフルエンザが発生し、農場で飼養していた14.3万羽が殺処分されました。


現在埋却作業中で作業率は5割程度の進行になっています。
11日インフルエンザの型が判明し、H5N8と確定されています。


この型は昨年被害と同様で大変心配されます。


H5型は本年も野鳥から検出が見られており、飛来と共に周辺への影響も予測されます。
野鳥では、10月28日北海道旭川市でH5型の感染があり死亡した野鳥から検出されています。
11月11日鹿児島県出水市の野鳥のねぐらからH5型の鳥インフルエンザウイルスが検出されており、全国的にH5型が飛来している可能性があります。
鹿児島県は今後周辺の消毒作業や一定の範囲を検体採取しての調査を進めるとしています。

 

11月12日鹿児島県出水市の養鶏場で鶏が死んでいるという一報を受けて、現在確認作業が進められています。
簡易検査では鳥インフルエンザと認められているようで、最終確定のため検査を実施し明日に判明する見込みです。
飼養羽数は3.8万羽で確定次第殺処分が開始されます。

 

このように昨年同様全国的に鳥インフルエンザが発生する可能性が非常に高くなり、養鶏家の皆さんも大変心配されていることと思います。
昨年は過去最多約980万羽が防疫措置され大型農場での発生が続いたことで鶏卵相場の高騰となりました。
鳥インフルエンザが発生した農場ではようやく回復が進んでいる中での不安となります。


一般的に、鳥インフルエンザが発生した農場の幾つかは、再開後も軌道に乗れず経営を断念されるところも残念ながら現実あります。
販路の減少が主な要因となりますが、その中で低卵価となった場合は収入が見込みより少なくなり維持が困難になることもあります。


このような例が、2020年1月近畿地方の養鶏場で発生しています。

再開し設備投資をし生産量回復を進めていたところ販路先の減少から回復できず、鶏卵価格の低迷により、経営体力がなくなって市場から撤退となりました。

 

鳥インフルエンザが発生した農場は周辺への影響や自農場の再開というご苦労をされます。その中の幾つかはそのご苦労が花開くことなく市場から去っていくという厳しい現実もあります。


皆さんの農場は絶対安全であると言えればよいのですが、残念ながら相手は見えない物であるため少しの隙を相手が攻めてくるということもあります。
そうならないためにも、飼養衛生管理基準で定めた作業を確実に実施し出来るだけの防疫体制でこの冬を過ごしていただきたいと思います。


昨年のような悪夢が再来しないよう、皆さんのご協力で防いでまいりましょう。

 

秋田県での疫学調査の概要が11日公表されています。
疫学調査によれば、飼養衛生管理者は従業員が農場に入る際に手指消毒と長くつの消毒を実施し、農場専用の作業着に着替えて作業に入っていたとしています。

しかし、ウインドレス、セミ共に専用の作業服に着替えていたが、開放鶏舎に入る場合は専用の服に着替えていなかったとしています。


開放鶏舎では金網が破損し野鳥であるスズメが侵入していたとされます。


発生した鶏舎の鶏糞は自社堆肥場へ搬送されていましたが、その堆肥場には防鳥ネットが設置されていたものの、破損があり猫やカラスといった野生動物が侵入していたことを現認しているとのことです。


発生したウインドレス鶏舎では壁面に3㎝程度の穴があり、小動物の侵入が可能と見ているようです。


鶏糞を搬出する集糞ベルトの鶏舎外につながる開口部に隙間が確認されています。

 

どうでしょうか、飼養衛生管理基準を満たしていない事例が多く見られます。


鶏舎専用の衣服の使用は以前から決められた事項です。
鶏舎の金網は定期的に点検し遅滞なく修善しなければなりません。
今回の基準に定めた、鶏舎の壁面の修善も実施しなければなりませんでした。


このようないわゆる違反行為は後に評議委員会で裁定を受けて補助金が決定されますが、とても良い条件とは言えません。
違反は通常大きなことにはなりませんから、大きく考える方が多くはないのが実情でしょうが、緊急事態が発生した時はこの安易さが後で大変な影響を与えます。

 

近年は鳥インフルエンザが発生した後の補助金の減額が多くなっており、法令順守の不適合(不遵守)により、再開してからの費用に支障があることと思います。


たかが飼養衛生管理基準の不適合と思われることでしょうが、発生した時はそのような発言ができるほど余裕はなくなります。
銀行が後ろにいるから安心とは言えません。

先ほどのようにいくつかは養鶏という世界から退場する現実があります。


銀行は打ち出の小づちではありません。

返済見込みがあれば笑顔で貸しますが、見通しが困難な場合は笑顔で返済を求めませんし厳しい態度に変わります。
付き合いが長いからいい対応だよという方もいます。
ですが銀行から見れば返済をする優良顧客であって家族ではありません。

当然風向きが悪くなれば相応の対応に変わります。


そこをはき違えると後になって一人で怒っていることでしょうが、それは当然の結果なのです。

 

このように、鳥インフルエンザが発生することは予測は困難であると同時に出来るだけの防疫体制を構築し防いでいくことは発生予防の観点から必要です。
どうせ意味がない、防ぐことに意味がない、確率の問題と安易に片付けることは、農場の予防や万一の際の再建をあきらめたことを意味します。


確かに星の数ほどある養鶏場がある現代に、1つ2つの養鶏場が撤退しても相場に影響は与えませんし、困る消費者もいません。
消費者は特定の農場の鶏卵を求めているわけではありません。
厳しい現実ですが、価格であり、鮮度あり、美味しさなのです。

そこに皆さんが期待する自社の鶏卵という言葉ありません。

 

そう考えれば自社の鶏卵がなければ世の中困るということは幻想と言えますし、本当に困るのは自社の鶏卵出荷先が無くなる当事者だけという現実があります。
ですから、そうならないためにも自農場は何ができるのか、見えない相手だからこそ侵入を防ぐ方策はあるのか、農場で蔓延させない方法は何か、そして自農場から持ち出すことがなく広げない方法は何があるのか。
そう考えれば、義務的に石灰を散布しているだけでは済まないことがわかると思います。


意識を持つことで昨年のような大きな被害を出さない心がけで進めてはいきませんか。


これから厳しい冬が訪れます。

野鳥という多くの鳥たちが飛来してきます。


水田に水鳥がいて隣は養鶏場があるというところもあることでしょう。
灌漑用水で隣は養鶏場というところもあるでしょう。
近くに沢があり、その隣は養鶏場というところもあるでしょう。
野鳥が近くいる可能性が高い所は被害も予測できますし、現実そのような農場での発生があり被害もありました。


他人事で片付けるのか、防ぐつもりで臨むのか。
この考えが今年の発生拡大がどうなるのか分かれ道になり、寒さが進んで行く霜月となることでしょう。