nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

2021年を振り返る 飼料価格の高騰や鳥インフルエンザにご苦労された1年でした

2021年も終わります。

27日が止め市で鶏卵相場は12月期間中持ち合いで終わりました。
多くの方は、12月の一段の伸びを期待されていたことと思います。


年平均価格は217円(東京M基準)で、過去5年間では最高値になります。


一方配合飼料価格は高騰し、多くの農場ではご苦労されていることと思います。
全農配合飼料は22年1月期より値上げがあることを公表しており、1月の鶏卵相場から見ても出費の削減を意識されることでしょう。


その1月の初市は5日からで、皆さんご承知の通り下落して始まります。
滞貨玉が原因ですが、例年通り流通店舗の元日休業(一部は2連休)が浸透しており、荷動きは鈍いと感じます。
配合飼料価格が上昇しましたが、鶏卵相場は夏以降下落した中でも高水準で推移したこともあり上昇分の吸収が十分できている農場が多いはずですが、一部の農場は増羽をしたことで予測した相場値より低いため、思うような利益に発展していないという事例も見られます。


秋以降の相場上昇がなかったことは、新型コロナウイルスの影響が長期化し、消費者心理が変化したことを示しています。
つまり、秋以降緊急事態宣言が解除されても、人々は街に繰り出し飲食をされるわけではなく、人と交わらないという行動が浸透しているということです。


またリベンジ消費があると報道されましたが、期待されるような消費行動が見られず消費者の経済的不安ものぞかせているようです。
年末年始鉄道、飛行機を利用して移動する方も前年より多いとされますが、コロナ前と比べると4割減とやはり人々の行動が変化しているように見えます。

 

昨年から本年春の鳥インフルエンザ大流行と違い、例年通りの散発発生にとどまることから、供給不足を意識する状況ではありません。
防疫対策が浸透し皆さんの農場でも意識が高まった結果と感じます。


鳥インフルエンザでの対策を踏まえた改正飼養衛生管理基準が本年10月1日より施行されており、大規模農場に対し飼養管理者の管理方法を変更しています。(詳細はライブドアブログでご覧ください)
いまや10万羽飼養農場が大規模農場と言えるほど珍しいことではありません。
30万羽、50万羽、80万羽と飼養羽数が増加しているのが養鶏業界と感じます。

ですから多くの農場が該当します。


不幸にして鳥インフルエンザが発生した農場では再開が進んでいます。

多くは通常の飼養羽数で飼育されていると思いますが、その多くの声は
次、鳥インフルエンザが発生したら本気で農場を閉めたいと考えていると答えます。


その理由に、再開までの期間が長いことで収入が絶たれること、飼料価格が高くなり損益分岐点が上昇し再開までに要した資金返済に苦慮しているということを挙げています。
また販路先変更に伴い収入が減少しているということもありそうです。
このような要因で廃業になった農場も現実あり、経営の見通しに不安があるように見えます。

 

間もなく22年1月になり新しい年が始まります。
飼料価格は1月より値上げになり、更にご苦労されることが予測されます。
鶏卵相場も初市は50円程度の値下がりで始まるのが普通で、予測は160円前後と見ています。
滞貨玉が解消した中旬か下旬まで、もちあい又は弱い上昇があると見込まれますが、例年2月の恵方巻等イベント使用を期待するのですが、少しづつ変化しており、完全注文制に移行した販売店が多くなっており食品ロスをなくす取り組みが普及したことで思うほど受注がないというのが現在ではないかと思います。


昨年は1月より成鶏更新・空舎延長事業が発動されました。
また大雛を導入する期間を長くする経営戦略を取られる農場もあることでしょう。
強制換羽をし導入費を出来るだけ後回しにされる農場も散見されます。

 

この秋以降鶏卵を購入調査している中で血卵を見る機会が多くなりました。
ストレスや季節の変わり目で発生するとよく言われます。
ですが、農場を見る者から感じるのは、鶏にストレスを与える環境で飼養管理されている農場のご苦労を感じます。
恐らく、温度管理の弊害(過度の餌量削減をされている農場)が多くなっていると予測できます。
濃厚卵白がない水溶性卵白鶏卵も散見されます。(日が経過した鶏卵を混入させている農場又は鶏舎内で鶏卵移動の詰まりが生じている農場)
めくらヒビも見られ、自社パッキッグの甘さも見られます。(大手では見ることはありませんが中規模で見る機会があり、農場の経営方針がわかります)


卵を紹介するブログにも血卵が多く見るようになったという声も見ます。
パック卵もサイズミックス卵は依然と比べ総重量が少し軽くなっています。1個平均59gかそれ以下のMサイズを中心に詰めているようで、Lサイズ卵でも下限ギリギリ64gを詰めている農場産も見ます。
特にサイズ指定した物はLサイズは64g以上でなければなりません。
ですが、一部は63gと基準を満たさない鶏卵を10個中1個と混ぜている事例も見られます。
過去には、指定サイズに満たない鶏卵を販売したことで千葉県の農場産鶏卵が回収事例(7000パック程度の広範囲回収)に発展しています。
この場合は法令違反になりますので、計量責任者はその点を意識する必要があります。
生産する際には消費者がどう思うということを踏まえた経営戦略が必要と感じます。

餌が高い、人件費が高く感じる。
だからコスト削減をする。
品質を意識した削減でなければ結局は農場が損をするだけになります。


先ほどのように、人件費が高いから削減や外国人技能実習生だけに移行することで、衛生管理が追い付かなったり、殺虫作業の不手際もありえます。
殺虫作業の不手際は残留農薬として現れます。
この残留農薬検出は県の収去検査で見られます。
県により販売店で買い上げて検査する場合や、農場に出向いてサンプルを貰う場合がありますが、いずれも検出されると公表されます。
過去公表されお詫びを掲載した事例や、公表により農場を廃業した事例があります。
農業でも同様な事例があります。


九州地方で春菊に高濃度の農薬を散布して出荷し回収する事例がありました。
これは濃度が高いたまねぎ用の農薬が余り、春菊に散布したというもので、考えればしないことを平気でやってしまうという危うさがある事例です。
人の削減は一歩間違うと、このような安易さを生む要因を作ります。
ですから目先の数万円だけを意識すると、結果数万円ではなく桁が多くズレた金額を損することになりかねません。
生産も同じで、目先の餌代だけを見ていると、今見たように品質不安や重量違反の可能性を作り出します。


生産は品質も大事ですし、信頼もなければなりません。
ただ鶏卵を生産しているだけでよいでは、この22年生き残れるのか分かりません。

間もなく新しい年が始まります。
まだまだ鳥インフルエンザに警戒しなければならず、農場皆さん方もお忙しいと思います。
ですが、品質を大事にして生産を続けることで、皆さんの農場の鶏卵はきっと消費者に届き美味しいと言ってくれることでしょう。
または会話が弾む中の大事な引き立て役になることでしょう。
ですが、お金大事、安心第二ではこの店の鶏卵はいつも血玉があるから気持ち悪いと言われるでしょう。


多くのメーカーや生産者は加熱すれば食べられますと答えます。
消費者はそこを確認したいわけではありません。
気持ちが悪いという声なのです。

確かに鶏の要因で発生します。若鳥ではストレスにより真っ赤な血玉を産出することもあります。
ですが、そうならないように管理するのが農場の仕事です。
それが安心を作り、販売店に対しての最大の信頼にもなります。
来年も品質や安心を思い出しながらの鶏卵生産ができればと思う次第です。