nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鳥インフルエンザ国内12例目が確認されます 同一地域での発生が確認されました

1月4日愛媛県西条市の養鶏場2農場で鳥インフルエンザが発生し16時より殺処分が開始されました。
22万5千羽程度が対象で、同じ経営者の農場である関連農場1農場6千羽も追加処分となります。
合計で23万羽を超える程度が防疫措置の対象となりました。


2021年12月31日発生した同じ西条市の養鶏場の近隣農場とされています。


報道では5日間程度かけて殺処分を進めていくことにしており、短時間での防疫措置が難しいように見えます。
昨年12月末日発生後の防疫措置をしている中での発生となり、周辺の皆様には大変心配されていることと存じます。

 

目に見えないウイルスであり農場に入れないための方法が見えないのが実情で、どうしても農場管理者や農場従事者の意識に頼らなければ鶏たちを守ることができないため、この先も農場へ入れないための方法を継続していただきたいと思います。


その指針が飼養衛生管理管理基準になります。


この法令は、飼養管理者が責任をもって農場や鶏舎を管理してウイルスを入れない・農場で広げない・農場へ持ち出さない方法を構築し、基準が求める手法を取り入れることで出来る限りの防御をするものです。


しかし飼養衛生管理基準はうるさく、適合は今回のような被害がなければ大ごとになるものでないという意識が少なからずあるのが現実です。


手指の消毒もそうですが、様々触る中で汚染を広げやすいのが手指なのですが、見えないものだから大丈夫だし食事の時くらいは手を洗うという方もいます。


鳥インフルエンザが発生したメカニズムが解明されていないこともあり、消毒や殺鼠作業と言った可能性があるものに話題が集中することから意味を感じないという方もいます。


ですが、見えないものだからこそどのようなルートで鶏たちにたどり着くのか分からないのが実情で、出来る限りの方法で防御するのがベストな選択になり方法になります。
解明できれば確かに良いですが、意味がないと決めつけること自体が発生を防ぐ意識が低いように見えます。


そして意識を持ち続け自ら考えることができる従業員でなければ、

今日は面倒だから消毒はいいや、

今日は雨だから鶏舎への長靴の履き替えはいいや、

雨でウイルスが流れるから車両やタイヤの消毒はいいや。
このような自分基準の根拠がない考えが農場に浸透します。

 

被害にあった農場の多くはこう言います。
「どうしてこのような状況になったのかわからない」
ですが国の疫学調査概要を見ると、わからないではなく、見ていない(気づいていない)というのが実情なのかもしれません。


聞き取り調査を見る限り、消毒の不徹底を指摘されたり、野生動物が侵入できる環境にあったことを指摘されたり、挙句には管理者が不足していて十分に管理できていないというケースもあります。


このように、農場従事者の皆さんの意識が常に危害を予測し考えることができていればまた違う未来があったようにも感じます。


多くの農場は、規模的には大規模(10万羽飼養している農場を大規模農場と定義されているため)であっても飼養羽数は100万羽ないというのが多いはずです。
この規模では広範囲に農場を構えて経営されていることは珍しいはずです。

多くは同一農場を半径数キロ程度の範囲に複数存在させる程度が一般的です。


このため従事者を複数の農場に出入りさせるケースが多くなることも珍しいことではなく、掛け持ちと呼ばれる作業に従事させることもあるはずです。
これがある農場で鳥インフルエンザが発生した場合は関連農場とみなされて追加処分になることもあります。(ウイルスを持ち込ませているとみなされる)


そうでない場合でも、移動や搬出制限がかけられます。
こうなると、国と協議して解除を求めることになりますが、多くは生体の移動は厳しいというのが実情です。


鶏卵は数日程度の解除されることが多いと感じますが、生体はそうはいきません。

ですからアウトの日程変更や導入時期の見直し等長期のスケジュール変更が生じます。

そして発生農場の多くは収入を絶たれることが多く、再開する間に販路の変更が生じることがしばしばです。
再開し販路を戻すにしてもよほどのことがない限り元の販売先が指名することは少ないのが実情で、新たに開拓することが多くなります。
潤沢な営業担当がいる又は有名な鶏卵であるということでない限り、軌道に乗るまで時間がかかり、相場次第で力尽きるという農場も存在します。
それだけ鳥インフルエンザが発生し被害にあうということは農場存続を難しくさせることなのです。


多くは再起はできるでしょうが、再起後10年後までの間に一定数は規模が大きくても力尽きるのも事実です。


今般鳥インフルエンザが発生し国の補助金支給に減額が生じることが一般的になっています。
これは飼養衛生管理基準の不適合があり、度合いによって決定され減額処分となるためです。
ですから、平時の不適合は関係ないと考えることなのでしょうが、異常は突然やってきます。
ですからこの時期は平時はありえないと考えなければなりません。


そして多くの被害を受けた農場はこう言います。
「次発生したら本気で農場を閉鎖する」
これは本音なのかもしれません。
殺処分され、再開し生産が開始されるまで無収入になることが多く、補助金も速やかに支給はされません。ましては減額処分があり得る場合はなおさらです。
保険に加入していればよいでしょうが、すべての農場が加入する強制ではありません。
保険も再開に十分とは言えません。金融機関の借り入れも視野に入ると思います。
ですが信用があり十分な担保があればまだ良いですが、そうでない場合は厳しい現実もあります。

 

このように発生したらこれだけのリスクがあると考えるならば、面倒という言葉は出ないのではないでしょうか。


出来るだけ農場に入れないための方策を考えると思います。


十分な資金を昨年の相場で蓄えたわけではないと思います。
被害が出た後に右往左往すると農場は傾きます。
それだけの経済的損失を与えるのが鳥インフルエンザなのです。


昔は、発生隠ぺいを図る農場もありました。
その理由には恐らくこのような経済損失の膨大を予測されたのかもしれません。
畜種を問わず法定伝染病の防疫措置に対する不安はあります。
隠蔽は採卵鶏以外にもありました。それだけ怖いものなのです。


私の農場は心配はないという自信家もいることでしょう。
ですが根拠はないのかもしれません。
従業員や幹部社員が優秀だからという方もいましょう。
ですがこれも根拠がありません。
確かなのは、防ぐ意識を持つ従事者がいる農場が守られるということです。
それは、簡単なことではありません。

 

最後に上司として不適任な方5例を紹介しておきましょう。
幹部社員もしかりですが、人を動かし安全に導くためには上司である人材が重要です。
ですが恵まれない場合や、基準があいまいで仲良しだけで決める農場もあるのも現実です。
そうなれば、どうなるのか。
考えると将来が少し怖いと感じます。

・人の強みよりも、人の弱みに目を向ける者
・何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者
・真摯さよりも頭のよさを重視する者
・部下に自分の地位を脅かされると脅威を感じる者
・自らの仕事に高い水準を設定しない者
これはピータードラッカーの著書にあるリーダー任命に適さない5つの例です。
皆さんの農場はこのような基準では決めていないはずですが、そうでない農場もあるようです。


農場を守るには実行と持続そして、上司の管理力ではないでしょうか。
まだまだ鳥インフルエンザの脅威が続くのかもしれません。
昨年の大流行が基準では危険性を見誤ります。

どうか、大事な鶏たちを守りこの冬を乗り越えて頂きたいと思います。