nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

ホクリョウがトーチクから鶏卵販売事業を取得します 北海道内のシェアに変化の兆しが見られます

ホクリョウは道内の事業基盤を強化する狙いから、トーチクから鶏卵生産販売事業の取得を決めたと報じました。


道内の鶏卵シェアはホクリョウが5割、トーチクは3割とも言われ、道内最大のシェア拡大につながるとされます。
ご存知の通り、統合される側トーチクはイセグループの会社で、業界では大手に分類されます。


プレスリリースでは、イセ食品がトーチクの資産(土地、建物、機械設備、鶏)と事業(営業権)の譲渡を最終価格を3月末で決定しますが概算で5億円でホクリョウへ実行するとしています。
譲渡後は、トーチクの社名が当面残るものの、残存債務整理を進めたうえでイセ食品のグループ会社に統合されます。
鶏卵事業はホクリョウの子会社に取り込まれ、ホクリョウの経営方針のもとで運営されることになっています。


なお2022年4月1日に譲渡が成立することになります。


トーチクの直近業績は売上高20億円、営業利益100万円とされています。
ホクリョウは売上高134億円と規模が大きい事業体です。
株取引される方にはご存知のことですが、近年道内の営業だけでなく本州開拓を強化していることは業界内の方も承知されていることでしょう。
道内に限らず東北地方にもGPセンターを稼働しており、多くはISO22000を取得しているセンターです。
生産農場もJGAPを取得して農場運営を行い、生産段階から商品化までの過程に安全と周辺環境保持を意識した製品として出荷しています。


農場HACCP認証も取得していますので、鶏卵の生産には一段上を行く安全性を確保した取り組みをされています。

近年農場HACCP認証を取得する養鶏場が増えつつありますが、認証を取得しない農場との差がわかりにくいことから、中堅以下の養鶏場での普及はそう高くないというのが実情と感じます。
その中にコストをかけてでも鶏卵の安全性を追求していく姿勢は、経営理念にある「品質管理を徹底的に追求し、世の中に広く案して食べて頂ける製品を提供する」の言葉通り、安全性を追求していく姿勢に現れたものと業界を見ている者からは評価されることと感じます。

 

さて、ホクリョウは西の○○〇、東の○○という大手養鶏場とは違い本州が主戦場ではありませんが、着実に本州にも影響を与えつつある3つ目の勢力図になると感じます。


北海道での生産規模令和元年で全国9位となります。

確かに茨城(全国生産量約9%)、鹿児島(同生産量7%)、千葉(同6%)、広島(5%)と上位組とは違いますが、北海道も全国生産量は4%と低い数値ではありません。
また消費地も道内の他、関東へも鶏卵扱いを見ることができ、昔は東西の大手だけで、近未来は大手3社の時代となるかもしれません。


トーチクの親会社は養鶏経営コストを改善するため統合するとコメントしています。
近年は配合飼料価格の高騰もありコストアップが続いています。

いくつかブログにも書きましたが一昔前の損益分岐点は上昇している養鶏場が多くなっており、農場が沢山あり鶏を多く飼養することで利益が大幅にとれるということは難しくなっていると感じます。


ですから農場によりますが、コストを削減するために管理者を少なく運営できるウインドレス化や飼養羽数を増やし自動化を進めていくことで固定費を出来るだけ下げるような動きが見られます。


悪いことではありませんが、防疫意識までコスト削減すると昨年の鳥インフルエンザが発生したことで大多数の鶏が殺処分されるような事態も散見されます。

1農場70万羽、100万羽が1度に殺処分されることが多かったのは記憶に残ることと思います。
ですが、目先に見える金額削減に意識を向けてしまい、大事な収入源も失うという不幸もあります。

 

相場が高ければ高い利益に結び付くことは変わりませんが、必要なものにいかに投資できるのかが実は大事なことなのかもしれません。
今後このような統廃合は大手に限らず中堅以下にもみられることになるでしょう。
それだけ需要と供給のバランス次第で農場の立ち位置が変わることが日常になりつつあるのかもしれません。


道内シェア3割の企業でもコストを意識するには譲渡もやむなしと判断する経営もあるという時代が訪れたのかもしれません。
養鶏農場を安定して運営するには、なにが大事なのか。
それはお金だけなのか。
果敢に挑み挑戦し開拓する姿勢なのか。
販路に限らず農場運営を任せられる人材なのか。
多くの農場では課題が山積しているのかもしれません。

1月相場は上昇を始めています。
一部の農場では相場が上がっても荷動きが弱いという話も聞きます。
値段だけ見ていて一喜一憂しているだけでは厳しい1年になるのかもしれません。