nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

農業31社に1社が倒産する危険性 Alarmboxが予測する意味

AIを活用し企業のリスク管理を担うAlarmbox社が、7日発表した2022年下半期以降の業種別倒産発生予測ランキングを発表しました。 それによれば、倒産可能性の高い業種第1位に農業が入りました。 この場合の農業は、耕種農業の他、畜産業も含まれます。 調査結果によれば畜産農業では、飼料価格が高騰した影響により大手企業の倒産が発生しているということ、下期も飼料価格の高騰から、今後の動向に注意が必要であるとしています。 この調査では、耕種農家も対象になっていますので、畜産業だけを見ることができませんが、確かに養鶏業の他養豚業等で事業破綻(会社更生法による企業再生行動)が見られます。 では、畜産農場が自力経営を諦め、法的措置を行ったものを見てみます。 ■養鶏業 イ、2022年2月14日岡山県高梁市の養鶏場が破産手続きを開始しています。  飼養羽数は10万羽で、負債総額は3億円です。 ロ、2022年3月11日東京都千代田区に本社を置く大手養鶏会社と、富山県高岡市にあるグループ内餌販売関連会社が会社更生法適用を債権者より申し立てられ、保全管理命令を受けました。  グループ内の飼養羽数は1300万羽で、負債総額は2社で278億円です。 ハ、2022年3月25日三重県伊賀市の上記グループ成鶏農場が、上記会社より会社更生法適用を申し立てられ、同日保全管理命令を受けました。  飼養羽数は、2農場で100万羽を超える飼養羽数とされ、2021年までの3年間債務超過の状況が続いていました。 二、2022年4月19日静岡県掛川市の採卵鶏農場が、民事再生法適用の申請を東京地方裁判所に申請。  飼養羽数は70万羽で、負債総額は11億3500万円です。 ■養豚 ・2022年3月2日鹿児島県出水郡の養豚場が、民事再生法の適用を鹿児島地方裁判所へ申請し同日保全命令を受けました。 この養豚場は県内では最大規模の飼養頭数で、飲食店も経営しています。 2017年から売り上げが下がり、経常損失3億円の計上と設備投資の有利子負債が重くなり、大幅な債務超過に陥ります。 負債総額は32億8600万円です。 このように、養鶏業のリスクが多くなっている傾向が見られます。 多くは、この数年の配合飼料価格が主要因ではなく、それより前の低卵価時代での規模拡大や設備投資による借入金返済が、低卵価により収入減少が続き、近年の配合飼料価格の高騰からコスト増に耐えきれる状況になく民事再生を申請しているように見えます。 配合飼料価格が一段高になっており、相場価格次第では採算を割る可能性もありますが、現在関東の相場はMサイズ210円(規準値)と例年に比べると高くなっており比較的安心した経営が可能と思われます。 しかし、借入金返済を行っている農場については返済割合が従来より高くなっているところも多く、収入の改善が急がれる農場も見られますので、この先も安泰とは言えません。 その中でも、比較的順調な経営をされている農場では、農場の新築工事や改築といった設備投資を積極的に行っているところも見られ、体力差が広がりつつあるように感じますので、この先も要注意であることは、リスク管理会社同様の考えを持っています。 本年4月以降の企業倒産は見られませんが、先ほどのようにすでに負債を抱えていての、配合飼料価格という高コストをねん出することが難しいという農場もあると思います。 一般的に企業が破産までいかないにしろ、民事再生手続きを決断するまでは数か月は要します。 それは、借入先を探し続けて急場をしのぐためとも言います。ですから急激なコスト増が7月にありましたから12月以降に散発的に発生する可能性もあります。 結果的に金融機関や債権者への支払い猶予が会社信用を下げることになり、債権者から申し立てられる場合(上記ロ、ハの場合)や、経営難の改善を会社が諦める場合(上記イ、二の場合)があります。 この先も、不透明な状況が続きます。 急激なコスト削減は難しいともいわれ、いかに収入を上げていくのかを考えていく必要があります。 秋期の配合飼料価格はまだわかりませんが、現在の情勢を見ると、コーンは若干の値下がり、原油も世界情勢からの需要減退感から値下がる傾向も見られます。 ですが、今期の1万円以上の上昇が、1万円の値下げまではいく状況にも見えません。 ですので、春期と同じ程度の価格と考えておいて、どうしていくのかもう一度見つめなおしていきましょう。 一部の養鶏家は、禁断の人件費に手を付けることを検討しているという農場も現れています。 人減らしは、宿泊業や飲食業で進み、インバウンド需要で再雇用をしていても集まらず、事業規模縮小もやむなしというところも見られます。 人減らしは、一時的にせよ出費の改善が期待できますので手を付ける産業があります。 ですが、昭和の時代のように人が潤沢にいる時代ではなく、再雇用を開始しても賃金次第で集まらないというのは容易に想像できます。 ましては、畜産業での再雇用はほぼ困難かもしれません。 他産業と負けない待遇を提示できないことが理由です。 外国人技能実習生をより一層導入して急場をしのぐ農場がこの先増えていくかもしれません。 そうなると、農場でできていた作業が困難になり外注又は作業をしない等、飼養管理力の低下を招き、技量相応の生産量になるところもあり、ますます農場体力に格差が広がると推察されます。 皆さんの農場はどこに向かって進んでいくのでしょうか。