nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

静岡県で鶏糞の土砂崩れで異臭 敷地に山を築いてはいませんか

中日新聞の7月30日の記事では、掛川市の西大谷川で5月以降、大雨が降ると赤黒い水と異臭が発生していると報じています。 記事では、住民が上流を調べたところ、支流にある閉鎖した養鶏施設が近隣にある山で、大規模な鶏糞の土砂崩れと工事用道路の市道をふさぐ状態であったとしており、県と市が調査しているものです。 住民の話では、5月下旬から複数回水質汚濁と異臭が発生しており、7月上流を調べたところ高さ数十メートルの鶏糞が崩れ、一部は流出しているとされます。 地域住民は井戸水を引用しており行政に早期対応を求めるとしています。 この閉鎖養鶏施設は今年4月に民事再生法を申請し適用されているもので現在は譲渡され、所有責任者は「前事業者から買い取っており、全容を把握していないが誠意ある対応をする」としています。 さて、皆さんは鶏糞の山についてどう感じるでしょうか。 敷地に山を築く農場は養鶏以外の畜種でも残念ながら存在します。 その多くは、廃棄先がない又は堆肥管理が面倒で廃棄を選択する場合、廃業し放棄されているという事例が多いと感じます。 鶏糞は、保管基準を満たすと肥料と名前を変えます。ですが何もせず地面に接している保管は産業廃棄物と区別されます。 産業廃棄物は、適正な保管や管理又は処分が必要で、養鶏家皆さんの多くは、近隣への還元で処分されるはずです。 ですが、資金力がない農場の多くはまずは自社敷地に還元し、やがて廃棄できなくなり、山積みをしてその数を増やす又は極限まで高く積み上げるという流れが多いように感じます。 しばらくは問題にならず農場も忘れていくのでしょうが、今回のように崩れて川に流出して異臭を放つという事例は、この施設だけの話ではありません。 河川に流れる事例は多く、発覚して行政処分を受ける事例もあります。 例えば、 平成19年5月、香川県で養豚施設で蒸散処理(攪拌して蒸発させる方式)していた農場で、設備が故障したため平成18年12月ごろから裏山にパイプを敷設してし尿処理水をやん林に還元していたが、地域住民が小川の水質汚濁と異臭を見つけて地域事務所へ通報しています。 これにより、県環境課、市、家畜保健衛生所、警察による立ち入り調査を5月に実施、違法なパイプ敷設と小川の汚染を現認したことで、水質汚濁防止法による改善計画書の提出と原状復帰措置を命じています。 畜産業に携わる方には知っておくべきことですが、鶏舎(畜舎)で発生した汚水はそのまま河川や小川といった小規模な沢に流すことはできません。 知っていても、気づかれなければよいという場合や、農場管理者の無知で知らなくても結果的に流出している場合もあります。 現在、総面積50平方メートル以上の豚房、総面積200平方メートル以上の牛房、総面積500平方メートル以上の馬房は公共用水域へ排水する場合は県や市町村に届け出ることが必要になっています。 では、養鶏はといえばほかの畜産施設に比べて排せつ物が適正に管理できるとされるため鶏糞は水質汚濁源とみることはありません。 ですが、管理が不適切になる場合、流出して周辺土中に蓄積したり、降雨により表面流出したり、今回のように山積みして崩れて周辺へ流出したりと実際は問題視されることが多々あるのも現実です。 養鶏と言えば臭気の問題、衛生害虫(ハエ)の飛来といったものが多いのですが、この水質汚濁も管理次第では大きな問題にもなります。 養鶏で不適切と感じる事例としては、堆肥場(堆肥処理場)周辺の降雨時ため水の変色や、自社畑へ還元して降雨時に周辺や道路へ汚濁水流出もある農場、そもそも敷地内に地面にコンクリ等浸透防止処置がない堆肥管理から周辺へ流出している事例も見られます。 自社で適切に管理できない農場の多くはいずれかの問題を見ることができ、管理者を含めてその管理力が分かります。 今回のように、たとえ前事業者から買い取った施設であっても、買った以上はその不備を含めて権利を購入していますから誠意ある対応が必要です。 養鶏は、臭気や衛生害虫の問題を抱えやすい産業で、近隣との関係が一番重要です。 その関係が壊れたとき、行政への通報や行政処分を受けることもしばしばで、関係改善を試みることも難しいと言えます。 ですから、関係が悪い施設はいつまでたっても関係が悪く、地域からの苦情が続き、行政も関与され農場はうるさいと、もはや根本問題を忘れて感情だけの問題に発展しているところもあります。 繰り返しますが、結果的に意図的ではなくても河川に流れることは結果行政からの指導を受けます。 それは、周辺住民に対して信頼を損ねているからです。 ばれない、仕方ない、やむを得ない、お金がない。 「ない」だけでは、畜産業は維持できないのも現状です。 今回のように崩れた鶏糞は回収できるのかといえば、おそらくすべてきれいにするは難しいでしょう。 高さ数十メートルとなれば、幅によりますが相当量です。 その期間中には降雨があり、アンモニアが薄くなれば草木が生えて分別した処分は困難です。 自社の堆肥処理機があれば相当量を毎日投入して処分するしかありません。 ない場合は、自社堆肥場まで搬送し適切に切り返しして製品化していくしかありません。 ですが、ごみが混ざる堆肥を喜ぶ農家さんはいるでしょうか。そして還元先は十分にあるのでしょうか。 やわらかい鶏糞を回収することの大変さは、同じ養鶏家であれば容易に想像できます。 状態によりますが、どろどろの鶏糞をスコップで集めるのは困難でストレスなことです。 きちんと管理しておけばここまでの大変な事例にはならなかったでしょう。 ですが、管理ができないことで後回しになり、期間がたち解決が容易でないまで発展してしまうということは、残念ながら先を見る目がなかったと言わなければなりません。 法令に違反しなければ良いという発想は、結果的に問題を後回しにしていくだけで、利息が付くように事が少しづつ大きくなるだけで良いことはありません。 重い腰は今あげなければ、いつまでも上がりません。 畜産業で生きていくためには、昔の常識をいつまでも持ってはいけない事例とも言えます。 山を築けば、それが景色に替わり経営者から従業員全てが忘れていくことで月日がたち大きな事故や問題なり慌てる。これは鶏糞の事件以外にも日常の中にありませんでしょうか。 経営もそうですが飼養管理を含めて先見の明を持っているとも言えません。 では、どうしていくべきなのでしょうか。 それは皆さんの中に答えがあります。 早い解決を期待したいと思います。