nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

3月の鶏卵相場を見る 供給不安と需要家は何を考えるのか

鳥インフルエンザの被害がまだ収まっていない状況が続きます。 報道を見ますと、鶏卵が足りない、パック卵が高い、加工向けが不足し影響がある等様々ありました。 3月28日現在26道県1701万羽が殺処分されています。採卵鶏は9割ですから、1500万羽を超える状況で深刻です。 28日では北海道最大規模の養鶏場で被害があり55万羽が殺処分されます。31日正午時点で38.9万羽の処分が終わり進捗率は69.8%まで進んでおり、埋却フレコン数は3176個となっています。 防疫対応職員は道職員が120名体制で進行中で、その他道職員以外の方30名で行っているようです。 自衛隊は30日で撤収しておりもう少しの状態です。本当にお疲れ様です。 最近の鶏卵販売を見ますと、価格の上昇と納品数量が少なくなっている店舗を見るようになりました。 大手量販店ではあまり影響がないように見えますが、中規模以下では箱問屋での注文抑制をして入荷数をからできるだけ均等わけをしているように感じます。 その影響が大きいことから、入荷数が半分等というところも多くなり結果不足している、売り切れているという報道が大きいのでしょう。 昨年より餌付けは増えてはいますが、その鶏達が商品化する卵を産むまでは半年かかりますのでもう少し先の話になるでしょう。 また鳥インフルエンザによる回復を目指す農場も多いことでしょう。多くは2月や3月頃から始まるところも多くなり成鶏導入し2か月ごろには生産が開始されると思います。 多くは初夏となる時期になるでしょうから、もう少し先までは鶏卵相場に一服感が出ることはないのかもしれません。 ロット数が多い農場では、揃えるまで恐らく数か月、多いほど次回入れ替えを意識したスケジュールになるでしょうから半年、1年まで遅延が継続することもあり、業界が本格稼働するまでは早くて半年・1年は報道の通りになるでしょう。 需要面を見ますと、今月末からの大型連休に向けての業務筋の仕入れが本格化します。 例年3月下旬から買い付けに関する情報が多く飛び交いますが、今年は早めに手当てをしている筋もあるようで、希望数を出来るだけ手元に置きたいのでしょうが、供給側の影響が大きいこともあり難しいのかもしれません。 このこともあり、加工卵を使用した商品に注目が集まります。 モスバーガーでは「とろったま」シリーズを販売しました。半熟卵を使用したハンバーガーで大手バーガー店は販売を休止している中実施しています。 この鶏卵は、液卵を使用したもので、割卵販売されている卵を拾い上げて加工しています。見た目もよくできており、殻付き卵を使用して商品に乗せるということが調理上今まで良かったとしても、原料仕入れが難しくなった今回のように、欠品することのリスクを想定すれば液卵からヒントを得る外食産業もあるでしょうし試作に取り組みしている企業もあるでしょう。ハンバーグに乗せる付け合わせの目玉焼きも目玉がなければいけないのかといった新しい視点が生まれそうです。 生産者側も鶏卵相場が高いから良いことだと考えてはいけません。テーブルエッグは生産全体の5割で不動の立場にありますが、加工・外食向けも半分あるのです。 そのうち、加工向けに大きな影響を与えているのが現状で、加工向けは安いものだから構わないという意識はないでしょうが、大事なお客様であることには変わりません。 既に鶏卵の代替品に関する報道も聞かれています。スクランブルエッグやそぼろといったものには鶏卵を使用しない代替品が存在しています。 まだ価格が高いこともあり急激に普及することはありませんが、消費が伸びると販売値が下がることは一般的なことでもあり、そのうちシェアが〇割と静かに増やしていたということもあり得る話になります。 また鶏卵を使用しない商品も一時的とはいえ販売されており、供給が回復し一定数は元に戻るでしょうが、一部はそのまま継続販売していくこともあり得ます。 つまり、この価格上昇は一時的には生産者側にとってもありがたい時期になるでしょうが、時間がたつにつれ少しづつ消費減退につながる可能性もあり注意が必要です。 加工向けバイヤーの方々は、安定して安く仕入れるものを見つけることに努力されています。 テーブルエッグのような規格卵を安く買いたたくことはしませんが、加工向けとなる傷物、変形物には安いものだからこそ魅力を感じるのでしょうし、生産側も発生量の減少に気を付けていても一定数は発生し販売する現実があります。 農場で割卵する液卵は多くのバイヤーは関心は持たないとも感じますが、GPセンターからの液卵は品質や衛生面から関心を持たれていると思います。今は仕入れしにくい量ではあるのでしょうが、この先季節が進むにつれて供給も増えていきます。 確かに供給不安解消までには時間はかかるにしても、液卵は生産量が増えるにつれ一定量発生していきますので、やはり増えていくことにはかわりません。 となると、液卵が仕入れることができればもう殻付き卵に戻す必要性も感じなくなるという現実もあり得ます。 ただ、牛丼店のように生卵を注文して液卵が小鉢に入るというところまでは進んでいかないにしても、調理して提供する工程では液卵という手法が確立されたことはこの先の加工向けの姿が変わる可能性を示唆しており大変注目されます。 今日は4月1日エープリルフールですが、今日の需要家の動向がフェイクであれば良いのですが、それはわかりません。 10割テーブルエッグ出荷している農場もあるでしょうが、多くは一定数加工向け出荷をしているところも多いはずです。 キューピー向けもあるでしょうが、それ以外にも外食店向け、他加工業者向けとあるはずです。 その時、その加工向けは液卵でいいので、殻付きの商品はいらないとはすぐにはならないでしょうが、需要家はコストダウンを徹底的に行います。 つまり、原料が変わるときには製造工程を変えて徹底的に進めていきます。つまり一度構築したとき元に戻す必要性がなくなるということも覚えておいてください。 他の農場の話でしょうと片付けるのか、業界内の変革が訪れる可能性があるのか。 皆さんの立ち位置で大きく視野は変わりますが、業界を見る者からすれば今回の供給不足は経済的視点から変わるきっかけを作ったとも感じます。 鳥インフルエンザによる被害は鶏の処分以外にも販路にも影響するお話をしていますが、今回は販売先が変わるということ以外に販売先が商品選定を変えていたということもあり得るということを示しており、よその農場の話題で片付けることは長い目で見ればあまり良い視点ではないかもしれません。 養鶏業界が困れば消費者も困るでしょうという論理は、少しづつ変わりつつあるのかもしれません。 代用品がある時代だからこそ、欠品を作らないことが至上命題なはずです。 でも鳥インフルエンザ被害は偶然発生することであり、出来る手だてがないと言い切る視野ではこの先も変わりません。 消毒設備はあるが、本当に実施しているのか。 空気感染もあるとされますが、なぜ道一つ隔てた農場は感染しないのか。 それは本当に偶然なのか。 消毒しているといいますが、消石灰は前回から何日経過しているのでしょうか。 そう考えてみると、まだできるところは多いのではないかと感じます。 昨年に続き今年も発生した養鶏場もあります。同一農場ではないにしても連続しているということはウイルス量が多いから発生しているのでしょうか。 それとも人の意識や教育が十分であったのか。 お金があれば設備は買えます。 でもお金だけでは人の意識は変わりません。 本当に農場を心配していくのであれば、設備以外にも何かあるのではないかと感じます。 それは、意識もありますが従事者全員が本当にインフルエンザに立ち向かう意識が同じなのか。 いやうちの従業員は意識が高いし、よく働くという農場主もいますがでも発生した農場でもありました。 では偶然なんだと論理的に説明はできません。 例年3月で鳥インフルエンザは終焉を迎えますが、昨年は5月まで発生していきます。 野鳥からの感染事例は今も続いており農場周辺はまだ安心できる状態ではないのかもしれません。 だからこそ鳥インフルエンザの殺処分が悪いとか不満を口にする農場もあります。 本当に大事な視点は発生させない設備と人に尽きるのではないかと感じます。 それが十分発揮できることで、鶏卵相場の高騰も治まり、販路先の変革が加速度的に進んでいくこともなく今までの関係が継続できていたのかもしれません。 当事者は当事者の視点で話します。だからこそ鳥インフルエンザが悪い、10年以上発生していても対策が進んおらず殺処分しかできないという否定的な意見もあります。 そうではなく、今一度農場を見直すことが大事ではないかと感じるのですが、皆さんの農場のように発生しない農場は発生した農場と何か違いがあるのではないかと思います。 その差は僅かかもしれませんが、その差がわずかでも、とても重要なことなのではないかと感じます。 その僅かとはなんでしょうか。