全農は21日7月から9月期の配合飼料価格を平均2200円の値上げとすることを決定しました。
畜種や銘柄により異なりますが、久しぶりの値上げとなります。
穀物の米ドル建て価格はほぼ誤差の範囲と感じますが、為替水準が前回改定時期と比べ上昇し、この先も同水準か160円を想定する為替相場もあり、主な要因に感じます。
また、穀物輸送のタンカー運賃は現在60ドル程度とされますが、直近は輸送日数上昇からバラ積み船の予定延長等需要の増加もあり上昇傾向が見られます。
原油はおよそ80ドル近辺で世界的需要減退もありますが、投機的、需要先の在庫量の発表で相場が動く神経質な展開に至っており、夏は北半球の需要が減退し価格が下落するという例年の傾向が見られないということもあり、この先も飼料価格上昇の要因の1つになる可能性もあり心配です。
昨年から値段は下がりましたが、1トン当たりの餌代は9万円台中盤当りが標準的ではないでしょうか。
また多くの農場では配送賃は昨年末から本年最初あたりから上昇しているところもあると思います。
このため単純飼料価格に配送賃を入れるとおよそ10万円となるところもあるでしょう。
その配送業者も苦労されていると聞きます。
餌を搬送する時、車両と人件費と様々なコストがかかります。
最近ある運送会社のお話を聞く機会があり、人のコストが高くなっていると言います。
少し前までは勤務20年等年齢が高い人が年金を併給して仕事をしていた人が高所作業に不安があり離職したから、人を募集したのだけど月22万円とか出してもなかなか採用までに至らないと言います。
この要因に配送業の運転手の方が賃金が高く、飼料運搬を専門にする運転手ではその条件では厳しいというのが理由だそうです。
それは、物を預かり、物流地点へ運ぶという作業と違い、餌工場で受け入れし農場へ輸送し高さ5メートル、10メートルはある餌タンク高所まで登り、餌入庫をするという特殊事情もあります。
ただ運ぶだけなら何とかなるが、高所作業をさせて1タンク当り手取り1万円、1.5万円と言われても厳しいですよ。
と本音を語ってくれました。
ですから、1タンク2万円、3万円あっても良いのが本音で、県内でできれば近距離で1日3往復、4往復できればいいけど、餌工場が遠く1往復高速道路料金込み4万円と言われても正直採算的に厳しいですね。
と言います。
そしてこの時代大型免許を保有する人が本当に少なく、普通免許はあるけどという問い合わせはありますが、大型まで取得させるのもまた大金です。
少し前の普通免許は今の中型限定免許ですが、ここから大型もそう簡単ではありません。
教習も20時間30万円という相場ですから、大型へ移行するのも大変です。
最近は取得補助をする事業所も多いですが、趣味で大型を運転する人は少ないはずですから実生活で大型免許のありがたさを感じる人も多くはありません。
収入増加のために取得するという人が多いと感じます。
また補助すらない企業では自腹で取得しますが、ここまで準備をさせて給与23万と言われたら、ほとんどの人は考えて返事しますと答え帰っていきますが、折り返しの連絡はないと言います。
実際同地域で夜勤なし7時から16時までの勤務で大型車運転月30万円から相談という業種が多く、出だしから条件面で不利と言うのが実情と語ります。
でも荷主(養鶏場)に対し、差額となる分まで補償せよとは言えないと言います。
今回のように1トン10万で納品はできないからです。
もっと請求しないと生業にならないと言います。
ですから、私の代で運送はやめることにすると荷主に言っているのだと言います。
実際、自己運送から、配送専門業者へ再委託する配送業者もいます。
そうすると、車両入れ替え代、固定費となる人件費が抑えることができるからと言います。
でも自己運送ではないので、ゆくゆくは専門業者の存続しだいで運搬業務がなくなることになるでしょう。と先を案じています。
でも老朽化した車両を1000万円以上かけて入れ替えする、人を30万円以上支払い教育しその先まで雇用を続けることがその先10年、30年まで安泰なのかという難しい選択をしていると言います。
さて、様々な物が高くなっていることは皆さんも感じていると思います。
電気、ガスは補助が終わりましたが国は再度補助を8月から再開すると言います。
でも時限措置で基本3か月間の実施と言うのが素案になっており、目安軽減額は標準世帯で月1400円程度としているようです。
どこまで農場内での恩恵が受けられるのか未知数ですが、補助が8月から10月まで行われ、猛暑の電気代上昇期に僅かですが補助がされることでしょう。(企業向けは1.8円1kwh当りの補助額)
農場内でのガス代もどこまで軽減できるでしょうか。
また、10月頃予定の最低賃金の労使協議が25日から始まっています。
現在の全国平均時給は1004円です。
最も高い東京1113円、神奈川1112円、埼玉1028円、千葉1026円、茨城953円、鹿児島897円と養鶏が盛んな地域も昨年から見て30円以上1時間当たりの単価は上昇しています。
中央最低賃金審議会では、昨年比43円増となった現在1004円を物価高等の影響を反映させ、今の水準より上回る額を軸に調整が進むとされます。
早ければ7月下旬に目安額が報じられ、各県の改定額は8月頃から公表されると思います。
昨年と同じ30円程度でも千葉1056円、茨城983円、鹿児島927円と1時間当たりのコストは引きあがるわけです。
これは外国人技能実習生も同じです。
もっと上がればどうなるでしょうか。
このように、餌の値上げが始まる7月からの3か月間は、様々な値上げの話を聞く時期になります。
餌、10月からの人件費、光熱費と様々な話題を聞くことになるでしょう。
農場で出来る削減策はもう多くはないと感じます。
餌を今よりもっと削る、電気を使わない・エアコンを使用させないというのも無理でしょう。
こんな猛暑でエアコン禁止となれば会社の常識を問われます。
従業員には塩を舐めさせ、水を飲ませればよいという経営者はさすがにいないでしょうが、草刈り作業をさせる従業員にそれすらさせない経営者もいます。
その必要性すらわからない経営者もいます。
昨年炎天下の中草刈りをさせて熱中症で従事者が死亡する事故が発生しています。
本来水を飲ませる、休ませながら作業をさせる、汗で不足する塩を摂取させるといった準備義務すら守れず、事故を起こし書類送検になる事例もあります。
そんなことはないという人もいるでしょうが、令和になっても昭和の根性論で何とかなると信じることも少し古い組織だと感じます。
お金を払いたくない、無駄な物にお金をかけず個人で用意させればよくできないのは個人が悪い、全部個人が悪いという方が都合が良い・・
そんな風潮でこの値上げで何ができるでしょうか。
無駄・ムラは悪の根源であると言われます。
でも無駄なのか、ムラなのかはお金を削りたい会社が決めることではありません。
必要なことを無駄と断じてはいませんか。
餌を削ることは、お金を残すということであると信じている人は意外と多いと感じます。
でも結果鶏卵の個数が少なくなる、この時期では規格外卵(Sサイズ等)がいつもより多く産出され、採算面で劣る。
卵殻が悪くなり、傷玉がいつより多くなり規格外が増える。
それは精算する数週間後、1か月後に集計伝票でわかり、対策を急に考え出す。
でも規格外増加は既に1か月も前から発生しており今から手を打ってもどこまで改善できるのか。
であれば、最初からそんなことをしなければ猛暑による影響だけで済むはずでした。
でもお金を残したい、、無駄を取りたい・・
良かれと思ったことが良くなかったということはよくあることです。
大事なのは、本当に良いことなのかと問う注意深さと思考力です。
その視点でもう一度考えて取り組みをしてください。
7月の餌代は本当に高いのでしょうか。
高いと感じるなら、収入はどのように増やす、又は維持させるのか。
そういうアプローチで考えう視点も必要なのかもしれません。
何が高い、お金がない。
様々な人生模様がありますが、ただ嘆いている、不満を表明しているだけでは7月になっても何も変わりません。
変わるのはその月の請求書だけです。
農場の効率化は視点を変えると色々見つける事ができます。
そこの無駄を取るのです。そのムラを無くすのです。
無駄ムラはこの視点でなくすのです。
目先1キロの餌節約ではありません。そこに至るまでの方法です。取ることではありません。
ムラを無くすのです。そして1キロ減らしたのです。
でも同じ1キロ削減です。
はき違えが多いと感じます。
そして現場の声を聞いて無駄を洗ってください。
残念ですが、ごますり農場部長がいるところでは、1キロ削りたいと相談すれば、簡単です。明日にはできますと答えるでしょう。
その人は削減すればノルマ達成できると考えているからです。
俺の信頼度もアップ給与アップボーナスアップそう考えるでしょう。
でも仕事ができる本当の能力を持つ人は、具体例を示し、この時期では1キロ下げることは難しいです。だって暑いから食べないのだからと答えるでしょう。
代わりに、作業スペースの1つをこの時期閉鎖すればエアコンは使用しない、電気を使わないから節約はできるはずと言うでしょう。
この視点です。
農場で経年劣化で物が壊れるという話を聞きますが、良く見ると人災で壊れるということもあります。
機材の使い方がわからず破損してしまうのです。
又はメンテナンスすらせず使い続けて摩耗して壊れるのですが、報告は経年劣化で業者発注しましただけです。
でもわからず必要な修繕費としてこれは無駄ではないのです。
良く見ればわかりますが、その見る手間は無駄であるというのです。
そして、本来は防げた事故を人災とわからず何十万と払い、業者や部材到着まで機材は使用できないという無駄が生まれるのです。
ただの無駄ムラ削りの視点で離してはいませんか。
暑いから食べないのは養鶏の常識です。
人も同じでしょう。
この視点を忘れてはいませんか。
さて、もう1週間で7月です。
今年は既に梅雨前から暑い季節が始まっています。
猛暑、酷暑も例年以上に多いような報道です。
鶏を守り、卵を1個でも多く生産する。
そんな養鶏の基本をもう一度確認しましょう。
そして、収入を維持して来るべきコスト増に立ち向かうすべを見つけましょう。