今年も世界を見ると鳥インフルエンザの感染報告が多く聞かれます。
農林水産省の鳥インフルエンザ情報では、ヨーロッパ方面では、スペイン、ドイツ、フランスで本年6月を最新としてH5N1を要因とした鳥インフルエンザの発生が確認されています。
皆さんも承知されていることと思いますが、鶏卵生産が盛んな米国でもH5N1が要因とする発生が6月24日を最新として報告されています。
最近は、H5N1が乳牛で感染が広がるという報道もあり、8日付英科学誌ネイチャーに「従来のH5N1より人への感染効率が高まっている可能性がある」と発表されています。
例年、ヨーロッパ等北の地域ではまん延とは言いませんが、通年の発生報告があり日本では珍しいものでもなく報じられることはありません。
恐らく、この秋9月には鳥インフルエンザに注意等の喚起が始まり、9月下旬か10月頃野鳥からの感染事例が聞かれるようになり晩秋以降農場感染が聞かれることでしょう。
昨年は被害が少なく、もう通常モードで農場管理を進めているところが多いと感じますが、本年はどのような年になるのでしょうか。
世界では、鶏卵の供給が厳しくなりつつあるようです。
米国では、4月30日ロイター記事には鳥インフルエンザによる影響が3年続いており、商業用鶏卵生産1000万羽近い鶏が淘汰されており、昨年鶏卵が高騰しその後暴落になったこともあり、
生産者の一部は牛舎から採卵鶏舎へ改造しゲージフリーとして販売するという農場もあれば、バージニア州のある農家は、肉養鶏から採卵鶏へ移行する予定であったが、大変なコスト(この農家では280万ドル)がかかるため、
転換を断念し、農作物の栽培へ転換し当面鶏舎は空にするという話も紹介されています。
また、肉養鶏業者に鶏を供給していた農家は、子供がその業者の工場で働いていたが閉鎖になり、これを機会に採卵鶏に移行することを考えているという肉養鶏工場の閉鎖から採卵鶏へ移行するという話も聞きます。
米国ではゲージフリーの鶏卵が全米40%の生産量(12500万羽相当)があり、ゲージフリーが進んでいます。
一昔前まで合理的主義である米国でそんな手間暇かけることはできないだろうという国内の養鶏家が多いと思いますが、ロビー活動や販路先の求めでそうならざるを得ないという流れができつつあり、アニマルウェルフェア後進国と思い込む養鶏家が一定数いたと感じます。
でも本当に後進国と言えるのは日本ではないかと感じます。
みんな反対している。
だから安泰であるし、みな同じ行動をする民族だからこそ様子見して出方を伺い、誰もしないから安心しているという感じです。
でも米国は すでに4割はゲージフリーに置き換えています。
ウォルマート、クローガー、ターゲットと言った流通店舗は、肉養鶏農家に対し鶏卵生産の要請を進めています。
同じ鶏を飼育するプロと認識しているのです。
採卵鶏ができないなら、肉養鶏家にお願いするという合理的行動です。
これを採卵鶏しか知らない人であれば安泰、安心、普及なしと言うのでしょうが、時代は流れ方が変わっているのです。
米国内の肉養鶏工場の閉鎖から、鶏の飼育が変わり鶏卵へ流れつつある中の被害拡大は、米国の鶏卵消費に大きな影響を与えることになりそうです。
また、オーストラリアでも鳥インフルエンザの被害が深刻になりつつあります。
公共放送ABCが6月10日報じたものによれば、ビクトリア州で50万羽が殺処分されています。
この地域は国内生産量が第3位になる大規模生産地です。
被害深刻度として、16羽に1羽が殺処分されている現状と言います。
これにより、1日の生産量は45万個減少しており、一部店舗は客1名の購入は2ケースと制限をしていると言います。
ですが生産者団体は全国的な不足はないといい、1日当たり1800万個以上の鶏卵が供給されていると声明を出しています。
そのような中、米国マクドナルドは7月4日から現地朝食メニューの提供を従来の正午までを10時半までに短縮する措置を始めています。
理由は鶏卵の供給を調整するためとしており、先ほどのように店舗での購入も制限があることで、供給に不安を感じさせています。
参考までに同国の年間生産量は66億8000万個です。
日本は2537000トンで、約4026億個(1個63グラム換算)で、単位が違います。
日本での比較は、わずかな生産喪失かもしれませんが、全体数が小さいがためわずかでも深刻になりやすいということがわかります。
令和4年の大流行では日本は約1700万羽の採卵鶏が姿を消しました。
約1700万個です。
100万羽農場が17農場(50万羽なら34農場)姿を消しただけでこのような騒ぎでした。
供給不安から店舗の販売制限、外食、鶏卵原料の工場の商品供給の停止や販売停止、輸入鶏卵の取扱量の増加といったものです。
世界の話と日本は違うとよく言われます。
他所は他所、うちはうちなのだと言います。
鶏卵価格の上昇は、私たち生産者側では相場の上昇という収入増加を意味します。
実際令和4年度の大流行では鶏卵相場は最高額キロ350円(東京M規準値)となりました。
本日12日はキロ200円(東京M規準値)です。
順調な消費であれば8月も同額の持ち合いになる傾向がありますが、チェーンストア協会の5月の畜産物販売価格は上昇しているものの、鶏卵の動きは鈍いという旨記載があります。
この傾向は前月より前から続いており鶏卵消費が鈍い傾向が続いている可能性を示唆しています。
現実、夏季は鶏卵需要は減退するため、消費者の店舗来店機会の減少と購入点数の減少と言う物価高による消費疲れが継続されており、消費活動は決して楽観できる物ではありません。
私たち生産者側は鶏卵相場を意識して生産していれば安心と言うわけではありません。
その根底が崩れたのは令和5年の大流行でした。
鶏卵が高くても消費者は購入するという神話が崩れ、加工は加工向け仕入を行い、消費者も購入はあれど積極的に購入することもなく、本年は消費がやや減速気味で推移しています。
鶏を失い、商品が不足し、独自の仕入をして不足を補い国内の流れが変わった。
鳥インフルエンザは、鶏を失うだけではなく、大規模になるほど国内の流通に変化を起こすイノベーションとなりました。
でも時間が経過すれば元に戻る。消費者は鶏卵についてくる。
そう信じた生産者も多かったと思います。
でもそうなったのでしょうか。
代替品が生まれ、それに不自由しなくなり、誰も困らなかった。
そんな中で生産を戻し供給が戻り、鶏卵相場は下がっていった。
それでも200円はあります。
一昔なら180円、170円まで下がっても不思議でありません。
7月から餌代、電力費も上がることでしょう。
生産コストはまた上昇していきます。
今年の輸入卵は、円安による弊害、買い負けといった問題も現れることでしょう。
既に世界的に見て日本円は弱い通貨です。
あらゆる輸入品は買い負けしつつあると言います。
肉類は特にそのような話題を聞きます。
であれば、やがて訪れるであろう大流行の再来では、鶏卵価格の上昇以上に供給の不安が前回その前より深刻になる可能性もあります。
相場が高ければ嬉しいというのは本音です。
でも供給不安は、やがて需要側の疲れを生み、どこかで調整が訪れ厳しい時代になります。それが養鶏業界のサイクルで世界も同じで米国も同じ傾向です。
毎年ハッピー、お金もハッピーと言えればよいですが、今年はコスト増から体力を失う養鶏農家も発生しています。
この状況は数年前と同じ構図に見えます。
低価格の相場ではこのような事例はよくあるものでしたが、最近はコスト増から体力を失い廃業に至るという話が多いと感じます。
それだけ、生産コストに厳しく向き合う時代なのかもしれません。
でも、本当に大事なことはそこだけでしょうか。
鳥インフルエンザがなく、安泰な年であれば、確かに相場は乱高下せず穏やかかもしれません。
相応のコストを吸収できる相場値が続いていますので、とても厳しく廃業に至るという所はそう多くないように個人的には感じます。
季節相応の相場で穏やかに年の瀬を迎えるのが、本当の安泰なのではないかと思います。
よく言われることですが、鳥インフルエンザは防ぐ方法がなく、運しだいと言われます。
でも養鶏を見ている者から農場を観察していると、本当に運だけなのか?と感じます。
飼養衛生管理は、本当に今のままで大丈夫なのか。
鶏を管理してくれる従事者は本当に意識を高めて鶏を管理してくれているのだろうか。
農場敷地に水たまりがいつもあるが、野鳥が水を飲みに来るが本当にそれは自然な風景なのか。
その意識で鶏を守れるのか。
ねずみは、寄生虫は、野外株の鶏病侵入は・・と課題が多いとは思います。
見えないものだからこそ、人が見える可能性を探し封じるという姿勢を暑いこの時期だからこそ検討し、備える時期ではないかと思います。
暑い夏に猛暑対策、酷暑対策と言っても多くはすでに遅いということは皆さん知っているはずです。
猛暑だからどうしようか、水でも流して気化熱で温度を下げるから工事をどうしようか、と言う話をしているところはないと思います。
だって材料の仕入、職人の手配をしているだけで8月9月まで進んでいきます。
8月はお盆で職人は1週間休みです、他農場の工事で職人は十分確保できず、半分で作業開始したけど、工事開始して台風だから職人は休みで、休み休みして10月に完成しましたでは遅いですよね。
季節の対策はその前の季節までには終えているは、養鶏の常識です。
今考えるのは秋以降のこの伝染病の対策です。
皆さんも、暑いからどうしようかと考えることも大事ですが、9月には野鳥からどうなのか、鶏舎からはいつ発生報道があるのか、時間は多くはありません。
去年まで安泰だから、今年も安全。
それだけの根拠で、殺処分されていく鶏達も気の毒です。
であれば、できることを考え、昨年を振り返り今年はアップデートして対策を講じる。
そんなことを考えても良いのではないかと思います。
繰り返しますが、「季節の対策はその前の季節までに終える」この言葉を思い出して、想定してみてください。
秋は鳥インフルエンザ以外にもワクモの再発も聞かれることでしょう。
その対策もこの季節までに終える。
そんな前倒しの考え方で、できることを確認し次の季節を迎えていきましょう。