nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

新たな視点での鶏舎管理を検討する 夏は暑いですが昔ながらの方法で乗りきれるでしょうか

梅雨入りが遅く、例年より早い梅雨明けを迎え、本格的な夏が始まりました。
東北地方では河川の氾濫もあり、とてもご苦労されていることと存じます。どうぞこの先も警戒してご対応ください。


今年は(今年も)若鶏の産卵立ち上がりの不安の相談が多くお客様の農場に伺う数が増えています。

この時期の成鶏導入は秋以降の収入計上からとても大事なものですから、いくら暑いから仕方がないでは高産卵を維持して秋を迎えるという当初の目的に到達できないという心配が多いのではないかと感じます。


私どもコンサルの一番忙しい時期はこの夏になり、私をはじめ職員はお客様の農場に伺い鶏舎の環境、構造からの助言、餌の配り方と工夫といった初歩かもしれませんが、大事な点をお話ししております。


夏は暑いという言葉は当たり前のことですが、毎年暑く、最高気温が更新されて、うだるような暑さが続きます。
お会いする農場の方や従事者の方もつなぎ服ではキツイねと話し、頭には帽子の代わりにタオルを巻き付け、流れる汗を拭きとっています。


鶏達も暑いのでしょうか、朝からハアハアとパウンディングして暑いという仕草をして私を見つめています。


食下量も下がり、日中は餌を食べる量は明らかに少なくなっていますので1日の必要量が確保できないという言葉をいただきます。


最近の傾向を見ると、一昔は「暑いから食べないは当たり前、だから何もできないし、むしろしないほうが良い」という言葉が良く聞かれていました。


でも鶏を見ると「立ち上がりは何もしないから何もできない」というロットほど、秋以降食下量が上がり、生産個数は増えていきますが、持続が良くないというロットも散見されるようになりました。


これに関する相談も秋以降いただくのですが、実際はこの夏の対策をどのように講じることができるのかという所が要になっているように感じます。

 

鶏の基本ではないですが、鶏が卵を生んでくれるのは餌を与え、水を必要な量を与え、ストレスなく飼養することが基本です。
そこに点灯管理が加わり鶏の性能も重なり連続産卵して収入を得るわけですが、生産個数が増えないということは、どれか1つが足りていないということではなく最近は全てが足りないというのが、私の考えでもあります。


立ち上がりでとても大事な点は、最初の卵を生むまでにいかに体重を伸ばし、連続した産卵ができるように工夫を与える時期を言います。
つまり、餌を多く与え、点灯アップして鶏のコンディションを整えるのが仕事です。そして体重の増加から鶏の成長を確認し、自社の指標から見てどうなのか等を見るわけです。
自社の体重指標がない場合、種鶏メーカーが発行している「飼養管理マニュアル」を参考に週の増体量を目安に自社の指標としてしっかりと育てることが大事になります。

 

成鶏の飼養管理は多くの場合5年10年とだいぶ前の自社基準で飼育されていると思います。


例えば餌を与える回数と時間は一度システムができると、多くの農場は変更をすることはしません。

それは変更することによる弊害があるでしょうが、一番は不自由しないので直す手間が面倒だからというのが本音でしょう。


ですが、何も考えなくなった農場では、鶏が食べないという基準を見失った農場もあります。

これは人が入れ替わる、管理者の技量が劣化する、そもそも数値以外の情報を収集しないと言ったことが理由ですが、1日の食下量が下がったという数値だけを根拠に説明する人もいます。


その場合、その上司に当たる人も数値からの判断になり、足りないね、暑いから食べないから仕方がないね。

秋まで待ちましょう。となるのです。


でも今の立ち上がりの遅滞はその後回復はありますが、持続に不安をあたるきっかけになりやすく高産卵の鶏だからこそ、不足は後で影響を及ぼすことまで知る人は少ないように感じます。


昔のように回復していくので問題がないという基準から抜け出せない農場もあり、この点をクローズアップする農場は少ないようです。
でも少ないと困るし、どうしようという「収益の観点」から不安を感じ相談をいただくようなイメージを持っています。


さて、成鶏の立ち上がりは肝心であることは皆さん一番知っていることです。


立ち上がりとは、育成期を終えて、点灯が上昇し、餌を食べて130日過ぎには最初の鶏卵を生み、140日頃には5割産卵に至り、160日齢以降には9割に至り、190日齢には最高点96%、97になるというプロセスです。


夏は点灯が上昇し、餌を必要量得られず、135日頃初卵があり、150日齢前後で5割、170日齢頃9割でそれ以降はダラダラ、良ければ210日令93%といったところでしょうか。


立ち上がりは、ロケット発射の例えで言えば、いかに高くロケットと言う産卵率を高く打ち上げるのかという例えによく使われます。


ロケットの発射台を高く設定しそれに合わせて管理し開始して97%までもっていく、それ以降は鶏の性能も高いため、水平飛行のように高産卵が持続していくわけです。これを多くはピークと呼びます。


その後下降が始まりピーク産卵後という時期になりますが、上手な飼育であれば500日令であってもヘンデー産卵は白90%程度の5%低下にとどまり、赤88.5%といった高い数値を示すはずです。

ゆるやかな下降線を描くので、いかに高いところから緩やかに下げていくのかというのが経営の要になります。


最近は強制換羽を必要としない鶏まで改良が進みました。

これにより収入が増加している農場もありますし、緩やかな下降線というメリットから強制換羽をせず換羽した場合と同じ日齢まで飼育するという鶏の能力を最大限活用している農場も増えました。


卵価が高い時ほど安定して収入を得ることができ、途切れないということです。

 

でも餌代節約からまだ行うところも多いのですが、強制換羽するところほど、産卵ピークは低くてもかまわない、ピークの落下は早くなっても仕方がないという、
強換前提のスケジュールで進めることで餌を削り、個数を削るという農場も散見されますが、総個数は強制換羽しない農場より明らかに少なく、餌削減が収入補填をしているような状況です。


鶏卵相場が高い時ほど機会損失しているように見えますが、出費が抑制されていることがいち早くコスト減を実感できるという安心感があるのでしょう。

 

では、暑い夏を迎え立ち上がりをどのように見ていくことで発射台を高く設定できるでしょうか。
強制換羽するのであれば、恐らく問題にならない話題だと思いますが、しない場合は、ここはこの先1年半近くの収益に直結する大事な最初の関門です。


立ち上がりの基本をもう一度見てみますと、点灯、餌、水そしてストレスからの解放ですから、何が阻害しているのか確認をします。


多くは餌と答えるでしょう。


計量器がある農場であれば1日の終わりに食下量がわかるからです。

だから足りないことがわかると。


でも足りないは何を持って足りないのか、と言うことを説明できる人は多くはありません。でもそこが要であることを知っておくと良いでしょう。


皆さんの農場では最低食下量が設定されていると思います。


栄養的な要素を設定しているのでしょうが、現場にもそのことを伝えることが大事です。
数値は独り歩きしやすいもので、その数値であればよい程度であると、これくらいは問題ない、これは多すぎといった本来の目的を失い、結果意図しない結果を及ぼすことがあります。


例えば、100グラムが最低とした場合、5グラム多いとした時、多くは普通でしょうと答えると思います。

逆にマイナス2グラムであればどうでしょうか。
多くは少ないと答えます。
それは、100から98と2桁に変化した視覚からそう感じるのではないかと思います。


でもいずれも根拠はないのでただ多い、少ないと感覚で判断しているだけです。

これは正しい判断をするとき誤りますので、現場にはその根拠をよく説明しなければ数値の意味をなくします。


むしろ数値を示さないほうが良いになりますが、それでは現場が勝手に動くだけでコストだ、なんだと言っても何も解決はできません。


少し根拠的な物を話しますと、100グラムの基準とした時上下5グラム程度であれば多くの場合過不足があるとは言えないのが経験から感じる数値です。


でもそれを超える場合、多い場合は体重過多、少ないと体重の横ばい又は減少多くは生産量の横ばいか低下となります。


これは餌のグレード(設定銘柄)が1つ上がるか、下がるような状態で、設定を超える給餌になっていると言えます。


ですから、夏だから1グレード下がる状態であれば当然体重は横ばいになり生産量も増えるというより、なだらかに増えていく感じになります。


だから餌が足りない又は押し上げる必要性があると判断するわけです。


解決のための方法は、何年も変化させていない餌の与え方(配餌時間)を変えるということです。
なるべく涼しい時間に与え、日中はこだわらないという意識で時間を組み立てるということです。


例えば朝7時に餌を与えるなら、もっと早い6時ではだめなのか、更に早い5時台はなぜできないのかという視点です。

 

そこに原則と言う養鶏の考えを用いて検討していきます。
当たり前のことですが、点灯は外の時間より早く点灯開始します。

鶏舎を暗くしても外が明るいと点灯管理になっていないからです。

4時には明るいのに、点灯開始は6時では、すでに2時間は明るい時間を作っている状態です。

 

ウインドレスだから従業員が出勤する7時以降でも良いでしょうが、なぜ6時や5時から点灯しないのかまで説明はできないところが多いように感じます。
多くは、昔からそうなっている、作業性から見てその方が良い等鶏と言う基準になっておらず、高床式の古き時代の考えがそのまま踏襲されているように思えます。


でも涼しい時に餌を与えると間違いなく食下量は上がります。

ウインドレスであっても外気温より低い風を取り込むことはできません。

 

問題は日中のうだる時間に何回も昔から変わらず与えて選び食い又は背を向けて食べないという時間を作るという今を知らないということです。


例えば、5時台に餌を与えるなら産卵開始前だから食べないとよく言われます。
その通りで多くは6時以降から生み出すことが多くピークは感覚ですが8時台から9時台にそれなりの数が産卵を終えます。
これは、点灯開始から約2時間くらいから産卵動作に入る鶏が多いというのも理由になります。

ですから4時点灯開始であれば6時台からが始まり更に2時間後の8時台がピークになるわけです。

ですから産卵を終えて食べだすピークは9時台となりますが、早く配るということは早く産み終えた多くの鶏の栄養を補う機会を与えます。

そして、ある程度減るのはこの場合8時台になるはずです。


つまり、不足を補うのは5時台の次は8時台となる設定もできます。それ以降は餌箱の空具合で決めることで問題が解決できますが、9時も過ぎるとかなり鶏舎も暑くなりそこから14時頃は減らない限り給与しなくても良いという考えもできます。
でも産卵を終えて明日の準備をしてもらうためにはすぐに必要量を補ってもらうわけですから、餌箱の状況から13時ごろに給餌機を動かし反応してもらうとか、最終時刻を17時にして消灯までにある程度食べ終えてもらうといった工夫が必要です。


多すぎると選び食いして逆効果に至りますが、少ないと不足し産卵に影響を及ぼすということを知ると、与え方1つで解決できる方法が見つかるものです。

 

そして点灯アップは消灯側の時間を延ばすということも大事ですが、早い時間から点灯開始できないのかという発想も大事です。

 

多くの場合点灯アップ時間を表にして時間設定してくはずです。

その多くの見本は、朝を伸ばし次週は夜延ばすといった具合ですが、鶏にとって均等の延ばし方はあまり重要性を持たないというのが管理している側の本音です。

 

それより、必要な時間に合わせて延べ点灯時間(多くは16時間、17時間)を作る方が大事なように感じます。
でも現場が知らないわからない、俺知らないでは暑いから仕方ないで片付けるしかありません。


そして厄介なのは、昔は不足しても秋に入ると食べていくことで元に戻るという今では通じにくい方法論を使うということです。


夏が長く、残暑も長い暑さが続く現代では10月頃まではそれなりに暑い時期になり、急激に秋を迎え冬になるような季節になっています。


回復する秋は短くその間日齢も進んでいき回復を待つ前に、回復しにくい日齢になることの弊害まで知る人は少ないように感じます。


であれば、暑いではなく、今の季節から1グラムでも与える方法を模索することが大事ではないかと思います。


最近の鶏は食べない、飼いにくいという声も聞かれるようになりました。


多くは改良からそう見えるように感じますが、大事な点はその改良に飼養者が追い付いていないように思えます。


その基準が古いものを参考にしているのです。

冒頭の餌の与え方は5年10年前から変えていない、夏は暑いが仕方がないというものです。


この先、鶏の飼育も昭和・平成の時代とは異なる飼育になるように思います。

鶏の改良は上手な管理者であれば更なる農場収支への大きな好影響を与えるように感じますが、今のところ多くはその恩恵にあやかれるのかわかりません。


鶏が変化しつつある中の季節の変化と、変わらない人の考え。
このミスマッチが秋以降の個数に大きな結果として現れるように思います。


人を育て、今を知り、今の管理を模索する。
本当はそこにお金をかけるべきではありますが、それより資産として価値がある鶏舎の改良、新築、人をもっと雇用し箔をつける。
そこだけに意識を取られることがないように、次の農場経営を考えてみてはいかがでしょうか。


夏は暑い、仕方がない。
本当にそれが原因ですか。


立ち上がりは何もできない、意味がない。
本当にそうでしょうか。


昔からの飼育は絶対に正しい、先代の教えは正しい。
そうでしょうが、時代に即したものでしょうか。


暑い時だからこそ、何もできないのなら考えることに集中しても良いかもしれません。

鶏が変わり、人も変わるような時代になっていて、真の養鶏のプロが生き残るような時代に入っているように思います。

昔のように、鶏がいれば卵があるという時代から鶏、環境が変わっている中で1個でも多く卵を取ることができるのか、この考えが農場を発展させて先行く養鶏家になるのではないでしょうか。