2025年は1月に入り鳥インフルエンザによる防疫措置が急拡大し、特に鶏卵主要産地の被害拡大から養鶏家への心配する声が多く聞かれると同時に鶏卵価格の高騰を心配する報道も増えており、この春先までの需要家の懸念の声も聞かれます。
本年度の被害状況は全国14道県51事例の発生、約932万羽の殺処分と農林水産省から公表があります(2月24日0時時点)
最終発生は2月1日千葉県旭市の事例となり、以降本日時点更なる発生は公表されていません。
最近の報道を見ますと、鳥インフルエンザが連続発生した地域での作業従事者(特に県職員の方々)の疲弊に関すること、現行制度での限界、県の対応の限界と予算の補充等の見直しを解説したり、特集して取り上げるメディアが多く見られました。
この声は養鶏家からも多く聞かれており、昔のように何とか対応できたことを本来は見直しして、拡充や予防策の推奨と導入のための予算拡充といった振り返りを必要としていたはずですが、そのような余裕もなかったのでしょう。
何とかなったから、今年も大丈夫なはずのような感じで本年度を迎えて疲弊したようにも感じます。
何事も事前に考え、対処しておくというのが基本です。
是非本年度の改善点について県のみならず国も真剣に検証し次の発生の際に役立てるように準備を進めていただきたいと思います。
そのためには本年の事例、特に千葉、愛知の事例は見直すための貴重なデータが存在しています。
他県の事例のような単発発生を想定するだけでは、恐らく次年度以降も繰り返しになりまたどこかの県は疲弊するという悪循環に至るでしょう。
今回の事例はこの先10年それ以上の未来に対し、養鶏産業に対してできうる政策を作るデータとして活用できるはずです。
ただ、行政側は鳥インフルエンザに対し、あまり高い意識はあるようには見えません。
多くは、養鶏家側の防御の甘さを指摘するところもあるでしょう。
確かに疫学調査を見ても「ネズミの侵入痕跡がある」「金網の補修が不十分」「鶏舎に入る際の靴履き替えのおろそか」「早期通報ができていない」等
養鶏家側の不備(正しくは飼養管理衛生基準の違反)を指摘していますから、これをしっかりしておくべきだろうというスタンスなのかもしれません。
その意見も正しいと感じます。
ですが、それ以外の視点も大事です。
例えば、千葉の事例は2事例以降風に乗ったのように被害が進んでいく傾向がありました。
ブログにも書きましたが、千葉北東部は北又は北東の風が多く吹くため、風に従った傾向が数例ありました。
これをただの偶然と言えばそこまでですが、被害が進むにつれ風は北から北西になり、西風が多く吹くようになると、西側地域も偶然かもしれませんが広がる傾向がありました。
確かに一昔は人が媒介する、車両が広げるといったこともありました。
その考えは今も正しいのですが、分けて考える必要があります。
最初の発生は恐らく野鳥からの伝播で人が車なのか人が運んだのかということになりますが、鶏舎にたどり着くという姿になるでしょう。
これはいくつか千葉の事例で予測できます。
鶏舎に侵入し水平に広がり通報に至り殺処分開始となるのでしょうが、その時鶏舎は埃と一緒にウイルスも相当数浮遊しているのでしょう。
それが排気口から強制に換気され放出したりして外に出て風に乗り運が悪いといいましょうか、近隣の農場に広がるという姿も想像できます。
ですから、人が車が媒介とそれだけを信じてしまうと、連続発生の原因を見間違えると言うことにもなります。
最初はそれが起因して、風に乗る。
でもすべては風が要因ではなく、人・車が媒介した事例も予測できるということで、単一の思考ではいつまでたっても想像だけでシーズンが終わり、来年も繰り返すのではないでしょうか。
ですから、考え方として人や車と言う媒介の遮断、動物の侵入防止という初歩が重要になるのではないかと思います。
でもそれだけでは安心できないという時代になり、入気口フィルター設置の推奨、感染しにくい鶏の飼育という遮断も想定し始めているでしょう。
これも養鶏家から見てどうなのかと言う視点ではないかと感じます。
フィルター設置なんか有効なのか、人をはしごさせないと効率的な人の運用ができず、高コスト体質になる、管理者が少ないので複数の農場鶏舎を巡回させないとしょうがない。だって有用な人材がいないからという声も聞きます。
このようなコストだけ思考に多く見られるワクモ対策も同じ意見を聞きます。
ワクモ発生は普通のことで殺虫剤も高額なものは効果があるが、再発もあることから費用対効果から導入せず従来の薬剤を使用して、爆発してから鎮めて再発してまた鎮めるという繰り返しになってしまうが仕方がない、薬が効きにくいけどまあやっている程度の場しのぎになるだけの作業になるところもあるでしょう。
あるいは、鶏が斃死するのは仕方がない。
「だってワクモだから」とよく聞かれるある意味の当たり前の思考ではどうなのかと言う農場もあるでしょう。
ワクチンの定期接種をおろそかと言いますか、十分の抗体価を確認せず投与時期を後にずらすという節約錬金術を実行しているところもあるかもしれません。
当然健康で過ごせない鶏達は些細な変化で体調を崩すでしょう。それが運悪く鳥フルだったら・・
という姿を想像して見ると、今の農場運営はどうなのか、その当たり前が本当に正しいのかもう一度考え直しても良いかもしれません。
このような簡単に想定できる事例から、皆さんの農場はどのように鶏を守り安定した経営を進めていく礎を作るのでしょうか。
今から想定していくことも大事ではないかと感じます。
さて、気になる鶏卵相場ですが10日時点M規準値は320円(東京)です。
これは被害が甚大であった令和4年度の発生真っ只中の令和5年3月の平均343円に近い過去5年で2番目の高さになっています。
ご存じの通り春に最高値350円を指した年です。
この年は被害が深刻で回復期は秋以降になり緩やかでしたが年末にかけて相場値を下げる年でした。
復帰する鶏が夏以降になり秋以降に相応の生産に戻り例年より高いものの値を下げることができたという年でした。
翌令和6年は発生数が前年より低いこともあり相場値も例年より高いものの下がることができました。
本年は、2月1日の発生から新たな鳥インフルエンザによる被害はありません。
弊所管内ではハクチョウ等渡り鳥は自分の国へ帰郷したようでその姿を見ません。
この先新規感染が聞かれない場合、この相場値からわずかに上がるところで落ち付くものと思われます。
恐らく瞬間的には350円に届く可能性もあり、この先鶏卵相場は高く推移するでしょう。
また千葉県内およそ3割近い被害を受けた北東部の再開は、早いところで初夏ごろには再導入もありそうですが、生産量として反映できるのは秋ごろになるのではないでしょうか。
多くの農場は消毒して、法令不備の修正を続けていることと思いますが、本来の生産能力に戻るには1年程度はかかるはずです。
これは農場の経済事情ではなく現状の再稼働のプロセスからそう言われています。
そして農場によっては埋却地を再度見つけるために土地探しをしなければならないところもあるでしょう。
ご存じの通り、埋却地は養鶏家が見つけることが法令により定められています。
皆さんの農場はないでしょうが、農場によっては稼働時埋却地の広さが足りないという所もあるでしょう。
増羽したけど土地の確保はないといった事例です。
既存では広さは十分であったものの増羽により不足が生じたという事例です。
意外と多いお話ですが、それでも指摘を受ける程度では経営は続行できますので、まあ縁があれば土地が買えるだろうという程度で経営を続けていて今回被害があり、今回埋却地を使用し更に不足面積が拡大したというものです。
昨年暮れ新潟県の農場は鳥インフルエンザによる被害から回復させるため新たな埋却地を1年探していたそうです。
しかしながら近隣には広さ十分な土地はなく再稼働条件を満たせなかったようで、再稼働の準備(不備の改善等)と同時に進めていたのですが昨年12月末で閉場を決めたそうです。
土地の確保はブログにも書きましたが容易ではありません。
庭先で埋却できるほどの羽数を飼養されている農場はありません。
人を雇用して稼働するわけですから相応の羽数になります。
これにより大量生産して収益を上げていくというのがビジネスモデルなわけです。
エイビアリーといった飼育では羽数を下げなければ生産はできず鶏卵1個の価値を高めなければ、ただの減収にしかならず導入したいと腰を上げる方は少ないでしょうし、それが普及しきれない今の現実です。
鶏卵をいかに多く取れるのかという視点が経営の要になります。
ですから羽数は多くなり万一の際の埋却は相応の広さを必要とされてしまうのです。
ですが、その辺の畑を片端から勝手に埋めていくということはできません。
そこが荒れ地や耕作放棄地であっても所有者がいるからです。
稀に弊所に1000坪の売地勧誘が発生します。
坪4000円で荒れ地はどうかと聞かれますが、弊所の場合その土地が以前何であったのかはデータベース化しておりわかります。
この土地は畜産農場で閉場した際更地にしてガラス片、コンクリ片といった廃材を埋めていることを知っており埋却に向くものではありません。ですから500円ならどうですかとわざと引き下げを提案します。多くの場合カモではないと知り引き下がりますが、それでも良いと言われるときもあります。
その際には残置物を貴社引き取り込みで良いかと念押しすると引き下がります。
つまり赤字にしかならない土地を売りつけているのです。
そうです。
安い土地はわけがあるのです。
その多くは残置物であったり、沼地、底地である場合があり埋却に適していないのです。
でも1000坪400万円なら良いなと言う方もいます。
普段使わないし保全する手間はあるが約束通り土地は用意できたとなるのです。
でも不適地であると知る時は、試掘したときにわかるという流れです。
でも代替地はないからごみを掘り出しそこに野積みして穴を掘るという流れになるのです。
これが今の現状です。
では土地が十分でなくても、全処分を避けることをするには何をしていくべきでしょうか。
ワクチン?
分割管理?
マンションのように地上10階建ての鶏舎にして土地を効率よく使うのか?
養鶏はただ鶏を飼うという時代は終わりました。
鶏を飼うリスクを知っておきできる対策を講じて鶏を守り、自身の農場を守るという発想が必要になります。
1個の鶏卵は1羽の鶏が生みます。
でもその策を講じてくれているから生んでいてお金になるのです。
鶏の性能でそうなるだけのという思考は、いつか農場を自ら潰してしまうでしょう。
法令を変えることは大変難しいでしょう。
米国が変革をおこせば恐らく日本も右にならうと思います。
その米国は新大統領が上下両院合同議会の施政方針演説で「前政権は卵の価格を制御不能にした」と発言している通り、
鶏卵価格が高騰しており前年比2倍というところもあるようです。
レストランでは鶏卵を追加する場合1個当たり50セント追加と言う事例、店舗では購入数量の制限といった話が昨年から聞きます。
このこともあり米国は世界各国から鶏卵を買い付けています。
個数を補うため数か月以内に1億個程度の鶏卵を手当てする必要があるそうで、オランダからの輸入ができるための措置を実施していると言います。
そして輸出世界3位のトルコでは国外流出を防ぐため新たに税を導入し安易な流出を防ぐ措置を行っているようです。
米国は、オランダ(世界1位)からの購入の他、ポーランド(世界2位)、トルコ(世界3位)の他インドネシア等からも手に入れる方法を探しているようです。
こうなると、全処分はどうなのかと言う話もあるかもしれません。
そして不足が生じると他国から買い付けて急場をしのぐということもあるでしょう。
日本もブラジルから少し前、通常以上の量を買い付けて令和4年の大流行に備えました。
供給が鈍ると生産者側は上からの目線で商売もできるでしょう。
でもそんな目先の利益で経営していてはいつか消費者(バイヤー)が離れてしまうでしょう。
お願いされたら上を向き、値崩れしたら頭を下げるというご都合主義では、そんなところよりいいところと取引したいとなります。
それは鶏卵相場が落ち着いた時、復讐劇のように幕を開けます。
この先、養鶏を取り巻く世界は厳しくなるかもしれません。
国内安泰、インバウンド安泰、だから需要は旺盛である。
生産量は下がると相場は上がり収益は改善する。
その通りでしょう。
でも被害を受けて再稼働する際には、次の埋却地はあるのか。
繰り返し発生する農場は、埋却地に余裕があるから継続発生してしまうのか。
そもそも繰り返すとは何が要因なのだろうか。
それは運だけの話なのだろうか。
多くの方は今年発生がないから、来年もないと信じているだけなのか。
そうならないためにできることは本当にないのか。
そのうち養鶏業は土地持ちが勝者になる時代になるのでしょうか。