厚生労働省の最低賃金改定に関する審議会が26日から始まりました。
今年の春闘による賃上げは5%を超えていますので、昨今の物価高を加味し数十円程度の引き上げを検討していくと予測されています。
現在の全国平均額は1121円ですので、数十円加味した中盤から後半にかけての引き上げが予測されます。
参考までに、本年の水準になるために目安額は63円の引き上げとしています。
このため本年も同様かその水準に近い額を想定する可能性もあります。
この審議会での結論は7月下旬に目安を公表します。
その後各県単位での地方審議会で最終的な改定額を決定し早ければ10月より施行される予定になっています。
現在の最低賃金決定に関しては、この目安額を超える金額とする県もありました。
その要因には、橋を一つ渡るだけで、他県の方が賃金が高くそこに労働者が流入してしまうという、いわゆる支払い負けをしている県もあり、それを是正したいという所もありました。
特に労働者不足が顕著な地域や、都市部に近い県は労働者の流出を少しでも抑えたいという思惑や、安い県というレッテルをどうにか剥がしたいという思いもあるのでしょう。
労働者はただ時間給職なら何でもよいという思考はありません。
車社会なら、橋を1つ渡るだけ、今の県内の職場より後15分遠いだけで時給が数十円違う(月換算なら千円単位の差になる)ならば、迷わずそこを目指すでしょう。
最近は外資系企業が最低賃金を大きく超える金額提示をしていることで、地元の求職者が減少し雇用不足を生じていると言います。
時間給ではなく正社員としての雇用でも同様に発生しているようです。
このような話は、一企業が経済的に負けているだけの話ではありますが、これは現実としてある話です。
例えば外国企業の半導体会社が進出し地元の人たちを雇用していて、さらに規模を大きくするために地元高校生を積極的に採用しているという話。
これにより、農業高校の生徒まで採用が進み、地元や農業関連企業への就職者数が減り必要な人員を確保できなかったという事例もあります。
時間給の方でも大手流通店舗が最低時給を超える(本国の支払い基準に近い額の提示)金額で積極的に採用を進めているところもあります。
どこもかしこも人手不足であると言います。
その通りでしょうし、弊所での調査でも農場さんの人の充足率は100であるという農場はありません。 もっと少ないというのが実情で、高齢になった方を積極的に採用して、何とか穴埋めを試みているところもあります。
特に若い方の採用はほぼ難しく、高校卒業生を確保するために学校訪問しても、進路指導の方は喜びます(求職リストが1つ増えるので)が、採用までには至らない(そもそも応募がない)というのが現実ではないでしょうか。
中途採用も難しくなっているように感じます。
一昔前(といっても5年くらい前まで)は、募集すれば応募は必ずありました。
しかし、面接辞退や長く務めてもらえなかった、採用しても無連絡キャンセルに至るということも一定数あったと思います。
それを踏まえての採用であったと思いますが、今はそれすらできない(それすらない)状況という所もあるでしょう。 又は大学のOBのコネを使い新卒を採用していた企業もあったでしょうが、コロナ禍を境に途切れたという所もあると聞きます。
農業や私たち畜産業は正直さっと面接してしっかり稼ぐという業態では多くはありません。
どうしてもイメージとして最低賃金の端数切り上げ程度を条件(たとえば最低時給1032円なら1050円、1100円等の端数切り上げ)とし、休日の自由度もなく、労働環境は軽作業とうたう割にはそうでない、臭い、汚いという職場が多くなっています。
夏場の猛暑作業で配慮もなく具合が悪くなったら自己責任という無責任農場もあります。
これを回避するためにその分野に外国人労働者にお願いしているという所もあると言います。
しかし、最低賃金の上昇には強く反応し、こうなると農場は破綻するとか、人を減らす必要性があるという経営者もいます。
研修会では、賃金分すら稼げない農場は経営が破綻している又は予備軍であり、だからこそできること、コスト、確認すべきこと等対応しましょうとお話ししています。
その中でも正直人は欲しいが、安い労働者を確保したいというお気楽な方もお見受けし驚くこともありますが、そんな甘い時代は昭和で終わっていることに気づけていないという方もいます。
外国の方でもこの最低時給は必須です。
県が1000円といっているのに、外国人価格900円では違法なのです。
この思考は養鶏ではだいぶ見なくなりましたが、いかに最低時給に近づけた経営を想定しているのは今もこの世界に限らず零細企業ではよく見かけるものではないでしょうか。
毎年賃金改定があると、最賃を下回るためその水準に引き上げるだけの企業はこの思考ループに乗っているように見えてなりません。
そのうち破綻という終着駅に到着する延命措置に過ぎない経営です。
まあ俺の代で経営が終わっても良いという覚悟を持っているところもありますので、そのようなところもすぐには市場からは撤退してはいかないのかなと感じます。
最近では茨城県のルールで施行した違法外国人雇用が見受けられる際の通報制度に関しては、様々意見は聞きます。
多くは感情的な話(外国人への差別になる、通報が地域監視のように見える等)が多いように思いますが、違法な人材となる方々は真っ当な賃金を支払っているのか不透明な企業に雇用される事例もあります。
働ければお金にはなるでしょうが、最低時給が1000円なのに、月15万円支払うけど時給換算したら600円程度だったということもあると言います。 多くは日給1万円、月15万円と時間での内訳は示さず大きい金額だけ見せるようなところもあります。 でも時給換算したら最低時給以下であった。当然周りの真っ当な方はそれ以上になるわけで、やっていられない、良くない外国コミュニティーにつながり、違法な仕事に手を染めて拘束され、外国のイメージを悪くさせるという今の風潮に拍車をかけるという事例もあるのではないかと思います。
この制度に関して報道の中でも「短期間の農作業では人は集まらない、ならば真っ当でない方にお願いして作業が回っている」と正直に語る農家経営者のコメントは本当に今の人がいない、でもお金は割高に支払えないという現実を説明しているように思います。
雇用主があっての雇用者ではあります。
しかし、雇用者がすべてを決めていくと結局はお金がある経営者に人材は集まり、ないところはないなりに仕事をしてやせ細っていく、又は違法な手段を用いて経営の持続を図る。こうなるわけです。
ですから、最低時給すら払えない事業主は破綻していると申し上げているわけですが、こうすると地方が衰退するとか質問を受けます。
これもそもそも衰退しているから人がいないだけでの話で、御社が例えば市場の何十倍の賃金を支払っていたとしてもその地域は活況にはなりません。 それはメジャーな企業でないからそもそも人が集まらない(知らないからこそ労働者に認知されない)ということもあるでしょうし、交通の便が悪く取り柄は静かで、地元が皆親切であるくらいでは、人が寄ってくることはありません。
最近コンサルを使用した地域活性事業も散見されますが、弊所でもご相談はありました。
しかしお断りしているのは単発祭りでは人は一時的集まるだけで、定住はしないため意味がないとお話をしています。 あるコンサートホールに有名歌手が1日限定のコンサートをするなら人は集まるでしょう。 しかし終われば皆さんは家に帰るはずです。 いつまた来るかわからないけど、このコンサートホール音響がいいからここの隣のアパートに引っ越そうかという方は珍しいでしょう。 つまり、目玉が目先のテーマなら効果は薄いのです。 コンサートホールの名称は知名度は上がるでしょう。つまりその町はもしかすると少しは知れ渡るかもしれませんが、単発なら恐らく記憶にとどめる方は少なく、費用対効果から見てよかったのかどうかの判断になる可能性が高いものです。
先ほどの外国企業の採用の話はお金が高いだけではなく、有名である、今話題の半導体企業でこの先も安泰である、他に採用条件が優れているといった点が大きく優勢に働いているわけで、この地域だから人が集まると言うことではないのです。
このような企業がこの地域にあるから集まるのです。
このように、雇用主が雇用を決めるのは正しいことではあるのですが、あまり影響力がない1雇用主だけで社会や地域の存亡がかかっていると言うことはありません。
労働者は労働条件に応じて雇用される場所を探していくのです。
地方では車があれば平気で30分、1時間近くまでは移動していくのです。 そうすると、すぐに県境あっちは時給が高い、同じチェーン店でも場所で時給を決める企業は多く橋を渡った県の方が高いとなるのです。 私たち農業も同じです。 車で通ってくれても充実した賃金と労働環境があって認めてもらえるわけです。
であれば、安い労働者を求めるなら身内を使いタダで働いてもらうのが最も安い労働力になるでしょう。 でもそんなことはできない、身内は役員でありお金を払ってあげたい、だから原資には安い労働者が必要という理由もあるでしょう。
この先労働者も人というより価値ある人になります。 働いてもらうはお金を払ってやっているという上から目線ではありません。
働いてもらい、会社が売り上げを上げたので、ありがとうと払う立場の方々です。
それを大きい企業や、外国資本の企業、地域の大きい店舗が獲得していくのです。 そこに参戦するわけですから、最初から安い人材を何て言っている余裕はないのです。
そう思っているから人が集まらないのです。
いつまでも思考が古いのです。
だから違法でも人(数)が欲しいとなるところも出てくるのです。 それを助長するから県が歯止めをかけたいと思うのです。
25年改訂(現在施行分)は施行猶予を設けた県が多くありました。
これは経営者側の準備に時間を要するから、急激に施行するには地元産業への影響が予想できるから等様々理由を並べていました。
繰り返しますが、今の時代人は潤沢にはいません。
年をとっても働いてくださいと推奨する時代です。
それは年金制度もあるでしょう。
でも露骨には言えません。
体を動かす方が健康だからと半分正解で広めて労働人口を少しでも維持する風潮を作っています。
経営側の準備で数か月、半年遅延してやっと施行するでは、今年の最低賃金施行も数か月、半年遅延していくのでしょうか。 なんか自転車操業みたいですがどうでしょうか。
今おかね準備できないから数か月待ってくれ、半年待ってくれ、すぐに本年分の支払い期限が10月に来るのにとても準備できない。 ではまた遅延しよう。 そんなように見えます。
そのうち、26年決定分は27年3月に施行する、27年10月に施行するみたいに先送り遅延になるだけかなと感じます。
外国人だからみんな来るという時代でもなくなります。 世界的に見て日本の賃金水準はさほど魅力のあるものではありません。
それより近隣国、豪州の方が時給的には高いという国も多くなります。
つまり外国の方はいつも潤沢という思考ももう古くなっているのです。
ではどうしましょうか。
労働者はなぜ皆さんの農場で働いているのでしょうか。
それは魅力あるからでしょうか、家から近いだけだからでしょうか。
労働者が足りない農場なら、なぜ集まらないのか。
集めるにはただ求人誌に掲載すれば解決できるのか。
そもそも労働人口が少ない場所に求人してそのうち採用できるのでしょうか。
広い範囲に求人しても集まるような時代ではありません。
では御社のアピールできるところは何でしょうか。
お金でしょうか、働きやすさでしょうか。
もしかすると競合が多すぎるので集められないのでしょうか。
であれば、優位に立てる方法はあるのか。
様々な思惑があって採用しなければならない時代です。 大手企業は積極的に黒字リストラしているから求人環境は安泰でしょうとお気楽な方もいます。
ですが、そのような方々がわざわざ農業に参加してくれるでしょうか。 採用があればこのような話も聞きません。
そうです。
そんなことはないのです。
そんなことより皆さんにはやらねばならない課題があるのです。
今年度の最低時給は、いくらで妥協されるのでしょうか。
恐らく50円増かな、いや70円程度まで見積もるか。
そんな先の思考を持つ経営者は生き残るでしょう。
そんなことしたら潰れる、解雇する、廃業して地域が衰退するだけの思考なら、今年は何とか生き残ってください。
でも来年はどうでしょうか。
そんな弱肉強食のような採用に皆さんは賢い盾と矛を持って挑んでいるのですが、何もない石槍だけで挑む方もいるそんな時代のように見えます。
ニュース1つから今の時代、今の農場を見る良いきっかけになるでしょうか。
関心はいくら上がって、すぐに払うと言いきる県がどれくらいいるのか。
遅延するなら何を理由にするのか。
衰退が進む各自治体の事情が通信簿のように秋公表されるのでしょう。
それを甘んじる企業、攻めて行く企業。
今年は注目度が高い年になりそうです。