今年は6月はまだ余裕のある暑さでしたでしたが、弊所の事業所内では7月梅雨明けからの猛暑や酷暑で鶏の被害を受ける養鶏家さんが多く見られました。
それぞれ管理獣医師さんがいて熱中症でしょうから鶏舎管理をしっかり行ってくださいという指導はあるようで、根本的な対策を指示いただけないというご相談もいただきます。
このこともあり、研修が多くなる7月中旬以降8月下旬までの間で、急ぎのご依頼をいただくことも多くなり、研修資料を揃える合間のご訪問やご相談に追われるような季節になっていると感じます。
皆さんの農場の鶏達は元気に過ごされているでしょうか。
さて、鶏舎の暑熱対策は様々方法があり養鶏家皆さんの知見が現れる対策の一つになります。
お伺いする農場のほとんどは、暑いから死んでしまい仕方がないのだけれども、今の卵価での損失は正直痛いので何とか減らせいないものなのかという相談で伺い、特に暑熱に対する方法がなく、風や天候任せの農場が多いように見えます。
もちろん昭和平成であればそれも良かったのかと思います。
しかし令和に入り50年に1度、10年に1度といった暑い季節が頻繁に訪れるようになり、もはや風や運任せで何とかなるような時代でなくなりました。
確かに昭和や平成では最高気温が30℃程度で35℃もあれば今日は珍しい暑さと言われるものでした。
しかし今の時期は、35℃、40℃と私たちの体温を超える猛暑が多く聞かれ、もはや送風だけの飼養管理の限界に到達しているような時代になります。
加えての鶏の性能による産卵ストレスもあり鶏達の環境は年を追うごとに厳しくなっていると感じます。
昔は暑熱対策と言えば、送風機の増設や暑熱対策ペイントを施して日差しを和らげて気温上昇を抑えるというコストの高い方法もありました。
どれも今までは一定の効果はあったのかなと感じますが、この時期の暑さには少し困難さも感じるように思います。
一昔前は成鶏の体温は42℃であり、この温度を超えない限り風を送り続ければ大きな減耗にならないと教わった方も多かったと思います。
だからいかに風を送り鶏を失わないためにも大型の扇風機を導入又は増設して自然換気又はトンネル換気に更なる送風を目指した方も多かったと思います。
しかし、今の時代この程度の設備導入でも減耗対策には十分な効果がなくなりつつあります。
この理由には、気温上昇の他、湿度の上昇もあります。 鶏が暑さに影響を受けるのは意外と温度は低く、29℃程度になるとまず食事量が下がります。
お使いの餌の銘柄によっては栄養が不足していきます。 そして飲水量も餌の2倍を超え、2.5倍、3倍当たりまで増えていき軟便が散見されていきます。
この時パウンディングしている鶏がいるならばその鶏舎は湿度も高くなっており体感的には30℃を超えていると言っても間違いではありません。
この対策に飼料の配合に軟便対策を講じた餌を購入する養鶏家もいますが、多くは十分に実感できないという方も多いように感じます。
そして外気温35℃を超えてくると鶏の減耗が確認できます。 なんか今日は斃死が多くいつもの2倍、3倍を超えるという所も聞きます。
多いところでは10000羽農場で150羽とか1%の減耗が1日で集計されたという農場もあります。
ですが、今日は暑かったから仕方ないよね、まあ明日も覚悟かな程度の認識で仕方ないで片付けていくしかないのが実情ではないかと思います。
ここで知っておいてほしいのは、確かに猛暑であり減耗は避けられないということですが、その数は対策しだいで減らせるということです。
先ほどの暑熱対策の餌もその方法の1つになります。
▲平飼いの養鶏家の方々は羽数も少ないことで自社で餌を配合するところが多く、エサに納豆菌といった菌類を混ぜるという所もあります。
既に実用化しているところもありますし、今試験中で来年以降に商品化を目指す企業もあります。 多くは菌が腸内環境の維持から餌の吸収を阻害させない作用を期待する、免疫機能を維持させるといった機能を期待しており、多くは試験データで維持できているとしたものを公表しています。
6月にForbesや読売新聞が報じていますが、ストレスを軽減させる効果を期待できる納豆菌を配合した飼料を紹介しています。 ぜひご覧いただき参考にしてみると良いでしょう。
▲湿度を抜くために鶏舎内に扇風機を増設しますが、その設置位置を様々な位置から風を当てるという農場もあります。
ウインドレス鶏舎の多くはトンネル換気ですから、風は入気口から排気口への一方通行になりますが、そもそもその方法だけで正しいのかという視点で様々な個所から風を当てて風量を上げて湿度を滞留させないというもので、鶏舎の湿度は排気口ほど高いのが一般的ですがだいぶ緩和し鶏のパウンディングも少なくなった鶏舎もあります。
柔軟性のない方は、風通りが悪くなるという狭い視野で語る方もいますが、大事なことは鶏舎は風を送る設計でもこの猛暑まで対応できる機能が十分でなくなっているという違う視点があるかどうかで変わります。
▲また20年以上前から良く見られました飲水にビタミン投与もあります。今はマルチビタミンを配合した新作もありますが、今の時代を見るとこれだけでは以前ほどの効果を感じることはなくなりましたので、これだけを持って十分な暑熱対策をしているということもないように思います。
▲ 出来るだけコストを抑えたい方の多くに見られた屋根からの散水、入気口のクーリングパッドへの注水をした方法もあります。
屋根散水は日光が当たる屋根に散水をして熱を下げる方法で、配管を農場自身が組み上げてエンジンポンプで散水するという方も多いと思います。
暖かくなった水を撒いても意味がないという方もいますが、散水すると蒸発することで熱を奪いますから結果鶏舎温度の上昇をゆるやかにする効果はあります。
またクーリングパッドの散水は梅雨時期はカビる可能性がありますのでカビによる影響を心配する方には向きませんが、
大事なことはどの方法も猛暑になって慌てて行ってもすぐに効果は見られませんので、気候を読み早めの対策が必須になります。
平成までの時代であれば、飲水や餌も十分な効果は期待できたと思います。 しかし、今の鶏の性能は平成時代と異なり連産能力はだいぶ良くなりましたので、当然ですが産卵ストレスも加わり暑熱ストレス以外にも産卵のストレスも従来より大きくなっていることを知っておくと今の対策で十分なのか、何か付け足す必要があるのかといった違う視野が見えてくるのではないかと思います。
建てた当時と今は違う、立てた鶏舎は養鶏のプロが設計しているから間違いがない、だから付け足しは意味がないからこそ換気を悪くするというその当たり前の思考を一回ご自身の経験で見直してみることも大事です。
その方法に先ほどの昔からの方法もあるでしょうし、エサから免疫といった新しいアプローチ方法もあります。
しかしどれか1つで十分であるという思い込みはこの夏やこの先の夏の猛暑や酷暑に対応できる十分な方法にはならない可能性もあります。
この先も暑くなり続けていくとされます。
確かに50億年先になると太陽が寿命を迎えていき猛暑は聞かなくなるかもしれませんが、そんな長い時間軸で今を考えても意味はありません。この場合の時間軸は目先でいいのです。
今の暑さ、来年の暑さ、5年先までの暑さです。
そして換気が悪い鶏舎は湿度が高いということも知っておくと、たかが湿度で鶏が死ぬのかという浅い思考が、こんなに大事なのかと思い知らされることも出てくるかもしれません。
鶏は暑いから死んでしまうのはその通りでしょう。でもその前にあるのは健康を崩してしまうことが起因している場合と、急激な暑さから湿度も加わり倒れてしまう鶏もいます。
もしまだ何も対策せず過ごしている鶏舎があるのでしたら、不幸にして暑熱で死んでしまった鶏のゲージの位置を集計してみてください。
多くは、直射日光が当たる場所(西陽が当たる場所も含みます)や風が弱く流れる場所、あるいは湿度が高く風が動かない場所といった普段見ている場所とは異なる不快な場所である場合もすくなくありません。
これを多くは仕方がない、なにもできない、意味がないと片付けていくのが現状なのですが、でも減耗は卵価から見て痛い、秋相場前の損失は痛いといった視野しかないと何も変わることはできません。
お金をかけられる農場とそうでない農場では当然できることは違います。
残念ですがこれは現実です。
お金があるなら、設備の増強もできるでしょうし、高コストになるでしょうが餌からのアプローチも可能です。
そうでないなら、自分で配管を組み水を流すといった初期コストが低い方法を主に考えることになるでしょう。
そして当たり前ですが、結果は複数組み合わせた方法の方が減耗はまだ少なく済むでしょうが、1つだけ又は何もしないのであれば相応の被害になるのは今の気候を見れば明らかなことです。
これを意味ないと片付けるのか、2つできることを取り入れようと視野を広げるのかと言うことです。
ただ鶏舎を眺めていても、脳内で考えているだけでも何も変わりません。何もしていません。
だから視野を広げ考え実行するのです。その際にコストを想像するのです。
実行前に何も考えず餌代高い、配管代高い、扇風機代も電気代も高いとできない理由を並べるなら何もできないでしょう。
でも結果だけは欲しいという甘い思考は何も変わらないことです。
今週の猛暑はいくぶん治まりましたが、来週以降もまた猛暑がやってくると言います。
もしかするとこれが今の夏の姿なのかもしれません。
では皆さんの農場はどう対処していきましょうか。 暑いから仕方がないと考え運頼みにしていくのか、いや対策はあると視野を広げ頭を使うのか。
暑さは始まったばかりです。
今の想像を具現化するなら早く動きましょう。 お盆は部品や部材を仕入れるのも大変です。メーカーが休みます。
そうなると早くて8月の下旬に導入になるという可能性もあります。そうなると1か月先の話をしています。
大事なことは鶏の暑熱ストレスは人と同じく蓄積していくということです。
そうなると、免疫の低下もありますが、鶏は大丈夫でしょうか。
餌が食べられない、ストレスにさらされる、そして蓄積していき体調を崩す。
そんな構図も想像できますが、皆さんの鶏はそれでも健康で過ごせるのでしょうか。
まあ1%の減耗は仕方がないよね、1%の産卵低下は想定内だよね、餌食べないから餌代がだいぶ節約できるね。
そんな昭和平成でアップデートが止まった養鶏家さんの声が聞こえてきそうです。
でもそれで大丈夫なのでしょうか。 せっかく卵価が高いのなら1個でも売りたいのではないのでしょうか。
猛暑を迎えた夏、皆さんの知識と技量が試される夏を迎えています。