nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

物が高いといわれます 生産費は高く応分の負担を求めていますがそれだけで解決できるのでしょうか

2024年4月の食料品値上げは4000品目になり、久しぶりの多い値上げが実施され、消費者も値上げを受け入れざるを得ない状態が続いています。
5月の値上げは約10分の1の400品目になりますが、飲料が多いものになり、これから必須になる食品類に価格改定があるように感じます。


また、あまり知られていないように感じますが、5月使用分(6月支払分)からは光熱費の補助が小さくなり電気は1KWHあたり1.8円程度へ、ガスも1立方あたり7.5円に改定されます。
この期間、電気料金は値上げが続いており補助と相殺して小さいもののように感じさせられていましたが、6月以降は少し負担を感じるようになるかもしれません。
特に今年も平年より気温は高く推移されるという長期予報も発表されており、家庭ではエアコンの使用頻度が上がり翌月の電気料金に狼狽するということもあるでしょう。


その6月は定率減税が実施され、国税3万円、地方税1万円を上限に給与から差し引きをしない形の減税がはじまります。


収入の改善も進んでいるといわれます。
本年令和6年の賃金改定率は平均5%を少し超える程度になったといわれます。中小企業も4%台とされますので、月20万円の収入であれば理論上8000円の上乗せになるということでしょうか。


大きいように感じますが、政府が発表した3月の物価上昇率はエネルギーと生鮮欲品を除いた上昇は前年同月比2.9%、先月2月と比較して+0.1%の上昇とされます。
収入のほうが比率的に高いと感じるかもしれませんが、物価上昇は毎月のように緩やかとはいえ上昇しており、その中の給与据え置きとは言いませんが、今回の改定までは少ない状態で生活をされています。
ですから、月8000円増えたから、買い物かご1杯満杯購入しようとはならないと感じます。


実際、チェーンストア協会が発表した本年3月の売上高を見ますと、食料品は前年比111%増となり、値上げの効果と感じる売上金額ベースでは増えていますが、畜産物は109%と少し控えめです。
詳細を見ると、価格が低い物「鶏肉」「豚肉」が良く売れており、牛肉は鈍く、鶏卵はまずまずというところとされます。


更に見ますと、弊所の購買調査でも鶏・豚ともに海外産の取扱比率を上げており、国産と外国産半々の売り上げのように感じます。
鶏肉では、○○鶏といったブランド名があるものより、国産若鳥の方に手を伸ばす方も多く、外国産モモ唐揚げ用といった用途に適した外国産のほうが人気に見えます。
豚肉も同様の傾向で、国産コマ切れも人気ですが、同じ値段で外国産切り落としのほうが用途にも優れ人気のように感じます。


鶏卵は相場が昨年と異なり前年より下がっているはずですが、販売価格は全国平均価格277円と、昨年8月の最高値302円より約8%程度しか下がらず相場値とは異なる値動きが続いています。

 

消費者の動向についてはライブドアブログに数年前掲載しましたが、購買層は国産に絶対の期待や安全であり安心と言う言葉に期待しているとは限らないという傾向があり、特にこれから消費を支える世代となる若い世代ほどこの傾向があるとお話ししました。今この価格高騰からこのように選択して良い品、安い品を選別しているといっても過言ではないように感じます。


さて、物が高いといわれて久しくなりました。


日本はデフレであり、脱却している過程であるといわれます。
長く物が安く、安定して安いこともあり、日本は賃金が上がらないとしても生活に支障を与えるような経済情勢ではありませんでした。
一方、その時期を過ごした多くの方は、賃金が上がらいからこそこの先の国の経済状況や国力の不安もあるのでしょうか、長らく消費者の財布の紐は固いという言葉が長く聞かれました。


将来への不安もあるのでしょう。

そんな無駄なものにお金をかけないという洗礼された節約方法を会得された方も多いように感じます。


ですが、年齢が上になる世代は好景気であった時代を知っており、また1ドル100円になる、タクシーを乗るのに1万円札を見せて停車させるといった恐らくこの先そんな時代にはならない昔を懐かしむ感じです。


将来の見通しは恐らくこれから消費を担う若い方々のほうが先見の目があり、厳しいと予測されているはずです。
ですが、年齢が上になるほど、まあこの先もそれなりに良くもないが悪くもないという程度に認識ではないでしょうか。


これが消費動向に違いを与えているきっかけになっているように感じます。


年齢が上の人ほど、国産は安全であり安心である。

外国産は何が入っているのかわからず不安である。だ

から高くても買うのである。
そう感じる方が多いのではないでしょうか。


一方若い方々は安全性はどちらも同じように感じる、であれば価格が安いほうを選び購入すればよく、広告で安いから国産と言うこともあるでしょうが、外国産に不安があるわけではなく購入選択に十分候補になるというところでしょう。


この要因には、食肉であれば外国産の品質事故がほとんどないということが要因に感じます。


昔は、狂牛病があり、牛乳では品質問題による回収事案、国内食肉卸による産地偽装や国産と称して外国産肉に血液を混ぜ合わせた国産ひき肉といった品質や不公正な加工による商品への信頼低下が多発していました。


だからこそ国産が安全であり、不正加工した肉を販売した業者への風当たりの強い行動になるのだと思います。


これにより、ある程度の歯止めができ、産地偽装を起こすと特に国産は信頼回復するまでの時間が長くなり、事故が報告されない外国産へ置き換わり、わざわざ高額な国産に戻らないという、ある意味当たり前の消費行動が発生し長くこのように時代が進んでいくように思います。


外食でも不祥事はありました。

大手ハンバーガーチェーンの鶏肉消費期限切れ問題では、来店が減少するまでの大きな報道と社会の反応がありました。


ですが、品質に関して改善を図っていること、お客様第一であることを時間をかけて広告し社会が認知していくことで、今ではそんなことすら忘れてしまうような繁盛ぶりです。


これにより恐らくこの会社での品質問題はそう多くないものになり、長らく安泰なものになるでしょう。
つまりは、品質問題が発生したとしても消費者に語り続け信頼を得られる事ができれば、消費は元に戻るということです。


では畜産物ではどうでしょうか。


鳥インフルエンザの話題が多かった令和4年は、過去最多の鶏が処分されていきました。
発生の都度、報道は食べても問題はないということを繰り返しています。
その通りだと思いますし、消費者はそこに関心を持っている方は多くないように感じます。
つまり「それはもう知っている」それより、その先の値段や販売数量はどうなのかということです。


1農場の飼育数が多くなりましたので一度に50万羽、100万羽が殺処分され1日当たり50万個、90万個の鶏卵が市場に流れないという緊急事態について、私たち生産者側はどのように考えるのかということです。


多くは生産者が気の毒、生産者側も災難であり気の毒という話題は聞きます。
確かに、挨拶最初に災難でしたねと言うのは自然な会話の流れ方でしょう。


食品産業であると自認されているからでしょうか、消費者は商品を待ってくれる。

だから時間をかけてでも回復していくという姿勢が多いように感じます。
確かにその通りでしょう。


でも、根本はそこでしょうか。


鶏卵を失いそこからどう対応したでしょうか。
鶏卵が足りない、だから代替卵を使用して販売量減少を最低限にとどめる。

または輸入量を増やすことでまずは加工向けの供給に穴をあけないという企業の努力が多く報じられました。


そして安定した回復まで進みましたが、流通や加工企業は代替卵、鶏卵使用量を少なくしても商品化でき価値ある商品を投入しており、元に戻すためのコストをかけるような費用対効果が得られないというところもあります。


これは正直な感想だと思います。


皆さんでたとえるならば、今まで高い肉類が安くなった。今までは牛肉を食べる習慣がありすき焼きも当たり前のように牛肉でした。
でも比較的安い豚肉もすき焼きにしてもおいしい。

代替品ではあったかもしれないが、この先同じでも家族内で不満は出ないと感じる。
そういう地域もあるのではないでしょうか。


つまり、代替から戻るのに、わざわざ100グラム300円ぐらいの豚肉から800円以上する物に買う機会があっても戻す必要性を感じないということと同じです。


企業も風味や食べ応え等十分検討したうえで商品開発をしており、消費者から元に戻せという声は上がらないからこそ、作業工程を変える費用を負担するまでのメリットがないのです。


実際、西日本地域では、場所によりますがカレーやすき焼き、肉じゃがに牛肉を多く消費する地域も豚肉に置き換える消費者が増えたといわれます。


つまりは代替でも不自由はしていないということです。


消費者は待ってはくれます。

でも代替品があればそこに流れていき、一定数は戻らないと考えるのが正しい経営戦略になります。


鶏卵もこのコスト高、人件費高騰もあり、農場経営も大変だと思います。
その時、鶏卵を1個でも売るためには何ができるのかと考えると同時に、1個でも多く生産をするという姿勢も大事なように感じます。


生産にかかる費用は高産卵のロットも、優れないロットも大きく違いはなく、高額であることは同じです。産む鶏とそうでない鶏の食下量には大きな差はないことは皆さん知っているはずです。


であれば、1個でも多く生産し市場に流通させることで、利益をとっていくことが肝心なように思います。


そのためには、24時間に1個正確に産んでくれる鶏達に報いる管理をする。

鶏に不自由を感じさせない管理をする、基本があり正しい応用がある管理をするといった養鶏の初歩を今一度見つめなおす時期でもあるように思えます。


コストを削減するからそこで儲ける、本当に必要かわからないけど人はたくさんいる方が安心なので採用を強化する。
そんな思いのある農場あるでしょうが、本当にそれが正しいのかわかる時は決算書を作る時、四半期の帳簿を眺めた時にわかると思います。


つまり、数か月先にわかり、間違えたと感じても後戻りできない時期です。


そして余計にコスト増に至り、格安投げ売りしてまずは餌代を支払い停止を免れるといった自転車操業にならないように慎重に検討してください。


業界は応分の負担を消費者に求めます。


それは経営上正しい選択です。

ですが、消費者も選ぶ選択があり、その瞬間候補から外れるというリスクを知ったうえでその選択を行使しているはずです。


でも食品会社であるから消費者は困るはず。

だから元に戻るはずでは、見通しは甘いと言わざるを得ません。


値上げて本当にその商品の真価が問われるわけです。


消費者は値上げを受けれている。

そういう声は多く聞かれます。


その通りでしょう。

消費者側の選択肢は多くはないからです。
そこにあぐらをかいてはこの先の円安、インフレ、人口減少による競争激化に対処はできないでしょう。


そうではなく、値上げしてもこの鶏卵には価値がある、美味しいといっていただける自信がある。加工してこのような商品なって付加価値がある。
そういう、消費者が受け入れる価値があって値上げは受け入れられ、この先も安心した経営ができると感じます。

実際に値上げをして売り上げ減少になる食品は多くあります。

多くは値上げ疲れであるとか、いろいろ言われます。

でも多くは代替品に置き換わり、戻す必要性を感じないということではないでしょうか。

外国ではインフレ圧力は日本以上に高くなり値上げ疲れという言葉をよく聞きます。

欧州は生産側より流通側に権利があることで、不当な値上げであり受け入れられないと、ある外国飲料メーカーの商品を取り扱わないという報道があるぐらい、権利を行使する値上げに厳しいところもあり、実際収入が増えたとしても値上げ分まで十分賄えないという深刻さがあるように感じます。

 

日本はそこまでには至りませんが、既に大手流通店のPB(プライベートブランド)商品のほうが売れ筋になるつつあるといわれます。


大手加工メーカーも令和4年の大流行のような時期に原料仕入れに不安が生じないようなシステムを作るという話題も聞きます。


これはどういうことなのかはわかりませんが、鶏の命がなくなっていくということは、農場だけではなく、その先の消費者にとって不自由しない方策を新しく構築していくきっかけになるのです。


では、値上げて安泰で大丈夫でしょうか。


そこも大事ですが、衛生管理とは何か、コストには適正な値段があるということを知り、それ以上の削減は本当に有用なのか。
もっと掘り下げるきっかけになればと思います。


日本円もだいぶ値下がりしており、本日は158円台まで円安が進みました。

34年ぶりだそうです。


先ほどのように1ドルは100円になる時代は本当に来るでしょうか。ドル計算の題材に100円は計算しやすいですが、実際はもう158円です。

日本国の米ドル適正値は現時点135円程度とされますから、投機的要素があったとしても、安い水準です。


市場介入があるような、ないような話題があります。

輸入に頼る経営である畜産業では、物を買う、餌を買う、エネルギーを使う、素畜を買う時等多くは円の値打ちにより左右されるものばかりです。


これは私たちでどうにかなるものではありません。

個人が円を買う証拠金取引してもたがが知れています。


であれば、値上げでまずはどうにかしていくのも手ですが、それと同時になにができるのか、夏の相場を意識しながら考えてみると、夏以降秋の相場上昇期にきっと良い道筋を見つけることでしょう。

 

鶏卵価格が落ちつき新商品も投入 一方でコスト増の心配も

最近の鶏卵の話題と言えば、「昨年より4割安、加工向け需要戻らず更なる下押しも」といった、鶏卵価格の落ち着きは私たち生産者にとってもうれしいことではありませんが、需要側の低迷による影響の方が実際大きな機会損失になり、結果価格に跳ね返るといった弊害もあります。


このこともあり、まずは消費の回復があり、そして価格が上昇していき収入増加になるといった正しいサイクルに進んでいくことが、養鶏業界発展のためには必要です。

 

さて、最近の加工向け、中食・外食等の業界では、鶏卵の新商品発表が続いており、消費者への認知を広めているように感じます。
しかしながら、鶏卵から代替卵や原料としての鶏卵から変更した商品については、昨年心配した通り戻り(原料を鶏卵に変更する)は悪く、多くは変更コストを意識したことや、商品化できるように配合や製造工程の変更を行い商品としての価値を持たせていることから、消費者からの要望もないこともあるのでしょう、変更はしていません。


これは、鶏卵消費を少しとはいえ失ったことになります。

今後この分野は代替卵や代替品による供給が続きますので、新商品による鶏卵需要に期待するしかありません。


その業界も鶏卵の安定供給もあり春のイベント集客として鶏卵の新商品を発表し一定の集客につなげているように感じます。
例えば、期間限定の丸亀製麺「トマたまカレーうどん」を6月下旬まで販売します。
この商品は、初夏の人気メニューでしたが、昨年は商品提供はなく復活版として提供します。
料理をする俳優とコラボした商品で、カレーとトマト、溶き卵をベースにスパイシーになかにマイルドな卵を合わせたメニューです。


外食向けは、比較的好調に集客をしており安定した状態に見えます。
牛丼チェーン吉野家も親子丼を復活販売しており、鶏卵消費が期待されます。


両社とも更なる集客を目指しており、新商品や人気メニューを再投入して来店機会を作っているわけです。


鶏卵価格が下落しているとはいえ、通常時期の鶏卵相場よりも高いこともあり多くの養鶏場では経営の風向きは追い風とも言えるでしょう。
飼料価格が低下していることも更なる追い風になっていると思います。


一方、コストの増加も気がかりではないでしょうか。


配合飼料価格は今期は前期より値段は下がってはいますが、多くは1トン9万円台前半と言ったところかもしれません。
一時期は10万円を少し超えるぐらいの値段でしたから、幾分ですが下がり負担は和らいでいると思います。


この先もコーン相場の低迷も続くと思われますが、輸送コストは上昇していくことでしょう。


また人件費の上昇も大きくなっていると思います。
昨年10月最低賃金改定があり多くは30円以上の時給上昇になっているはずです。
また折からの人手不足や国が推進する賃上げ風潮もあり今年から賃金を大きく改定する企業も多くなっています。
これは、養鶏産業は無関係と感じる方も多いかもしれませんが、労働者側からすれば賃金が高く働きやすい企業が周辺に増加したということを意味しており、まずはそこから職を探していくという流れになります。
そしてそこが難しければその次の候補と続き、それも難しければ仕方がないので畜産業と言うこともあるでしょう。


コストを意識することはとても大事なことです。

ですが、度を超えるコスト削減は悲劇しかありません。


多くの養鶏家が取り組みした餌削減対策は、うまくいった場合もあれば失敗しどうにもならないという農場もあります。

特に3年前からは特に取り組む農場が増えていったように感じます。


餌代を削減でき、コスト削減に一番効果的であり近隣の農場から指導を受けて取り組みを始めたものの、鶏舎の構造や風の通り方といった立地、管理の手法が異なることもあり、何等かおかしいと感じても対処ができず、生産数量を減少させ、個卵重も低下し規格外が増えていく弊害も散見されました。


ですがこれを異常と認識できればまだ良いのですが、それすらわからずこんなもの、鶏が悪いから仕方がないといった原因究明ができない農場もあります。


今年度は昨年から言われていますが、鶏卵相場の上昇は大変緩やかになっています。


この要因にはご存じの通り、生産回復が通常モードに入ったことが要因です。

それに加え加工向けの需要回復が遅延していることもあります。


また、食品価格の上昇もあり鶏卵の購入機会も以前とは異なる状態でもあります。
当分続くものと言われますので、適正な生産をお願いするという業界文書が既に発出されているわけですが、皆さんの農場はどのように取り組まれていくのでしょうか。


鶏卵価格が落ち着き、加工筋の決算は総じて良好でした。

これは仕入れ価格が下がったことで利益が確保できたことが要因です。
ですが、仕入れ価格が増えたので増量して仕入れているのかと言えばそれは別の話になります。


必要量を、適正に仕入れるわけですからシビアなものです。


輸入鶏卵が増えたこともありますが、安定した商品供給のために十分な仕入れを事前に行っており年末のような急いで仕入れるという手当と呼ばれる行動の必要はないため、この先もまだ時間がかかるかもしれません。


また来週からは大型連休が始まり、加工向けは既に手当てが済んで今の相場値になっています。


人が動きますので、流通店舗も積極的な仕入れはしないと見られます。
となりますと、連休明けの鶏卵相場はどうなのかということになります。
夏相場への入り口は、多くはこの連休明けから始まります。


そうなると、廃鶏をどうするのか、コストはどうするのかという話題が6月頃には出るかもしれません。


6月は勤労者向けの減税が実施されます。

数万円の減税となるようですから、夏は美味しいものを食べる、少し豪勢な旅行を計画する、買い物を増やして子供や孫を呼ぶという所もあるかもしれません。


その時、鶏卵は消費される方々から見てどのような立ち位置になるのでしょうか。


美味しいもののそばに鶏卵があるのでしょうか。

それとも夏が需要の減退期に入り、例年通りの鶏卵になるのでしょうか。


ただ、鶏卵が安いということは、外食向け、加工向けは仕入れる対象になるということもあります。
相場が安いことはいつもの夏のことかもしれません。


そこにコスト増という意識から、自身の技量を超えた取り組みから収拾がつかないということにならないように十分な注意をして取り組みをしてください。


餌は経営コストの6割を超えていることは皆さん知っていることですが、これを目標5割、4割まで下げるという無謀なプランにならないようにしてください。


最近の鶏は先に鶏卵を産み、餌不足からガクッと産卵率が下がるということもあり、異常として認識する頃はすでに1割、2割産卵減覚悟ということもあります。


それに加えての初夏の猛暑も心配です。

そこに鶏卵相場の通常化と言う収入減少が畳み掛けます。

 

この先も、不安な経営が続きますが、では少しでも安心できる経営になるために皆さんは何をしていくのでしょうか。
そのためには、方法論だけで十分なのでしょうか。
その中に人はどの立ち位置になっているのでしょうか。


昨年は高相場であったこともあり養鶏業の廃業は少ない時期でした。
今年は既に公になっているもので1件確認されています。

まだ予備軍とされる農場もあるようです。


そして例年相場と高コストに経営者のみならず、従業員皆さんで知恵を絞る時期に入るのかもしれません。


外食産業が鶏卵を使用している話題で満足されず、使ってくれているこの時期こそ次の一手を模索し行動してみてはいかがでしょうか。


明日からIPPSが名古屋で開催されます。養鶏設備が展示され、アニマルウェルフェア等次の経営参考になるセミナーも開かれるようです。

農場HACCP認証の相談会もあり、衛生管理の向上から鶏卵個数の減少を防ぐ取り組みの参考になる方法もあると思います。


皆さん思い思いの大型連休を迎えることでしょう。
そして、その先を早く見つけるそんな5月を迎えたいと思います。

国の補助金を受ける際 自然環境配慮やHACCP・GAPの仕組みを活用するようなシステムが適用されます

農林水産省は4月より補助金を受ける耕種農家、畜産農家に対し自然環境への配慮を取り入れて経営し、HACCPやGAPのシステムを活用し、効率や安全配慮等の取り組みを求めるチェックシートの提出を必要とすることを決定し、来年度以降から本格運用する見込みであると発表しています。


環境負荷低減クロスコンプライアンス事業で、今年度22686億円の予算の多くをこれに充てるとしています。


申請する際に「環境負荷低減のコンプライアンスチェックシート」を提出し、申請時に実施「する」という欄にチェックを入れて実施することを宣言します。


来年度以降はこのシートを提出し実行していることを「しました」という欄にチェックを入れて報告します。


畜産業では、堆肥を生産し自社内で還元する場合の適性な保管、使用状況(生産量と出荷量の帳簿)記録と保存をする、適正な農薬使用と保管、エネルギーの効率利用、廃プラ排気の削減と適切な処理、関係法令の順守と理解を求めています。


このうち、GAP・HACCPについて可能な取り組みから実践という項目があり、GAPの考えと衛生管理の取り組みであるHACCPの考えを出来る物から取り組む必要があります。


チェックシートでは、多くがGAPの考え方を取りれているシートの構成であり、農薬の使用と保管や、エネルギー節減、廃棄物の適正な処分、アニマルウェルフェアの認識、農作業機械の適切な整備・保管の実施については、ほぼGAPの取り組み事項が該当し、昔からの手法で良い、安全作業は作業者が気を付けていれば良い、エネルギー節減も、給油所に買いに行く手間がるからそれなりに行えばよいという昭和的な思考からの転換が必要になっています。


HACCPの考えでは、関係法令の遵守、肥料の保管や作成というの法令順守、悪臭の防止、農薬の適正な使用はこれが該当するようなイメージです。


現在、畜産クラスター事業等ではこのチェックシートの提出はありますが、その先となる実践しているという所までの報告はなく、今後(来年度以降)は報告対象になるという状況になります。


令和3年5月施行のみどりの食料システム戦略により、補助金を充実し、環境提言の充実、クロスコンプライアンス養鶏の充実を図るとしており、補助事業から環境負荷低減に関する要件を設定し、それに従い環境改善に至るというイメージです。


環境負荷低減のための7つの取り組みとして、
・適正な施肥(使用量の把握から必要な量の施肥をする)
・適正な防除(農薬の使用状況記録と保管、農薬農薬ラベルのある事項の使用遵守、周辺への飛散防止)J
・エネルギーの低減(電気屋燃料の使用状況を記録保管し改善を見つける)J
・悪臭や害虫の発生防止(家畜排せつ物の適正な管理)H
・廃棄物の発生抑制・循環利用と適正処分(廃プラの削減と適正な処理)J
生物多様性への悪影響の防止(病害虫発生状況に応じた防除の実施をした、薬剤乱用の意識取り組み)J
・環境関連法令の遵守(作業安全に配慮した作業環境改善)J


参考になる取り組みにJはJGAP畜産が、Hは農場HACCP認証が便利であると考えますので、まずは一読して見ると良いでしょう。


国が考える環境低減政策は、農家や農場の自主性で進めることが望ましいとは思いますが、どうしても営利産業であるためコストを増大して取り組みしていくというハードルは高くなりがちです。


ですが、補助政策を受けるから環境低減に取り組むという流れは、無理があるというものではありません。


多くの小さい農場は国の補助事業を受けたり、周辺の農家さんと共同申請するということもあるでしょう。
堆肥作成するコンポスト、田畑へ散布する散布車両、重機の購入に必要な費用等経営の支えになる制度を活用しながら、目には見えにくいかもしれませんが、環境負荷低減に取り組みしていくことは、この先の環境悪化による次世代の子供孫といった人たちの生活にきっと大きく貢献するはずです。


手間やそのような記録する機会がないからこそ無意味と考えがちですが、小さい取り組みが全国に広がることで畜産業へのイメージや近隣関係改善にきっと貢献するはずです。


4月からのこの新制度は、手間と感じるだけか、これを行うことでこの先10、20年先畜産業のイメージ改善に貢献できるのかは、補助を受ける方々の考えにより変わるといっても良いでしょう。


私の代だけ経営できれば良いのか、子供たちに経営を譲る時、それでよいのか、地域の皆さんと共生していくという考えがあっても良いのではないでしょうか。

新潟県の養鶏場が破綻 現行の経営モデルと今を比較してみましょう

東京商工リサーチによれば、1月29日新潟県柏崎市の養鶏業鎌田養鶏が事業を停止し、事後処理を弁護士に一任したと報じています。
にいがた経済新聞1月31日版では、今後破産申し立てを予定しており負債総額は5億5000万円であるといわれます。


同社は1976年10月設立で近年はネット通販の他、スイーツ等の販売も行っています。
報道では、2017年に鶏舎を立て替えし、21年に同県内に新規出店等で積極的な事業拡大を行っていましたが、22年9月期の売り上げは減少、多額の赤字計上により債務超過となり、23年の業績回復もせず今回破産となったといいます。


さて、養鶏家である皆さんから見て普通の事業展開ではないかと感じると思います。

 

2017年と言えば平成では29年ですが、この時期近辺の鶏卵情勢について確認してみますと、その昨年28年は一昨年26年の相場情勢で年始は例年の180円程度で春の上昇と夏季の低下、9月以降の上昇を描き12月は250円近くまで上昇しています。
年平均は200円を超えており、今と違い相場高と言えます。


この状況は鶏舎改築時期の2年前26年も同様で、26,27,28年は養鶏にとってまさに春と呼べる好景気でした。


29年も年始は強い上昇で200円割れは6月から始まる典型的な相場展開でした。


恐らく長い好景気であるこの時期に改築、新規農場落成といった、規模を見直す時期であったところも多いと思います。


また、6次産業化も話題になる時期でもあり、デザート、クッキー等焼き菓子といった鶏卵を使用した付加価値のある商品として利益拡大を期待した農場も多いでしょう。


報道でもB級卵を使用したスイーツ販売といった、傷玉の二束三文になる鶏卵が、付加価値となり利益を底上げする、六次産業の夢のスタイルです。


鶏舎の建て替えは新規農場建築と違い、基礎はそのまま使用する、餌タンクをそのまま使用する、集卵設備には変更がないといった予算に合わせた建て替えが可能で、建築費も抑えることも可能です。

ですが安いといえるものではありません。


鶏舎にかかる費用の大半はウインドレス鶏舎であれば、換気システムや集卵設備費が費用の大半になり、ゲージといったメイン品はそれほど高額な分野ではありません。

ですから面積を決めて、どれくらい鶏を入れるのかで建築費は抑えることもできるでしょう。


問題は返済です。

数年前養鶏場の破綻が多く見られました。


その多くは経営不振、赤字増加と配合飼料価格の急上昇からのコスト負担の限界といった事例が多いと思います。


今回は赤字の解消が見込めないという典型的な経営破綻ですが、養鶏ではこのように返済の増加に配合飼料価格の上昇が、利益を圧迫し体力を失い破綻に至るということが多いものです。


または、鳥インフルエンザからの回復で販路先減少から収入低下が続き、コスト高に耐えきれないで破綻という事例もこの平成後半には発生しています。


つまり、この数年景気が良く更なる販路拡大や規模拡大はこの先もこの状態が数年以上続くという見込みがあって行うものです。


読み違えると、負担だけが増えていき収入増加のための方策がないという業界特有の問題に至ります。

 

この経営モデルは多くの養鶏家が追い求めるスタイルかもしれません。


自社鶏卵の販路先以外にも展開先を増やす。
そのためには自社で加工し販売する。

加工品は規格卵以外の鶏卵を主体に使用することで、規格外の著しく低い引き取り値とは違い、採算の取れる商品となり無駄がない。

相場に左右されず、安定した経営と農場ブランドが確立できるきっかけにもなる。


ですが、そのためには加工生産であればその設備、衛生対策に要するコスト、そもそも集客できる味や広告といった出費も相応に必要です。
これにつまずくと、短い期間で撤退ということもありますし、現実一定数は発生します。


それだけ厳しい世界でもあります。


ネット通販も、特筆するような鶏卵でない限り近隣のスーパー、仕事帰りにドラックストア、急ぎならコンビニといったこの鶏卵の良さが見えないと、ただの鶏卵でしかないという現実がありますし、ネットは世界とつながるから販路も多くなるといった言葉で始めるもその先まで進めないということもあります。


この養鶏場ではブランド展開した「赤たまご養生卵」を作り、19年には農場HACCP認証を取得し衛生対策の強化を消費者にアピール等差別化をはかっていました。


20年以降新型コロナウイルスによる巣ごもり需要、令和に入り2,4年の鳥インフルエンザ大流行による鶏卵相場の大きな上昇も本来は追い風になるじきではありました。


でも負債があり、支払いが多い場合、その収入は返済や高騰を続ける配合飼料代金に消えていき、なかなか赤字から抜け出せないという構図になります。


固定費が高くなりすぎ、餌、返済、加工設備、人件費といったものを削る、免除することも難しいことになり体力消耗しながら、経営が改善できることを期待して農場を動かしていたのかもしれませんが、困難に至るということなのかもしれません。

 

弊所でもこのように固定費が増大し、負のスパイラルにもがく農場も見てきています。
経営コンサルタントの支援を受けながらコスト減を図る状況も見てきましたが、養鶏ではコストを図ることは相当困難であり、間違えると農場そのものが傾くという厳しいものである感じます。


少し話がそれますが、ある農場では経営が傾き経営コンサルタントに依頼しコスト削減を進めました。
お約束の人件費削減、残業の申告許可制、コスト減のため餌の格落ち銘柄の使用の推進、飼養期間の更なる延長といった目先の方策で進んでいく事例を見ています。


でも、人件費を削ると、有能な方から離脱していき、ただの人足が残り、頭を使うらしい仕事程度に変わり、餌グレードダウンによる変化がわからず、生産が減少し傷玉が増えていく、更に実入りが悪くなり加工向け出荷専用農場とし、低額であっても安定した経営を目指し、餌代支払いも難しくなり、いよいよ延滞し餌メーカーから取引停止、貸付金の返済訴訟でいよいよ終わるという流れを見ています。


それだけ、生き物を相手に経営を組み立てることの難しさがこの畜産業にはあります。
ただ削る、なくすでは運が良くなり実入りが改善しない限り困難なのです。

 

配合飼料価格の高騰で、一気に倒れる養鶏場が多かった数年前と同じ構図ですが、規模拡大するためには収入が増えることは当たり前であると同時に、餌代が高いのであればどのように削ることができるのか、頭を使い実行しなければ生き残れません。


多くはこれを想定しておらず、売り上げが増えるから大丈夫というある意味どんぶり勘定に近い状態で事を進めてしまうのかもしれません。


収入が増える方法は、餌代をどのように「効率よく」使い無駄をなくすのか、二束三文のB級卵を作らない鶏舎環境や、設備の点検と修繕を早くできるのか。

人を育て人足程度で満足せず、気づき対処できるように育ていかに早く異常を察知できるのか、本当はこのような点にコストダウンという見えるだけでの対策以外にも同時に進めるべきものなのです。


工業品と違い、金型に入れて鶏卵を作っているわけではありません。

事務用品と違い、鉛筆が短いからサックをつけてさらに使うという程度では解決できません。


頭を使い、見えない無駄を徹底的に取るのです。


それは専門家でしかわからないかもしれません。
でもそれしか方法はないのです。

今日のお話を、ただの養鶏場の破綻の話としてこのお話を読むのか。
それとも養鶏が求めるモデルケースは今も通用できるのか。
本当に勝算はあるのか。
六次産業は魅力的であり、一度は展開したい。

そんなあこがれだけでこの先も安泰なのか。


ではどうするのか。


諦めて足元を固めていれば大丈夫なのか。
いや人口減少から販路先維持のためにも拡大は必須なのか。


では、その方法はどうか。


この思考で皆さんの農場を点検してみてください。
未来予想図は今実行しなければならないわけではありません。
情勢が変われば予想も修正するはずです。
一度引いた青写真は10年先もそのままで良いということではないのです。

PDCAを活用した改善の取り組みを コストだけの意識以外にも改善という取り組みで結果収入を増やすという考え

配合飼料工場渡し価格が再び1トン10万円にかなり接近しています。
背景には円安、輸送コスト増が主になるようです。

昨日から円高方向へ向かい始めていますが、今週のドル円終値は147.08円となり、2月初めごろの為替水準で終えています。

この先は、米国基準金利が下がる政策に変わるとされ、日本は金利上昇へ向かい始めるような政策に舵を切るという思惑もあり一時的な円高になりつつあるといわれますが、長期的に見ては一時的とされます。

 

大事な収入源の目安となる鶏卵相場は年初から緩やかですが上昇しております。

8日時点210円(東京M規準値)となり、年初から30円の上昇です。


飼料要求率は多くの農場で2.0程度が多いでしょう。

もちろん鶏舎設備(ウインドレスより高床式のほうが保温性が劣り数値は上がることが多い)や鶏種(白系統より赤系統のほうが要求率は高めに推移する)により変動すると思います。


白のウインドレスであれば1.8から2.0程度、赤は1.9から2.2の範囲というところでしょうか。高床式であればそれより0.2程度高いということもあるでしょう。
そう考えると、鶏卵1キロ当たり白では1.9キロの餌とすれば1トン9万円と見ると、1キロの餌は90円となり1.9では171円で1キロ収入は210円(基準値)と試算できます。


もちろん210円ということはなく、通常安値が参考価格となることも多くこの場合204円が最大価格になるということもあると思います。
傷があり、汚れがあれば規格落ちとなり容赦ない減額15円、20円といった所もあると思います。

そうなる場合189円、184円まで値段が下がり餌代は賄えても採算割れは必至です。


ざっくりですが、傷等規格外になると一般的には採算割れの商品になります。

餌代は同じですからそうなります。


農場では、この規格外対策にかなり力を入れている農場も多くあります。


平均的に見て傷発生(規格外出荷)率は5%から25%と幅があり、大規模鶏舎ほど数値は大きくなる傾向があるように感じます。
小規模である場合、手集卵により破卵が少ない、大規模ほど機械集卵になりメンテナンスしだいで破卵率が大きく変わるという傾向です。


またゲージ飼育より平飼いのほうが、ネスト以外で放卵することも多いため破卵率は高いという傾向もあります。


今日のテーマであるPDCAを活用した改善の取り組みをするという意識が改善を考える最初の一歩になりますし、とても大事であることがわかります。


確かに何をしても破卵率は0になることはありません。

ですから多くは仕方ないもの、取り組みしても取り組み費用の方が高くなり費用対効果から意味がないと考える農場も多いでしょう。


ではそのままで良いのかということですが、先ほどのように収入は210円(基準値)でこれを変えることは農場ではできません。
ブランド卵にして価格を決めることも可能でしょうが、多くはこの基準値を参考に値決めしていくと思いますし、今は高い設定でも定期的な見直しがありゆくゆくは規準値に近づく動きになることもあります。


ですから210円がどうのこうのではなく、参考価格に対し農場がどのように耐性を作ることができるのかという意識が大事です。


経営者は特にお金の出入りにはとても敏感で、この問題を意識するところも多いでしょう。
ですが従業員は別で、多くは月給や日給制であり改善があったとしても収入に変動がないこともありますので、意識を持ちにくく関心度は低めです。


良く聞かれる事例としては、自動集卵で、メンテナンスが不足しており鶏卵が割れるような状態でも多くはその鶏卵を取り除き1日100個程度の壊れだから何もしないという所もあります。


個数が問題ではなく、その意識が改善する余地があるということです。


確かに1個の鶏卵が60グラム程度であれば、1個の収入見込み額は約12円程度です。100個でも1200円です。

1時間分の人件費程度かもしれません。


でも1200円のお金をわざとゴミ箱に入れるような人はいません。

現金は大切だけど商品はどうでも良いというその意識に改善の余地があるのです。


お金という価値以外に興味がない場合の多くは、このような異常として表れる生産量や規格外発生には関心を持つことはできないといえます。


この状態で、やれコスト対策をしろ、コストを削れでは目先の数値改善程度しか見えないのも納得できます。


何かを改善するということは、何が悪くどのように対策をとればよいのかという方法を先に考えるはずです。
でも多くは、目先の数値のために削り、それが答えになるという思考が多いように感じます。


弊所のPDCAサイクル研修でも最初に参加する方々の多くは、方法まで十分な検討をする視点がないという方も多かったと感じます。
この視点がない状態で何かをするとどうなるのかと考えると、皆さんも想像できると思います。


この視点が大事なのです。


でもその改善のためにはどのような形で取り組むのかという方法を学ぶと、意外と改善が早く進みます。
それは、そのための答えを多くの方が既に持っていて、正しく検討しリスクまで評価しておくと多くは成功へと進んでいきます。


少しのきっかけがまだ足りていないというのが実情に感じます。


多くの方が知っているPDCAサイクルは改善するための方法としてとても参考になる手法です。


農場展開には速度が遅いこともあり向かないとも言われますが、畜産では手法経営や農場スタイルを今にあわせる「リフォーム」方法の方が、1から新規構築する場合より無理がなく、安心して応用できる利点があります。


基本の農場スタイルは時代が変わっても大きくは変わりません。

そのための方法やそこまでに大きく発展させた手法は農場にノウハウとして既に存在しています。


新しいイノベーションを切り開くということも大事ですが、先ずは足元を固めて、そのうえで新規取り組みをしていく方が間違いのない発展方法です。


そのPDCAは、必ずPから始めるというルールはありません。


プランは物を始める方法を最初に考えますのでとても大事です。

でも農場の多くは既に実行している事項も多く存在します。
餌の削減であれば、既に削ったという段階もあるでしょう。

 

つまりPから始めるというより、すでにDに発展していることも多いというのが農場の実情ではないでしょうか。


ですから、大事なのはCになります。


PDCAの一番の要はCなのです。


チェックとも言われる段階ですが、その実行に対してどのような結果になったのか、それは良かったのか・悪かったのか。という評価をします。
これがないと、やったから成功した、生産量が下がったけど仕方がなかった、そもそもこの実行に効果があったのかという次に生かすための方法を見つける事ができません。


いわゆる「やりっぱなし」になり、これがあらゆるシーンで散見される結果になります。


この状況の多くは、新しいことを初めて実行したけど、いつの間にかやっていなかった、そもそもその方法を知らなかった、うまくいかない場合「それは私が決めたものではない」という責任転嫁のような発言がある組織に良く見られます。


つまり、良くしていきたいと考えた時、できる人が率先すれば解決できるという意識では成功しないということを知っておくと何となく失敗し続けている、改善が何年たっても見られない、そもそも改善というキーワードが出てこないというのも納得できると思います。


そうです。

現場にその意識が育っていないのが要因です。


多くの方はPDCAは大事であるということを話してくれます。

でもその方法ばかりにとらわれ、視点が方法論ばかりに向かいがちです。


先ほどのPDCAのうちPをしっかり検討することが大事であるという方法も間違いではありませんが、すでに動いている場合はそこが解決の第一歩ではありません。


つまり最初の関所となるCが大事になります。でもPDCAとかかれているのでPから入るものと考えてしまうのでしょう。
私自身はこのCがしっかり検討していれば次のプランはかなり精度が高くなると感じています。


皆さんの農場もきっとそうなるはずです。


今更PDCAの方法を熱く語ることもしませんが、大事な視点は本当にそこなのかという視野です。
それがあれば、この方法はきっとうまくいきます。

 

それが先ほどのような規格外鶏卵の低減につながり、コストを結果的に下げる取り組みなります。
収入は農場サイドで解決できるものではありません。

 

でもコストは農場サイドの理解度、取り組み姿勢で下げることができます。


そのためには方法論も大事ですが、その方法をどの視点で見ることができるのかということです。
その1つがPDCAサイクルを取り入れるというものですが、繰り返しますが必ずPから始まると言うことではありません。


農場の多くは既にDまで発展しているはずです。であればCから始めるのです。


皆さんの農場もコストが、餌代がと考えることでしょう。
でも意外と取り組みがまだ十分でない設備や規格外対策はこれから取り組みをするだけでも、この1年だけではなくこの先未来永劫まで農場に利益として貢献してくれるはずです。


この取り組みを更にPDCAサイクルで改善していけば、更なる高い成果として農場にもたらすでしょう。


さあ、PDCAサイクルを取り入れて農場を大きく育てていきましょう。
でもそのためにはその意識がとても大事なことであると知っておいてから始めてください。

 

3月を迎え養鶏業界を見渡すと何が見えるでしょうか 未来を描く時期に入っていませんか

2月も終わり寒暖差があるとはいえ、少しずつ春が近いづいていると感じます。
弊所の近隣も梅が咲き、早咲き桜が足元まで来ている春を教えてくれています。

皆さんの地域はいかかでしょうか。


さて、2月29日時点の鶏卵価格は205円(東京M規準値)となり、初市180円から見て25円の上昇となります。
2月は1日から成鶏更新・空舎延長事業が発動されました。

幾分の農場が賛同したと聞きますが、標準取引価格は下旬には安定基準価格を上回り26日で事業が終了しました。


この先3月中旬ごろまでは急激な上昇はないものの、緩やかな上昇トレンドに乗り鶏卵相場の底堅い動きを確認することになるでしょう。


ですが、4月以降は相場の値動きには注意が必要になりそうです。

昨年からお話ししています通り、昨シーズン鳥インフルエンザによる被害にあった農場からの回復がほぼ全量回復する時期になるといわれます。

つまり供給側はフル全開で消費者に安定した商品が供給できる体制が完了するわけですが、消費される需要側は昨年からの高卵価による影響や、経済情勢、人口動態等あり以前と同じような消費体制には至っていないという現状があります。


スーパーでの購入頻度が低下(来客数の減少)しているとも聞きます。

ある準大手スーパーでは明らかに買い物頻度が下がっていると感じるといいます。
客単価は上昇しているが、頻度が少なくなったこともあり、例えば1回買い物金額4000円のお客様が週3回から2回に変わり1回5000円程度購入されていて実質2000円程度の購入機会を失っているといいます。


その理由は鶏卵価格の上昇ではなく、食品全体が高くなっており必需品、ストック品を中心に購入している傾向があり、まとめ買いをすることで、ついで買いを抑えている傾向がみられるといいます。


鶏卵は10個入が基本販売ですが、たとえ1個26円程度であっても1購入は260円と10倍になりますので価格に対し敏感になっている傾向があります。

ですから1個30円と割り増しであっても6個180円のほうが負担感が小さいため受け入れやすいという傾向があります。

6個でも売れれば店舗は特に異論はありませんが、生産者側は注意が必要です。


10個の鶏卵を例えば7日程度で消費する家庭では、6個入りでは5日もあれば在庫がなくなり買い物をすると考えがちです。
ですが、消費動向を見ると6個でも7日程度かけて消費している傾向が意外と多くあります。

これは鶏卵は毎日食べるものかもしれないが、毎日食べなくても良い物という位置づけの変化があるということです。


つまり値段が高い物であっても毎日食べたいという意識が薄れていくことで、潤沢な食材の1つにすぎないという特色がない食品に格下げられるということです。


鶏卵は大きいものでなければ売れないという時代も終わりを迎えています。


今の時代小玉(MSやSサイズのミックス)鶏卵は1パックで200円、特売扱いで150円程度という店舗もありますし、通年販売している店舗が多く集客目玉商品としているところもあります。
鶏卵販売がサイズミックス卵販売の影響とも言えますが、Lサイズといった大きいからこそありがたい、価値があると感じる消費者は少なくなったということでしょう。


それに呼応するようにジュリア、ジュリアライトは数年前に比べ飼養管理を大きく変更しないとしても、生産量は変わらず、重さだけが小さくなったという傾向が多くなったと思います。


弊所でのパック卵重量検査でもサイズミックスの平均個卵重は58グラムとMサイズが中心でそろえた詰合せになっていますが、やはり小さくなったという傾向が見られ、これがさらに小さい小玉ミックスであっても小さいと違和感を感じることがなく購入シフトできたのであろうと感じます。

 

値段が安ければ毎日食べても良いが、高ければ別に毎日でなくても代替品で用が足りるということで、業界の1日2個以上食べましょうというスローガンも消費者に届きにくくなるということを知っておく必要があります。


たまごは手軽なたんぱく質の補給源になる、バランス栄養食品であるという業界は見ていますが、消費者側は必ずしも同じ思考ではありません。


手軽なたんぱく質は、鶏卵以外にも大豆も代替できますし、卵の代わりに色どり野菜や胸鶏肉等代替品に置き換えることもあり得ます。


要は身近で絶対に消費者から見放されない鶏卵が絶対的王者ではないということです。


消費人口の減少も危惧されています。

人口の一定数を外国人技能実習生といった長期滞在者が最寄りの市町村に住民登録をするはずですから、今の人口の一定数は外国の方が住民として存在していると考えると、消費動向は、人口推計だけで論じると、実際はもっと少なく、為替による魅力を失うと流出し元に戻らないというリスクもあります。


また、一昨年以降ブランド卵へ移行した農場も多く見る機会がありました。

他社より魅力があり知名度を上げるという目的があったと思います。
ですが昨年、今年もそうですが、ブランド移行したもののこれで大丈夫なのかという声も聞きます。

 

弊所でもブランドに対する市場動向に関するお問い合わせをいただきます。

また自社の市場価値を上げるための戦略をコンサルしてほしいといった農場運営以外にも、その先の販路の未来をより強固な状態で次の世代に譲りたいという本音が見えています。


お客様であれば精一杯弊所も応援し希望する未来への鉄路を引いていく戦略を描き具現化していきますが、必ずしもそこまで必要としない又はそんな大げさな世界にはならないと考える農場もあると思います。


その思いは間違いではなく、見当違いではありません。

ですが未来は本当にわからないというのが本音です。


一般的に先まで見る目がある経営者は、あるべき姿を想像しそれに向かって準備を進めていくといわれます。

ですから、あるべき姿になったからと言って「ほらそうなっただろう!俺の言った通りではないか」とは言いません。

粛々と準備をして次に手のために動き現実化していくのです。

それに乗れるのか、そうでないのかの違いです。


多くは、乗り遅れるということもあるでしょうが、先にたどり着いた農場は先駆けの農場として既得権益を得ることでしょう。

 

いまのエイビアリー鶏舎の展開もそのような1例になると思います。

おそらく5年先、10年先もバタリーゲージが廃止されることはないと思います。

でも世界と取引する店舗や外資系店舗は本国の意向や世界の常識に近づき先に経営を進めていきます。

損して得取れではありませんが、今はこれで大儲けできるとは考えていないでしょうが、この先15年、20年には気づけばバタリーゲージも存在するが、世論は、世界は、店舗はエイビアリーといったアニマルウェルフェアの考えを取り入れていた、その時代に乗れていたということもあるでしょう。

 

慌てて乗りに行く農場もあると思います。

いわゆる後発組ですが先駆者が築いたシェアは崩すことはできないでしょう。残り少ないシェア、パイを争奪していく戦国時代に入る可能性もあります。
でも先駆者は一定の販路がすでにあり城壁を厚く高く築いており高みの見物といった時代になるでしょう。


でも先のことは誰もわかりません。

でもわかるとすればこの先春以降昨年以降多く餌付けした鶏達が卵を産み始めていき、需要先が加工向けをはじめ大きく増えていかない可能性が予見できるという背景から何が見えるのでしょうか。


餌代が高いから、エネルギー価格が高いから経営が大変ということは昨年、一昨年からわかりきっています。

今更大変、どうしようと頭を抱える農場は未来の戦略が描き切れなかったのかもしれません。

昨年まで鶏卵が高く実入りが良かった。

自宅用の外車を買った、鶏舎を新築した、軽自動車を5台も購入したといった使い方の未来を描き実行したのかもしれません。


昨年から鳥インフルエンザの発生は少なく鶏卵高騰ということはないと昨年からお話ししています。

そんなつまらない記事見てもしょうがない、経営者の利益が取れる喜ぶ記事を書けという声も聞こえそうです。


でもこの先の未来を考えると、鶏卵相場年末500円になります、餌代は1トン4000円程度になるでしょうとは言えません。

そんな条件は1つもないのです。


であれば、今の養鶏業界をどのような角度で見ていくのが、皆さんが築いた農場を守ることができるのでしょうか。

鶏卵相場だけ見れば良いのでしょうか。

それとも配合飼料価格の動向だけ見ていれば良いのでしょうか。


農場を動かす人材はただの人足(にんそく・力仕事だけできればよい人材)で用が足りるのでしょうか。

鶏が変わり管理が変わると考えた時その人足で用は足りるのでしょうか。

そもそもそれを管理する管理職人員は人足から卒業できているのでしょうか。

 

そんな気づきも農場経営には必要なことかもしれません。


この春多くの人たちが養鶏の世界へ希望を持って入ることでしょう。

それと同時に違う業界へ転職したり、同業に引き抜かれる人もいることでしょう。

一昔はご法度とも言われた引き抜きですが、今の時代そんなものは普通にある時代になりました。つまり農場体力が外部同士で値踏みされており、格上、格下と遠慮が美徳という時代ではないということです。

 

力があり、知識がある人材は人足(にんそく)ではなく人足(ひとあし・人が流れていく様)のように発展を求める農場へ行き来していきます。


人が足りないといわれる産業は人足が不足しているといわれますが、この養鶏の世界ではまだ人足が足りないではその先の未来どころではないでしょう。


既に人足ではなく、移動できる人足(ひとあし)を求める農場と既に差が生まれています。

このコスト増の時代では、目先で手いっぱいで乗り遅れていくのか、次の一手を打ち進んでいくのか、経営体力に差をつけられる、まさにふるいにかけるような時代に入ったように感じます。

皆さんはどのような未来を描いていますか。

鳥インフルエンザが疑われる事例とは 通報ルールはありますか

今年の鳥インフルエンザの被害は、昨年に比べ少なく推移しています。 ウイルスの感染力が弱い等様々な憶測がありますが、一番は農場自身の衛生管理が向上したことが大きいと感じます。 今年度の鳥インフルエンザ発生状況は7日時点8県8事例約70万羽の鶏が殺処分されています。 傾向としては関東から西側の地域に見られますが、依然として偏りがあるような状況でもありません。 この先も発生するリスクが残っていることを知り引き続き衛生管理を続けていただきたいと思います。 さて、今年度の発生した農場のうち、香川県の発生事例では関連農場を含め11万羽が殺処分されたのですが、朝日新聞デジタルによれば、養鶏場からの異常報告が遅滞していたことを報じています。 報道では、県の指導となる2倍ルール(過去21日間の斃死が平均の2倍を報告する目安)を遵守していないというものです。 農場から通報があったのは2月5日朝とされます。通常遅くとも前日には異常として認識され(通常と異なる斃死数があることで異常と判断せざるを得ない状況)通報するものですが、今回の事例では1月31日に相当数の斃死があったとされます。 農場側も意図的に隠ぺいしていたわけではないと思いますが、農場での状況・過去の経験則や鳥インフルエンザではないという思い込みから、結果的に通報を遅らせてしまったという状況に変わりはありません。 県の報道は、5日農場管理者から西部家畜保健衛生所に西讃支所に死亡羽数の増加連絡があります。 同日立ち入り検査を行い13羽の検体のうち10羽が簡易検査で陽性であると確認し翌6日農林水産省から確定を受け殺処分となりました。 さて、このような通報の遅滞は数年に1度は報告として聞くことがあります。 昨年の大流行でも関東地方で遅滞事例が発生しています。 理由としては、他の病気を疑いまずはその病気の治療を優先したというもので、飼養管理から農場内に定着している病気を疑うのだと思いますが、結果として見間違いとなり、通報が遅れるという一番よくない事態に陥ります。 弊所のお客様には通報ルールについて数年前から研修としてお話していますが、一番大事なことは「高病原性鳥インフルエンザの症状は、外見でわかることは困難である」ということを最初にお話ししています。 よく言われるものとしては、多くの鶏が死んでしまう、数が多くゲージ内にまとまって死んでしまう、又は場所が特定した状態で固まっている状態等が言われます。 そのほとんどは、数を話していますが、では症状的に何かあるのかと良く聞かれます。 弊所では経験はありませんので、様々な方々から伺う内容や、一般的な症例を基にお話をしたりスライドで視覚からイメージを知り、内容を知り理解するようなものとして研修をしています。 でも多くの農場ではそのような症状を見ることはほとんどありません。 通常農場生涯1回あるのかどうかの事例とも言えますので、実感がわかないというのが本音ではないでしょうか。 では、通報するために何を知り疑うのかということについてお話しします。 一般的に高病原性鳥インフルエンザの症状を知ることは難しいことで、よく言われる異常だから現場が解剖して原因を探すという、通常では通用できる方法が裏目になるということを知っておくと良いでしょう。 高病原性鳥インフルエンザは異常と感じさせる数の鶏が死んでしまうということが症状であるということです。 症状を見ると、数多く死んでしまう、解剖すると腸に変化がある場合があるとも言われます。 過去の報告遅延事例でもこのような腸に変化があるという点から判断を間違えるということがあります。 今回も同じで、報道では「別の病気を疑い、投薬を進めていた」と説明しています。 その結果、通報前日の2月4日は1000羽の死亡となったと言います。 この農場は1日平均10羽前後で、1月31日146羽で14倍相当になります。恐らく規模が大きい鶏舎であっても100羽から死亡することを正常であると認識することはないと思います。 異常ではあるが、解剖してみたら腸に病変が認められた。だからコクシだクロストだと思い込み治療せねばとなるのだと思います。 確かに病変が認められることもあります。 ですが、季節がこの時期で鳥インフルエンザの疑いが否定できない時は、自己診断や管理獣医師へ相談し現認しないまま治療を指示することは間違いと言えます。 獣医師が到着せず、確認せず、状況から許可をすることも感心しません。 確かに冬季の鶏舎への立ち入りは遠慮したいということもあるでしょうし、そもそも当日中に鶏舎に行くことができないということもあるはずです。 では、現場から申し出があるから「投薬許可」だけ与えるのは治療は開始できるでしょうが、結果的にそれは正解になるのかと考えると、少し変わると思います。 弊所では、管理獣医師が参加している研修であっても、通報は同時で構わないが、管理獣医師が現認できないのであれば家畜保健衛生所が優先確認し、獣医師はその結果を受け取ることが望ましいとお話ししています。 つまり、早期通報で早期に動ける側に措置を任せるという原則を徹底してもらうことが、ルールの前提であるとし、その方法を定めていきます。 もちろん先に管理獣医師が到着する場合、診察をして場合により簡易検査を行い陽性が疑われる場合は速やかに通報し家畜保健衛生所の指示を受けるようになります。 通報までの速度は、朝死亡鶏の確認後2時間以内に管理獣医師が到着できるのか確認し、不可であればその時点で、家畜保健衛生所へ通報し経営者が管理獣医師の窓口として情報を共有することにしています。 通報は早く、疑いがあればすぐに通報し行動することが大事になります。 でも家保にいきなり通報は躊躇すると考える農場もあるはずで、ルール上はしなければなりませんが、僅かな猶予時間を与え、それでも時間以内に到着が見込めない場合は、観念して通報に至るようにルールを作ります。 これを猶予時間と呼び、農場が決断する時間としています。 もし管理獣医師が身近にいないという場合は、家畜保健衛生所への通報が一番です。 鳥インフルエンザの疑いであっても簡易検査をして陰性であれば、その原因をある程度までは推察し指導してくれます。 ですから、鳥インフルエンザの疑いだけが家畜保健衛生所の仕事ではなく、死亡鶏が多いだけでも相談に応じてくれます。ある農場では鳥インフルエンザの疑いで通報したところ、 簡易検査で陰性が確定され検体を持ち帰り調べてくれます。この時は大腸菌症が疑われるのでと、このような対策をしてみてはと助言をしてくれます。 用事がなければ相談先でもない家保という先入観から、農場のノウハウが絶対になり結果その判断が間違っていくという事例は今回の農場以外にもあります。 季節がその被害が発生しやすい時期であれば、死亡数が多ければ先に通報になることを知っておき、農場すべての人がその早期通報を徹底できるように研修でも良いでしょうが浸透させることが大事です。 そして遅滞は農場にとってマイナスでしかないということも知っておくと良いでしょう。 農林水産省が公表している「過去発生における手当金の交付状況」では手当金の減額について説明があります。 それによれば「飼養衛生管理基準に違反している場合」「早期通報違反である場合」「虚偽の報告をした場合」には外部有識者の見解を踏まえ2%以上の減額率を算定しています。 また減額の上限はなくそれ以上の減額もありえるとしています。 例えば、採卵鶏農場では、令和2年に「農場で手指消毒や手袋の交換がなく、特定症状確認から1週間以上経過し、簡易検査で陽性を確認するまで通報がない」として、手当金及び特別手当金の6%を減額しています。 また、令和3年では「農場では衛生管理区域専用の衣服の着用がなく、飼養管理者が異常と認知していたにもかかわらず、家畜保健衛生所へは翌々日まで報告がなかった」ことで、手当金及び特別手当金の5%を減額しています。 その金額は皆さんが思うほど小さいということはなく、手当金の意味を理解していただくとわかります。 令和2年は52発生事例のうち27農場は法令違反、通報遅延等により減額交付となりました。 令和3年は17事例のうち8農場が減額交付となります。 通報ルールは農場が自ら定めることはできます。 そのためには早期に通報できるように農場自身が知り、行動をおこすように定めることです。 遅滞なく・経営者の判断を仰がない(現実は無理だと思いますから、経営者は遅滞させる行動を慎み、先ずは家畜保健衛生所へ通報という相談、そして管理獣医師への相談という行動をおこすことを第1にします。 季節によっては農場特有の病気を疑う前に、その疑いを農場自身が解明・治療を行うのではなく家畜保健衛生所に委ねることが大事になるということも想定してください。 まだ散発発生が続く鳥インフルエンザですが、皆さんの早期通報ルールはどのように定めているでしょうか。 まだ定まらない、臨機応変で動く等いろいろ理由はあるでしょうが、通報ルールは飼養衛生管理基準にも定められており、通報が遅いほど後々農場の再開に支障がでることもあります。 安易な考えが、実は後になって大変なことにもなりかねない早期通報は、他人事として考えるのか、実情から早期にできることを想定しておくのか、自身の都合の良い考えではなく、元になるルールを自身に合わせる思考を持ち日々取り組みを続けていただきたいと思います。