nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

物が高いといわれます 生産費は高く応分の負担を求めていますがそれだけで解決できるのでしょうか

2024年4月の食料品値上げは4000品目になり、久しぶりの多い値上げが実施され、消費者も値上げを受け入れざるを得ない状態が続いています。
5月の値上げは約10分の1の400品目になりますが、飲料が多いものになり、これから必須になる食品類に価格改定があるように感じます。


また、あまり知られていないように感じますが、5月使用分(6月支払分)からは光熱費の補助が小さくなり電気は1KWHあたり1.8円程度へ、ガスも1立方あたり7.5円に改定されます。
この期間、電気料金は値上げが続いており補助と相殺して小さいもののように感じさせられていましたが、6月以降は少し負担を感じるようになるかもしれません。
特に今年も平年より気温は高く推移されるという長期予報も発表されており、家庭ではエアコンの使用頻度が上がり翌月の電気料金に狼狽するということもあるでしょう。


その6月は定率減税が実施され、国税3万円、地方税1万円を上限に給与から差し引きをしない形の減税がはじまります。


収入の改善も進んでいるといわれます。
本年令和6年の賃金改定率は平均5%を少し超える程度になったといわれます。中小企業も4%台とされますので、月20万円の収入であれば理論上8000円の上乗せになるということでしょうか。


大きいように感じますが、政府が発表した3月の物価上昇率はエネルギーと生鮮欲品を除いた上昇は前年同月比2.9%、先月2月と比較して+0.1%の上昇とされます。
収入のほうが比率的に高いと感じるかもしれませんが、物価上昇は毎月のように緩やかとはいえ上昇しており、その中の給与据え置きとは言いませんが、今回の改定までは少ない状態で生活をされています。
ですから、月8000円増えたから、買い物かご1杯満杯購入しようとはならないと感じます。


実際、チェーンストア協会が発表した本年3月の売上高を見ますと、食料品は前年比111%増となり、値上げの効果と感じる売上金額ベースでは増えていますが、畜産物は109%と少し控えめです。
詳細を見ると、価格が低い物「鶏肉」「豚肉」が良く売れており、牛肉は鈍く、鶏卵はまずまずというところとされます。


更に見ますと、弊所の購買調査でも鶏・豚ともに海外産の取扱比率を上げており、国産と外国産半々の売り上げのように感じます。
鶏肉では、○○鶏といったブランド名があるものより、国産若鳥の方に手を伸ばす方も多く、外国産モモ唐揚げ用といった用途に適した外国産のほうが人気に見えます。
豚肉も同様の傾向で、国産コマ切れも人気ですが、同じ値段で外国産切り落としのほうが用途にも優れ人気のように感じます。


鶏卵は相場が昨年と異なり前年より下がっているはずですが、販売価格は全国平均価格277円と、昨年8月の最高値302円より約8%程度しか下がらず相場値とは異なる値動きが続いています。

 

消費者の動向についてはライブドアブログに数年前掲載しましたが、購買層は国産に絶対の期待や安全であり安心と言う言葉に期待しているとは限らないという傾向があり、特にこれから消費を支える世代となる若い世代ほどこの傾向があるとお話ししました。今この価格高騰からこのように選択して良い品、安い品を選別しているといっても過言ではないように感じます。


さて、物が高いといわれて久しくなりました。


日本はデフレであり、脱却している過程であるといわれます。
長く物が安く、安定して安いこともあり、日本は賃金が上がらないとしても生活に支障を与えるような経済情勢ではありませんでした。
その時期を過ごした多くの方は、賃金が上がらいからこそこの先の国の経済状況や国力の不安もあるのでしょうか、長らく消費者の財布の紐は固いという言葉が長く聞かれました。


将来への不安もあるのでしょう。

そんな無駄なものにお金をかけないという洗礼された節約方法を会得された方も多いように感じます。


ですが、年齢が上になる世代は好景気であった時代を知っており、また1ドル100円になる、タクシーを乗るのに1万円札を見せて停車させるといった恐らくこの先そんな時代にはならない昔を懐かしむ感じです。


将来の見通しは恐らくこれから消費を担う若い方々のほうが先見の目があり、厳しいと予測されているはずです。
ですが、年齢が上になるほど、まあこの先もそれなりに良くもないが悪くもないという程度に認識ではないでしょうか。


これが消費動向に違いを与えているきっかけになっているように感じます。


年齢が上の人ほど、国産は安全であり安心である。

外国産は何が入っているのかわからず不安である。

だから高くても買うのである。
そう感じる方が多いのではないでしょうか。


一方若い方々は安全性はどちらも同じように感じる、であれば価格が安いほうを選び購入すればよく、広告で安いから国産と言うこともあるでしょうが、外国産に不安があるわけではなく購入選択に十分候補になるというところでしょう。


この要因には、食肉であれば外国産の品質事故がほとんどないということが要因に感じます。


昔は、狂牛病があり、牛乳では品質問題による回収事案、国内食肉卸による産地偽装や国産と称して外国産肉に血液を混ぜ合わせた国産ひき肉といった品質や不公正な加工による商品への信頼低下が多発していました。


だからこそ国産が安全であると信じ、国内で不正加工した肉を販売した業者への風当たりの強い行動になるのだと思います。


これにより、ある程度の歯止めができ、産地偽装を起こすと特に国産は信頼回復するまでの時間が長くなり、事故が報告されない外国産へ置き換わり、わざわざ高額な国産に戻らないという、ある意味当たり前の消費行動が発生し長くこのように時代が進んでいくように思います。


外食でも不祥事はありました。

大手ハンバーガーチェーンの鶏肉消費期限切れ問題では、来店が減少するまでの大きな報道と社会の反応がありました。


ですが、品質に関して改善を図っていること、お客様第一であることを時間をかけて広告し社会が認知していくことで、今ではそんなことすら忘れてしまうような繁盛ぶりです。


これにより恐らくこの会社での品質問題はそう多くないものになり、長らく安泰なものになるでしょう。
つまりは、品質問題が発生したとしても消費者に語り続け信頼を得られる事ができれば、消費は元に戻るということです。

でもそのためには誠実であるという姿を見せる必要があるのです。


では畜産物ではどうでしょうか。


鳥インフルエンザの話題が多かった令和4年は、過去最多の鶏が処分されていきました。
発生の都度、報道は食べても問題はないということを繰り返しています。
その通りだと思いますし、消費者はそこに関心を持っている方は多くないように感じます。
つまり「それはもう知っている」それより、その先の値段や販売数量はどうなのかということです。


1農場の飼育数が多くなりましたので一度に50万羽、100万羽が殺処分され1日当たり50万個、90万個の鶏卵が市場に流れないという緊急事態について、私たち生産者側はどのように考えるのかということです。


多くは生産者が気の毒、生産者側も災難であり気の毒という話題は聞きます。
確かに、挨拶最初に災難でしたねと言うのは自然な会話の流れ方でしょう。

生鮮野菜であれば、天候不良による供給減で高騰することで、消費は減退しますが、キャベツであれば、1玉ではなく、半分、4分の1といった切り売りも可能ですから、消費減退にある程度歯止めがかかります。

でも鶏卵は10個入が6個入りにするは今の流れですが、高いので3個入り、ばら売りという販売も可能でしょうが現実味がありません。

壊れやすい商品なのにばら売りは難しいということもあるでしょう。

 

つまり、1個が28円程度であっても、10個で280円、6個入りで約185円程度の割高ですから、まとまった価格になりますので手が遠のきます。


食品産業であると自認されているからでしょうか、消費者は商品を待ってくれる。

だから時間をかけてでも回復していくという姿勢が多いように感じます。
確かにその通りでしょう。


でも、根本はそこでしょうか。


鶏卵を失いそこからどう対応したでしょうか。
鶏卵が足りない、だから代替卵を使用して販売量減少を最低限にとどめる。

または輸入量を増やすことでまずは加工向けの供給に穴をあけないという企業の努力が多く報じられました。


そして安定した回復まで進みましたが、流通や加工企業は代替卵、鶏卵使用量を少なくしても商品化でき価値ある商品を投入しており、元に戻すためのコストをかけるような費用対効果が得られないというところもあります。


これは正直な感想だと思います。


皆さんでたとえるならば、今まで高い肉類が安くなった。今までは牛肉を食べる習慣がありすき焼きも当たり前のように牛肉でした。
でも比較的安い豚肉もすき焼きにしてもおいしい。

代替品ではあったかもしれないが、この先同じでも家族内で不満は出ないと感じる。
そういう地域もあるのではないでしょうか。


つまり、代替から戻るのに、わざわざ100グラム300円ぐらいの豚肉から800円以上する物に買う機会があっても戻す必要性を感じないということと同じです。


企業も風味や食べ応え等十分検討したうえで商品開発をしており、消費者から元に戻せという声は上がらないからこそ、作業工程を変える費用を負担するまでのメリットがないのです。


実際、西日本地域では、場所によりますがカレーやすき焼き、肉じゃがに牛肉を多く消費する地域も豚肉に置き換える消費者が増えたといわれます。


つまりは代替でも不自由はしていないということです。


消費者は待ってはくれます。

でも代替品があればそこに流れていき、一定数は戻らないと考えるのが正しい経営戦略になります。


鶏卵もこのコスト高、人件費高騰もあり、農場経営も大変だと思います。
その時、鶏卵を1個でも売るためには何ができるのかと考えると同時に、1個でも多く生産をするという姿勢も大事なように感じます。

それと同時に、鳥インフルエンザの発生は本当に天災と呼べるものなのか、設備類の不備、ねずみ、人の出入りの方法からの遮断不良等原因はいくらでもあります。

 

それを疎かにして天災では、少し残念でありそれを伏せて再起を図るというのも無理があります。

実際2年連続発生、過去発生から2回目の再発等遮断したのに再発するという農場もありました。

これは天災かもしれませんが、不備を直して再導入したのに、違う部位に不注意があった等人災に近い物も否定できません。

 

報道では疫学調査の内容まで報じることは見たことがなく、発生したことのみ報じ、農場の苦悩話を取り上げる感じです。

でも細部を見ると、侵入しやすい環境を依然作り続けていた、侵入させるような農場システムであった、不備は直したが人の遮断までは検討しておらず、そもそもそこに問題があった等見えないということもあるでしょう。

 

だからこそ鳥インフルエンザは天災である。

だからやむを得ないのである。

 

そういう風潮ができてしまうと、結局多発した令和4年の大流行では消費者は待ってくれるはずという認識の甘さから、回復まで待つという期待が想定から外れ、輸入し手当てをして自社を守るという姿勢になってしまい販路先を狭めてしまうという悪循環に陥ったと考えることができます。

 

確かに昨年は鶏を失う損失の年でしたから鶏卵相場は最高値350円(東京M規準値)まで高騰しました。

でも国の補助、再開までの融資制度も拡充されており、これを理由とし破綻した養鶏場は1社もなく再開まで進めることができました。

だから生産回復は通常モードになりましたが、輸入卵を購入している加工筋はコロナ回復の途上もあるでしょうが、加熱して使用するためあえて生食可能な国産に置き換えるメリットをこれを機会に見直したということにもなります。

 

国内は、生産が安定しない時代が必ずあり高騰されると、仕入れコストが増大になり、なおかつ生食用優先になり、流れてくる鶏卵が必要量得られないという問題がありました。

でも輸送賃が、冷凍の品質が製品に合わない、国内への影響が等様々勘案し年末だから仕方がない、一時的だから在庫でしのぐ等国内重視の姿勢を示していました。

その中で令和4年の大流行で、どうにもならないからこそ輸入を決断し大きな量ですが国内に仕入れをしたわけです。

確かに鶏卵が安くなれば輸送するコスト、通関し使用するまでの時期の需要変動等時間リスクを想定する必要がなく国内で賄えたいと考えるはずです。

 

そのためには、安定した生産が必要になるということです。

どんなに自社流通であっても必ず加工向け出荷はしているはずです。

破卵・汚れ玉・二黄卵等です。

加工向けは生食向けの余剰品を納める市場ではないのです。

大事なお客様なのです。

大口であり、規格卵ではないが引き取るがゆえ単価は安いのです。

 

では、どう考えるのかと同時に生産側もコストを意識しながら安定した生産活動をしていくことになります。


生産にかかる費用は高産卵のロットも、優れないロットも大きく違いはなく、高額であることは同じです。産む鶏とそうでない鶏の食下量には大きな差はないことは皆さん知っているはずです。


であれば、1個でも多く生産し市場に流通させることで、利益をとっていくことが肝心なように思います。


そのためには、24時間に1個正確に産んでくれる鶏達に報いる管理をする。

鶏に不自由を感じさせない管理をする、基本があり正しい応用がある管理をするといった養鶏の初歩を今一度見つめなおす時期でもあるように思えます。


コストを削減するからそこで儲ける、本当に必要かわからないけど人はたくさんいる方が安心なので採用を強化する。
そんな思いのある農場あるでしょうが、本当にそれが正しいのかわかる時は決算書を作る時、四半期の帳簿を眺めた時にわかると思います。


つまり、数か月先にわかり、間違えたと感じても後戻りできない時期です。


そして余計にコスト増に至り、格安投げ売りしてまずは餌代を支払い、供給停止を免れるといった自転車操業にならないように慎重に検討してください。


業界は応分の負担を消費者に求めます。


それは経営上正しい選択です。

ですが、消費者も選ぶ選択があり、その瞬間候補から外れるというリスクを知ったうえでその選択を行使しているはずです。


でも食品会社であるから消費者は困るはず。

だから元に戻るはずでは、見通しは甘いと言わざるを得ません。


値上げて本当にその商品の真価が問われるわけです。


消費者は値上げを受けれている。

そういう声は多く聞かれます。


その通りでしょう。

消費者側の選択肢は多くはないからです。
そこにあぐらをかいてはこの先の円安、インフレ、人口減少による競争激化に対処はできないでしょう。


そうではなく、値上げしてもこの鶏卵には価値がある、美味しいといっていただける自信がある。加工してこのような商品なって付加価値がある。
そういう、消費者が受け入れる価値があって値上げは受け入れられ、この先も安心した経営ができると感じます。

実際に値上げをして売り上げ減少になる食品は多くあります。

多くは値上げ疲れであるとか、いろいろ言われます。

でも多くは代替品に置き換わり、戻す必要性を感じないということではないでしょうか。

外国ではインフレ圧力は日本以上に高くなり値上げ疲れという言葉をよく聞きます。

欧州は生産側より流通側に権利があることで、不当な値上げであり受け入れられないと、ある外国飲料メーカーの商品を取り扱わないという報道があるぐらい、権利を行使する値上げに厳しいところもあり、実際収入が増えたとしても値上げ分まで十分賄えないという深刻さがあるように感じます。

 

日本はそこまでには至りませんが、既に大手流通店のPB(プライベートブランド)商品のほうが売れ筋になるつつあるといわれます。


大手加工メーカーも令和4年の大流行のような時期に原料仕入れに不安が生じないようなシステムを作るという話題も聞きます。


これはどういうことなのかはわかりませんが、鶏の命がなくなっていくということは、農場だけではなく、その先の消費者にとって不自由しない方策を新しく構築していくきっかけになるのです。


では、値上げて安泰で大丈夫でしょうか。


そこも大事ですが、衛生管理とは何か、コストには適正な値段があるということを知り、それ以上の削減は本当に有用なのか。
もっと掘り下げるきっかけになればと思います。


日本円もだいぶ値下がりしており、本日は158円台まで円安が進みました。

34年ぶりだそうです。


先ほどのように1ドルは100円になる時代は本当に来るでしょうか。ドル計算の題材に100円は計算しやすいですが、実際はもう158円です。

日本国の米ドル適正値は現時点135円程度とされますから、投機的要素があったとしても、安い水準です。


市場介入があるような、ないような話題があります。

輸入に頼る経営である畜産業では、物を買う、餌を買う、エネルギーを使う、素畜を買う時等多くは円の値打ちにより左右されるものばかりです。


これは私たちでどうにかなるものではありません。

個人が円を買う証拠金取引してもたがが知れています。


であれば、値上げでまずはどうにかしていくのも手ですが、それと同時になにができるのか、夏の相場を意識しながら考えてみると、夏以降秋の相場上昇期にきっと良い道筋を見つけることでしょう。