nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

卵アレルギーに対応した鶏卵が開発されつつあります 付加価値を知りただの鶏卵から脱する新しい取り組み

読売新聞が、国立病院機構広島大学が共同研究したゲノム編集した卵アレルギーをおきにくくする低減卵の臨床試験を行うと報じました。 国内初の商品となる見込みで、食品アレルギー第1位になる鶏卵に対していよいよ低減化した鶏卵が誕生する可能性があります。 報道によれば、来年卵アレルギーを持つ子供10名にアレルギー低減卵を加熱し乾燥させた粉末にして与えて症状が出るのか確認をしていくとされます。 安全性が確認できた後大手食品企業がこの卵を使用した加工品の製造と販売を行う予定です。 鶏卵アレルギーを持つ方は食品アレルギーがある方のうち最も多く、鶏卵、牛乳、小麦と上位3つのうち最も多いとされます。 アレルギーがある方は普段の食事や食品から原料に鶏卵が含有されているのか、鶏卵そのものの摂取に真剣に検討されていると思います。 今回の取り組みにより完全に除去される食品から、低減されている食品へと考え方が変わり、鶏卵が持つ美味しさや栄養価について改めて検討していただけるような時代になればと思います。 さて、鶏卵は付加価値がつきにくい食品とも言われます。 付加価値とは、一般的な鶏卵とは違い、餌にこだわり美味しさ、安全面へのこだわり、栄養強化、健康増進といった要素を含み通常の販売価格以上で市販できる価値を持つものです。 一般的なのは、ビタミン強化卵ですが、いまや珍しいものではありません。販路調査を見てもこの強化があるから選ぶという要素はほとんどみられず普及品と同様の位置にいると分析しています。 では、餌をこだわるはどうかと言えば、販路調査から見ても例えばポストハーベストフリー鶏卵は少し前の時代から選定対象になっていないことが既に調査により傾向がみられています。 これは、価格は高いがそれ以外は普及卵と遜色がないという理由もあり付加価値があると認識されにくくなっているというのが理由で、販売先もこれを理由に商品棚を提供する規模を縮小しているとも聞きます。 また鮮度、黄身が手で持つことができる等当たり前の物や、テレビ受けしやすいものも今の時代選定対象になっているとは言えません。 また昭和の時代と違い白玉より赤玉が価値があるという認識もほとんどありません。これは白玉の市場シェアが6割あり卵は白いが当たり前になり赤いから珍しいという考えを持つようにはならないのが理由です。 恐らく普及卵の付加価値を有する物はテレビ等で取り上げた直売所の新鮮鶏卵や○○の卵等知名度があり、リピーターになりやすい物に限られているというのが実情でしょう。その他では設備面の違いによるアニマルウェルフェア対応鶏卵も付加価値卵に位置付けることができます。 ですから近年はブランド卵に力を入れて「○○さん家の卵」「おいしい○○のたまご」といった生産者の顔写真を添えた鶏卵が乱立するようになり、結果付加価値向上から普及が進み、それが普及卵というクラスへ移行したとも言えます。 最近はブランド化に移行したが、その先の販路は大きく拡大できるのだろうかという不安の声も聞くようになったのは、これが主な要因になっていると推察されます。 鶏卵の選定基準は生産者にとっては厳しいのですが「価格」が主な選定理由であり、生産者の顔で決めているわけではありません。 特に本年初頭からの鶏卵販売価格はブランド卵と普及卵の価格差は数十円からせいぜい100円程度まで縮小したこともあり、一度ブランド卵に手を付けていただいたのに付加価値を見いだせず次は選ばれないということもあるように見えます。 つまり、付加価値は顔、餌、ビタミンといった昔からの手法の延長線上では認識されないということになります。 では、健康増進鶏卵はどうかというものですが、調査では珍しいから購入するという声を聞きますが、リピーターにはなりにくいという結果もあります。 これは、鶏卵が持つネガティブ要素と健康増進がミスマッチしているのが主たるものです。鶏卵と言えば高コレステロールと誤認され、普及活動あるものの改善は僅かという状況で高コレステロール食品を食べてEPA摂取をすると言われてもという具合です。 物珍しさから消費者は1回は手に取りますが、価値観を感じない場合2回目以降の購入確率は格段に下がります。 ある調査会社の方の話では、鶏卵分野で勝つには、鶏卵分野に知名度を上げていく、知名度を上げるための方策をとっている、商品を選ばれるような仕組みがあるといった要素が必須になると聞きます。 乱立状態の今の時代では工夫を必要とされるものです。皆さんはどのように取り組むのでしょうか。 今回の卵アレルギー対応鶏卵は、ただの付加価値ではありません。摂取していいただける機会が増えるかもしれないという販路が広がるという価値で、商品そのものに価値を有しています。 鶏卵消費は国民2個ぐらい食べてもらって生産活動が成り立つと聞きますが、人口減少が進んでいる時代10年後は4個、5個と増えていくことで成り立つというのは少し危険な話でもあります。外国人労働者を盛んに入れて人口維持をしない限り困難のようにも感じます。 加工向けも含めて消費しているという考え方もありますが、その分野には輸入という新しい阻害要因もあり得る時代になります。 鳥インフルエンザが発生し供給が不安になった令和4年の大流行はまさに消費活動に大きな変化がある時代でした。 生産者は減少は仕方ないと考えがちですが、鶏卵を消費するサイドは違う考え方で鶏卵を購入しているという認識を持っていただくと、鳥インフルエンザによる損失は農場単位どころではないということがわかるはずです。 今年は既に昨年発生した農場が今年度も発生したという話を聞くようになりました。 2年連続発生農場になるとはどういうことなのか、設備の欠落だけなのか、人的要素はどうなのか。 防げない、仕方ないでは見えないウイルスに立ち向かうことはできません。 できることを考えしっかり行う。人は善人でありウイルスを持ち込まないという意識は今年も安心材料なのか。それより入気口に消毒剤を注入して鶏舎に入れたほうが確実なのだろうか。 なぜウインドレス鶏舎は発生する設備なのだろうか。 自問自答して見ると、新しい視野が開けると思います。 報道は農場の被害と生産者の悲痛を伝えます。その通りですが、その内容はすべて正しい認識で書かれているとは限りません。 ウイルスを真剣に考えることができるのは皆さん生産者という農場サイドだけであり、外野はわかるはずはありません。 では、あらゆる対策を考えるともう一度問うと何かが見えるかもしれません。 ブランドを確立することは今の時代そんな難しいものではありません。販路先や集荷先と相談すれば展開も可能でしょう。問題はその先長く展開できるのかという視点です。 入り口は敷居は低くなりましたが、大事なのはブランド力を維持する方策とそのための戦略です。それは鶏卵そのものが本当にブランド力を持つことができているのかという点も考えてみてください。 そのためには鶏卵を選んでもらえる基準をどこに置くのかという視点はありますか。農場そのものは無価値でしょうか。アンテナショップ乱立だけでは価値向上にはなりませんが、そのショップに何かひと手間を加えるとどうでしょうか。 違う視点もありませんか。 ブランドが乱立している時代、多くのブランド卵は価格差があるだけの普及卵と揶揄されないように、何かひと手間を加えた価値を加えるという視点で自農場を見てください。 きっと何か変われるような要素が見えるはずです。