nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鶏舎の空気環境改善実験が大分県の養鶏場で行われています 空間除菌という意識

富士通ゼネラルの子会社と日田市の養鶏場が12月から1年程度の実証実験を行っています。 この実験は、子会社エアロシールド(富士通ゼネラルの子会社)が、n-UV技術と呼ばれる波長254ナノメートルの紫外線を照射してウイルスや細菌の拡散にダメージを与え浮遊ウイルスや細菌を不活化させるという特徴があります。 この技術を搭載した機械本体は空間上部に設置することで、水平照射をするので人に誤射する等の影響を与えないという特徴を持ち、今回畜産動物にも空間環境改善ビジネスを展開する予定です。 実証実験の背景には鶏舎環境の特に冬場の換気は室温を保つために換気を十分に行うことができず、食鳥では育成率低下、食鳥処理場での廃棄率浄化を引き起こし、経営に悪影響を及ぼすことから、ワンヘルス(人獣共通感染症の課題)の実現を目指す実証実験を実施することとしたと言います。 報道写真では、天井近い上部空間に一定間隔に照射機械を設置し水平方向に紫外線を照射し浮遊ウイルス、最近の不活化をするという新しい取り組みです。 鶏舎の換気は、入気をして排出をし空気を入れ替えますが、外気温が低い冬は、少しの時間でも鶏舎温度が下がります。皆さんが湯船につかり暖かいお湯に冷えた水を入れると、入れた付近からお湯が冷えるというイメージをするとわかりやすいかもしれません。 ですから、最低換気をする農場が一般的で、農場によってはアンモニアガス臭が強いとしても害はないと説明する人もいますが、本音はガスによる被害発生する確率と保温する餌代等のコストの大きさを天秤にかけて、ガスの被害が低く、コスト低下によるメリットが大きいという判断でガス臭による影響はないと説明しているように見えます。 鳥インフルエンザを想定した空間除菌を意識する農場もありますが、多くは安定化二酸化塩素を使用した除菌をするという農場もあります。 これは細菌やウイルスの細胞膜を酸化させるという手法です。 この手の除菌は試験室レベルでは有効ではないかとされますが、空気が流れ隙間があり空間が多い鶏舎では十分に効果を得られているのかわかりにくいとされます。 このため、入気口に安定化二酸化塩素を塗布し入気時に鶏舎空間の除菌を試みるという農場もありますが、広さとその投入量から効果については十分議論されていないという場合もあるようで、効果については十分わかりにくいという事例もあります。 また飲水投与用二酸化塩素もあるようで、給水のピックラインに計算上必要な濃度を溶解させて不断給水するというものです。効果があるとされるようですが残念ながら効果があるのかわかりません。 実際この空間除菌をしていた農場でも鳥インフルエンザが発生したという事例があるようですので、空間除菌の効能以外にも違う懸念があるという視点が必要です。 ただ、今回の空間改善実験は、鳥インフルエンザ以外にも、空間に浮遊する鶏病にも有効であると思われます。空間除菌に疑問を持つ方も多いと思います。 大事な視点は、例えば鳥インフルエンザは鶏舎の空間に浮遊しているので感染するのかという疑問を持つということです。 鳥インフルエンザは何らかの経路を経て鶏に感染し被害を発生させます。では被害農場の数メートル離れた異なる会社の養鶏場ではなぜ空気感染していないのだろうか。 でも発生した農場もあります。 その差は何でしょうか。多くは堆肥舎の共用、死亡鶏処理機の共用という農場もあります。 これは空気感染で広がったのでしょうか。 つまり、鳥インフルエンザといった経営に大きく左右される場合空間除菌だけで防ぐという視野ではあまり意味がないということです。 空間除菌で期待できるとすれば、換気不良による細菌の不活化させることで、鶏が受けている免疫低下から要らぬ感染や疾病を防ぐという視点です。 繰り返しになりますが、換気が悪くなる冬は換気による弊害を心配するために換気がおろそかになり、それにより浮遊する細菌類や埃が多くなりそれが、鶏へのストレスになり鶏病誘発したり、生産性の弊害になることがあります。 これを改善する期待があるのが今回の照射機械になるのです。 換気を意識するという考え方はとても大切なことです。先ほどお話ししましたがガス臭あっても問題ないという意識でリスクをとって生産を維持したり期待するという行動は万一の時大きな影響を与えます。 換気と保温は反する関係であることは皆さん知っていることです。 であれば、リスクが小さいこのような環境改善方法もあるでしょうし、二酸化塩素も期待できるのではないでしょうか。 鳥インフルエンザは、感染すれば高病原性であればこのような方法があってもなくても残念な結果に至ると感じます。ですからこの改善は鳥インフルエンザ対策ではなく、冬等換気が十分ではない時期や高温管理等換気を極力なくす飼養管理には一考できるものと言えます。 鶏を飼養する多くの農場は、ただ鶏を飼養しているわけではありません。コストを意識しその結晶が高温管理、換気抑制による保温という方法になります。鶏舎は換気して飼養する前提で作られているため、その逆に取り組むということです。 それは正しいことなのかという話題もありますが、今の価格で供給するためにはコストを意識して対策を講じるしかありません。肯定するわけではありませんがこれが現実という姿なのでしょう。 であれば、呼吸器病を防ぐために何ができるのかという視点で見れば、今の作業を変えず病原菌を少なくするという視点からこのような考えもありでしょう。 皆さんの農場も、換気と保温の考え方に矛盾と難しさを感じると思います。仕方ないことと片付ける農場もありますが、また違う方法もあります。 では、その方法は換気を勧めることなのでしょうか。これが一番安上がりではあります。でも保温という矛盾が生まれます。 このような機械を使用することに疑問があるという方もいるでしょう。効果はどうなのか、信用できるものなのか。 だからこそ実証実験をしているわけです。この実験は24年11月まで続きます。 これにより、空気環境の浮遊菌数、アンモニア濃度のデータ収集と分析をし、外部機関と協力した有効性評価を実施するとしています。 この結果を待ち、冬のみならず今の高温管理へのリスク低減の選択肢の一つになればと思います。