nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

人の意識と農場衛生対策 通り一遍な話で通じる時代ではないということ

10月になりました。鳥インフルエンザへの心配、消毒の方針といった農場対策が話題になります。 9月から今月にかけて鶏舎への取り組みを強化している研修も多くなっています。 それは県単位、畜産団体単位、個別農場単位と大きさ様々ですが皆さんの意識を切り替えていただくそんな研修なのだと感じます。 さて、農場を見てお話しする個別農場研修では鶏舎敷地から鶏舎内部までを歩きながら問題点と課題を見つけながらのロールプレイング形式で一緒に考え対策を共有しながら意識を向かせていく研修をしていきます。 農場入り口を見て、どこかに問題点があるのか、柵があるならばこの柵でどの程度の野生動物が侵入防止期待できるのか、それでよいのか。 消毒設備はどうか、自動噴霧器(ゲート式か手動式か)があり人が対応しやすいのか、それとも消石灰帯を作る方が利便性が良いのか。 鶏舎敷地内では水はけの悪い箇所があるならばそれは野鳥が羽休めしやすい場所になるのか。その穴はどうするのか。 金網はあるのか、目の大きさ・穴あき、材質から見て劣化しやすいものか、そして補修しやすいかという視点。 手指足の消毒設備があり、動作を行いやすい位置に配置されているのか、交差汚染のリスクはあるのか。 等約3~4時間かけての研修を行っていますが、農場によっては活発な議論をする農場もあれば、交差汚染?そんなの気にしたら人が歩けないという方、意識というがそんなのできるわけがないという方等様々な反応があります。 鳥インフルエンザを業界が意識する10月ですが多くはまだ警戒する領域に至るところはほとんどないというのが個人的な感想です。 これは、自農場にウイルスが入るわけはないという過信や昨年まで被害がないという経験則もあるでしょう。 だから今は警戒する時期ではないという結論なのかもしれません。でも研修は発生話題がある前には終えなければなりません。それは発生真っ盛りの時に農場に来て研修やどこかの会場で皆さん集めて研修するということはできません。 そもそもそんな時期に行って集まるような暇はないはずです。また農場に部外者を入れたいと思うところもないでしょう。 だから発生がない今しかないのです。 今ではないという農場と今しかできない研修。両社の思惑がズレていることはお互い分かりますが、でもそうしなければならないのもまたジレンマでもあります。 だからこそズレているとわかっていても大事な鶏を守るために両者時間を割いて研修をしていますので、互いに実りある内容としたいと思うはずです。 最近は、衛生対策に基本やネズミ対策といった通り一遍の話だけで、侵入防止をするとかどのような方法を模索するかというところまで至らないという話も聞きます。衛生対策の多くは弊所ではなく管理獣医師や県単位の研修から受けると思います。 対策箇所の範囲が広すぎたり、具体策が十分示されないという内容が浸透しないという話も聞き、農場展開する際に従事者に説明できず浸透しない、意識が高まらないということもあるようで、お客様からは更に深堀して説明したり、ロールプレイングしてより具体的・体感的に意識したりと工夫を求めることが多いと感じます。 集団研修は座学が基本になるため体感的に理解を深めることはできません。知識を得る習得場所になるため、受講者の理解度でその農場への展開度が変わります。このため農場への理解度が十分に深まらない・理解が浸透しない・意識改善が進まないという流れになると感じます。 人を介して展開する課題の1つでもあります。 今日は人の意識と農場衛生対策という話をしますが、先ほどのように人を介しての農場衛生対策はその教え手次第で変わるということを知っておくと展開方法がわかります。その視点でご覧ください。 鳥インフルエンザに限らず農場へ鶏病を入れないという対策には、全ての方がすぐにできる飼養衛生管理基準があります。30項目以上ありますがそんな難しいものではありません。一番の難点はそんなものできるか・すべて網羅してやるかという意識の在り方だけです。 農場HACCP認証をお持ちの方はわかると思いますが、飼養衛生管理基準をすべて適合させるためにこの法令にはこの作業が該当すると言ったリストを作成すると思います。これにより基準をすべて満たすことを自身で確認でき漏れがないことを知るわけですが、認証を持っていない農場の場合、多くは家畜保健衛生所からの自己点検シートから探していき漏れを見つけるだけになります。そして、そうでない場合なぜそうしなければならないのかという理由や目的、知識がないため無理だ・無駄だと自己解釈をしてしまうという場合があるという点です。 ここで意識が求める基準よりまだ到達していないということになるのですが、多くはその通りの理解はしてくれません。 その理由に鳥インフルエンザは心配だが、うちは大丈夫という過信があります。それは昨年まで感染していないからという自負があるからです。 だから意識が高まらないわけですが、発生するかどうかは過去の例で解決はできません。昨年まで対策をして発生した例はいくつもあります。そして十分と思っていても疫学調査からここに課題がある、金網が壊れている、そもそもない、堆肥舎の共用があるといった指摘を受けて初めて課題があることを知ります。発生がないから安泰ではなく、たまたま感染がなかったということもあります。そして安全対策の漏れは誰も指摘はしません。それは指摘できる人がいないからです。法令に満たない時はチェックシートで確認できますが、施設の漏れは目視や客観的に見ることが出来る人でないと、農場作業の方やその管理者と同じ視点になりおかしいをおかしいと気づけないのです。 だから第三者の視点で指摘するわけですが、農場内でそれをするという場合、まずは知識が必要になるということです。つまり知識が十分なければおかしいという箇所を見つけることはまずできません。多くはまあそんなものでしょうとか、そもそもおかしいとわからないと言うことにもなります。 知識は自分で情報を得るか、研修に参加して得るという方法が一般的です。恐らく弊所のブログから得るという方もいるでしょう。 研修やブログの場合座学が基本になっていると知ると、自身がどれだけ理解したか測ることが出来ないということを知っておくと良いでしょう。 鶏を飼育する問題集があるわけではありません。自身で知りそれを理解できてそれを磨くという工程が必要です。人に教える時知っているから教えるではなく、教えるその内容まで十分知っていなければただの説明になり要点が見つからず、相手は聞きません。 そうなると意識を高めたいと思っても相手に伝わらないのです。 最近通り一遍の話で通じないという点はここに課題があると感じます。聞き手の理解が高まっていないということです。その状態で無理に広げるので広がらないと感じます。 最初の話になるロールプレイングで話すとどうでしょうか。 自身の農場の話題です。身近な話ですから分かりやすいはずです。 後は教えての腕次第になるわけです。 鳥インフルエンザの季節だからこのような話もしますが、でも皆さんの農場への展開話はこれ以外にもあるはずです。 ねずみの対策、生産量改善の方法と検討、飼養管理の見直しと様々な問題にただ説明し理解していると思っていたら何もできていないと感じることもあるでしょう。 その要因には意識が高まらないからと結論付ける人もいますが、そもそもそのような作りや風土にしているのか。発信側がそもそもどうなのかという視点で見直してみてください。 鳥インフルエンザの季節だからこそ、農場の展開方法にかけている視点を見つける良い機会でもあります。 今年も大きな被害が想定されるというようなニュース記事も散見されますが、私は皆さんの衛生意識は昨年より格段に向上していると研修を通じて感じています。 恐らくひどくなるような年にはならないと思っていますが、油断はできません。 不安が始まる年末から早春までご苦労が続くことと思います。 消費者の皆さんに国産鶏卵を安心して食べてもらうためにも私たち生産者は今年も万全な対策でこの季節を乗り越えていきましょう。 買ってくださる方はいつもの店舗に鶏卵が十分にあることを期待しているはずです。 その10月は、消費者の皆さんが楽しみにしている「たまごフェスin池袋2023」が昨年に続き行われます。卵かけご飯の食べ放題が人気で昨年も大盛況でした。 たまごが高いから買い控える、高いのは困るという話も聞きますが、でも根底は卵が好きな皆さんだからこそ、このようなイベントを待っているのだと思います。私たち生産者も鳥インフルエンザで被害にあって被害者だと思うでしょうが、生産したその先には待っている消費者の方がいるということをフェスで感じていただきたいと思います。たかが生卵4,5個食べているだけでしょう。と思うでしょう。でもその4,5個を美味しく頬張る皆さん方の姿は生産者から見ると確かによその鶏卵ではあり関係はないかもしれませんが、鶏卵を好きでいてくれる方々と見ると、どこかの店舗で自社の鶏卵を見つけてくれて自宅やお弁当になってオフィスで食べてくれるのだろうと想像してしまう、そんな消費者との接点が見られるフェスです。10月20日金曜日から22日までの3日間池袋サンシャインシティ アネックスB1催事場で入場無料で食べ放題は2時間1000円の入れ替え制です。きっとたくさん食べてみようという方々で熱気あるイベントになるでしょう。 消費者のワクワクを見に来て生産活動の原動力にしていただければと思います。