nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

秋になり防疫対策も意識した飼養管理をしましょう

昨年は下旬に野鳥から鳥インフルエンザ発生が報じられいつもの季節なのか程度で秋を迎えていた農場も多かったと思います。 ですが、実際の被害は1700万羽と過去最大の被害となり毎日のように○○県の農場で何万羽が陽性となり殺処分されたという報道がありました。 最終発生は4月7日で約6か月が経過します。 もう心配する時期になります。 養鶏が盛んな県では秋に向けての養鶏研修が開催されていると思います。 今年はどのような年になるのか。 とても心配です。 さて本年度の鳥インフルエンザでは、2年連続発生した農場や、採卵鶏や肉養鶏ではない家きんからの発生もあり、猛威を振るう年でもありました。 ただ運が悪いだけでは防ぐことはできないため、出来るだけでの対策を講じていく必要があります。 他人事としてとらえることないように皆さんも準備を始めてください。 弊所でも今年度の発生を踏まえて農場へどのように防疫対策を進めていくのかというテーマの研修を例年以上に行いました。すでに8月から秋に向けての準備を進めている農場もあります。 県単位での研修もあるでしょうから、農場の方々は是非ご参加いただき皆さんの農場へ展開していただきたいと思います。 今年度の課題として埋却地の不適切を指摘する事例が多く見られました。 今年度では12の県で埋却が円滑に進めることが出来なかった事例が発生したと報道されています。 その要因には、埋却地の面積不足や埋却不適切の地であったとされます。 農林水産省は今年度の予算から埋却地の試掘に費用の半額を負担するという制度を行っています。 出来るだけ試掘いただき万が一の際には円滑な埋却ができるように農場側も準備をしておくと良いでしょう。 その埋却地ですが、意見として多かったのが不適切な地かどうかを実行する直前までわからなかったという話やそもそも広い土地を農場経営者が用意すること自体不可能であるという財布事情の話が多かったと感じます。 いずれも農場側の努力が足りていない事例ではありますが、現在の法令からはいかなる理由があったとしても農場側の準備が必須であることに変わりはありません。 つまり法令を反してでも埋却の用地を用意しない、できない、やりたくないという声にしか聞こえないのです。 報道側も被害があった農場に寄り添った内容を全国に届けます。これはあまり良いことではありません。 確かに殺処分されて無収入になることは経営にとって死活問題にはなります。 そして不可抗力での感染であり被害を受けているという認識になります。 確かにその通りだとは思います。 ですが発生したということは「なぜ鶏がいる鶏舎まで侵入してしまったのか」という視点で分析し報道をしている内容は見たことはありません。 空気感染している、ウイルスを運ぶ宿主が斃死しないことで広げる等話題はあります。 でもその被害農場から道幅数メートルの農場でも発生していないという事例もあります。 つまりすべてが空気感染し広範囲に広がり被害が広がるというわけではないという事例もあります。これは運のよい悪いで片付けることが出来るのでしょうか。 大事な点は、当事者はどうしたいのかという視点があるのか、ないのかということです。 鳥インフルエンザの事例では、被害があった場合はある土地の地主さんに話をして、畑を借地として準備し、万一の際に作物の補償もするので埋却させてもらうという農場もあります。必ず購入し放棄地にしておくだけが方法ではありません。 土地を買うというその発想の多くは、使わない地だからこそ、どうでも良い荒れ果てた地を破格で仕入れるというところに至り、結局埋却できず無駄な地を二束三文で購入し、恐らく売却もできない土地になっているでしょう。 そのような事例もあったと感じます。 ある県では昨年末に埋却した土地から異臭と周辺水源の汚染がありました。水が吹きやすい土地であったとされます。埋却のやり直しがこの9月からやっと行われるが延期になったという報道もあります。 その再埋却地も竹が茂る土地で開拓して、竹の根を切るような準備が必要になるはずです。 竹の根がフレコンバック等埋却用具に貫通したとき新しい問題に至ります。あまり良い土地ではありませんがこれ以外選択肢がなかったのかもしれません。 現在の法令から言えることは埋却地が用意できない場合の方法が明確化されていないことが一番の問題です。 県に任せるというスタンスでは今回のような膨大な埋却には手に負えないという現状があります。 一番手っ取り早いのは埋却地が不足しているのであれば農場内に埋却すべきであると言えます。鶏舎を壊し、基礎を破壊し掘り進めるというのも良いでしょう。 それは困るのであれば熱心に土地を探すと思います。 それができないのであれば借地を探し近隣との関係改善を作るはずです。 でもそれは手間であるから、二束三文の地を買う方が良いというところになるのかもしれません。 養鶏は規模拡大が進んだ産業です。 お金があればだれでも拡大ができますので、拡大した農場は信用された農場というわけではありません。 そのような農場でも100万羽規模で発生したというところもありますし、数十万羽規模では2年連続発生という農場もあります。 だから分割管理を推奨しているところもあるのですが、これも大金がかかり皆さん全てがクリアできるものではないでしょう。 そしてコストを削減した政策から見ても逆を行く政策でもあり今以上の維持費、購入費用がかかり100万羽規模農場がこれを採用しても採算悪化は避けられません。 でも土地が用意できないのであればこれを行うのも選択肢になります。 このように自身の財布事情で考えると、無理な物はできないという結論に至り最終的には国が、県がという責任転嫁の話になってしまいます。 繰り返しますが、土地の確保は養鶏家側の義務です。 でもその方法は、購入以外にもあるというところまで知っているでしょうか。 金で解決といった無駄を買うという意識では、近隣関係悪化もあるでしょうし、再開時いい顔をされないことは目に見えています。 土地の確保はとても大変なことです。 まとまった地を見つけること自体奇跡に近いものと言えます。 そして近隣との関係を薄くしていたという農場もあるでしょう。 そういう農場ほど臭いから迷惑、においや羽の飛散、ハエが迷惑と煙たがれるような農場もあります。 そんな状況では近隣に埋却地を探すということも困難でしょう。 近隣に対し理解を求めるという農場もあるでしょうが、恐らく難しく看板が掲げられて「養鶏場反対」「処理場反対」「埋却地反対」と言われるでしょう。 それを強行に推し進めた農場は残念ながら近隣との関係は今より良くなることは期待できません。 それでも理解を求めるはどういう方法なのか。 個人的には関心はあります。 養鶏は大規模化し個別の販路を見つけるような大手と遜色ない時代になりました。 だからうちは偉いのだ、だからそんな苦労すら知らない近隣とは仲良くなれるわけがないという認識では、この先も些細なことで揉めることになるでしょう。 いつもお話ししていますが、養鶏は近隣との関係が悪化した場合は高確率で更なる悪化に至ると感じます。 例外はなく、現状維持できていれば大したものと感じます。 だから京都府のような事例、栃木県のような事例が報道されます。それ以外にも地方紙レベルのいざこざはあると感じます。 今年の鳥インフルエンザはどうなるのかは誰にもわかりません。 昨年の被害のように流行が終わる時、大変なものであったと振り返ることができます。 でもそんな悠長なことを言っていては経営している側から見ても少し残念なことに思います。 だからこそ、今から農場に入れないという覚悟と、そのための方策を検討し秋から実行に移るのです。 交差汚染を知り交差汚染とは何かと考えることも大事でしょう。 先行く農場は既に勉強を終えて実行に移ります。 でも多くの農場はまだ季節ではないという意識が多いのかもしれません。 でも発生の話題が聞くようになった昨年は広い範囲に急激に広がりました。 そこから手を打っても回避できないという事例があったのかもしれませんし、その方法が構築できずとりあえず石灰散布程度だったのかもしれません。 人の意識とその方策の共有する組織と覚悟、今年も被害がない農場のはずと漠然とした意識でとりあえず迎える10月を過ごしてみるのでしょうか。 先行く農場は出来る方法を既に入手しているようです。