nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

秋の気配が聞こえます 皆さんの農場は何を準備しますか

9月も下旬になりました。今月は鳥インフルエンザに関わる研修や人の意識を再確認する研修といったハードとソフトの両面を再認識していいただくような研修が全国各地で行われました。 私もいくつか参加させていただき皆さんと一緒に次の一手を考え行動するきっかけをご提供していました。残暑の中のご出席本当にお疲れ様でした。 さて、気づくと9月も下旬となり、朝は涼しいと感じるような季節になりセミも鳴く日中ではありますが間違いなく四季は秋へと進んでいると感じます。 草むらでは秋の虫が季節の変わり目を教えてくれます。仕事が終わりいつもの駅で降り立ちとセミが鳴く季節から変わりつつあると感じ、残暑厳しいと毎日報道されていても季節は変わるのだと改めて思います。 全農は21日次期配合飼料価格を今より2700円値下げすると発表しています。4期連続の引き下げではありますが、これでも昨年7月期の12000円引き上げを相殺できるまでの価格にはなっておらず、 まだまだ飼料価格を意識しエネルギー価格の変動を意識しなければならないと思います。 ガソリン価格は政府補助が厚めに入ることになり、現在平均価格は170円台前半程度まで下降しました、ですが補助対象にならない灯油といった、幼雛を温めるための燃料等は上昇傾向が見られます。 これは、原油価格の上昇が続いており円安と重なり、原料価格が上昇していることが要因です。 秋を感じるということは、気温も下がり始めます。 人は過ごしやすいと思いますが、ヒヨコたちは保温して体温を維持しますので、夏以上に加温する必要が生じます。 ですから、我慢しなさいとは言えません。皆さんのエネルギー価格への意識は高まるかもしれない、そんな頭が痛い中ですが、そんな9月は鳥インフルエンザへの警戒を意識する月でもあります。 昨年は野鳥からのウイルス検出があり、令和4年の大流行へと進んでいきました。 多くの皆さんは、その季節が来たのかな程度であったと思います。でもここまで被害が拡大し消費者に大きな影響を及ぼすような大惨事とも言える事態に至るとはどなたも想像できなかったと思います。 では、今年はどうでしょうか。例年同様渡り鳥が飛来する時期まであとわずかになり、すでに樺太方面では野鳥感染が報告されていて、ヨーロッパ方面や中国大陸からも7月以降報告されており飛来に心配が報じられています。 でもこれは昨年も同じでした。では今年も同じ程度の認識で大丈夫でしょうか。 鳥インフルエンザの研修では被害発生時の手順の確認や農場に入れないための研修が行われていたと思います。 でもピントこないからこそ「まあうちは大丈夫だろう。だって昨年も被害がなかったから」と言ってしまうかもしれません。 しかし、その意識だけで本当に大丈夫だろうかと皆さんご自身に問うてみてください。 昨シーズンは2年連続農場発生もありました。これを周辺の渡り鳥が原因だけで片付けてはいけません。 大事な点を意識してください。 野鳥が農場に持ち込む、ねずみが媒介する、猫が鶏舎に入り広げる・・ それは皆さん知っていることでしょうが、そこだけ知っていて安心でしょうか。 それも大事なことですが、もっと大事なことは交差汚染を意識するということです。 交差汚染?と言われてしまいますが、つまりウイルスといった汚染物が何らかの経路で鶏舎に入る人に移り鶏舎に入り込むというものです。 履物を鶏舎用と分けなさいと言うのは履物が外を歩いたものでそのまま鶏舎に入るリスクを想定しているわけです。 研修でお話しするとき、冬の鶏舎は石灰の足跡がありませんかと思い出してもらっています。 石灰の付着した履物の足跡はあらゆる箇所に置き土産のように存在していると思います。 鶏舎、靴の履き替え場、皆さん自家用車のフロアマット等 ただ汚れているようで迷惑とか、洗う際に汚れが落ちにくい、フロアマットはプラスチック製のほうが洗いやすい等といった話を伺いますが、実際は見える汚染物がこれだけ広がっているということを知ってほしいと言います。 ウイルスは目に見える大きさではありませんので、石灰を想像していただきたいと思います。 履物を鶏舎で専用の物に変わると、敷地に散布した消石灰を踏んでいない限り鶏舎に足跡がつくことはありません。 これは履き替えて遮断しているということです。 手も同じです。石灰の付着した軍手をそのまま鶏舎で使用すれば鶏舎ドアのノブ内側扉や手を付いた壁、死亡鶏を取り出すならば取り出した鶏やゲージの扉に石灰が付着していることがわかります。 これを汚れるとか、冬はそんなものと認識しているのかによって農場の衛生意識は違います。 交差汚染を意識して見ると、石灰が鶏舎にある、壁やゲージに付着していること自体良いものではありません。それは外に蒔いた石灰が人を介して鶏舎に入れたということです。 自家用車のフロアマットが汚れていると感じるならば、外の汚れが車内に入るということです。 では、どう考えるのでしょうか。 石灰は目に見えない外のウイルスを踏み歩いた足跡と同じです。ではこの履物で鶏舎に入るとどうなるでしょうか。又はその履物を鶏舎に限らず歩いた跡を見ると、鶏舎作業している方と足跡が混ざることはありませんか。 鶏舎入り口で履物を変えると思いますが、その変える場所は外の履物と混ざることはありませんか。 この視点で見てください。 ウイルスは見えないから、防疫措置をしている。消毒をしている。何もしていなくても何かしていると見えてしまいます。 多くの場合、ウイルスは存在しないかもしれません。だからこそ被害はある範囲の左右の農場から爆発的に発生しているわけではないのです。 実際には発生農場の道幅3メートルの他の農場では発生がないという事例もあります。 これは空気感染も意識しなければならないのでしょうが、そもそもそれだけを意識することで解決できると言うことでもないということです。 では鶏舎にウイルスが届く要因には他に何があるのでしょうか。 それには交差汚染を意識して見てください。 汚れが交差するところは実は危険性があるということも知っておいておくと農場では何ができるのでしょうか。 鶏舎で履物を変えるだけでよいという意識は、正解なのでしょうか。変えないリスクを知った説明なのでしょうか。 石灰のように歩いた痕跡が残るのなら履き替えるでしょう。でも見えないものであるなら皆さん本当に履き替えてくれている(はず)ではないかと思います。 消毒設備があり、きっと鶏舎で履き替えてくれるとなれば設備から問題ないように見えますが、何かが足りていないということです。 人は義務で押し付けるようなものを好むことはありません。 でも必要なことであれば押しつけではありません。そうしてもらう理由とリスクを説明して納得を得ることが大事なことです。 その説明をすることの重要性を知っているでしょうか。 ただ、履き替えろ、消毒しろ、長靴を新品買ってやるから履き替えて使えといった事実だけを話していてはあまり意味はありません。 人を信用している、人を大事にしているそんな農場でないと多くは、消毒??するよ?(多分)となることもあります。 交差汚染を意識しているということは、汚れをどこかで遮断するということです。 ただ履き替えるだけの視点で安心してはいけません。 遮断するという意識と見えないものを断ち切るという意識が本当に大事であるということを皆さんに知ってもらうということです。 人にお願いし作業している私たち養鶏業は、養鶏家と高給取りとされる幹部クラスが熱心だけでは、末端部の作業員の方々までその熱意は伝わりません。 私が感じる鳥インフルエンザへの意識は、設備の充実で解決できるわけではなく、人が鶏に近づくことのリスクを意識することが最大の防止策であると言えます。 当然ネズミや猫の侵入は防止しますが、それだけでどうかなるわけではないことは皆さん知っていることと思います。 どうか、やれ・履け・何とかしろではなく、これだけの危険性を皆さんで防いでいこうという姿勢で話してみてください。 長靴を買うからやれでは、そんなの要らないよと言われるだけです。 買ってどうにかなるわけではありません。 「意識」という、この1点をどう伝えて知ってもらうのか、この点に重点を置いてください。 10月は渡り鳥が飛来する時期に当たります。約1週間後には10月です。 時間はありません。できることをしていくわけですが、その根底は機材の充実もあるでしょうが、人への意識をどう考えていくのか。 そう考えてみてください。