nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

9月の鶏卵相場 この高コストだからこそ生産量を維持を目指して

9月に入り鶏卵相場の動向に関心がある農場も多いことでしょう。 長い休止していた大口需要が購入再開を始めます。涼しさを感じる時期になれば消費が増えていきますから、相場に弾みがつくわけですが、既に鳥インフルエンザの被害があった農場の多くは再開しており生産活動も本格化していることでしょう。 現在、鶏卵相場最高値350円(東京M規準値)から70円安い280円で1日時点取引されています。例年9月はこの時期から緩やかに上昇を始めます。 大流行であった令和2年の相場を見ると、需要再開の9月は増羽が進んでいたこともあり9月の上昇は約15円程度までと小幅ではありました。 この流れでは年末にかけて大きな上昇は描くことはありませんでしたが、今の値段で280円ですから下がることはないでしょうからこの値段からいくら上がるのかという視点で見てみましょう。 9月は国の補助事業がいったん終了する時期でもあります。 電気、ガソリン代といったものですが、政府は10月以降も継続するように準備を進めているようです。 10月分(9月の使用分)以降は電力料金が大きく上昇することが既に明らかになっています。 これは9月の補助額が当初予定通りの補助額となる半分のみとしているため、差額分がそのまま上昇することが主な要因です。 ですから、今使用している電気代は6月の上昇があった時期とほぼ同じ額になると試算しておくと良いでしょう。 これはガス代も同じです。エネルギー価格への補助が一服したことで上昇が見込まれています。 ガソリン価格は170円台を維持するような補助をすると発表していますので、高い状況から幾分和らぐのかもしれません。 では、皆さんの農場ではこのコスト高からどのような対策を講じていくのでしょうか。 多くは出来る手立ては既に打っていると思います。だからもう手段はなく受け身でしかないという話も聞きます。 でも何もできないのでしょうか。 農場によりますが、この夏生産量を大きく下げたところもありました。 猛暑だから?そうではなく人災です。 それも成鶏舎での終夜点灯をしてそれに気づくまで数日要したことによる産卵停止です。 採卵鶏の基本を知らない農場で起きた悲劇ですが、その農場はヘンデー産卵92%まで維持していた鶏舎でしたが、終夜点灯で8%まで下がりました。 それに猛暑が重なり餌を食べません。ですから産卵押上げが非常にゆっくりとなり、事故発生から7日経過しても25%までと日齢から見ても9割回復は困難とみており、この高卵価からみてコスト以前の話になっている農場もあります。 多くの農場ではコスト削減、無駄取り、出血を抑えるといったキーワードで出費抑制を推し進めたところもあったと思います。 でも行き過ぎたコスト削減は結果コスト増にしかならず収入とのバランスを欠けてしまうという問題も生じます。 ですからこの話のように人災をいかになくすのかという点で農場を見ることが一番のコスト意識になるのだと思います。 餌代より卵価が高いは養鶏の基本で、今がその時期のはずです。 でも収入が低くなり餌代が賄えないでは養鶏の基本がなくなった農場であり危険信号が点灯したことを意味しています。 そのような状況で高コストと言っても話にはなりません。まず無意味で無駄な会話です。 それより人災をなくす努力をしなさいとなります。 農場は経営者がいて代行者(農場長等役職者)が指揮をとり作業員がいるという構図になるはずです。 最近の農場を見ると、代行者までは養鶏の基本や気づくポイントまではよく理解されているように見えますが、その先の作業員まで浸透しているのかと見ると、どうもそうではないような事例が多くなっていると感じます。 その理由に離職が多く教育をしない、理解度が低いから作業できれば良い程度の教育しかしない、基本を知る指揮者でないため作業しかできない人材しか伝承されない等農場の中のコミュニケーションが欠落しているところがあるようです。 そして、基本を知らないから、点灯して忘れてどうなるのかというリスクがわからないし、想像できないことで「残念!まあ次回気を付けよう」程度の認識しか育ちませんから、また繰り返すのです。 そんな残念な環境がある農場では収入が下がるのでコストは人一倍敏感です。でも解決策はなく繰り返すだけというところもあり、何が根底にあるのかまでわかる農場は多くないように感じます。 教育は無駄である。良く研修で質問されますが本当に無駄だから教育をしない農場は結果「農場自身が無駄」というだけで、やれあいつが悪い(人が悪い)、指揮者が無能だ(そもそも教育されていない)、高給待遇なのに成果がない(そもそも高給で優遇するほどの能力があったのか)といった責任転嫁をする経営者もいます。これも非常に残念です。 自身の任命や採用に欠陥があったのに、それを自身の責任と認識できないからです。 そのような状況ではいくら人を入れても、いくらお金をかけても何も変わりません。変わるのは人件費というコスト増だけです。 そんな農場もあります。 高コストは確かに問題であり解決したい事柄です。でもコストは物を作る時に必要な維持費でこれを0にすることはできません。 ではコストをどのように捉えるのでしょうか。出費と答えたのならば残念な回答になります。 正解はコストを最大限生かし収入を得るという視点です。 鶏の性能は大きく変わりました。ではその性能を最大限に高めるにはなにができますか。 人災を起こす組織は皆さんが考える「皆さん通る為のイベント」なのでしょうか。 それは、そもそもなくても良いイベントではないでしょうか。 9月は補助額が大きく変わり10月支払額は上昇します。では皆さんの農場は何ができるのでしょうか。 金融機関からの融資?それもあるでしょう。 でも農場の中を見てください。何か気づきませんか? その視野と気づきがあれば9月からの農場運営も安心感が増すことでしょう。