2022年を振り返る 配合飼料価格の最高値更新とエネルギー価格の上昇ご苦労された1年でした
大変ご苦労された2022年もあと1週間となり、皆さんの農場も年末相場を感じながら1年が終わる頃と思います。
振り返りますと、今年はコスト増という言葉が一番肌で感じた年ではないでしょうか。
春先の原油相場の高値が燃料、包装資材といったさまざまな形で値上げされていきます。
幼雛を保温する燃料代や、集卵したり集糞したりする電気代の値上げ、そして鶏達に与える配合飼料価格の上昇。
それ以外にも農場を保全するための農薬類も値上げされていきます。
あらゆるものが高くなり、夏を越せるのか、秋を迎えることができるのか、年内農場が持つのか。
そんな不安の声も聞かれた1年でもありました。
ふたを開けてみれば、多くの農場の皆様は無事年を越していくことになりますが、今年は養鶏場の破綻も多く聞かれた年でもあります。
何回かお話ししていますが、5年前ぐらいまでは養鶏バブルではありませんが、鶏卵相場は高いこともあり増羽を実施した農場も多くありました。
鶏が増えれば、収益も増えるのは養鶏の基本です。
ですが、その後の数年間は低卵価へと経済が変わり、ご苦労された農場もありました。
その後、鳥インフルエンザの大流行が一昨年あり、過去最高の鶏達が防疫措置をうけていき供給不安が生じます。
相場は上昇し、だれもが収益を改善できると信じていたところの配合飼料価格の上昇が静かに進んでいき、今年は目に見えた大幅上昇を伴い過去最高値になります。
今年は、コストに対する意識や飼養管理の見直し、生産量の改善に取り組まれた農場も多くありました。
講師として呼ばれて、助言させていただく機会も多くなり皆さんの農場の意識がだいぶ変わったと肌で感じました。
気づくきっかけを提供できたと思われればとても幸いなことです。
さて、足元を見ますと鳥インフルエンザの大流行が全国で見られるようになっています。
23日現在22道県53農場4施設で発生しており714万羽が殺処分されています。
大流行の令和2年は987万羽で、この時期から大規模農場からの発生があり過去最悪の被害がありました。引き続き警戒をお願いしたいと思います。
鶏卵相場もこの1年過去5年間を見ても最高値を示しており、依然供給と需給が釣り合っていないことがわかります。
特に12月は供給側の不安が生じている模様で、11月から12月にかけて過去にない上昇を示しています。
例年11月から12月にかけては上昇はあるのですが、上昇はせいぜい10円程度までとなります。相場の良かった2017年は11月から12月までの上昇額は6円でした。
つまり11月の終わりの鶏卵価格から12月までの鶏卵価格は平均6円程度であったということです。
昨年は相場自体は良かったものの、12月は僅かの上昇で3円でした。
では今年はといえば、本日時点で11円と、例年の2倍の上昇です。現在の平均価格は283円(東京M規準値)で実相場は300円です。
参考までに300円という金額も近年ありませんでした。
要因には、餌付け減少による生産減少の中鳥インフルエンザの発生が更なる生産減少へと向かい、結果的に供給不安を生じているという構図になります。
農林水産省は1月は鶏卵価格が落ち着くといいますが、恐らくそれは半月程度までの話になるかもしれません。
例年1月は成鶏更新空舎延長事業は発動されますが、恐らく来年はないと思われます。例年発動価格に変動はあるにしても多くは190円台ですが、現時点300円で、例年100円か120円程度の値下げがあるにしても、
200円か、180円までとみられ、例年以上の初市になるのではないかと思われます。
それは、この先も鳥インフルエンザの発生が予想できるということや、餌付けがこれを理由に1月から急激に増えていくわけではないということです。
また一部種鶏農場は減羽を進めているとも聞き、その一部だけではないとも聞かれますので餌付け増加が急激に増えていくのかは未知数です。
また生産農場サイドも現在の生産コストを加味して増羽を意識するのかはわかりません。
この先配合飼料は今以上に値上げすることはないにしろ依然高水準で推移していくと見込まれます。
為替水準は数か月前より下がっているものの130円台前半と、今年と比べまだ15円も円安水準です。
コーンは夏以降6.5ドル近辺で安定し、船輸送コストも以前よりは大分落ち着いている状況で良い傾向です。その中の円高への意識が進んでいくことは輸入に頼る畜産家の皆様にとっては朗報です。
原油価格は下がっていますが、燃料代は下げ止まる様相です。これは政府の補助支援額の引き下げがあるようで、ガソリンであれば170円水準がまだ続くという可能性もあります。
電気代は1月より値下げがありますが、春先4月は今の数割値上げが見込まれます。
電力会社が示している火力発電にかかる原料のうち、発電用途向け石炭は8月を境に幾分か値下げが見られるようになりました。
直ちに電力価格上昇抑制に向かうことはないにしろ、早ければ夏以降幾分か上昇比率が変わるのではないかと感じます。
また液化天然ガスも10月以降は急激な上昇は見られなくなりましたが、比較的安定している状況がありこの先も続くのではないかと思います。
これにより、
農場で要するコストのうち、配合飼料価格は今の水準で春先まで進んでいき、その後幾分かの値下げを意識できるようになるでしょう。
またそのころになると電力費の上昇も始まることで、相殺しても生産コストは高いと感じるかもしれません。
包装資材等の石油も今の水準で進んでいくと思われるにしても、原油水準から見れば高い位置にいる状況には変わらず、1バレル80ドルを割るから割安というわけではありません。
これにより、パックに使用する包装資材も原油が安いから値下げに動くということも難しいようで、来年もこの水準か輸送コスト増等からもう1度の値上げがあるかもしれません。
皆さんの農場では、増羽をお願いするような問屋や仕入れ元から話があるかもしれません。
一部は、これにより来年度増羽を実施する農場もあります。
鳥インフルエンザの発生で欠品はないにしろ、仕入れ不安は販売筋はとても困ることです。
ですから、複数の産地や農場から仕入れを行い分散化していますが、全国的に発生する鳥インフルエンザでは産地分散でも厳しいという声も聞きます。
これにより、安定した仕入れを求める傾向から信頼できる農場には増羽をお願いするような動きも見られます。皆さんの農場はいかがでしょうか。
ただ、鳥インフルエンザの被害を受けたときの損害は大きく、多くの被害農場は言いますが出荷先のいくつかとは再開後も関係がなくなったままになるという現実もあります。
養鶏の厳しいところですが、仕入れ先は安定を重視しており、農場への思い入れはそう多くはありません。
ですから、再開を期待される農場はそれだけ再開後の経営も安心できると思いますが、全ての農場がそうであるというわけではないのもまだ現実です。
過去は、再開しても卵価次第(収入次第)で数年は維持できたもののやはり破綻したという事例もありますし、現実一定数は再開後も厳しいという現実もあるようです。
たかが鳥インフルエンザの話題と片付けがちですが、本当に怖いのは殺処分されることではなく、再開後の経営再建が可能のかどうかというその先の不安があるのがこのウイルスの怖いところです。
本年は肉養鶏農場で本年に続き、この時期にも再感染した農場もあったと聞きます。
つまり、農場感染は生涯1回だけというわけではないということも知っておいてください。そして再発もありうるというこのウイルスを知り出来るだけの対策を講じ続けていただきたいと思います。
来年もコストを意識した1年になるかもしれません。そして鶏達と向かい合い生産量を今以上になるような飼養管理もぜひ構築してください。
収入を増やすには出費を削ることしかないわけではありません。
大事なのは収入を増やすということです。
その方法を考えてからいらない出費を選択していくのが農場を維持していくうえで大事なことになるのかもしれません。
さあ2022年も終わり来年はウサギ年になります。ウサギは跳ねるからこそ飛躍する年なのだといいます。
皆さんもうさぎにように跳ねて飛躍していくそんな1年になるようご努力されていくことを期待しています。
本年もたくさんの出会いがありました。農場皆さんの真剣な眼差しを感じた1年でもあり、台風等災害で研修が取りやめになった地域もありました。
そのような方々も災害からの復旧や鳥インフルエンザ侵入阻止へ向き合っているかと思います。大変な中ですが皆さんのお力は大きく鶏達へ還元されていくはずです。
今年も多くの方々とのご縁がありましたことをこの場をかりまして御礼申し上げます。
そして皆様の農場がますます発展されていくことを念じながら本年最後のブログとさせていただきます。