nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

令和5年初市が始まり鶏卵供給に不安が生じています 継続したインフルエンザの発生も懸念されます

令和5年1月5日より初市が開催され、鶏卵相場は過去にない高騰で始まりました。 本日5日東京M規準値は260円となり、昨年止め市となった300円よりわずか40円の低下で始まりました。 過去にない小さい下げ幅となり生産者にとってはありがたいところです。 また配合飼料価格も改定されており僅かですが引き下げとなって1月が始まりました。 しかしながら心配もあります。 新潟県は5日村上市の採卵鶏農場(130万羽飼養)において、死亡羽数増加等の異常がある旨通報があり下越家畜保健衛生所が簡易検査を実施したところ陽性を確認しており、現在中央家畜保健衛生所において確定検査(遺伝子検査)を行っており陽性が確定した場合は国と協議の上疑似患畜と判定される見込みです。 県は同日該当農場の移動を制限指示をしており、対策本部会議を開き判定次第で防疫措置を行う等協議をしています。 この農場では、新潟県内の総生産量2割を担う羽数を飼養しており確定検査の結果防疫措置となる場合は大きな影響を与えると思われとても心配されます。 1月は相場が下がることで消費される皆さんにとっては鶏卵が入手しやすい時期になるのですが、本年は少し違うような感じになりそうです。 4日現在鳥インフルエンザの防疫措置は23道県60農場と4施設の775万羽と令和2年の大流行時期7割程度まで迫っています。 今回の事例130万羽が防疫装置となるとおよそ900万羽と大流行時期の9割まで接近し過去最多となる可能性がさらに高まります。 昨年27日農水大臣の談話には「採卵鶏をリタイヤさせる時期を延ばせば量も確保できる」と述べていますが、多くの大規模農場は年間で鶏の出入りを管理しており成鶏期間の延長をすぐにできる状況ではないと感じます。 それは次の餌付ける鶏が育成舎に居ますのでその鶏の行き場がなくなりスケジュールが狂うわけです。 育成舎へ入れる鶏が育雛舎に居てそれも移動できず、孵化場から発生して育雛場へ移動するスケジュールも狂いと玉突き連鎖が続きます。 鳥インフルエンザの発生で生体の移動が制限されると多くの農場は今のようなスケジュールが狂うわけです。その回復には数か月から1年程度まで広い期間影響が続くわけです。 ですから単純に鶏を長く飼育すればよいというわけではありません。 確かに鶏卵の供給に不安が生じています。 ですが回復できない要因に昨年から続く配合飼料価格の高騰から餌付けの見合わせが広い範囲で見るため、今必要と言われてもひよこから卵を産むまでは最短で120日ですが、Mサイズの生産が中心となる時期は180日頃とも言います。 つまり半年先の話をしなければならないということです。 鶏卵1個が安いのは、採算があう生産量の維持と設備の自動化によるコストの低減があるからこそ販売できるというところです。 採算が合うというのは一定数の鶏卵が毎日産出されているということです。強制換羽をして鶏を長く飼育している農場も多くあると思いますが、強換を更に1回2回と増やす農場も多くはありません。 強換して生産個数が少し回復していくにしても、サイズや傷といった品質面での問題も発生していきます。 ですから一定の日齢で1回行い800日、900日と飼育されて次の鶏へ入れ替えるわけですから、採算や品質を意識すると長く飼育するでは少し無理もあるでしょう。(そのような鶏卵を好んで購入する販路が存在するのかという点です) 鶏を長く飼育するには、次以降入れ替える鶏への補償といった経営に対して補助する必要があります。 昨今の鳥インフルエンザの発生で餌付ける鶏がすぐに手に入らないという農場もありますので、そこへ譲渡できるような仕組みや譲渡した後の餌付けの円滑化ができるようにしなければ難しいといえます。 スケジュールがあるからこそ大規模農場は安定した生産ができることを理解してどうするのか考えなければなりません。 初市は大変高いスタートなりました。 この先は恵方巻といったイベント需要が発生します。近年は予約制を導入しており食品ロスを意識した情勢にはありますが全国でこのようなイベントが発生するためそれなりの需要が見込まれます。 鶏卵相場は令和5年度は強い上昇が見込まれます。 生産量の減少と需要の増加というアンバランスが要因です。 年間鶏卵価格は昨年は214円で、大流行の影響があった一昨年は217円でした。 昨年は夏ごろに生産量が地域によって回復が進みましたので総じて回復になっていたこともあり相場の上昇が重くなり年末にかけて下げていきましたが、今年は回復が鈍くなる可能性もあり得ますので、大流行時期より相場の低下はないと考えています。例年の春まで上昇し、夏季は僅かな低下と秋以降の上昇という通常のサイクルになるでしょう。 今年は260円を超える可能性もありえるため年末M規準値は330円を超えることもあり得る話になりそうです。それは回復が本年より抑年以降にずれ込む可能性があるからです。 今年は昨年より配合飼料は安くなると予想できますが、エネルギー価格は高止まりすると予想されますので総じて昨年と同じ高コスト経営になると考えています。 上手に鶏を飼育できることで高コストが和らぐ農場もあると思いますので、恐らく今年は農場間の体力格差が広がるとみています。 これにより安定した農場と不安定が続く農場という二極化が昨年以上に見えることでしょう。 昨年は養鶏場の破産数が前年比較の3倍まで発生しています。それは小規模だからではなく大手であっても、飼養羽数が数十万羽規模でも発生しています。 その要因に高コストに耐えられなかったというキーワードがありました。 ですが高いことは事実であってもその内部を見ると飼養羽数が多いのに生産量が少ないという収入減少も見え隠れしています。 今年もこのような姿もあるのでしょうか。 さあ1年が始まりました。 うさぎのように大きく跳ねることができるのか、皆さんの農場はこの相場値を追い風に衛生対策を十分に行いながら生産を増やすことができるのか見つめなおしてみることも大事なのかもしれません。