nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

3月を迎え養鶏業界を見渡すと何が見えるでしょうか 未来を描く時期に入っていませんか

2月も終わり寒暖差があるとはいえ、少しずつ春が近いづいていると感じます。
弊所の近隣も梅が咲き、早咲き桜が足元まで来ている春を教えてくれています。

皆さんの地域はいかかでしょうか。


さて、2月29日時点の鶏卵価格は205円(東京M規準値)となり、初市180円から見て25円の上昇となります。
2月は1日から成鶏更新・空舎延長事業が発動されました。

幾分の農場が賛同したと聞きますが、標準取引価格は下旬には安定基準価格を上回り26日で事業が終了しました。


この先3月中旬ごろまでは急激な上昇はないものの、緩やかな上昇トレンドに乗り鶏卵相場の底堅い動きを確認することになるでしょう。


ですが、4月以降は相場の値動きには注意が必要になりそうです。

昨年からお話ししています通り、昨シーズン鳥インフルエンザによる被害にあった農場からの回復がほぼ全量回復する時期になるといわれます。

つまり供給側はフル全開で消費者に安定した商品が供給できる体制が完了するわけですが、消費される需要側は昨年からの高卵価による影響や、経済情勢、人口動態等あり以前と同じような消費体制には至っていないという現状があります。


スーパーでの購入頻度が低下(来客数の減少)しているとも聞きます。

ある準大手スーパーでは明らかに買い物頻度が下がっていると感じるといいます。
客単価は上昇しているが、頻度が少なくなったこともあり、例えば1回買い物金額4000円のお客様が週3回から2回に変わり1回5000円程度購入されていて実質2000円程度の購入機会を失っているといいます。


その理由は鶏卵価格の上昇ではなく、食品全体が高くなっており必需品、ストック品を中心に購入している傾向があり、まとめ買いをすることで、ついで買いを抑えている傾向がみられるといいます。


鶏卵は10個入が基本販売ですが、たとえ1個26円程度であっても1購入は260円と10倍になりますので価格に対し敏感になっている傾向があります。

ですから1個30円と割り増しであっても6個180円のほうが負担感が小さいため受け入れやすいという傾向があります。

6個でも売れれば店舗は特に異論はありませんが、生産者側は注意が必要です。


10個の鶏卵を例えば7日程度で消費する家庭では、6個入りでは5日もあれば在庫がなくなり買い物をすると考えがちです。
ですが、消費動向を見ると6個でも7日程度かけて消費している傾向が意外と多くあります。

これは鶏卵は毎日食べるものかもしれないが、毎日食べなくても良い物という位置づけの変化があるということです。


つまり値段が高い物であっても毎日食べたいという意識が薄れていくことで、潤沢な食材の1つにすぎないという特色がない食品に格下げられるということです。


鶏卵は大きいものでなければ売れないという時代も終わりを迎えています。


今の時代小玉(MSやSサイズのミックス)鶏卵は1パックで200円、特売扱いで150円程度という店舗もありますし、通年販売している店舗が多く集客目玉商品としているところもあります。
鶏卵販売がサイズミックス卵販売の影響とも言えますが、Lサイズといった大きいからこそありがたい、価値があると感じる消費者は少なくなったということでしょう。


それに呼応するようにジュリア、ジュリアライトは数年前に比べ飼養管理を大きく変更しないとしても、生産量は変わらず、重さだけが小さくなったという傾向が多くなったと思います。


弊所でのパック卵重量検査でもサイズミックスの平均個卵重は58グラムとMサイズが中心でそろえた詰合せになっていますが、やはり小さくなったという傾向が見られ、これがさらに小さい小玉ミックスであっても小さいと違和感を感じることがなく購入シフトできたのであろうと感じます。

 

値段が安ければ毎日食べても良いが、高ければ別に毎日でなくても代替品で用が足りるということで、業界の1日2個以上食べましょうというスローガンも消費者に届きにくくなるということを知っておく必要があります。


たまごは手軽なたんぱく質の補給源になる、バランス栄養食品であるという業界は見ていますが、消費者側は必ずしも同じ思考ではありません。


手軽なたんぱく質は、鶏卵以外にも大豆も代替できますし、卵の代わりに色どり野菜や胸鶏肉等代替品に置き換えることもあり得ます。


要は身近で絶対に消費者から見放されない鶏卵が絶対的王者ではないということです。


消費人口の減少も危惧されています。

人口の一定数を外国人技能実習生といった長期滞在者が最寄りの市町村に住民登録をするはずですから、今の人口の一定数は外国の方が住民として存在していると考えると、消費動向は、人口推計だけで論じると、実際はもっと少なく、為替による魅力を失うと流出し元に戻らないというリスクもあります。


また、一昨年以降ブランド卵へ移行した農場も多く見る機会がありました。

他社より魅力があり知名度を上げるという目的があったと思います。
ですが昨年、今年もそうですが、ブランド移行したもののこれで大丈夫なのかという声も聞きます。

 

弊所でもブランドに対する市場動向に関するお問い合わせをいただきます。

また自社の市場価値を上げるための戦略をコンサルしてほしいといった農場運営以外にも、その先の販路の未来をより強固な状態で次の世代に譲りたいという本音が見えています。


お客様であれば精一杯弊所も応援し希望する未来への鉄路を引いていく戦略を描き具現化していきますが、必ずしもそこまで必要としない又はそんな大げさな世界にはならないと考える農場もあると思います。


その思いは間違いではなく、見当違いではありません。

ですが未来は本当にわからないというのが本音です。


一般的に先まで見る目がある経営者は、あるべき姿を想像しそれに向かって準備を進めていくといわれます。

ですから、あるべき姿になったからと言って「ほらそうなっただろう!俺の言った通りではないか」とは言いません。

粛々と準備をして次に手のために動き現実化していくのです。

それに乗れるのか、そうでないのかの違いです。


多くは、乗り遅れるということもあるでしょうが、先にたどり着いた農場は先駆けの農場として既得権益を得ることでしょう。

 

いまのエイビアリー鶏舎の展開もそのような1例になると思います。

おそらく5年先、10年先もバタリーゲージが廃止されることはないと思います。

でも世界と取引する店舗や外資系店舗は本国の意向や世界の常識に近づき先に経営を進めていきます。

損して得取れではありませんが、今はこれで大儲けできるとは考えていないでしょうが、この先15年、20年には気づけばバタリーゲージも存在するが、世論は、世界は、店舗はエイビアリーといったアニマルウェルフェアの考えを取り入れていた、その時代に乗れていたということもあるでしょう。

 

慌てて乗りに行く農場もあると思います。

いわゆる後発組ですが先駆者が築いたシェアは崩すことはできないでしょう。残り少ないシェア、パイを争奪していく戦国時代に入る可能性もあります。
でも先駆者は一定の販路がすでにあり城壁を厚く高く築いており高みの見物といった時代になるでしょう。


でも先のことは誰もわかりません。

でもわかるとすればこの先春以降昨年以降多く餌付けした鶏達が卵を産み始めていき、需要先が加工向けをはじめ大きく増えていかない可能性が予見できるという背景から何が見えるのでしょうか。


餌代が高いから、エネルギー価格が高いから経営が大変ということは昨年、一昨年からわかりきっています。

今更大変、どうしようと頭を抱える農場は未来の戦略が描き切れなかったのかもしれません。

昨年まで鶏卵が高く実入りが良かった。

自宅用の外車を買った、鶏舎を新築した、軽自動車を5台も購入したといった使い方の未来を描き実行したのかもしれません。


昨年から鳥インフルエンザの発生は少なく鶏卵高騰ということはないと昨年からお話ししています。

そんなつまらない記事見てもしょうがない、経営者の利益が取れる喜ぶ記事を書けという声も聞こえそうです。


でもこの先の未来を考えると、鶏卵相場年末500円になります、餌代は1トン4000円程度になるでしょうとは言えません。

そんな条件は1つもないのです。


であれば、今の養鶏業界をどのような角度で見ていくのが、皆さんが築いた農場を守ることができるのでしょうか。

鶏卵相場だけ見れば良いのでしょうか。

それとも配合飼料価格の動向だけ見ていれば良いのでしょうか。


農場を動かす人材はただの人足(にんそく・力仕事だけできればよい人材)で用が足りるのでしょうか。

鶏が変わり管理が変わると考えた時その人足で用は足りるのでしょうか。

そもそもそれを管理する管理職人員は人足から卒業できているのでしょうか。

 

そんな気づきも農場経営には必要なことかもしれません。


この春多くの人たちが養鶏の世界へ希望を持って入ることでしょう。

それと同時に違う業界へ転職したり、同業に引き抜かれる人もいることでしょう。

一昔はご法度とも言われた引き抜きですが、今の時代そんなものは普通にある時代になりました。つまり農場体力が外部同士で値踏みされており、格上、格下と遠慮が美徳という時代ではないということです。

 

力があり、知識がある人材は人足(にんそく)ではなく人足(ひとあし・人が流れていく様)のように発展を求める農場へ行き来していきます。


人が足りないといわれる産業は人足が不足しているといわれますが、この養鶏の世界ではまだ人足が足りないではその先の未来どころではないでしょう。


既に人足ではなく、移動できる人足(ひとあし)を求める農場と既に差が生まれています。

このコスト増の時代では、目先で手いっぱいで乗り遅れていくのか、次の一手を打ち進んでいくのか、経営体力に差をつけられる、まさにふるいにかけるような時代に入ったように感じます。

皆さんはどのような未来を描いていますか。