nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鳥インフルエンザが去ってから 4月

昨年から猛威を振るい甚大な被害をもたらした鳥インフルエンザ
最後の発生から1カ月が経過し、長い厳しい時期をようやく抜けたのでしょう。


本年は、約1000万羽の鶏が防疫措置の対象となり、そのうちの約半数は千葉県での発生でした。
近年は鶏舎の収容羽数の増加が進んだことで、発生農場全ての鶏が殺処分をされることから100万羽が一度に防疫措置を受けることもしばしばで、大規模化の弊害ともいえる状況でした。


そうでなくても50万羽、70万羽と大規模の羽数が一度に被害を受けることも多く生産方法やリスク分散といった新しい観点で農場運営をする必要があるようなそんな時代になりました。


また、鶏舎の近代化により外部との接点が少ないウインドレス鶏舎での発生も注目されます。
ウインドレス鶏舎は、日長管理や温度管理に適しており人間の考える環境を再現できる高度管理が可能です。
また、高床式やオープン鶏舎と違い、外部との接点が少なく、野鳥の侵入が大変少ない構造物でもあります。
また保温性にも優れ厳しい冬の寒さも軽減できることで、餌の摂取量を抑えることもできコストも削減できます。

 

建設コストは大変高いものですが、それに見合う飼養環境が再現できることで、鶏が持つ生産パフォーマンスを最大限高めることで、種鶏メーカーが改良している高産卵、長期の生産持続といった利益に直結できることが容易になりました。


最近主流の鶏舎構造ですが、それによる弊害も散見されます。


今回のように人が外部からウイルスを持ち込む可能性が高いということ、また、ねずみ等動物が侵入しにくいとはいえ、100%遮断はできないことから、駆除作業が十分でないことで侵入から巣を高所や人間の目に届かない場所に作られ、結果繁殖し増大し病気の発生や断線等電気設備の不調という事態もあります。


コクシジウム症等糞便を媒介する病気が一昔に比べ増えているという構造的問題もあります。


また、保温性が高いということは換気量を調整することで可能なわけであり結果病原性が鶏舎内に広がりやすい環境も整います。


このようなリスクに対して、農場によりその意識レベルが高低あることで、意識が高い所は鶏舎の入り口から厳しく管理し、持ち込まないという意識を従事者に植え付けます。
しかしながら、高床式のようにやむを得ない古く管理できないと言った意識が低い状況では、ウインドレスは野鳥は入らないし、ねずみも入りにくく目視では発見しないという危険な安堵から後日になって事故を呼ぶことになります。

実際ねずみはいないと信じ管理がおろそかであった農場では、なんかネズミが多く見られ、定期サルモネラ検査で検体が検出されよく見たら、目線より高い所に数多くの巣を作られ、活動していたという事例もあります。

農場に多いクマネズミは高い所に巣を作ります。この意識があるかないかだけでも発見する検知能力が高い農場でもあります。


今回の鳥インフルエンザでは疫学調査からもねずみの足跡や糞が見つかり指摘されたり、管理方法について指摘を受けるものが多く、今お話したような意識の問題について
再認識を必要とする結果が多いように見えます。

 

鳥インフルエンザは、全国的に蔓延する危険性は昨年からありました。


多くは、自身の農場には飛び火はしないし、発生しないという認識が多かったと思います。
西日本だけの問題であり、ため池や野鳥の飛来ルートからそうなるので東日本では影響がない等考えた方もいるのではないでしょうか。


しかし、年を開ける前から東日本にその猛威は降臨します。


大規模農場の一部は、西日本地域の方々のパートナー企業等が鶏の搬出や搬入もあったと聞きます。
その結果発生があったと噂され聞きますし、近隣の同一経営者農場が再度発生・被害にあうと言う状況も見えました。


いずれも、人が出入りし侵入を許したという推測になりますが、設備だけでは防ぐことができないという点が、見えないウイルスの怖いところなのでしょう。

 

鳥インフルエンザに確実に有効な方法は現在見当たりません。


適切に管理をされており、外部者の出入りを制限し消毒をされ、野鳥の侵入がない等かなり高い衛生管理をされていますが、侵入された原因が特定できないと言うのが本音であり、現実でしょう。


全国の養鶏場で発生する確率は僅かであり、設備に大金を投じているから絶対発生しないということもなく、お金をかけずオンボロ鶏舎だから高確率で発生するということもありません。


発生地域の影響もありますので必ず発生する地域があるわけではありません。


しかし、九州地方では養鶏が盛んな地域も多く、養鶏団地と呼ばれる地域も存在します。
細い道を挟んで他所の養鶏場があって、たい肥設備は共同使用というところもあります。
糞便を媒介するウイルスが交差汚染するという危害も存在しました。

 

今回鳥インフルエンザが去って思うことは、地域によるリスクもありますが、人の意識が大事であるというところです。
私どもは人の教育も行っていますが、会社紹介でそのように言うのではありません。


先ほどのように、設備は鶏と外部が遮断できる最良のウインドレス鶏舎です。
しかし入り口は必ずしも防疫が高いわけではありません。

その点を指摘する疫学調査もあり、人が感染源を運ぶ可能性も指摘しています。


作業員の意識が高いことでそこに危害あると考えれば、対策は変わるはずです。

 

従事者の鶏舎管理を行うことに懸念する事例もありました。
作業従事者数に不足が生じ、結果鶏舎ごとの管理ができず農場全体を管理させ、その結果特定の鶏舎が侵入されたという事例もあります。
複数の鶏舎を管理した場合、従事者の意識が薄くなると、長靴を履き替えることや侵入されることの意識が低下してしまい、目の前の業務をいかに早く片付けるのか等合理性を優先してしまうことが多くあります。


それは、目に見えない危害は大きな危害として認識されず、今日その瞬間被害にあうわけでないと言う意識が働きます。
それが、早く作業を進める上で後回しの考えにいたり、後日被害が発生するということになる可能性になるわけです。

 

侵入を許さないためには、施設の改修も大事ですが、それと同時に人への意識づけが大事になります。
ですが農場では施設の改修は目に見えた成果になり、わかりやすい費用対効果に見えます。
しかし、教育はその人への意識づけという目に見えない結果になるため費用対効果から遠慮してしまうと言うのが本音でしょう。

 

教育しそれが開花した時、事故を防ぐための方策が確立されると同時に、それ以外の危害に対しても考えるきっかけを作ります。
物事は考えてそれを具現化しますが、そのためにも事前に学ぶと言うのが根底になければ何も生まれません。


考えるための、基礎が教育になるのです。


多くはその点が薄いため、必要性を感じない、今年は被害にあわなかったから来年も安心といった、本当の安心を確保しているか疑問があります。


現在鶏卵相場は高い状況が続いています。

この5年を比較しても高くなっています。
この後も、鳥インフルエンザによる影響がしばらく続くため、供給不安から高止まりすると見られます。
しかし、高いから安泰で過ごすと、今年冬以降の再発生が日本のどこかでまた見ることにもなりえます。


1年発生すると、数年発生しないということはありません。
確かに毎年発生はないかもしれませんが、それは過去の結果になります。
ですから、今年はないから安泰とは言えません。


それだけでは、発生時に防げるのかまた不安が続きます。
石灰散布だけでは安全でないことは、今回の発生で明らかになりました。
防ぐ方法を調べ、次に生かすための方法を考え、それを従事者皆さんが同じように出来る方法を考えなければなりません。
それを続けて農場のシステムにすることができれば、必ずや鳥インフルエンザやそれ以外の鶏病を防ぐことができるはずです。

 

今回のインフルエンザは、甚大な被害でした。


被害にあわれた農場の皆様には心よりお見舞いを申し上げます。

日頃の衛生管理をしていても防ぐことができなかった農場が多いことでしょう。


疫学調査から見えることは推測でしかありません。
ですが、病気を入れない、増やさない、持ち出さないことの意識を持つことで、二度と再発生をさせないという新たなスタートを切ることができるはずです。


見えないものだから仕方ないではなく、見えないものだからその方策を考え意識するということが大事なことです。

 

これから、安泰な季節が進んでいきます。
しかし秋を過ぎると外国ではインフルエンザが発生していて、野鳥の飛来が心配といういつもの話題がまたあることでしょう。
その時、準備を完了し万全の対策を進めていくのか、まあ石灰をまいて形だけでも対策してますでいきましょう。

なのか。


また訪れるであろうこの問題にどう向き合うのか、それが課題になることでしょう。