nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鶏卵の需要と供給 2021年5月

生産現場は、今大変お忙しいことと思います。
特に鳥インフルエンザによる影響を受けた農場やその地域では、餌付けスケジュールの変更や遅延解消を進めていることとお察しいたします。


被害がない地域では、相場が高いことによる廃鶏状況の見直しもあるかもしれません。
この相場ですが、皆様ご存知の通り供給が減少したことによる価格バランスが変化したことが要因です。
鳥インフルエンザによる被害は約1000万羽、成鶏更新・空舎延長事業に賛同した鶏は第2期で約200万羽ありました。


また、5月連休の引き合いもあり、また緊急事態宣言による家庭消費(巣ごもり消費)による積み上げも重なり相場を一層上向きにしています。
上昇は過去5年にはない強い相場展開で、連休後は一服すると見られますが巣ごもり消費と外食向け出荷の状況で夏相場も強く推移する可能性もありえます。
取引基準値は上昇しており多くは採算に見合う生産活動されていると存じます。
配合飼料価格も上昇しておりますが、まだ痛手を負うということもないことでしょう。


そのような中大手ホクリョウは3月期連結業績予想を増額しています。相場が高いことで売り上げが増えたとしています。
このこともあり、株式も上昇し養鶏業の今の良い状況を映しています。
足元の餌付けも全体的には昨年よりわずかに少ない平均ですが、細部を見ますと九州地域は比較的堅調に餌付けを進めているように見えます。


本年は相場が高いこともあり、農場施行会社も改造や新築依頼があると聞きます。
新築は設備が最新式になり、管理しやすさ新しい嬉しさもあり気分は最高ですが、防疫という点では必ずしも最新になるわけではありません。
野鳥が侵入するというのは今の鶏舎構造ではないように見えます。
ねずみや人の出入りは今も変わらないように、この点を意識した設計がまだ続けていく必要がありそうです。


本年の鳥インフルエンザでは、新築からわずか数年で被害にあった農場があると噂され、設備が最新であっても防御できるわけでないことを教えてくれています。
ですから、この相場高だからこそ新築し増羽し利益拡大を・・と考えますが、そのようなリスクがあることも心に留めてほしいと思います。

 

さて、5月になりますが相場は概ねもちあい傾向が続くと予測されます。

 

例年5月は大型連休後の需要一段落から、もちあい傾向になりやすく気温上昇と共に旺盛であった家庭需要が一服することでやや下落する傾向があります。


昨年は、多い餌付けと消費量の低下が顕著になり低価格相場に年末まで進んでいくわけですが、本年は供給がまだ追い付いていないためもちあいからわずかな下落になる程度ではないかと予測するところも見られます。


概ね生産量が落ち着くのは今餌付けて再稼働している鶏群の秋からではないかと予測できます。
秋は年末に向けて需要がまた旺盛になります。相場の展開に大きく影響を与えることでしょう。

 

経済状況によりますが、新型コロナウイルスによる影響、個人の消費態度、外食等加工向けの需要、東京オリパラの開催のあり方による消費の変化といった不透明なところも多くあり予測しづらいと言えます。


昨年まではオリパラが開催されると予測した供給体制をしていたところもありました。しかし延期となり供給過剰感が広がりました。
設備を増やすと稼働しない限り採算が合わないため供給を続けるわけですが、昨年9月日本養鶏協会が発表した需給見通しのように供給が多いことで、需要が頭打ちとなり慢性的な成鶏更新・空舎延長事業といった、生産調整を必要とする事態が常態化する可能性を危惧していました。


しかし、鳥インフルエンザによる影響が甚大化したことでまずはこの話題は立ち消えることになりましたが、先ほどのように設備は動かして利益を得ます。
ですから、餌付けて生産して、出荷してと昨年以前のように戻らないと農場としても困るわけです。


設備は一般的に30年は使用したいと考える方も多いでしょう。

何しろ建設費や設備費が高いので数年で支払いを終えるのは大変です。
また、住宅に準じた設計や構造仕様にしていることが多いので長く使用できるメリットもあります。
これもあり、一度落成し稼働を開始すれば何十年と続けていく必要があるので、減羽は難しいという現状があるのでしょう。


大きな供給減少又は大きな需要の増加が見込まれないとまた、今年はないにしても昨年秋のような話題が再燃する可能性もあります。


今回の、鳥インフルエンザによる影響で見えたことは昨年の低価格であっても増益をしていた農場もあったということ、世間では低価格で廃業もありえるような風潮でしたが、静かに足元を固めて健全な経営をしていた農場もまた多く存在していたということ。


つまり、低相場に発展した場合本当に養鶏場の選別(自然淘汰)が始まるのではないかという予感もします。
実際多くの農場をみた筆者として感じる本当の姿です。


大規模だから生き残り、小規模だから淘汰されるという狭い視点で物を見ることはできません。
ですが、大規模に広げたから生き残るということもないように見えます。

小規模であっても販路の状況でこのままの運営が良いのか。
改めて点検するのも大事に見えました。

 

表面では低価格で採算が合わない、廃業するという言葉が昨年多く聞かれましたが、その一部は静かに足元を固めていたというのもありました。
堅実な会社はそのことを自慢げに語りません。

「いやいやうちも厳しいですね」と世間に合わせて雑談に応じます。


しかし、その裏では大変な努力をしこの困難な時代をどう生き抜くのか方策を考えて行動していたという現実。

まるで優雅に泳ぐ白鳥は余裕を見せるようで足元は激しく動かし進んで行くさまのように、見せないけど、努力を続けて邁進されていく姿に感心させられた1年でもありました。


何が選別から守られるのか、それがこの先10年後の農場存続を占うキーワードになるのでしょう。


大きなうねりは予告なく訪れます。
その時右往左往するかもしれない農場がある中で、足固めした農場はその逆風を耐えるすべをもって次の時代を生きていくのか。
そんな大きく変異する養鶏業界がもう少し先にあるのかもしれません。