nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

生産再開と相場値の動き そして秋に向けての衛生対策を知る

鳥インフルエンザの被害が終わり、多くの農場は通常管理を行っていると思います。 昨年から被害があった農場では農場の再稼働が本格的に始まっています。 既に鶏卵相場も動きがあり、12日から大阪、13日福岡の市場はMSサイズの鶏卵規準値を10円下げています。 多くは農場で鶏の入れ替えを終えて、産卵を開始し早い段階で規格卵として出荷されていると思います。 そのため店舗では、大玉サイズ規格卵を除き欠品は見られなかったと思います。 代わりに小玉ミックス卵もどの店舗も欠品なく販売していたと思います。 小玉ミックスは産みはじめを中心にそろえなおかつ相場値も安いことで値引き品、目玉品として活用されていると思いますが、折からの相場高で鶏卵価格が高いこともあり小玉を取り入れて店舗の中心にする販売店もあったことでしょう。 それでも1パックは180円それ以上と通常100円前後と比べれば高い商品でもあります。しかしサイズミックスで270円、290円となれば割安に見えることでしょうから店舗を観察すると安い小玉ミックスを手に取る消費者も多いと感じます。 それだけ価格への意識が高いことを感じます。 やっと安くなってきたと感じる方も多いでしょう。 確かに需要の減退期に入りますので鶏卵も安くなってきます。 しかしこの先は猛暑もあり順調にMサイズ、Lサイズとアップしていきサイズも潤沢と言うわけにはいきません。 個卵重の抑制は早ければ7月中旬ごろから見られるかもしれません。そうなりますとこの先もMSサイズは潤沢で、次いでMサイズが多く、Lは例年より少ないということもあるでしょう。 これにより昨年もありましたがLサイズ規格の大玉ミックス卵では計量違反が発生し回収騒動も予想されますので、自社パッキングの農場は計量ミスには十分に注意してください。 そしてこの先、鶏卵回復は夏ごろから初秋にかけてがピークになり秋を迎え、最需要期の冬へと変わっていくことになりますが、昨年9月下旬には野鳥からの鳥インフルエンザ検出が確認されました。 そのような話題になると10月、11月から農場からの発生が報道され本格的な感染シーズンになるわけですから、残された時間はもう多くはないということがわかると思います。 ですが、自農場は感染しないという自信もあるのでしょう。まあ石灰でもまいて、消毒しておけばなんとかなるでしょうし、来年早々に家畜保健衛生所から消毒の通知も頻繁に来るだろうから、それまでは例年通りの対策で十分だろうと考えてしまう農場もあると思います。 でもその繰り返しで何とかなるのでしょうか。 管理獣医師から衛生対策を行う、行えと言われるところも多いでしょう。 では、どう行うのでしょうか。 考え方は3つあると思います。 農場に入れないという視点、農場内で増やさないということ、農場から外へ持ち出さないという意識になります。 農場に入れないということは、農場入り口で汚染源を入れないということ、鶏舎に入れないという意識が必要です。 ですから、通勤車両のタイヤ消毒、手指足の消毒もするでしょうし通勤着から作業着へ着替えて外からの危害を排除するという食品工場の基本的な考えを実行します。そして鶏舎に入るという遮断するという視点が作業内にあるのかという点を確認してみてください。 そう考えると、通勤車両には消毒する設備があり確実に行うということ、必要な消毒液の濃度であることが必須になることがわかります。でも面倒であれば消毒ゲートを導入し自動消毒もするのでしょう。でも車の塗装が痛むからまあ適当にという意識もあるでしょうし聞きます。 そういう農場では、消石灰を使用した石灰帯を作ると良いでしょう。 消石灰を10メートルか大型車両が侵入する場合はその車両の2倍の長さの消石灰を散布し、タイヤの接地面に石灰を付着させることも有効です。 その際雨天でなければ数日に1回は散布を作業員に指示をして実施させる必要があります。消石灰は通常7日から10日程度は強度のアルカリが保持されると言われます。ですから大事をとって数日おきに散布をすることが大事になるでしょう。 そして大事な点は、農場の敷地内にも危害があり、野鳥の糞も散見されますから、鶏舎に入る際の履物は鶏舎専用のほうが安全ですから、法令では鶏舎用の長靴を着用させているわけです。 長靴を鶏舎専用にして入る際には手指の消毒をするということを行えば、作業員が触るもの(汚れた物を触る、外の器具類を触る等)からのリスクも少なくなるでしょう。だから法令は手指消毒を義務付けています。手袋は鶏舎内専用を使用し外では使わないことも大事な意識です。素手を軍手が代わりをしますので、手指は消毒しても軍手はしないでは意味はありません。だから最初から軍手は鶏舎内専用とするのです。逆にしても良いでしょうが大事な点は鶏舎内と外は共用しないという意識です。 そして皆さん知っている殺鼠作業もこれに該当します。鶏舎に入れるリスクにネズミの侵入があるからです。だから金網が壊され侵入した形跡がある、穴をかじる、鶏舎の天井等高い場所に巣を作ることで断熱材の欠片が落下しているという事例も見るでしょう。 ただのネズミではなく、外からのネズミです。そしてそこで生息数を増やすのです。だから殺鼠剤を使用し駆除をしていくわけです。そして多くはクマネズミです。だから高いところを生活圏にして生息し行動しているということも知っておくと殺鼠剤の設置場所に無駄が少なくなり作業性も上がり手間は少なくなります。相手を知るということです。 農場内で増やさないということは、鶏舎内での汚染が違う鶏舎にうつるということです。鶏舎内で使用した長靴や軍手をそのまま違う鶏舎で使用したらただ汚染をまき散らすだけということを知っておいてください。 消石灰を長靴に付けて隣の鶏舎に入ると、足跡が続き、次の鶏舎内まで足跡が残っているはずです。つまりウイルスは見えないものですが、消石灰を参考にして考えると広範囲にまき散らしていることがわかります。でも各鶏舎用の長靴を作業員に用意させられないというのであれば足ふみ消毒槽を設置し適正な濃度で消毒剤を作り汚れたたび(通常は朝と昼の2回程度)作り変えをして効果を維持し次の鶏舎で遮断させることが大事です。 そして鶏舎から出る際には手指を消毒してください。これにより鶏舎内での危害をリセットして次に作業ができます。意外と忘れがちですが大事な点は鶏舎内も鳥インフルエンザではなくても様々な菌類が存在しそれによる悪影響もあるでしょうし、手が鶏臭いのに手を消毒せず退出しそのまま食事をする、トイレに行くのもなんかどうでしょうか。 そして、今まで考えがなかった農場の外へ持ち出さないという点も大事になります。 少し前までは、鶏糞を搬出するトラック荷台にシートをかける農場は多くはなかったと思います。でも今は必要です。 それは、鶏糞にウイルスが残存しやすいということがわかっているからです。だから飛散しないようにシートをかけるわけです。 シートをかければ鶏糞が道路に落ちて見栄えもあるでしょうが、汚染を広げないということが出来ます。少し前までであれば道路にこぼれた鶏糞は次搬出する際にわざとタイヤで踏んで広げてわかりにくくしていたというところもあるでしょう。 それは今は常識ではないということです。 そして、搬出時には車両を消毒し農場内の危害を除去し外へ持ち出すということになります。 どうでしょうか。普段からされている作業も多いともいます。その作業には理由があり除去する目的があるのです。逆に知らなかった。昔は問題なかったという話もあったかもしれません。 つまり飼養衛生管理基準は時代とともに変わっていることがわかった良い機会であったと思います。 法令は遵守することを国は求めており、家畜保健衛生所も定期的に巡回して状況を見てくれます。 その時、この作業は意味がないと思えば相談しても良いでしょう。その時丁寧に説明をしてくれるはずです。 つまり自己判断、勝手な解釈は後で問題になりやすということも知っておくと、今日の話はただの理想像ではなく「やらなければならない」物と理解できることでしょう。 本年の鳥インフルエンザは流行するのかどうかはわかりません。でも令和に入り毎年発生し2,4年度は重篤化しました。 では5年度は軽度で治まるかもしれませんし、やはり深刻な年度になるのかもしれません。 先のことはわかりません。だからこそ相手を知り・農場でどのように展開するのか。 ただの自己判断は知識が足りない場合も多く、知った気になるだけです。 そのような中、青森県は養鶏場管理者や従業員向けに衛生管理の研修会を今年度初めて実施することにしています。 もう時間がない中、知識ある方々の意見や助言を参考になると思います。 ただ知っている。何となくやっている。そして今年も感染しないかもしれない。 そんな不安を研修を通じて自身の知識として活用しそれが技量として繁栄し農場が安全である環境を作る機会になることを知っていただければと思います。 今後全国的にこのような研修も広がることでしょう。 ぜひ参加をしていただき、感染しない強固な農場を目指していただければと思います。