nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

気を抜かず飼養管理をお続けください 鳥インフルエンザの被害が少ない時こそ農場の点検を

まず始めに、令和6年能登半島地震で被害にあわれた皆様方に心よりお見舞い申し上げ、1日も早い復興を心からお祈り申し上げます。 さて、1月も下旬になり、昨年と違い鳥インフルエンザの被害も少ない令和6年が始まりました。 鶏卵相場は東京M規準値180円から始まり、例年より良いスタートで始まっていると感じる農場も多いと思います。 新聞報道を見ますと「たまご値下がり2年ぶり1キロ200円下回る」といった急落したような記事も見られます。 特売価格で180円を下回り値ごろ感を感じる消費者がいるという話題ですが、考えてみますと昨年はそれだけ鶏卵価格は高い物と認識され続けていたと改めて感じます。 一昨年から昨年を中心に様々な物の値段が上がり、私たち養鶏家のみならず消費をする皆さん方も何も意識せず購入するという時代から吟味し有益な物を求めるという取捨選択を一層厳しく見ているように感じます。 一部報道にもある通り、現在加工向けは昨年から消費回復が遅れています。 理由としては鶏卵商品の見直し、値上げによる受注の変化といった値上げによる影響が顕著に表れているとされます。 1月も例年通り年末以上の加工受注は発生しない傾向にあるため、相場としては緩やかな上昇となる早春ではないかと思います。 配合飼料価格の見直しもあり、養鶏経営にコスト増が意識しやすい時期でもありますが、お金のみならず鶏達の飼養管理にも意識を向けてお過ごしいただきたいと思います。 1月は鳥インフルエンザの被害が最も多く報告される時期でもあります。 ですが、本年は6事例6農場約60万羽の殺処分(うち採卵鶏は約55万羽)となり、昨年に比べ少ない傾向です。 昨年が大流行でもありましたので、少ないという比較も正しくないと思いますが、大流行期の裏年と同じような少なさで推移しています。 その中、昨年同様2年連続発生農場もあり、飼養管理に対する意識を高めていただく必要性を感じます。 昨年12月下旬疫学調査チーム検討会会合では、消毒に関する事例、動物の鶏舎への侵入、再発農場の継続的な衛生管理の実効性の懸念等遮断すること、衛生管理を継続する意識等について提言がされています。 弊所の管理農場でも衛生管理への取り組みは年を数えるごとに意識度は高くなっていると感じますので、恐らく意識度の大小が隙をつかれてしまう最初の1歩になっているのかもしれません。 靴・衣服の交換以外にも、手指足の消毒とその薬剤の適正な濃度の維持は基本でもあります。 ご指導最初の農場ではこの基本も従事者により意識度の高低差を感じることが多く、基本をもう一度考え直す機会でもあると思います。 見えないウイルスだからこそ、わからないだろう、見ていないだろう、やっていないこともわからないだろうという意識の薄さがまん延すると、ある日被害があるということもあります。 濃度も同じで、一昔と違い希釈割合は節約のため色がついていれば・泡立ちがあれば良いという考えを持つ経営者は見ることはありません。そんな数円の節約で何千万円の損失リスクを負う方が割が合わないという手間より実損額を天秤にかける意識が大きくなったと感じますし、経営者の代替わりで経営というものに真剣に取り組む農場が増えていることが大きのだと感じます。 ですが、従事者は経営者ではなく雇われでもあり経営意識はいりません。だからこそ基本をしっかり理解してもらい実行するように進めていかないとある日足元をすくわれるということもあるのです。 実際、昨年被害農場のうちどれくらいが経営者が朝から晩までその農場を管理しているのでしょうか。 多くは雇われの人たちが農場を回しているはずで、経営者は報告でこの重大さを知る機会が多かったように感じます。 そして、再発農場の「再発」についても考える必要があると思います。 ご存じの通り、被害農場はただ殺処分され消毒し再検査して導入しているだけではありません。 その中には法令の不適合対応がありこれを満たし始めて再検査をしてやっと導入時期を決定していき再稼働が始まります。 多くは、家畜保健衛生所疫学調査からの指摘、管理獣医師の指導、有識者の作業性の指摘といった小さい検討会を開き真剣に考え従事者へその提言を説明し再稼働を誓うわけですが、弊所指導農場ではありませんが、ある農場はそんなことすら面倒で、言われたことだけして、体裁を整えて再稼働するという農場もあると聞きます。 ですから、壁が壊れている、防鳥ネットがない又は損傷していると言われればそれを修繕し、養鶏再開基準を満たすだけというものです。 本来はそこに、先ほどの消毒はどうか、遮断するという方法はどうかといった細部検討をして見直しをするべきなのですが、そこはしなさいとは言われないのでしないということになり、餌付けを開始し成鶏舎編入日を決めていくという流れもあるようです。 当然、作業は旧来の方法をそのまま行うので、遮断はそこそこ、防鳥ネットは直したが、その後の補修は想定外、何より遮断する意識が高くなく時間がないから靴の履き替えは消毒だけすればよい、薬剤も1日1回程度でよいから消毒液は汚れても1日1回、濃度は適量という適当で・・となれば、またいつか足元をすくわれるということも容易に想像できます。ですがのど元過ぎれば忘れてしまい、とにかく再稼働、そうしないと販路先、従業員の給与といった金銭に比重を置いてしまいそれどころではないという経営になります。 先ほどのように見えないものだからこそ意識をしないと、いつしかそれが王道になり、多少の意識低下は問題ないという自分勝手な解釈に至るということもあり、やはり足元をすくわれることになります。 分割管理を推奨する自治体が増えてきています。ですがそのための費用は莫大です。 1万円、100万円という額ではないはずです。 敷地内に農場1つ作るような値段の半分程度は必要になるでしょう。 だから普及しにくいでしょうし、まだその時期ではないという模様眺めの農場も多いのです。 では、何ができるのかと言えば、提言のように「隙間のない家きん舎であっても飼養衛生管理に関する有識者家畜保健衛生所や獣医師等)と連携し、客観的に再度確認して、野生動物の鶏舎への侵入防止対策を継続的に行う」といった遮断方法の見直しも必要です。 そして、作業は現場が知っていることはその通りですが、その作業は手間を与えているから疎かになるのか、そもそもそれは正しいのかという客観的に見ることも大事です。 それは現場から声が上がればよいのですが、多くはその景色を毎日見ておりそれをおかしいと指摘できる人も多くはないように感じます。 人は手間を惜しみます。それは時間の損得で物を見ているからです。従事者はこの意識であると考えると、皆さん経営者とは異なる視点であることがわかります。 では、作業方法は今まで同じで十分かと考えた時、そうでないから足元をすくわれたと考えれば、やはり見直しは必須になるはずです。 1月鶏卵相場は例年とは違いまだ良い相場値です。恐らく持ち合いが続くことでしょう。 コストだけ意識せず、ただ消石灰を撒くだけではなく、人の流れと手間と遮断という方法を見直しすることもこの時期だからこそできるのではないでしょうか。 来年度令和6年度の大流行もあり得ます。その時右往左往してそれだけなのか、3年連続発生農場が現れるのか。 養鶏経営の継続が試される最初の分かれ道が目の前にあるのかもしれません。