nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

災害時の飼養管理をする 最低限出来ることを継続するという意識を持つ

令和6年能登半島地震では、多くの人的被害のほか、建物・インフラといった様々な甚大被害が発生しており、被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。 養鶏家にとってインフラ機能を失った状況は、地震による不安もあると思いますが、鶏達の心配も大きいことと思います。 餌がない・水の供給が止まり・電力がないといった農場機能が停止している状況では、鶏達への対応も限られ、場合により生産減少や斃死の増加という良くない状況を想像してしまうことと思います。 農場は電力供給があって活動ができる設備を持っています。 多くはウインドレス鶏舎ですから、電力があって鶏舎環境を維持していきます。そして水の供給も電力があって地下水のくみ上げの他消毒作業もして鶏舎へ配られますが機能を失います。 餌も同様で、多くは数日分以上の餌を保有していますが、電力があることで鶏舎へ搬送したり、鶏達へ配るという動作もできるのですが、停電すると困難に至ります。 集糞も電力があることで鶏舎の外へ運び出せるのですが、停電すると機能を失います。 ウインドレス鶏舎の多くは補助電源を保有していることで、燃料が枯渇するまでの数日は通常通りの機能を維持できるという農場も多いことでしょう。 維持できるためには、燃料の確保が必須になりますが、インフラ被害の多くは停電により給油所が停止して購入できないこともあり、困難を極めることもありとても不安なことでもあります。 では、被害が発生したから何もできないのかという悲観的なお話を聞きますが、そう言うこともありません。 私自身は東日本大震災の際震源地より遠いとはいえ、停電があり飼料も必要とする餌が入手できない中での対応をしてきました。 その中で感じたことは、停電だから何もできないではなく、最低限の飼養管理をすることで、鶏達の命を守るという意識がとても大事であるということです。 経営者であれば、鶏の他にも働く方の安全も意識し、ライフラインの復旧見込み、餌の配送見込みといった再開への情報を収集したいと思います。 だからこそ農場は現場に任せたいというのが本音です。でも現場は受け身であり停電であれば何もできないから何もしないでは少し残念です。 現場は、制限がある中で何をして鶏を守るのかという意識を持たせることが大事になります。 今日はこの「最低限できること」についてお話しします。 ウインドレス鶏舎では、先ほどのように電力があって水・餌・空気・温度を維持していきます。 万一の際には補助電源(自家発電)があり、数時間から数日にかけて機能を維持するように設計していることでしょう。 東日本大震災での教訓から、補助電源設置の補助金を出して導入を呼びかけておりこれを機会に導入したという農場も多いことでしょう。 でも燃料がないと、やがて機能を失いウインドレス鶏舎であれば、鶏が発する熱・鶏糞から出る熱や湿度もあり鶏舎温度は上がっていきます。 多くは酸欠と言いますが、実際は空気が動かず熱死に至るような状況になっていきます。 このため、補助電源が失われる際には、最低限維持できる方法として空気の確保をするため鶏舎内の出入り口、入気口と排気口を開けて自然換気をさせて空気の入れ替えと熱・湿度の低減を図ります。 当然鶏舎温度は外気温に近づくため寒くなりますが、緊急時の最初は空気の確保をまず行います。 次に大事なのは水の確保ですが、先ほどのようにウインドレスであっても開放鶏舎であっても水は地下から汲み上げるという農場がほとんどになりますので、電源がないとポンプは止まりますので水は汲み上げられず鶏舎に送り込むことはできません。 でも単相(100V)ポンプであれば、成鶏舎でのワクチネーション作業でガソリンタイプの小型発電機があると思います。 これを活用すると、最低限の給水ができますので、開放鶏舎ではこれがあれば安心できることと思いますが、最近のウインドレス鶏舎は3相(200V)を採用した器具が多くなり、水だけ単相という農場も少なくなってきました。水ポンプをくみ上げてから鶏舎に送るだけという構造から、溜めおいて圧力をかけて送水するという余力保持タイプの農場も多くなり、緊急時の送水を困難にしているところもあります。 ですが、鶏舎近辺に手洗い用等水道蛇口があれば、その水源が単相である場合このポンプからホースを伸ばして給水することもでき何もできないこともないのです。 ただし、給水するためには、そのホースが鶏舎に配るための配管があるかどうかがカギになります。 一昔は各ゲージにフロートがついた溜め置き給水方式を採用していましたから、そこに水を流し鶏に与えるという技もありましたが、近年は直結式が主流になり緊急時に水を与えるという前提の配管組み上げをしていないところも多くなります。 そのような場合は、バルブを取り付けてバイパスを組み水を送るようにすると給水も可能になります。 ホームセンター等でバルブや接続配管を購入し組上げてください。緊急時でもスーパー同様ホームセンターも開いていることが多いはずです。 通常に戻ればバルブを閉じるだけで大きな変更を生じさせず戻る事ができます。 これで、空気と水は確保できましたが、問題は餌になります。 餌は餌タンクにあって確保できても搬送するためには電力が必要です。 餌タンクから取り出し手で配餌することも可能ですので農場の多くは昔ながらの配餌車(手押し車)に入れて鶏に与えるという作業をすると思います。 多段式等それができないという場合、餌を与えず鶏を守るという最低限の作業をすることになります。 最低限というのは、与えないということです。 それだけでは、鶏は斃死してしまいますので、余計なエネルギーを使わせないで守るという意識です。 ここで大事なのは、強制換羽の方法を知るということです。 まだまだ一般的な方法である強制換羽は、餌を止めて水だけで管理をして鶏の若返りを期待する手法です。当然生産量は0になりますので、老鶏に行う一般的な方法です。 もちろんノーリスクではありませんが、産卵を継続するほうが餌を与えない場合リスクは格段に大きくなります。 この時期は日長時間は短いこともあり、冬に向かう季節として鶏も認識しやすいこともあり点灯管理を止めて日長管理にするとストレスなく移行できると思います。 餌の停止は、餌工場が稼働しだい再開されると思います。メーカーによっては関東地域等広域の工場から移送させることもありますので、長い期間停止することはありませんが、スタンダードの餌のみ取り扱うことが多くなるため、時期により必要な餌が入手できないということもありますが、緊急時であればそれはやむをえませんが、成鶏の餌を使用していた場合、育成期の餌は使用しないように注意してください。 育成期の餌との違いはカルシウム配合量の違いです。鶏が卵を産むためには最低限必要なカルシウム量があります。これを餌から補い、体から補って鶏卵が生まれます。ですから餌から補う量が少なくなると、体から補って産卵をしますので、時間が経過するほど鶏の減耗につながるため育成の餌を使用するのであれば、むしろ強制換羽させた方が安心となる場合もありますので必ず検討したうえで実施してください。 道路の状況で農場まで入れるのであれば時間がかかることなく再開も不可能ではありません。あとは農場が鶏舎まで搬送できるのかという設備面の問題だけになりますが、多くは搬送機械まで補助電源で対応できるところは多くはありません。空調管理までの電力を賄うまでが限界ということもあるでしょう。 燃料も購入しにくくなると思います。最近は停電時対応のガススタンドが増えました。一昔のように手回しして給油して1リットル10分かかる給油はいつもと変わらない程度の速さで販売してくれるところも多くなりました。 でも被災された方や、給油したいという自動車が道路にあふれ、従業員が給油に出かけると半日近く戻れないという場合も珍しいことではありません。 また販売量の制限もあり、第2便、3便と人を多く送り込む必要もあり人でしだいで確保できる量が決まってしまうということもあるでしょう。 補助電源は最近の物であれば、50リットル程度で満タンになる省エネ式も多いと思いますが、出力が大きいタイプでは1時間20リットル消費型というものも多いと思います。 販売制限がかかることが多いなかで、半日かけて購入で何とか入手した20リットルが1時間程度の補給にしかならないということもあるでしょう。 そうなると、どのように使うのかやはり検討しなければなりません。 このように、災害発生時は電力消失による損害は大きいものですが、それを補う補助電源に必要とする燃料の確保も同時に心配することになります。 災害発生から時間が経過すると、人への支援が本格化し、燃料といった必需品も少しづつですが流通してくるはずです。 東日本大震災でも5日、10日には長い時間並んでもガソリン等必需品は入手できるまで変化をしてきています。 多くの物が不足し不安もあることと思います。また生活する場所を自宅ではなく避難場所で過ごすという従事者もいるかもしれません。 不安が続く中ではありますが、鶏達を守るために皆さんができることを今一度考えて行動してください。 余震が続く中、心配は尽きないかと思います。でも報道から多くの人は皆さん方を本気で心配し出来ることを考えているはずです。 それは今は必需品ではない支援金という形かもしれませんし、ボランティアとして困っている方に寄り添うという行動もあるでしょう。 物資を提供している人たちもいます。そしてそれを1個でも届けようとする人たちも皆さんのことを想っています。 弊所も皆さんのご不安に少しでもお応えできるよう尽力してまいります。 1日も早い復旧や復興を心よりお祈り申し上げます。