nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

ISEホールディングス株式会社がシンガポールで養鶏農場建設の認可を受けました 日本はどうですか

25日イセフーズ・ホールディングスがシンガポール食品庁から採卵鶏農場を建設するための基本認可を受けたことを発表しました。 この農場は、種鶏場、孵化場、採卵農場からなり最新鋭の生産施設を整備しています。 来年から順次建設され、24年には採卵農場が稼働する見込みです。これにより国内鶏卵産業の生産能力は約50%と2割増える見込みです。 生産稼働は年間3.6億万個の生産と、最大500万羽のひな生産が可能とされ、かなり大がかりな農場であることが分かります。 そして、日本ではあまり見かけない人工知能を活用した農場運営が予定され、鶏舎内の環境をリアルタイムで把握するのは珍しいものではありませんが、その先を行く「臨床症状を検出できる」としています。 日本では人が巡回して検知することが一般的でその技量があるかないかで、検出できる農場なのか否かが分かれるものですが、ここではAIが検出できるとされます。 これにより作業員の業務が軽減されることで、より高業務に従事できるというメリットがあり、日本とは異なる農場運営ができるようです。 日本では、このような農場はまず見たことはありません。 機械を活用した斃死鶏検出装置や水洗作業機械等はありますが、AIを活用してというキーワードはまずありません。 その理由として、日本では技術革新よりコスト意識が強いということがあるように思います。 マンパワーで業務にあたるという昭和からの意識から抜け出せず、人がすべてを解決するという発想があり、機械はその補助という位置づけです。 これにより、昭和・平成の初期までは人が多く集まることで農場が回りますが、やがて人が集まりにくいという時代になりその労働不足を外国人技能実習生で補うというものです。 労働集約型と言われる産業ですが、一般的に餌代が最も高くなるのですが、賃金は低めの設定が一般的です。これは人力で農場を動かすため知的労働者よりも指示により動く労働者が必要となるため管理者以外は低めにするということが多いと感じます。 この条件を満たすために技能実習生や時間給従業員等を採用して抑制をする農場もあります。そのために離職も一定数発生し、農場によっては慢性的な求人広告への掲載という、求人広告では「回転すし状態」「ブラックな職種」と揶揄されがちです。 このこともあり、確実に雇用できる外国人技能実習生を積極的に受け入れて農場作業をするという農場も一般的になります。 さらに、技能の伝承がなくなり、知的労働がなくなっていくという悪循環に入る農場も見られます。農場管理は通常人の知識や経験といったものの過不足で生産量が変わるといっても過言ではありません。 知識がない農場ほど、数年前より生産量が下がり、収入が下がっていくというところもあります。管理者も相応の技量がないことが多く、課題や問題抽出といったこともできず、単純労働者と変わらないが賃金だけは高いという農場もあります。 そのため出費抑制のために賃金が安い職務者を雇用してさらに下げて生産活動をしていくというところもあります。 これに配合飼料価格高騰も重なり、出費を収入が補え切れないという農場もあり、餌が高いから農場が破綻しているといわれますが、細部を見ますと減少する収入が出費を補えず、やむなく力尽きるということもあるように見えます。 今回シンガポールでの養鶏場開場は日本での養鶏と言う概念を変えていく可能性もあります。 指示だけ動く従業員を重宝している農場管理者や経営者の昔からの常識から転換するという新しい時代が開かれるのかもしれません。 潤沢に人がいてマンパワーで動くというのはやはり昔の話になります。 今やウインドレス鶏舎で人工的に最適な環境を作り出して、生産量は右肩上がりでということはありません。むしろ技能がないことで開放鶏舎のほうが結果的に生産量に優れるという皮肉もあります。 人は計器類だけ眺めるでは農場生産が高まりません。丁半博打のように今回は良い鶏、今回は悪い鶏と良い悪いの細部を見つけ出して次に生かすという発想すら無くしている農場もあり、衰退しているのもまた現実にあります。 鶏は生産量を上げることができるように改良が進んでいても、管理する側がその能力を引き出せないという農場も多くみられます。多くはその引き出せない理由を見つけ出せず、先ほどのように良い鶏、悪い鶏だけの判断しかできず、 2年に1回は良い鶏に当たるとか、3年に4回は悪い鶏に当たるといった、改善策がない話題を聞きます。 幹部会議を拝見しても、中身はなく、今回は良い鶏でした。今回はなんか悪い鶏でした。原因は餌で次から給餌方法を変えていきます等、細部を見て議題としているようには見えず、会議をした、発表したという自己満足だけが残り、農場全員が満足してそれで終わります。 皆さんの農場はそうではないでしょうが、残念ながら中にはこの程度の養鶏場は存在しており、少しづつ競争という世界から淘汰されていくのもまた現実な話でもあります。 この先日本では、消費人口が減少していき生産量は過剰になるとも言われます。今は餌付けが少ないから、昨年の鳥インフルエンザの影響で鶏卵相場が高いからというのもありますが、傾向から見れば相場は相応に低めであるのが本来の姿です。 そのため、世界へ販路拡大を狙う農場もあるのですが、それだけでは農場を守れないというのもまた現実です。 今回のシンガポールは輸出先第2位の国になります。年間329トンの鶏卵を輸出しているのですが、国内で完結できるような環境を少しづつ整えているのもまた現実です。 香港が年間21600トンですから、1割もありませんが輸出が多岐にわたっているわけではないため、この量でも第2位なのです。 今後日本でも、AIに置き換わることはないにしろ、最低限の管理は機械に置き換えていく必要があります。 それは、水・餌・空気・病気検出は人に頼るより機械に置き換えたほうが管理能力が向上していく農場が増えていくかもしれません。 つまり、人がこの最低限の管理ができなくなっているという農場も相応にあるということです。 なにか耳が痛い話題ですが、大事なのは養鶏業は昔ながらの労働集約型という常識をそろそろ変えても良い時期になっているのではないかということです。 何かを変えることは難しいといもいいます。ですが今は良いように見えても安泰しているといっても、それは現状維持で少しづつ劣化していくということでもあります。 まあそれもまた人生と言えばそれで良いのでしょうが、次世代の養鶏を見据えた農場から見れば、競合が一つ消えていくことで将来が安心できる材料にもなります。みすみす将来を放棄する必要はありません。 AIでなくても人に知識を持たせるだけでも変わります。問題は何もしないし、何も感じないということです。今日の話題はお金がある大手養鶏場の話題とだけ感じるのか、自社農場はここまでできないにしろ改善する問題検出ができたのか。 皆さんの農場はどの方向へ進んでいくのでしょうか。 ◆21日静岡県新居町で発見されたマガモの国の検査結果では高病原性鳥インフルエンザではありませんでした。このため県の巡視活動は24日に解除されました。◆