開放鶏舎では野生動物の侵入を意識する 鶏を守るためにできること
奄美新聞社が9日報じた「笠利町の養鶏場一晩で70羽咬傷被害も」という記事がありました。
新聞は、昨年11月から鶏が夜間に侵入した動物による被害があり、10月4日には一晩で70羽が死亡していたといいます。
鶏舎周辺では飼い主が存在する犬が確認されたことから、行政は飼い主に放し飼いしないよう指導と順守を求めているというものです。
行政は、その飼い主には未登録の犬が存在しているといい、狂犬病のワクチンの接種もない可能性もあることから、捕獲罠の設置をしているとしています。
今日は、野生動物の侵入防止についてお話しします。
皆さんの農場も一昔前の開放鶏舎からセミウインドレスやウインドレス鶏舎へと変化してきていると思います。
ただ、育成場はまだ一昔のままというところもあるかもしれません。
先ほどの記事、皆さんの農場でも、現在も又は昔は実際ある出来事ではないかと思います。
それは、飼い主がいる犬ということではなく、農場周辺を変にうろつく野犬や野良猫のことです。
皆さんもご存じのように、犬や猫は金網を破るのは比較的簡単な行動です。
私も、育成舎を担当していた時代、オープン鶏舎とはいえ、1階部分の鶏糞留場から鶏がいる2階までは2メートル程度あるのですが、簡単に登っていきます。
犬もそうですが、猫も1度侵入口を作ると、そこを修復しても同じ箇所から壊して(正しくは穴をあけて押し入る)侵入します。
つまり、ここから簡単に入れるということを学習してしまうのです。
鶏舎で使用する金網は一般的に網目はせいぜい2ミリほどの細い金網です。
金網の太さは、農場によりますが、細すぎる場合の多くは、網目が荒く3ミリを超えたりしているものもありますし、曲げたり等加工しやすく、飼養衛生管理基準に合わせるために重ね張りをする等便利さがあるでしょうし、番線鋏を使用するとすぐに切れて便利な点もありますが強度が弱いというデメリットがあります。
出来れば、網目が狭い(2ミリ未満)もので、少し太い物を使用するとよいでしょう。太いとロール状にしている商品では重さが違うようで運びにくいかもしれませんが、それぐらいがちょうどよいでしょう。
劣化がない場合、噛みついて穴をあけることは困難でもあります。
ですが、設置して少し経つと、金網の強度は下がり(細かく錆が発生し簡単に断線してしまう)、かじって開けたりする場合もありますが、頭を金網に付けて押し入ることもします。
このように侵入した動物は犬では、床下に逃亡した鶏を噛みついたりして食べることもありますが、慣れてくると遊ぶように噛みつくだけにかわり、ゲージまで低い場合は、夜間であれば眠っていてゲージから首を出した鶏の首を切り取ることもします。
猫は特に悪質で、先ほどのような高さ2メートルであっても柱を使い上りゲージにいる鶏をかじります。
特に、人がいない朝方や夕方等明るいうちは、鶏も餌を食べたり水を飲んだりしますので、ゲージの外へ首を出す鶏を襲います。
鶏は警戒心はあるのですが、騒ぐとバタつき動物も反応してしまい次々と連続して噛みついていく傾向もあり、被害が深刻化しやすいと言えます。
そして、厄介なのは先ほどのように一度侵入口を作ると補修してもそこを壊して再侵入するという物です。
周辺に罠やトラップを仕掛けてもうまく避けて鶏舎へ侵入します。変に賢いため対処も難しくしていくように感じます。
食べる時は、内臓がある体を丸くくりぬくように食べて足や首だけが残るような食べ方をしますので、動物が食い荒らしたことがすぐにわかります。
ところが、少しすると、遊ぶようなしぐさに替わり犬では噛跡、猫では首や体に引っ搔き跡を作りとても迷惑な行為をしていきます。
これを防ぐには、太い金網を2重にして強度を上げて諦めさせるしかありません。
これをして、数日は押し込むような押跡を残しますが、やがて諦めていきます。ですが一部は違う場所を押したり噛んだりして侵入口を見つけていくこともあります。
周辺にわなを仕掛けても失敗することも多くあります。
その理由として、誘引する餌が鶏であれば古いものだから関心を示さないということもあります。
猫であれば、意外とキャットフードが良いようで、これを使用すると遊ぶ目的ですから餌に誘引されて引っかかることもあります。
犬は警戒心が強いことで、なかなか罠にはかからないようですから、侵入口を丈夫にして諦めてもらうことが解決への早道だと感じます。
さて、飼養衛生基準では愛玩動物の飼育を禁止していますので、多くは猫や犬を飼育しているということろは少ないでしょう。
但し犬は番犬として飼育している方もいますので、そのエリアは飼養衛生管理管理区域ではないと設定して例外としているかもしれません。
その動物を侵入されないようにするためには金網の定期的な点検と補修をしていくことが有効です。
ウインドレスでは、そもそも窓がありませんので侵入口は人の出入り口や鶏糞の排出口を限られます。
猫は鶏糞の排出口からも侵入しますので、壁に登れる構造であれば要注意です。
開放鶏舎では、空気の出入りの関係で真冬でなければカーテンを閉じきることはしないと思います。
このため、特にカーテンが2枚式であるところ(1階と2階にカーテンがある鶏舎)では、なるべく1階部分は開けないに限ります。人がいいる日中は良いでしょうが、夕方から夜間は閉じる等対策も有効です。カーテンを破いてまで侵入することは稀ですから、対策にもなります。
ところが1枚式(1階から2階まで1枚で行う方式)では、巻き上げる関係で1階から空いていきますので被害が大きくなってしまいます。
その場合、金網の補修や強化で対応した今のお話になるのですが、それ以外に、1階の地面から高さ30センチでも良いので、そこを内側から全部板で囲ってしまうことも手です。
つまり、侵入するためには高さ30センチを超えた位置から破る必要があり多くは2本足で侵入を試みることになります。
ですが、動物は本来4本歩行なので、不安定な方法になります。絶対ではありませんが、不安定な方法で侵入をしてくる動物も少ないというのが経験から言えることです。
皆さんもオープン鶏舎であった時代、多くは同じ問題を経験されたことと思います。
ですが、時代が過ぎていき鶏舎システムが変わったとしても野生動物はあらゆる方法を模索して侵入をしてきます。
それは、排水溝かもしれませんし、鶏糞の排出口かもしれません。
あるいは、人が出入りするドアの締めの甘さからくるかもしれませんし、成鶏舎では鶏卵バーコンから侵入もあるでしょう。
笑い話ですが、猫がバーコンに隠れていて、集卵を開始したら、バーコンに乗って鶏卵と一緒に集卵場に流れてきたという話も聞きます。
特に猫は、鶏舎で悪さした後通路や踊り場等で脱糞して宣言することもあります。
とても悪質極まりなく、その採材をサルモネラ検査の採材採取するととても不潔な菌類が分離される可能性もあり衛生的にもよくはありません。
オープン鶏舎特有の話ではなく、時代が変わっても入ってくることを想定してみると、野生動物もそうですが、ネズミといった動物の侵入を意識できる機会になるかもしれません。
これから、寒い季節になります。
外にいるネズミは、寒いからこそ鶏舎への通勤をやめて鶏舎に住み着くような時期になります。それは金網からかもしれませんし、それ以外もあるでしょう。
では、皆さんが考える侵入口はどこでしょうか。
そう尋ねてみると皆さんの中の答えは出てきて、対応を考えるかもしれません。
既に、全国2例目の野鳥からの鳥インフルエンザ発生が報告されています。すべてH5亜型です。
そろそろ渡り鳥がやってくるという時期に発生しています。
昨年も流行った型でもあり一層の警戒をしたいところです。
たかが、野生動物の話題かもしれませんが、その記事から自農場の対応が見えてくるのではないでしょうか。