nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

気を抜かず飼養管理をお続けください 鳥インフルエンザの被害が少ない時こそ農場の点検を

まず始めに、令和6年能登半島地震で被害にあわれた皆様方に心よりお見舞い申し上げ、1日も早い復興を心からお祈り申し上げます。 さて、1月も下旬になり、昨年と違い鳥インフルエンザの被害も少ない令和6年が始まりました。 鶏卵相場は東京M規準値180円から始まり、例年より良いスタートで始まっていると感じる農場も多いと思います。 新聞報道を見ますと「たまご値下がり2年ぶり1キロ200円下回る」といった急落したような記事も見られます。 特売価格で180円を下回り値ごろ感を感じる消費者がいるという話題ですが、考えてみますと昨年はそれだけ鶏卵価格は高い物と認識され続けていたと改めて感じます。 一昨年から昨年を中心に様々な物の値段が上がり、私たち養鶏家のみならず消費をする皆さん方も何も意識せず購入するという時代から吟味し有益な物を求めるという取捨選択を一層厳しく見ているように感じます。 一部報道にもある通り、現在加工向けは昨年から消費回復が遅れています。 理由としては鶏卵商品の見直し、値上げによる受注の変化といった値上げによる影響が顕著に表れているとされます。 1月も例年通り年末以上の加工受注は発生しない傾向にあるため、相場としては緩やかな上昇となる早春ではないかと思います。 配合飼料価格の見直しもあり、養鶏経営にコスト増が意識しやすい時期でもありますが、お金のみならず鶏達の飼養管理にも意識を向けてお過ごしいただきたいと思います。 1月は鳥インフルエンザの被害が最も多く報告される時期でもあります。 ですが、本年は6事例6農場約60万羽の殺処分(うち採卵鶏は約55万羽)となり、昨年に比べ少ない傾向です。 昨年が大流行でもありましたので、少ないという比較も正しくないと思いますが、大流行期の裏年と同じような少なさで推移しています。 その中、昨年同様2年連続発生農場もあり、飼養管理に対する意識を高めていただく必要性を感じます。 昨年12月下旬疫学調査チーム検討会会合では、消毒に関する事例、動物の鶏舎への侵入、再発農場の継続的な衛生管理の実効性の懸念等遮断すること、衛生管理を継続する意識等について提言がされています。 弊所の管理農場でも衛生管理への取り組みは年を数えるごとに意識度は高くなっていると感じますので、恐らく意識度の大小が隙をつかれてしまう最初の1歩になっているのかもしれません。 靴・衣服の交換以外にも、手指足の消毒とその薬剤の適正な濃度の維持は基本でもあります。 ご指導最初の農場ではこの基本も従事者により意識度の高低差を感じることが多く、基本をもう一度考え直す機会でもあると思います。 見えないウイルスだからこそ、わからないだろう、見ていないだろう、やっていないこともわからないだろうという意識の薄さがまん延すると、ある日被害があるということもあります。 濃度も同じで、一昔と違い希釈割合は節約のため色がついていれば・泡立ちがあれば良いという考えを持つ経営者は見ることはありません。そんな数円の節約で何千万円の損失リスクを負う方が割が合わないという手間より実損額を天秤にかける意識が大きくなったと感じますし、経営者の代替わりで経営というものに真剣に取り組む農場が増えていることが大きのだと感じます。 ですが、従事者は経営者ではなく雇われでもあり経営意識はいりません。だからこそ基本をしっかり理解してもらい実行するように進めていかないとある日足元をすくわれるということもあるのです。 実際、昨年被害農場のうちどれくらいが経営者が朝から晩までその農場を管理しているのでしょうか。 多くは雇われの人たちが農場を回しているはずで、経営者は報告でこの重大さを知る機会が多かったように感じます。 そして、再発農場の「再発」についても考える必要があると思います。 ご存じの通り、被害農場はただ殺処分され消毒し再検査して導入しているだけではありません。 その中には法令の不適合対応がありこれを満たし始めて再検査をしてやっと導入時期を決定していき再稼働が始まります。 多くは、家畜保健衛生所疫学調査からの指摘、管理獣医師の指導、有識者の作業性の指摘といった小さい検討会を開き真剣に考え従事者へその提言を説明し再稼働を誓うわけですが、弊所指導農場ではありませんが、ある農場はそんなことすら面倒で、言われたことだけして、体裁を整えて再稼働するという農場もあると聞きます。 ですから、壁が壊れている、防鳥ネットがない又は損傷していると言われればそれを修繕し、養鶏再開基準を満たすだけというものです。 本来はそこに、先ほどの消毒はどうか、遮断するという方法はどうかといった細部検討をして見直しをするべきなのですが、そこはしなさいとは言われないのでしないということになり、餌付けを開始し成鶏舎編入日を決めていくという流れもあるようです。 当然、作業は旧来の方法をそのまま行うので、遮断はそこそこ、防鳥ネットは直したが、その後の補修は想定外、何より遮断する意識が高くなく時間がないから靴の履き替えは消毒だけすればよい、薬剤も1日1回程度でよいから消毒液は汚れても1日1回、濃度は適量という適当で・・となれば、またいつか足元をすくわれるということも容易に想像できます。ですがのど元過ぎれば忘れてしまい、とにかく再稼働、そうしないと販路先、従業員の給与といった金銭に比重を置いてしまいそれどころではないという経営になります。 先ほどのように見えないものだからこそ意識をしないと、いつしかそれが王道になり、多少の意識低下は問題ないという自分勝手な解釈に至るということもあり、やはり足元をすくわれることになります。 分割管理を推奨する自治体が増えてきています。ですがそのための費用は莫大です。 1万円、100万円という額ではないはずです。 敷地内に農場1つ作るような値段の半分程度は必要になるでしょう。 だから普及しにくいでしょうし、まだその時期ではないという模様眺めの農場も多いのです。 では、何ができるのかと言えば、提言のように「隙間のない家きん舎であっても飼養衛生管理に関する有識者家畜保健衛生所や獣医師等)と連携し、客観的に再度確認して、野生動物の鶏舎への侵入防止対策を継続的に行う」といった遮断方法の見直しも必要です。 そして、作業は現場が知っていることはその通りですが、その作業は手間を与えているから疎かになるのか、そもそもそれは正しいのかという客観的に見ることも大事です。 それは現場から声が上がればよいのですが、多くはその景色を毎日見ておりそれをおかしいと指摘できる人も多くはないように感じます。 人は手間を惜しみます。それは時間の損得で物を見ているからです。従事者はこの意識であると考えると、皆さん経営者とは異なる視点であることがわかります。 では、作業方法は今まで同じで十分かと考えた時、そうでないから足元をすくわれたと考えれば、やはり見直しは必須になるはずです。 1月鶏卵相場は例年とは違いまだ良い相場値です。恐らく持ち合いが続くことでしょう。 コストだけ意識せず、ただ消石灰を撒くだけではなく、人の流れと手間と遮断という方法を見直しすることもこの時期だからこそできるのではないでしょうか。 来年度令和6年度の大流行もあり得ます。その時右往左往してそれだけなのか、3年連続発生農場が現れるのか。 養鶏経営の継続が試される最初の分かれ道が目の前にあるのかもしれません。

災害時の飼養管理をする 最低限出来ることを継続するという意識を持つ

令和6年能登半島地震では、多くの人的被害のほか、建物・インフラといった様々な甚大被害が発生しており、被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。 養鶏家にとってインフラ機能を失った状況は、地震による不安もあると思いますが、鶏達の心配も大きいことと思います。 餌がない・水の供給が止まり・電力がないといった農場機能が停止している状況では、鶏達への対応も限られ、場合により生産減少や斃死の増加という良くない状況を想像してしまうことと思います。 農場は電力供給があって活動ができる設備を持っています。 多くはウインドレス鶏舎ですから、電力があって鶏舎環境を維持していきます。そして水の供給も電力があって地下水のくみ上げの他消毒作業もして鶏舎へ配られますが機能を失います。 餌も同様で、多くは数日分以上の餌を保有していますが、電力があることで鶏舎へ搬送したり、鶏達へ配るという動作もできるのですが、停電すると困難に至ります。 集糞も電力があることで鶏舎の外へ運び出せるのですが、停電すると機能を失います。 ウインドレス鶏舎の多くは補助電源を保有していることで、燃料が枯渇するまでの数日は通常通りの機能を維持できるという農場も多いことでしょう。 維持できるためには、燃料の確保が必須になりますが、インフラ被害の多くは停電により給油所が停止して購入できないこともあり、困難を極めることもありとても不安なことでもあります。 では、被害が発生したから何もできないのかという悲観的なお話を聞きますが、そう言うこともありません。 私自身は東日本大震災の際震源地より遠いとはいえ、停電があり飼料も必要とする餌が入手できない中での対応をしてきました。 その中で感じたことは、停電だから何もできないではなく、最低限の飼養管理をすることで、鶏達の命を守るという意識がとても大事であるということです。 経営者であれば、鶏の他にも働く方の安全も意識し、ライフラインの復旧見込み、餌の配送見込みといった再開への情報を収集したいと思います。 だからこそ農場は現場に任せたいというのが本音です。でも現場は受け身であり停電であれば何もできないから何もしないでは少し残念です。 現場は、制限がある中で何をして鶏を守るのかという意識を持たせることが大事になります。 今日はこの「最低限できること」についてお話しします。 ウインドレス鶏舎では、先ほどのように電力があって水・餌・空気・温度を維持していきます。 万一の際には補助電源(自家発電)があり、数時間から数日にかけて機能を維持するように設計していることでしょう。 東日本大震災での教訓から、補助電源設置の補助金を出して導入を呼びかけておりこれを機会に導入したという農場も多いことでしょう。 でも燃料がないと、やがて機能を失いウインドレス鶏舎であれば、鶏が発する熱・鶏糞から出る熱や湿度もあり鶏舎温度は上がっていきます。 多くは酸欠と言いますが、実際は空気が動かず熱死に至るような状況になっていきます。 このため、補助電源が失われる際には、最低限維持できる方法として空気の確保をするため鶏舎内の出入り口、入気口と排気口を開けて自然換気をさせて空気の入れ替えと熱・湿度の低減を図ります。 当然鶏舎温度は外気温に近づくため寒くなりますが、緊急時の最初は空気の確保をまず行います。 次に大事なのは水の確保ですが、先ほどのようにウインドレスであっても開放鶏舎であっても水は地下から汲み上げるという農場がほとんどになりますので、電源がないとポンプは止まりますので水は汲み上げられず鶏舎に送り込むことはできません。 でも単相(100V)ポンプであれば、成鶏舎でのワクチネーション作業でガソリンタイプの小型発電機があると思います。 これを活用すると、最低限の給水ができますので、開放鶏舎ではこれがあれば安心できることと思いますが、最近のウインドレス鶏舎は3相(200V)を採用した器具が多くなり、水だけ単相という農場も少なくなってきました。水ポンプをくみ上げてから鶏舎に送るだけという構造から、溜めおいて圧力をかけて送水するという余力保持タイプの農場も多くなり、緊急時の送水を困難にしているところもあります。 ですが、鶏舎近辺に手洗い用等水道蛇口があれば、その水源が単相である場合このポンプからホースを伸ばして給水することもでき何もできないこともないのです。 ただし、給水するためには、そのホースが鶏舎に配るための配管があるかどうかがカギになります。 一昔は各ゲージにフロートがついた溜め置き給水方式を採用していましたから、そこに水を流し鶏に与えるという技もありましたが、近年は直結式が主流になり緊急時に水を与えるという前提の配管組み上げをしていないところも多くなります。 そのような場合は、バルブを取り付けてバイパスを組み水を送るようにすると給水も可能になります。 ホームセンター等でバルブや接続配管を購入し組上げてください。緊急時でもスーパー同様ホームセンターも開いていることが多いはずです。 通常に戻ればバルブを閉じるだけで大きな変更を生じさせず戻る事ができます。 これで、空気と水は確保できましたが、問題は餌になります。 餌は餌タンクにあって確保できても搬送するためには電力が必要です。 餌タンクから取り出し手で配餌することも可能ですので農場の多くは昔ながらの配餌車(手押し車)に入れて鶏に与えるという作業をすると思います。 多段式等それができないという場合、餌を与えず鶏を守るという最低限の作業をすることになります。 最低限というのは、与えないということです。 それだけでは、鶏は斃死してしまいますので、余計なエネルギーを使わせないで守るという意識です。 ここで大事なのは、強制換羽の方法を知るということです。 まだまだ一般的な方法である強制換羽は、餌を止めて水だけで管理をして鶏の若返りを期待する手法です。当然生産量は0になりますので、老鶏に行う一般的な方法です。 もちろんノーリスクではありませんが、産卵を継続するほうが餌を与えない場合リスクは格段に大きくなります。 この時期は日長時間は短いこともあり、冬に向かう季節として鶏も認識しやすいこともあり点灯管理を止めて日長管理にするとストレスなく移行できると思います。 餌の停止は、餌工場が稼働しだい再開されると思います。メーカーによっては関東地域等広域の工場から移送させることもありますので、長い期間停止することはありませんが、スタンダードの餌のみ取り扱うことが多くなるため、時期により必要な餌が入手できないということもありますが、緊急時であればそれはやむをえませんが、成鶏の餌を使用していた場合、育成期の餌は使用しないように注意してください。 育成期の餌との違いはカルシウム配合量の違いです。鶏が卵を産むためには最低限必要なカルシウム量があります。これを餌から補い、体から補って鶏卵が生まれます。ですから餌から補う量が少なくなると、体から補って産卵をしますので、時間が経過するほど鶏の減耗につながるため育成の餌を使用するのであれば、むしろ強制換羽させた方が安心となる場合もありますので必ず検討したうえで実施してください。 道路の状況で農場まで入れるのであれば時間がかかることなく再開も不可能ではありません。あとは農場が鶏舎まで搬送できるのかという設備面の問題だけになりますが、多くは搬送機械まで補助電源で対応できるところは多くはありません。空調管理までの電力を賄うまでが限界ということもあるでしょう。 燃料も購入しにくくなると思います。最近は停電時対応のガススタンドが増えました。一昔のように手回しして給油して1リットル10分かかる給油はいつもと変わらない程度の速さで販売してくれるところも多くなりました。 でも被災された方や、給油したいという自動車が道路にあふれ、従業員が給油に出かけると半日近く戻れないという場合も珍しいことではありません。 また販売量の制限もあり、第2便、3便と人を多く送り込む必要もあり人でしだいで確保できる量が決まってしまうということもあるでしょう。 補助電源は最近の物であれば、50リットル程度で満タンになる省エネ式も多いと思いますが、出力が大きいタイプでは1時間20リットル消費型というものも多いと思います。 販売制限がかかることが多いなかで、半日かけて購入で何とか入手した20リットルが1時間程度の補給にしかならないということもあるでしょう。 そうなると、どのように使うのかやはり検討しなければなりません。 このように、災害発生時は電力消失による損害は大きいものですが、それを補う補助電源に必要とする燃料の確保も同時に心配することになります。 災害発生から時間が経過すると、人への支援が本格化し、燃料といった必需品も少しづつですが流通してくるはずです。 東日本大震災でも5日、10日には長い時間並んでもガソリン等必需品は入手できるまで変化をしてきています。 多くの物が不足し不安もあることと思います。また生活する場所を自宅ではなく避難場所で過ごすという従事者もいるかもしれません。 不安が続く中ではありますが、鶏達を守るために皆さんができることを今一度考えて行動してください。 余震が続く中、心配は尽きないかと思います。でも報道から多くの人は皆さん方を本気で心配し出来ることを考えているはずです。 それは今は必需品ではない支援金という形かもしれませんし、ボランティアとして困っている方に寄り添うという行動もあるでしょう。 物資を提供している人たちもいます。そしてそれを1個でも届けようとする人たちも皆さんのことを想っています。 弊所も皆さんのご不安に少しでもお応えできるよう尽力してまいります。 1日も早い復旧や復興を心よりお祈り申し上げます。

人の雇用とは 何が目的で会社にとって有益なことですか

最近話に聞く人材確保には派遣人材が一番いいという話題ですが、弊所から見ると少し危険なことではないかと危惧しています。 その要因を見ると、日本人求人を行うと多くは採用はできますが、1年や2年在籍すれば良いがそうもいかないという現実もあるようで、在籍しているものの仕事覚えが・・、仕事の能力が・・ 遅刻、早退、休憩時間の概念が少し異なる等何かが違うということもあるかもしれません。 一昔の派遣さんと言えば、労働契約が調整しやすい、依頼すると間違いなく人が来るという確実性が売りでもありました。 しかしこのところの派遣さんと言えば、労働時間は調整しやすい、依頼すると確かに人は来るということ以外に、畜産業を知らないため軽作業と紹介されて来るようですが、鶏舎が熱い、埃が多い、臭い、その割に労働する方の賃金配分が少ないと言ったこともあるのでしょうか、人は来るが、同じ人が長く来るとは言っていないといいましょうか、今週いっぱいでその方は終わりになり、次週は違う人という事例も散見され、いつまでたっても同じ作業ですら教え続けなければならないという従事者側の負担がいつまでも解消されないという本末転倒な農場も見るようになりました。つまり畜産業にとって作業の有益性から見ると少し難があるということです。 求人状況を見ますと、軽作業の鶏舎清掃・集卵・鶏糞の掃除といった紹介でその農場へ派遣させる会社さんが多いように見えます。この利便性もあるのでしょうか、畜産業の人材不足感は昨年、一昨年と比べ少ない又は充足しているという指標が多いと弊所では見ており、人の数としては十分になっていると考えております。 そして、慢性的にこのような業務を行ってくれる作業員を募集続けているという派遣元も散見され、人の数をどれくらい確保できるのかという目線しかないように見えます。 当然数合わせですから、先ほどのような軽作業なのにキツイ・汚い・危険といった3K職場へ派遣されてやる気を削られてしまい今週でお終いという流れになることもあるように見え、まさに負のスパイラルに入ってしまった農場と派遣元というように見えます。 農場は、今週で○○君は終わりで、来週からは△△君が来るそうだ、よろしく面倒を見てくれという伝達だけが届き、現場は来週も新人教育を継続していくという繰り返しに至ります。 昨年から聞こえる、現場の疲弊感を何とかしたいという相談の1つに雇用が変化したことによる疲弊があります。 この原因は何だろうかと考えると、問題は2つあると感じます。 1つは、人の雇用を諦めた原因を究明できていないという農場側の姿勢、2つはそのために人材派遣であれば確保はできるという頭数だけを意識したことによるミスマッチと言えます。 まず1つ目であるなぜ人はこの農場に来ないのでしょうか。または来たとしてもなぜ長く務めることができないのだろうかという視点です。 その要因は後述しますが、人のとり方が頭数を揃えることしかないという視野の欠如が原因です。 「いや、覚えが悪いからでしょう」という意見も聞きます。あるいは「難がありそうだけど、その人しか応募がなかったからとりあえず採用したから、結果そうなっただけなのだよ」という話もあるかもしれません。 近年新卒を採用して、幹部として育て上げるという農場経営者も増えてはいます。ですが、多くは中途採用を前提にした採用に比重を置いているはずです。 その理由には新卒はまず応募はない又は限りなく少ないという現実があり、人材育成と言っているほど余裕がないという現実です。 確かに規模が大きい、福利厚生がしっかりしている等企業としての知名度があり、農場規模も大きいところではそれなりの企業価値があり、新卒サイトに登録すればいくつかの応募があり採用も可能でしょう。 ですが、そうでない規模であれば、新卒サイトに登録しても新卒側がその企業に目を留めることはまずありません。それは、その企業より知名度、規模、賃金すべてが上である企業にまずは応募するはずです。何もなく仕方がないとなれば別でしょうが現実の就職市場は買い手側(学生側)が有利になのは皆さん知っているはずです。 そして、春先に内々定を出すという企業をよそに、夏になっても秋になっても募集を続けていかなければ、人が応募すらないという現実があります。 良い人材程、大卒であれば4年次早々には内々定をもらい多くは就職活動を終えます。つまり良い人材は早い段階で就職市場から撤収していきますから、少しづつ良い人材は欲しいが現実は少しづつ乖離していくという厳しい現実を見るようになります。 秋口以降やっと応募があり面接をして採用に至るということもあるでしょう。でも少し考えてみれば、4年次の春先以降順次内々定をもらっている学生が多いのに、なぜ内定がないのか、内定を1つでも多く勝ち得たいという人ほどその農場を本命にして選考しているのかということです。 でもその学生に欠点はありません。大事なのは採用する側が、その人をどのように育てたいのかという視野があるのかどうかということだけです。 秋以降の採用に得なしと言う人もいますが、それはありません。 大事な視点が抜けているだけです。 それは「採用してその人をどのように育て企業に利益をもたらすのか」という視点です。 中小以下の農場で多くみられるのは、昭和時代の潤沢な人材がうようよしていて、人はいくらでも来る・ダメなら他があるという人余りの時代の背景しか知らないという残念な視点です。 繰り返しますが、人は優秀であれば相応の業種に就職し、常に人生博打をしているわけではありません。何でも不満で転職をするという風潮があるとされますが、多くはそんなことはありません。 俺は有名企業に就職したが、組織が不満で養鶏業に転職するということはないのです。 ですから、採用を続けていればそのうち、良い人材に巡り合えると信じて、何人も何人も面接をして採用し、仕事は現場に任せているだけでは、実際は何も変わらないというのが実情になります。 人を頭数合わせて採用しているのであれば、仕事はそれなりでも構わないというのが採用基準になるはずです。そんなものに条件を付ければ人が来ないのはわかりきっているからです。 それより、採用して運が良ければ覚えてそれなりの戦力になることを確率10分の1,100分の1に期待した採用になっていて、それが定着率が悪くなることに気づけていないのです。 人の定着は宝くじの末等当選の確立より低いということではありません。これは新卒・中途同じことです。人をどのように育てるのか、ただの数合わせなのかという基準でとっているかどうかだけです。 人は目的があって採用するはずです。でも最近はまず頭数を揃える、その先はその先考えれば良いという安易さが、企業価値を更になくしていき、慢性募集の企業と認識されてしまいます。 でも慢性なのかどうかは、農場側はわかりません。必要だから募集しているから期間は定めていないからでしょう。でも求人側は中途であれば、あれ?この企業先週に続き今週も折り込みチラシに求人入れている、掲載料無料の求人サイトに公開して、公開して90日以上たっても掲載を続けている等違和感を感じるかもしれません。 では2つ目、そのために人材派遣であれば確保はできるという頭数だけを意識したことによる弊害についてお話しします。 先ほどのように自社で人確保ができないとなれば、技能実習生や人材派遣業から人を補充することになります。 技能実習生は確実に来てくれる人材ではありますが、日本語の壁もあり最初は軽作業のうち、基礎的部分しか作業に担えないという声も聞きます。 つまり、将来幹部候補としての人材育成ではなくこの先3年、5年程度までの労働人材として採用するということです。 人が入れ替わり、その都度教えることになり、やはり農場現場の負担は大きいものになります。 そして、人材派遣からの労働者であれば日本語もわかり労働も可能でしょうが、畜産業専門ではないということが多く、程度によりますが技能実習生が車の運転ができる程度までの業務しかできません。 そうなると、現場の疲弊度はさらに上がります。 例えば、畜糞を耕種農家さんに販売する際田畑にスプレッター車を使用し散布しますが、現場がわからない、特殊車両でもあり操作方法が覚えられない、車両がマニュアル車で免許条件を満たしていない等畜産業特有の業務を行うほどの人材はあまりいないように見えます。 そうなると、現場社員が乗り業務をし不在になります。確かに農場作業の基礎部分は作業はできます。でも機材トラブル・鶏の正常異常の判断、生産減少への対応はできません。それは誰が行うのかと考えれると、やはり現場社員になります。 田畑散布が終わり残業させても修理すればよいと考える経営者や経営幹部が多いのですが、その人の作業キャパはその職務層より高くなり、ただでさえ賃金格差があるのに、とりえのない幹部より仕事量だけが多いという不満に至ることが多くなります。 残念ながら、人は潤沢にあると考え続けている経営者、仕事が増えると困る幹部から見ると、その不満をわかることはありませんし、それが悪いと考える機会もありません。 だから、仕事をこなし、責任感ある人は低賃金だからこそ転職していくのです。畜産業以外の業種も低賃金ということはないのです。だから労働移動がしやすいのです。 でも人はいくらでもいる、そう考えてしまうといつまでも何も変わらず作業ができる人材だけが抜けていき衰退していくだけです。 だから安泰は衰退であるということなのです。 安泰は穏やかで、心配がないことを言います。昨年の高相場で心配もないという農場も多いでしょう。 でも何も考えず、何も変わらず、何もしないでは、衰退していきます。 鶏の品種改良が進み、高産卵が可能になり、設備も最新になる。 でも農場の管理は何も変わらない、何もしないでは、変化に対応できる人材もいなくなります。 時代は変わり続けています。それは養鶏も同じです。 だから衰退した養鶏場は低卵価に至ると、コスト削減だけ一心不乱に行い、生産減、人の減少、それが売り上げ減、販路の変更等更に悪化し破綻ということもあります。 一昨年より前にいくつかの養鶏場が経営破綻しました。 多くは、飼料コストが高く負債返済の見込みが立ちにくく破綻を選択しています。 でも良く見ると、飼料コストが高いから全ての養鶏場が破綻したわけではありません。 経営のかじ取りが悪いだけであり、業界全体が破綻したと言うことではないのです。 ここが生産維持できた、販路を死守した、コストを無理なく抑えたという人が関わっていたことまで良い見とれる人も多くはないでしょう。 そうです、人が見えない中でも動いていた農場ほどこのような時代が訪れても養鶏不況を乗り越えたのです。 この視点を持って経営をしているのかということをもう一度考えてみると、採用は頭数合わせだけでいいのか、人は育てるものではなく数なのか。 答えや視野が変わるきっかけになるはずです。 でも教えるほどの力をもはや持たない農場もあります。だからこそ教える・知る人から教わるのです。 本年の相場はどうでしょうか。低価格だから融資を受けてしのぐという選択もあるでしょう。 でもしのぐだけでは、数年低卵価相場が訪れると、やがて力尽きます。その事例が一昨年からその前の破綻劇にあるのです。 今年は、餌の上昇から始まり、電力料金も一部大手は僅かですが値上げを発表しています。 1円でも削減したい、そう考える1月になるかもしれません。 その時、何を削るのでしょうか。 何も考えず餌でしょうか、何も考えず電気代・ガソリン代でしょうか。 その削りは安全な削り方でしょうか。 その適否は誰が判断できるのでしょうか。 最終的に損を被るのは誰でしょうか。 それは鶏でしょうか、従業員でしょうか、餌会社でしょうか、それとも経営者でしょうか。 それはわかりません。でもわかることは人の考えが本当に大事であり経営に大きく左右されるということです。 さあ2024年が始まります。我慢の月ではなく、我慢の年となるのかどうか、その時融資だけでしのげるのか。 考え始める1月であっても良いのかもしれません。

2023年を振り返る 次期配合飼料価格は上昇となります

皆さんの町はクリスマスを迎え年末を感じさせるような街並みではないでしょうか。私の地域の商店街では数年ぶりの歳末恒例現金つかみ取り抽選会を開き賑わいを見せており、今年も終わりなのだと感じます。 その令和5年の鶏卵相場は高騰と呼ぶにふさわしいほどの高水準で推移しました。 鳥インフルエンザが大流行している1月は前年止め市からいくらでもない値段低下で新年を迎え、深刻な供給不足で始まります。 1月の平均鶏卵価格は280円(東京M規準値)となり、上昇はどこまで続いていくのか、防疫措置に重点を置きつつ関心もあるそんな新年を迎えたことでしょう。 その後相場は最高値350円(4月)まで上昇し、飼料価格もわずかとはいえ下げが続き、燃料代の補助事業もあり幾分生産活動に余力が生じたという話も聞きます。 振り返りますとこの春先が最も収益的に良かったと答える農場も多かったような記憶があります。 夏以降、鳥インフルエンザ被害を受けた農場が順次回復を図り、鶏卵需要にこたえる準備が整います。 しかしながら、加工向け需要には殻付き輸入卵の増加という話もあり、まあ消費全体3割のうちの数パーセントの話でしょ。とあまり関心がない農場も多く見られましたが、 年末は加工向け需要は不発に終わるような相場に至ります。12月平均相場値は248円です。相場を見ますと5月頃までが最高値となり以降は下落が続いていくという構図になり、少し前ブログにてお話ししましたが秋以降の相場値について例年とは異なる傾向になるのではないかというお話をしたような展開に至ります。 12月は反転があるのではないかと想定していましたが、下落がやや続いている状況で加工向けは既に需要が一段落しているような状況となりました。 本年の止め市は27日(水)となり、持ち合いが続くとなれば月平均価格は248円、年平均額は307円となります。 これも過去にない高水準の平均価格になり、昨年冬から続いた鳥インフルエンザの被害がいかに大きかったことを改めて感じさせます。 2024年の初市は5日(金)です。8日間の滞貨玉となり供給が十分であれば例年100円、150円と大きく下がることが一般的です。1月は我慢の月とも言います通り、相場と採算ラインの乖離が大きいことから我慢して耐えるような1月と言われるのでしょう。現在245円ですから、145円かそれを少し下回る程度と予測できます。通常のスタート相場から見ればまあそんなものでしょうと感じるかもしれませんが、次期1月からの配合飼料価格は上昇となり2800円の値上げになることを発表しています。 燃料価格の補助、電気代の補助といった生産活動に必要なエネルギー費用はまだ抑えていますので、まだ良い年始になるのかもしれませんが、原油相場は上下を大きく動きながらの緩やかな上昇を見せています。補助がありドル安に進んでいる中でもガソリン価格が右肩下がりになっていないという現状は、中東情勢と輸送船の迂回運行によるコスト増が見込まれ、石油関連株はこれを見越して上昇しているぐらい、値が上がることを投資家は見ているようで、その通りであれば消費する私たちは応分の値上げに対応しなければならないという不透明な状況です。 鶏卵の生産も順調に回復しています。恐らく昨年被害あった農場のほとんどはこの時期までには回復して生産をしているはずです。一部はまだ模索中で来年以降に再開を目指すという農場もあるようですが、全体から見れば小規模ですので、回復しているとみています。 では、来年の生産はどのように戻るのでしょうか。 皆さんもご存じの通り、本年夏以降順調に続いており、来年は昨シーズンの被害から回復が春先には完了し通常生産量に戻ると見ます。 つまり鶏卵相場の上昇はまもなく終えるということになります。夏以降は今年度の被害状況により変わるでしょうが、2018年か19年ごろの相場展開になるのではと想像しています。 年平均は180円、190円程度となり、例年相場になる可能性もあり、その中の飼料価格の上昇は、少しコストが高くなり経営に不安もあるかもしれません。 では、仕方ないと考えるだけで何も考えず経営に邁進することも良いでしょうが、この先を見据えて農場生産の在り方やそのための勉強、幹部職員の育成等必要な準備をこの時期から始めることも大事になるのではないでしょうか。 鶏の生産能力を引き上げるのは鶏自身だけではなく、環境を作る人が重要です。 環境が良ければ、生産量も上がるというのは皆さん知っているはずです。 昔「鶏舎がきれいな農場は生産量も高い」という言葉も聞いたことがあると思います。これは古い高床式鶏舎であっても、手が行き届いているところは生産量を高く維持した高生産を続けている農場も多いと言うものです。 養鶏は、鶏卵の値段は餌代より高いので生産量があることは経営の基礎部分を守る役割を持ちます。だからこそ高生産を目指し種鶏メーカーや生産農場は目指しているのです。 餌を削減するだけではどうにかなるというわけではありません。両輪の姿勢が重要です。 そのためには、その管理をするための知識を得る、そのための管理を行うという人側の意識がとても重要です。 多くは、人にお金をかけるほど無駄であるという方もいますが、収入を失い出す農場ほど、コスト削減のため、目に見えない成果となる人への投資を疎かにしてしまい、見やすい餌代、箱代、燃料代といったものに全集中して、生産低下に気づけない・他も下がっている・鶏が悪いので仕方ない等他に責任があると解釈し、大事な点をいつまでも見失ったまま年月が進み、気づけばほか農場より劣化していることに気づけず、鶏が悪い・仕方ないという風土になり改善するという意識すら無くしてしまう農場になります。 お金がある今であれば、もったいないという基準は高いはずです。改善は今しかありません。でもこれをしない、人はいくらでもいるから入れ替えれば何とかなるという考えもあるでしょうが、入れ替えが激しいところほど、人は派遣で良い、実習生で良いとなると、技術伝承することもなくなり、何もとりえのない農場に転落する農場もこの先数年後から散見されると予測しています。他人の話でしょうというでしょうが、その状態がわかるのは自身ではなく他人が見てわかるものです。では皆さんの農場はどのような状態でしょうか。 点検して振り返ることも良いのではないでしょうか。 2023年ももうすぐ終わり、クリスマスが終われば謹賀新年ののぼりがあちらこちらで見られるようになり、もう正月だなと肌で感じるところまで来ています。 何も考えずに暮れだなと感じるのか、来年は今年とは違う年になると予測して動くのか。 ハッキリ言えることは、この年末相場は通常のことなのか、来年はどう予想されるのか。 年末を考え、人に時間や知識等充てるのも良いかもしれません。 本年は養鶏研修も多く開かれ招かれました。どの研修会も鶏の飼養管理より、更なる経営改善の考え方、人の意識、教育の必要性を大事にされたものが多かったと思います。 来年3月下旬以降は、新規採用者の新任研修も通常通り開くという養鶏場もあり、人を大事に育て農場を発展させるという取り組みが多くなったと感じます。 沢山の出会いが今年もあり、私にとっても勉強になり、参考になりとお互いウインウインの研修会でした。本当にありがとうございます。 来年も更なる発展に寄与できるよう努力をしてまいります。まだ鳥インフルエンザの不安が消えない時期ではありますが、皆さんの管理は昨年以上の気づきがあり応用が備わっているはずです。 皆様のご発展をお祈り申し上げ、本年最後のブログとさせていただきます。

鶏舎の空気環境改善実験が大分県の養鶏場で行われています 空間除菌という意識

富士通ゼネラルの子会社と日田市の養鶏場が12月から1年程度の実証実験を行っています。 この実験は、子会社エアロシールド(富士通ゼネラルの子会社)が、n-UV技術と呼ばれる波長254ナノメートルの紫外線を照射してウイルスや細菌の拡散にダメージを与え浮遊ウイルスや細菌を不活化させるという特徴があります。 この技術を搭載した機械本体は空間上部に設置することで、水平照射をするので人に誤射する等の影響を与えないという特徴を持ち、今回畜産動物にも空間環境改善ビジネスを展開する予定です。 実証実験の背景には鶏舎環境の特に冬場の換気は室温を保つために換気を十分に行うことができず、食鳥では育成率低下、食鳥処理場での廃棄率浄化を引き起こし、経営に悪影響を及ぼすことから、ワンヘルス(人獣共通感染症の課題)の実現を目指す実証実験を実施することとしたと言います。 報道写真では、天井近い上部空間に一定間隔に照射機械を設置し水平方向に紫外線を照射し浮遊ウイルス、最近の不活化をするという新しい取り組みです。 鶏舎の換気は、入気をして排出をし空気を入れ替えますが、外気温が低い冬は、少しの時間でも鶏舎温度が下がります。皆さんが湯船につかり暖かいお湯に冷えた水を入れると、入れた付近からお湯が冷えるというイメージをするとわかりやすいかもしれません。 ですから、最低換気をする農場が一般的で、農場によってはアンモニアガス臭が強いとしても害はないと説明する人もいますが、本音はガスによる被害発生する確率と保温する餌代等のコストの大きさを天秤にかけて、ガスの被害が低く、コスト低下によるメリットが大きいという判断でガス臭による影響はないと説明しているように見えます。 鳥インフルエンザを想定した空間除菌を意識する農場もありますが、多くは安定化二酸化塩素を使用した除菌をするという農場もあります。 これは細菌やウイルスの細胞膜を酸化させるという手法です。 この手の除菌は試験室レベルでは有効ではないかとされますが、空気が流れ隙間があり空間が多い鶏舎では十分に効果を得られているのかわかりにくいとされます。 このため、入気口に安定化二酸化塩素を塗布し入気時に鶏舎空間の除菌を試みるという農場もありますが、広さとその投入量から効果については十分議論されていないという場合もあるようで、効果については十分わかりにくいという事例もあります。 また飲水投与用二酸化塩素もあるようで、給水のピックラインに計算上必要な濃度を溶解させて不断給水するというものです。効果があるとされるようですが残念ながら効果があるのかわかりません。 実際この空間除菌をしていた農場でも鳥インフルエンザが発生したという事例があるようですので、空間除菌の効能以外にも違う懸念があるという視点が必要です。 ただ、今回の空間改善実験は、鳥インフルエンザ以外にも、空間に浮遊する鶏病にも有効であると思われます。空間除菌に疑問を持つ方も多いと思います。 大事な視点は、例えば鳥インフルエンザは鶏舎の空間に浮遊しているので感染するのかという疑問を持つということです。 鳥インフルエンザは何らかの経路を経て鶏に感染し被害を発生させます。では被害農場の数メートル離れた異なる会社の養鶏場ではなぜ空気感染していないのだろうか。 でも発生した農場もあります。 その差は何でしょうか。多くは堆肥舎の共用、死亡鶏処理機の共用という農場もあります。 これは空気感染で広がったのでしょうか。 つまり、鳥インフルエンザといった経営に大きく左右される場合空間除菌だけで防ぐという視野ではあまり意味がないということです。 空間除菌で期待できるとすれば、換気不良による細菌の不活化させることで、鶏が受けている免疫低下から要らぬ感染や疾病を防ぐという視点です。 繰り返しになりますが、換気が悪くなる冬は換気による弊害を心配するために換気がおろそかになり、それにより浮遊する細菌類や埃が多くなりそれが、鶏へのストレスになり鶏病誘発したり、生産性の弊害になることがあります。 これを改善する期待があるのが今回の照射機械になるのです。 換気を意識するという考え方はとても大切なことです。先ほどお話ししましたがガス臭あっても問題ないという意識でリスクをとって生産を維持したり期待するという行動は万一の時大きな影響を与えます。 換気と保温は反する関係であることは皆さん知っていることです。 であれば、リスクが小さいこのような環境改善方法もあるでしょうし、二酸化塩素も期待できるのではないでしょうか。 鳥インフルエンザは、感染すれば高病原性であればこのような方法があってもなくても残念な結果に至ると感じます。ですからこの改善は鳥インフルエンザ対策ではなく、冬等換気が十分ではない時期や高温管理等換気を極力なくす飼養管理には一考できるものと言えます。 鶏を飼養する多くの農場は、ただ鶏を飼養しているわけではありません。コストを意識しその結晶が高温管理、換気抑制による保温という方法になります。鶏舎は換気して飼養する前提で作られているため、その逆に取り組むということです。 それは正しいことなのかという話題もありますが、今の価格で供給するためにはコストを意識して対策を講じるしかありません。肯定するわけではありませんがこれが現実という姿なのでしょう。 であれば、呼吸器病を防ぐために何ができるのかという視点で見れば、今の作業を変えず病原菌を少なくするという視点からこのような考えもありでしょう。 皆さんの農場も、換気と保温の考え方に矛盾と難しさを感じると思います。仕方ないことと片付ける農場もありますが、また違う方法もあります。 では、その方法は換気を勧めることなのでしょうか。これが一番安上がりではあります。でも保温という矛盾が生まれます。 このような機械を使用することに疑問があるという方もいるでしょう。効果はどうなのか、信用できるものなのか。 だからこそ実証実験をしているわけです。この実験は24年11月まで続きます。 これにより、空気環境の浮遊菌数、アンモニア濃度のデータ収集と分析をし、外部機関と協力した有効性評価を実施するとしています。 この結果を待ち、冬のみならず今の高温管理へのリスク低減の選択肢の一つになればと思います。

卵アレルギーに対応した鶏卵が開発されつつあります 付加価値を知りただの鶏卵から脱する新しい取り組み

読売新聞が、国立病院機構広島大学が共同研究したゲノム編集した卵アレルギーをおきにくくする低減卵の臨床試験を行うと報じました。 国内初の商品となる見込みで、食品アレルギー第1位になる鶏卵に対していよいよ低減化した鶏卵が誕生する可能性があります。 報道によれば、来年卵アレルギーを持つ子供10名にアレルギー低減卵を加熱し乾燥させた粉末にして与えて症状が出るのか確認をしていくとされます。 安全性が確認できた後大手食品企業がこの卵を使用した加工品の製造と販売を行う予定です。 鶏卵アレルギーを持つ方は食品アレルギーがある方のうち最も多く、鶏卵、牛乳、小麦と上位3つのうち最も多いとされます。 アレルギーがある方は普段の食事や食品から原料に鶏卵が含有されているのか、鶏卵そのものの摂取に真剣に検討されていると思います。 今回の取り組みにより完全に除去される食品から、低減されている食品へと考え方が変わり、鶏卵が持つ美味しさや栄養価について改めて検討していただけるような時代になればと思います。 さて、鶏卵は付加価値がつきにくい食品とも言われます。 付加価値とは、一般的な鶏卵とは違い、餌にこだわり美味しさ、安全面へのこだわり、栄養強化、健康増進といった要素を含み通常の販売価格以上で市販できる価値を持つものです。 一般的なのは、ビタミン強化卵ですが、いまや珍しいものではありません。販路調査を見てもこの強化があるから選ぶという要素はほとんどみられず普及品と同様の位置にいると分析しています。 では、餌をこだわるはどうかと言えば、販路調査から見ても例えばポストハーベストフリー鶏卵は少し前の時代から選定対象になっていないことが既に調査により傾向がみられています。 これは、価格は高いがそれ以外は普及卵と遜色がないという理由もあり付加価値があると認識されにくくなっているというのが理由で、販売先もこれを理由に商品棚を提供する規模を縮小しているとも聞きます。 また鮮度、黄身が手で持つことができる等当たり前の物や、テレビ受けしやすいものも今の時代選定対象になっているとは言えません。 また昭和の時代と違い白玉より赤玉が価値があるという認識もほとんどありません。これは白玉の市場シェアが6割あり卵は白いが当たり前になり赤いから珍しいという考えを持つようにはならないのが理由です。 恐らく普及卵の付加価値を有する物はテレビ等で取り上げた直売所の新鮮鶏卵や○○の卵等知名度があり、リピーターになりやすい物に限られているというのが実情でしょう。その他では設備面の違いによるアニマルウェルフェア対応鶏卵も付加価値卵に位置付けることができます。 ですから近年はブランド卵に力を入れて「○○さん家の卵」「おいしい○○のたまご」といった生産者の顔写真を添えた鶏卵が乱立するようになり、結果付加価値向上から普及が進み、それが普及卵というクラスへ移行したとも言えます。 最近はブランド化に移行したが、その先の販路は大きく拡大できるのだろうかという不安の声も聞くようになったのは、これが主な要因になっていると推察されます。 鶏卵の選定基準は生産者にとっては厳しいのですが「価格」が主な選定理由であり、生産者の顔で決めているわけではありません。 特に本年初頭からの鶏卵販売価格はブランド卵と普及卵の価格差は数十円からせいぜい100円程度まで縮小したこともあり、一度ブランド卵に手を付けていただいたのに付加価値を見いだせず次は選ばれないということもあるように見えます。 つまり、付加価値は顔、餌、ビタミンといった昔からの手法の延長線上では認識されないということになります。 では、健康増進鶏卵はどうかというものですが、調査では珍しいから購入するという声を聞きますが、リピーターにはなりにくいという結果もあります。 これは、鶏卵が持つネガティブ要素と健康増進がミスマッチしているのが主たるものです。鶏卵と言えば高コレステロールと誤認され、普及活動あるものの改善は僅かという状況で高コレステロール食品を食べてEPA摂取をすると言われてもという具合です。 物珍しさから消費者は1回は手に取りますが、価値観を感じない場合2回目以降の購入確率は格段に下がります。 ある調査会社の方の話では、鶏卵分野で勝つには、鶏卵分野に知名度を上げていく、知名度を上げるための方策をとっている、商品を選ばれるような仕組みがあるといった要素が必須になると聞きます。 乱立状態の今の時代では工夫を必要とされるものです。皆さんはどのように取り組むのでしょうか。 今回の卵アレルギー対応鶏卵は、ただの付加価値ではありません。摂取していいただける機会が増えるかもしれないという販路が広がるという価値で、商品そのものに価値を有しています。 鶏卵消費は国民2個ぐらい食べてもらって生産活動が成り立つと聞きますが、人口減少が進んでいる時代10年後は4個、5個と増えていくことで成り立つというのは少し危険な話でもあります。外国人労働者を盛んに入れて人口維持をしない限り困難のようにも感じます。 加工向けも含めて消費しているという考え方もありますが、その分野には輸入という新しい阻害要因もあり得る時代になります。 鳥インフルエンザが発生し供給が不安になった令和4年の大流行はまさに消費活動に大きな変化がある時代でした。 生産者は減少は仕方ないと考えがちですが、鶏卵を消費するサイドは違う考え方で鶏卵を購入しているという認識を持っていただくと、鳥インフルエンザによる損失は農場単位どころではないということがわかるはずです。 今年は既に昨年発生した農場が今年度も発生したという話を聞くようになりました。 2年連続発生農場になるとはどういうことなのか、設備の欠落だけなのか、人的要素はどうなのか。 防げない、仕方ないでは見えないウイルスに立ち向かうことはできません。 できることを考えしっかり行う。人は善人でありウイルスを持ち込まないという意識は今年も安心材料なのか。それより入気口に消毒剤を注入して鶏舎に入れたほうが確実なのだろうか。 なぜウインドレス鶏舎は発生する設備なのだろうか。 自問自答して見ると、新しい視野が開けると思います。 報道は農場の被害と生産者の悲痛を伝えます。その通りですが、その内容はすべて正しい認識で書かれているとは限りません。 ウイルスを真剣に考えることができるのは皆さん生産者という農場サイドだけであり、外野はわかるはずはありません。 では、あらゆる対策を考えるともう一度問うと何かが見えるかもしれません。 ブランドを確立することは今の時代そんな難しいものではありません。販路先や集荷先と相談すれば展開も可能でしょう。問題はその先長く展開できるのかという視点です。 入り口は敷居は低くなりましたが、大事なのはブランド力を維持する方策とそのための戦略です。それは鶏卵そのものが本当にブランド力を持つことができているのかという点も考えてみてください。 そのためには鶏卵を選んでもらえる基準をどこに置くのかという視点はありますか。農場そのものは無価値でしょうか。アンテナショップ乱立だけでは価値向上にはなりませんが、そのショップに何かひと手間を加えるとどうでしょうか。 違う視点もありませんか。 ブランドが乱立している時代、多くのブランド卵は価格差があるだけの普及卵と揶揄されないように、何かひと手間を加えた価値を加えるという視点で自農場を見てください。 きっと何か変われるような要素が見えるはずです。

熊本県は県内養鶏場に対し消毒命令を発令しました 季節の到来になり一層の警戒をお願いします

熊本県は、佐賀県茨城県で発生した鳥インフルエンザ発生により、本日28日県内養鶏場に対し消毒を徹底するよう命じました。 期間は12月1日より来年2月29日までとなります。 これにより県内198養鶏場に対し消石灰を合計200トンを配布し、養鶏場に対し消石灰の散布と消毒の徹底が義務付けられます。 消石灰散布については、家畜保健衛生所の指導に従い散布することになります。例年養鶏場の外周に幅2メートルの消石灰帯を作ることになると思います。 作業性を考え、確実な実行をお願いします。 これまでのところ全国では24日に佐賀県で、27日は茨城県で高病原性鳥インフルエンザ(どちらもH5N1)が発生しており、合計約12万羽が殺処分されています。 鳥インフルエンザが発生し、多くの県は一層の警戒感が高まります。皆様の農場も警戒度を上げてご対応ください。 野鳥の感染事例は28日時点23事例発生しており、北海道道東地域から九州鹿児島県まで広い範囲で検出されています。 いずれもH5亜型又はH5N1まで判明しているものもあり、養鶏場での発生と同様の型になっています。経路はわかりませんが農場までに遮断できるような作業であるのか、もう一度再確認をお願いします。 多くの農場では、消毒の徹底や遮断するための方策、交差汚染による危害の抽出等見えないものから鶏を守る取り組みをしていると思います。 忘れがちなのは、危害がわかったとしてもそれを行うのは人であるということです。 人の作業に無駄な手間を混ぜてはいけません。効率よく無駄なく、簡便にを意識した遮断方法を構築してください。 なんでも履き替える、とりあえず要所要所で消毒しているだけという農場も散見されます。本当に大事なのは遮断です。 鶏舎に入れないためにどう遮断するのか。この1点を考え想像してみてください。 恐らく、何となく思いついた方法より、簡便でかつ簡単な方法で遮断できる方法が見つかるはずです。 農場を見ていない人が想像する遮断はとかく、無駄が多く無意味な履き替えや遮断方法を思いつくようです。現場の意見も聞いて修正することをお勧めします。 12月になります。皆さんの農場では警戒度を上げて対策を講じていることと思います。 年の瀬に向けて、皆さんの農場、鶏、それに携わる方々のためにも出来るだけのことを行ってください。