野鳥から鳥インフルエンザが検出されています 最大限の警戒をお願いします
11月も下旬になり、季節はクリスマスへと進んでいます。 街中の洋菓子店やテレビ広告ではクリスマスケーキの予約を勧めるのぼりやCMを見るようになりました。 鶏卵相場を見ますと、10月から生産量の回復からじりじりと下降しており、17日時点東京規準値は250円(2L、L、M、MS全て同一価格)となり生産回復から小玉の流通が増え、すでに回復している農場のMや2Lクラスも潤沢な供給になっていると推察され、昨年から今年まで被害にあった農場が順調に回復していることがわかります。 また加工向けの供給もわずかとはいえ輸入鶏卵に置き換わり国内の消費過程に変化が生じているようです。 昨年と違い、ケーキの予約が大変という話題もありませんので相応の受注に対応できると自信を持っている店舗が多いと感じ、購入する側にとっては12月に入っても商品選択に余裕ができ困らないという利点がありそうです。 そのような11月ですが、すでに野鳥の感染事例が報告されており、北海道から九州まで広い範囲で検出されており全国的な警戒が必要になっています。 本日時点農場への感染事例はありませんが、通例では野鳥感染が報じられると時間を置かず農場への感染事例が報告されます。積極的な防疫対策を進めてください。 さて、ブログでもお話ししていますが、鳥インフルエンザを意識する対策として消毒・交差汚染意識・人の意識維持が大事になっています。 昨年の大流行を経験した農場では今年は今までとは違う取り組みをしているところもあり、被害の甚大さ、被害を受けた後の再開へのご苦労もありただ消毒していれば良いというレベルではないという意識の高さがあります。 皆さんの農場も、昨年と同じ意識ではなく、昨年以上の意識を持って取り組みを続けてください。 今年度の養鶏勉強会では、交差汚染について議論する機会がとても多いと感じました。 消石灰の消毒と、踏み込み消毒の徹底程度の議論が多かった昨年とは違い、明らかに人への意識が高まった内容が多かったと思います。 人は意識が高いので感染させることはないという性善説に基づいていろいろな場所へ出入りできるのですが、自在に動き回れるということは「感染源を持った場合はまき散らす」という危険性があるということまで知る人は意外と少ないと感じます。 あるいは、そのようなことはしないから検討する必要がないという、従業員との関係性悪化を防ぐという忖度的な意識がある農場もあります。 どちらが良いのかはわかりませんが、大事な点は鶏舎にウイルスを入れないことにつきます。 野鳥が鶏舎に侵入して被害が発生するということは、通常管理をしている限りあり得ません。これは金網を設置しているし不用意に扉の開放をしていないということが一番の理由ですが、それ以外に人が外からの汚染物を持ち込まないという遮断するという行動があります。 長靴の履き替え、手指消毒、衣服を交換するといったものです。 それぞれとても重要な行動ですから、農場従事者の方々にご指導をしていただきたいと思います。 今年度分割管理を導入し再稼働をした農場もあります。被害を半分、それ以下に低減する効果が期待できます。そのために莫大な資金を投入し、動線を分割し集卵設備を新設したり、車両・人の分割した鶏舎での共用や入場を禁止して徹底した農場運営をすることで初めて効果が期待できるとされます。 100万羽規模の農場が分割管理を導入したとしても、コストを削減した費用をあっさりと吸収しコスト増に至るという話も聞きます。 採算面から見ても100万羽規模程度でも採算が合うというところまでには至りません。それだけのことをしても被害を最低限に抑えたいという経営者の思いに従業員皆さんが答えることができれば良いと思います。 そのためには、農場を分割しているのだから、鶏舎に闇雲に立ち入らないという意識、仲間だからこそ困ったときに分割している鶏舎に安易に侵入するという意識、車両や器具が故障したからという理由でその鶏舎で使用している重機や車両を安易に貸し出すという意識。 何のために分割し分けているのかという視点が現場にないと、大金かけて導入しても意味を持たないという残念な結果もありえます。 皆さんの農場はワクモの発生はありますか。最近は新薬の登場でだいぶ寄生虫被害が拡大するという話題は聞かなくなりましたが、ワクモが1号舎で発生したとき時間を置かずに隣の2号舎、3号舎へと伝播するという事例はありませんか。 この要因には、器具の共用や人の共通往来があって広げるという事例が多いと感じます。 長靴にワクモが登り、その履物が隣の鶏舎でまた歩き回る。手指の消毒はしていても作業着はワクモが付着しておりその状態のまま隣の鶏舎に入る。 ワクモが付着した軍手を使用して隣の鶏舎で修理作業を行う。 いかがでしょうか。人が遮断していない場合ワクモの事例で考えてもいくつも不備というか意識の低下による被害拡大が想定できます。決して大げさな話ではありません。 でも人は汚染を広げないという性善説に基づいて鶏舎に出入りをしている。 そう考えると、ねずみや猫や野鳥を鶏舎に入れないという取り組みだけでは解決できないということがわかります。 では皆さんの農場ではあと何をすべきなのでしょうか。 例年通りの消石灰の散布で十分でしょうか。たまに次亜塩素酸ナトリウムを敷地周辺に散布するだけで解決できるでしょうか。 人は性善説に基づいて、この先もこのままで安心でしょうか。 農場には当たり前のことを何も疑わずに、当たり前ではないという事例が多くあります。それに気づき対処するのが本当の農場運営ではないかと思います。 鳥インフルエンザによる被害は殺処分による無収入だけでは済まされず、再稼働によるコスト増という経営的負担、欠品を生じさせたことによる出荷先からの取引規模の低下や停止ということもあります。 相場が高いときは相場取引でも十分採算は合うと思います。今がその時期です。 でも相場が例年のような年平均190円や210円程度になった時、相場取引や加工取引だけで採算が合うのかどうか。 しばらくは金融機関からの借り入れで当座の資金に不安はないでしょうが、低相場時代が長くなる養鶏業では、それによる農場の体力低下が少しづつ進んでいき、最終的には廃業を決断するという事例もあります。 ご自身の農場では関係ないではなく、発生した農場も関係ないと感染するまで思っていなかったはずです。問題はどのように発生させないのかという点です。 低相場と飼料価格の高騰で負債が膨らみ経営破綻した養鶏場が多く発生したのは2021年から22年にかけてのことでした。その22年から23年初頭にかけて深刻な被害が発生した令和4年の大流行。 その大流行から回復した多くの農場は高相場のおかげで大変とは思いますが、何とか軌道に乗せることはできたと思います。 その軌道は慣性の法則のようになにもせずとも、その良い状態を続けていくことができると信じていると思うところもあるでしょう。 でも鶏卵相場は最高値350円を頂点に現在はいくらになっているでしょうか。 この先年末まで350円を超えるような相場になるのか。なったとしても翌1月の相場はどれくらいの低下になるのか。 出荷抑制が発生したことによる出荷先への信頼は、不可抗力とはいえある程度そこなっているという現実があります。 他農場の製品に置き換わり、規模が小さくなったとはいえ取引が継続できただけ安心と言っていられるのか。 相場値が下がった時、その損害の大きさに初めて気づくということもありでしょう。 大事な点は、そのようなことはないと思い平穏に暮らしていくのか、最初からウイルスが侵入させないようなシステムを作り活動していき万一の場合でも悔いが残らないような管理ができていると自信を持って言える運営ができるのか。その考えだと思います。 研修では真剣に聞き入ってくださった農場関係者の方や地域団体の方々。その皆さんの真剣さが農場を変えていく原動力になっていると感じます。 多くは今年も消石灰散布をボチボチやろう。うるさいから石灰撒いておこう。そんな意識の農場も残念ながらあると思います。 被害を出さない農場運営を考えた時、皆さんはどのような運営が必要になると感じるでしょうか。 今日のお話から、昔からの考えだけではなく今の時代に合う考えを見つけてみてはいかがでしょうか。
活気ある農場と閑散とした農場 その差は農場の能力差と関係があるのでしょうか
鳥インフルエンザから被害をなくすために 養鶏場での対策を確認してください
10月も下旬になり、鳥インフルエンザ講習は防疫措置を確認する県職員向けが多くなり、被害が広がることがないような対策を再確認しているように見えます。 19日には千葉県や山梨県、富山県で県職員や畜産関係団体が参加して処分の方法や防疫服の着用方法等を確認しています。 このうち富山県の講習会では、にわとりのぬいぐるみを使用して重さを感じる実践に近い研修を今年も行われているようです。 さて、その鳥インフルエンザも心配される時期になり今月4日北海道ではハシブトガラスから高病原性鳥インフルエンザの検出が確認されています。 亜型はH5N1で昨年から続く型が検出されています。 12日時点の農林水産省発表の野鳥からの検出はこの1例のみですが、既に環境省は死亡野鳥等調査を強化した対応レベルは2(早期警戒期間)として検出作業を進めています。 農場でも野鳥の糞便を見ると思います。 もしかするとウイルスが含まれているかもしれませんから、無関心ではなく、その糞便を踏み付けて作業員が歩き、どこに向かうのかと考えて農場周りの消毒(消石灰)散布をするといった、先を意識した管理をしていきましょう。 そして、農場内で野鳥の死骸を発見した場合素手で触らず密閉度の高い袋に入れて処分方法等を市町村役場に連絡してください。 北海道の担当者は「養鶏場にハシブトガラスを近づけない対策が重要」と言います。 また、道内で70万羽が殺処分された養鶏場責任者も「カラスに厳重注意する旨全農場長へ通達した」と言います。 今年は、ハシブトガラスに対した警戒対策を聞くようになりました。 昨年度の野鳥からの検出のうち、5割はハシブトカラスの感染でした。特にハシブトガラスは肉食性(雑食性)であるため、保菌し衰弱した野鳥を食べて感染したとも言われ、肉食による影響があるのではないかとされます。 渡り鳥が去った春先でもしばらくは検出され続けていることもあり、弊所の獣医師は国内で静かに感染し続けているのではないかと見ています。 実態はわかりませんが、ハシブトガラスは農場周辺で見る野鳥の1つでもあり感染リスクを持つ可能性もあることなどから今年は昨年以上に意識されています。 実際鶏舎内にハシブトガラスが侵入することはまずありません。鳥インフルエンザの多くは何らかの経路や媒介をして侵入しているとみるべきでしょう。 ねずみかもしれませんし、猫といった動物もあるでしょうが、人が媒介するのではないかと意識することも大事です。 人は鶏に一番近い場所まで関わる事ができ、ねずみや猫と違い、感染させないという信頼度も高いことから、人はあり得ないと見られがちです。 でも鶏舎に入る時、その長靴、手指消毒の有無といった大事な遮断方法を確実に守っているはずという前提での信頼度の高さなはずです。 では、本当にそうなのか、鶏舎を見て確認するしかありません。 人が多く働く養鶏場では人の意識はまちまちになりがちです。 十分にその重要性を話しても通じないということもあるでしょう。 その要因を知り、皆さんの農場の危害を再度分析してみてください。 野鳥の糞便を踏むリスク、鶏舎出入り口で遮断できているのかということ、人の行動から見えるリスク等 堆肥舎の金網の有無やそこに立ち入る作業者の靴はどこに向かうのかという意識と交差汚染。 ゾーニングとも言いますが、人の流れを可視化して検討することで危害を察知して改善するという方法もあります。 闇雲に消毒するのも良いでしょうが、人の流れから遮断できる方法を模索すると作業員の方の業務負担を小さくすることもできます。 器具にお金をかけることも良いでしょうが、大事な点は1つで「作業が簡便である」ということに尽きます。 簡単にできるような仕組みを作ることで、作業の漏れをなくし、危害を遮断できるという発想が一番の効果を持ちます。 履き替える・汚染エリアをなくす・汚染しないような歩道を作るといったことです。 是非考え検討してください。 当たり前に畜産現場上空を飛来しているハシブトガラスは、今年は危害の要因とみている農場もあります。 では皆さんの農場ではそのカラスは危害でしょうか。 その点から考えてみましょう。そしてその先の方法まで将来像を描いてみましょう。 きっと農場で出来る方法を思いつくはずです。