nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鳥インフルエンザの発生が確認されました 令和5年度最初の発生となります

佐賀県は25日、鹿島市重ノ木の採卵鶏農場から高病原性鳥インフルエンザが検出したと発表しました。 このため県は採卵鶏4万羽を殺処分とすることとし本日午前9時より開始しています。 県によれば、昨日24日午後3時45分同採卵鶏農場より通報を受け、簡易検査を行い陽性であることを確認しました。県は対策本部会議を開きこの先の予定を確認し、中部家畜保健衛生所において遺伝子検査を行い確定を待つ状況となります。 農場概要によれば、鶏舎10棟の農場のうち2棟で死亡羽数の増加があるという旨通報があります。 24日23時中央家畜保健衛生所での簡易検査2回目でも陽性が確定し、遺伝子検査を実施し、その結果を農林水産省へ報告します。 本日25日午前9時高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜(H5亜型)決定となります。 このため、殺処分を9時より開始、発生農場から半径3キロメートルの家きん・卵の移動禁止、10キロメートルまでについては搬出を制限することとなります。 4万羽規模ですと順調にいけば数日で殺処分は完了し、残置物の除去と消毒が進んでいくと思います。いずれにしても関係機関の方々のご尽力のおかけで進んでいきますので、私たち畜産農家は発生したから「大変だ」ではなく、野鳥感染の話題がおこれば高確率で農場感染の話題が出るということを改めて知っておく必要があるでしょう。 今回の事例では野鳥からの感染報告がない県での発生となり、皆さんご存じのことと思いますが、野鳥検出がないから感染リスクがないということはあり得ないという事実があります。全国的に渡り鳥は飛来して羽を休めています。恐らく国内の野鳥も静かに感染機会がおこっていると言われています。これは渡り鳥が飛来したからなのか、既に国内野鳥間で感染が続いているのかわかりませんが、問題はその感染が何を媒介して農場まで到達したのかという点です。 野鳥を鉄砲で追い払うことはできません。ですから農場敷地内にリスクが上空から落下しておりそれを踏みつける人なのか、捕食する動物なのか、小動物なのか、両方なのかと考えて遮断する方法を今一度確認してください。 九州地方の発生だから次の発生も九州とは限りません。多くの事例では次は西日本や東日本と遠い地域で発生することも珍しいことではありません。昨年同様全国各地で被害発生を聞くこともあり得ます。 鶏卵相場が安くなったから、上昇する機会になるという声も聞きますが、本当の被害は全国膨大な鶏達が処分され鶏卵が不足しその代用に代替卵や輸入卵の増加というシェアの変革を起こして販路が小さくなるという業界全体の損害があるということまで視野を持っているのか、農場や業界全体で考えると他人の農場だから無関心ではなく、明日はどこの県で報告が発生するのかという、結果消費者サイドの離れによる弊害を意識してください。そうすることでどのようにうちは対策を講じていくのか、もっと本腰を入れて考えるきっかけになるはずです。11月も下旬になりました。昨年、一昨年ともこの時期から来年初春まで話題が続く季節になっています。養鶏研修に参加いただいた皆様方におかれましては、その研修での想いを思い出していただき明日からの農場衛生管理にもう一工夫を考えていただき、繰り返しの衛生管理にはなるでしょうが、継続は力なりとも言います。できることを最大限毎日繰り返していただき被害ないようお過ごしください。また被害にあわれた農場の皆様には心よりお見舞い申し上げます。そして防疫措置に当たられている関係者の方々には大変ご苦労が続くことと思いますが、被害が広がらないよう迅速な措置にご尽力いただければと思います。季節は冬に向かいます。今週から真冬のような気温に低下していくという予報も聞きます。皆様も農場経営を心配する真冬に向かっていることを再確認いただきご努力をお続けください。

野鳥から鳥インフルエンザが検出されています 最大限の警戒をお願いします

11月も下旬になり、季節はクリスマスへと進んでいます。 街中の洋菓子店やテレビ広告ではクリスマスケーキの予約を勧めるのぼりやCMを見るようになりました。 鶏卵相場を見ますと、10月から生産量の回復からじりじりと下降しており、17日時点東京規準値は250円(2L、L、M、MS全て同一価格)となり生産回復から小玉の流通が増え、すでに回復している農場のMや2Lクラスも潤沢な供給になっていると推察され、昨年から今年まで被害にあった農場が順調に回復していることがわかります。 また加工向けの供給もわずかとはいえ輸入鶏卵に置き換わり国内の消費過程に変化が生じているようです。 昨年と違い、ケーキの予約が大変という話題もありませんので相応の受注に対応できると自信を持っている店舗が多いと感じ、購入する側にとっては12月に入っても商品選択に余裕ができ困らないという利点がありそうです。 そのような11月ですが、すでに野鳥の感染事例が報告されており、北海道から九州まで広い範囲で検出されており全国的な警戒が必要になっています。 本日時点農場への感染事例はありませんが、通例では野鳥感染が報じられると時間を置かず農場への感染事例が報告されます。積極的な防疫対策を進めてください。 さて、ブログでもお話ししていますが、鳥インフルエンザを意識する対策として消毒・交差汚染意識・人の意識維持が大事になっています。 昨年の大流行を経験した農場では今年は今までとは違う取り組みをしているところもあり、被害の甚大さ、被害を受けた後の再開へのご苦労もありただ消毒していれば良いというレベルではないという意識の高さがあります。 皆さんの農場も、昨年と同じ意識ではなく、昨年以上の意識を持って取り組みを続けてください。 今年度の養鶏勉強会では、交差汚染について議論する機会がとても多いと感じました。 消石灰の消毒と、踏み込み消毒の徹底程度の議論が多かった昨年とは違い、明らかに人への意識が高まった内容が多かったと思います。 人は意識が高いので感染させることはないという性善説に基づいていろいろな場所へ出入りできるのですが、自在に動き回れるということは「感染源を持った場合はまき散らす」という危険性があるということまで知る人は意外と少ないと感じます。 あるいは、そのようなことはしないから検討する必要がないという、従業員との関係性悪化を防ぐという忖度的な意識がある農場もあります。 どちらが良いのかはわかりませんが、大事な点は鶏舎にウイルスを入れないことにつきます。 野鳥が鶏舎に侵入して被害が発生するということは、通常管理をしている限りあり得ません。これは金網を設置しているし不用意に扉の開放をしていないということが一番の理由ですが、それ以外に人が外からの汚染物を持ち込まないという遮断するという行動があります。 長靴の履き替え、手指消毒、衣服を交換するといったものです。 それぞれとても重要な行動ですから、農場従事者の方々にご指導をしていただきたいと思います。 今年度分割管理を導入し再稼働をした農場もあります。被害を半分、それ以下に低減する効果が期待できます。そのために莫大な資金を投入し、動線を分割し集卵設備を新設したり、車両・人の分割した鶏舎での共用や入場を禁止して徹底した農場運営をすることで初めて効果が期待できるとされます。 100万羽規模の農場が分割管理を導入したとしても、コストを削減した費用をあっさりと吸収しコスト増に至るという話も聞きます。 採算面から見ても100万羽規模程度でも採算が合うというところまでには至りません。それだけのことをしても被害を最低限に抑えたいという経営者の思いに従業員皆さんが答えることができれば良いと思います。 そのためには、農場を分割しているのだから、鶏舎に闇雲に立ち入らないという意識、仲間だからこそ困ったときに分割している鶏舎に安易に侵入するという意識、車両や器具が故障したからという理由でその鶏舎で使用している重機や車両を安易に貸し出すという意識。 何のために分割し分けているのかという視点が現場にないと、大金かけて導入しても意味を持たないという残念な結果もありえます。 皆さんの農場はワクモの発生はありますか。最近は新薬の登場でだいぶ寄生虫被害が拡大するという話題は聞かなくなりましたが、ワクモが1号舎で発生したとき時間を置かずに隣の2号舎、3号舎へと伝播するという事例はありませんか。 この要因には、器具の共用や人の共通往来があって広げるという事例が多いと感じます。 長靴にワクモが登り、その履物が隣の鶏舎でまた歩き回る。手指の消毒はしていても作業着はワクモが付着しておりその状態のまま隣の鶏舎に入る。 ワクモが付着した軍手を使用して隣の鶏舎で修理作業を行う。 いかがでしょうか。人が遮断していない場合ワクモの事例で考えてもいくつも不備というか意識の低下による被害拡大が想定できます。決して大げさな話ではありません。 でも人は汚染を広げないという性善説に基づいて鶏舎に出入りをしている。 そう考えると、ねずみや猫や野鳥を鶏舎に入れないという取り組みだけでは解決できないということがわかります。 では皆さんの農場ではあと何をすべきなのでしょうか。 例年通りの消石灰の散布で十分でしょうか。たまに次亜塩素酸ナトリウムを敷地周辺に散布するだけで解決できるでしょうか。 人は性善説に基づいて、この先もこのままで安心でしょうか。 農場には当たり前のことを何も疑わずに、当たり前ではないという事例が多くあります。それに気づき対処するのが本当の農場運営ではないかと思います。 鳥インフルエンザによる被害は殺処分による無収入だけでは済まされず、再稼働によるコスト増という経営的負担、欠品を生じさせたことによる出荷先からの取引規模の低下や停止ということもあります。 相場が高いときは相場取引でも十分採算は合うと思います。今がその時期です。 でも相場が例年のような年平均190円や210円程度になった時、相場取引や加工取引だけで採算が合うのかどうか。 しばらくは金融機関からの借り入れで当座の資金に不安はないでしょうが、低相場時代が長くなる養鶏業では、それによる農場の体力低下が少しづつ進んでいき、最終的には廃業を決断するという事例もあります。 ご自身の農場では関係ないではなく、発生した農場も関係ないと感染するまで思っていなかったはずです。問題はどのように発生させないのかという点です。 低相場と飼料価格の高騰で負債が膨らみ経営破綻した養鶏場が多く発生したのは2021年から22年にかけてのことでした。その22年から23年初頭にかけて深刻な被害が発生した令和4年の大流行。 その大流行から回復した多くの農場は高相場のおかげで大変とは思いますが、何とか軌道に乗せることはできたと思います。 その軌道は慣性の法則のようになにもせずとも、その良い状態を続けていくことができると信じていると思うところもあるでしょう。 でも鶏卵相場は最高値350円を頂点に現在はいくらになっているでしょうか。 この先年末まで350円を超えるような相場になるのか。なったとしても翌1月の相場はどれくらいの低下になるのか。 出荷抑制が発生したことによる出荷先への信頼は、不可抗力とはいえある程度そこなっているという現実があります。 他農場の製品に置き換わり、規模が小さくなったとはいえ取引が継続できただけ安心と言っていられるのか。 相場値が下がった時、その損害の大きさに初めて気づくということもありでしょう。 大事な点は、そのようなことはないと思い平穏に暮らしていくのか、最初からウイルスが侵入させないようなシステムを作り活動していき万一の場合でも悔いが残らないような管理ができていると自信を持って言える運営ができるのか。その考えだと思います。 研修では真剣に聞き入ってくださった農場関係者の方や地域団体の方々。その皆さんの真剣さが農場を変えていく原動力になっていると感じます。 多くは今年も消石灰散布をボチボチやろう。うるさいから石灰撒いておこう。そんな意識の農場も残念ながらあると思います。 被害を出さない農場運営を考えた時、皆さんはどのような運営が必要になると感じるでしょうか。 今日のお話から、昔からの考えだけではなく今の時代に合う考えを見つけてみてはいかがでしょうか。

活気ある農場と閑散とした農場 その差は農場の能力差と関係があるのでしょうか

良く尋ねられるのですが、活気がある農場は本当に生産性や農場の雰囲気は明るいのかと言われます。 確かに様々な農場や研修会に参加しているので、多くの養鶏家さんとお話をしますし、そのうちのいくつかの農場は現地研修もする機会がありますので農場もお伺いしています。 農場内の組織員の方々と接しますので、確かに活気ある農場と、そうでない農場があるのも事実です。 自身の農場だけを見ているのであれば、明るい・暗い、活気ある・陰気感がある、生産量が高く優れる・まあそれなりの生産量等それぞれに違いがあることはわかりにくいと感じます。 何等かのグループに参加している農場であれば、そのグループ内で、明るい・暗い等比較できるかもしれませんが、その比較に意味はないと感じます。 逆になぜ気になるのですかと尋ねると、「挨拶できない従業員が多くてね」と言います。そして、その農場ほど生産量が過去数年間比較しても少なくなっていく傾向があるのですよ。と続けます。 その農場責任者いわく、いろいろなビジネス本を見ると、挨拶できない人は仕事が不得意の傾向があるらしい、挨拶・朝礼をしない会社は伸びない、トイレ清掃から気づけが生まれて生産性が上がる等、一見その通りと思わせるような見出しの内容です。 だから活気ある農場にさせたいのだと言います。そのためにも現状はどうなのかと尋ねてくるようでした。 活気があるから従事者の意識レベルが高く、生産量が高くなるのかと言われると懐疑的ではあります。 でも、活気がある農場ほど鶏、飼養管理、設備、堆肥、鶏病といった広い範囲の話題をしているのもまた肌で感じることでもあります。 逆に閑散とした農場では、今日の作業を終えることに趣をおいており、特に鶏や飼養管理といった改善のきっかけになるようなキーワードの話は出てきません。 だから活気がある農場にしたいと感じるのではないかと思います。 では活気があればすべて解決できるのか、農場を見ている状況から考えてみます。 そもそも活気があるとは何なのでしょうか。 魚河岸のように「いらっしゃい!旬のサンマ、イワシだよ~」のような、生き生きとした元気な感じを想定しているのでしょうか? 農場内を走り回り、せわしなく働く作業の方々なのでしょうか。 小売店のように従業員がお客様とすれ違うたびに「いらっしゃい」と、にぎやかな掛け声をかけることなのでしょうか。 多分それだけであれば、朝挨拶を大声ですればよいだけのことだと思います。 活気がある農場の多くは「組織内の風通りが良く、課題に対して解決させたい風土がある農場」だと感じます。 つまり、魚河岸がいれば解決できるわけではなく、挨拶できないから劣化すると言うことではないとみている者からの正直な感想です。 活気づけるには、活気を与えるのではなく、風土・組織から変えないと解決できません。 ある活気ある農場は、先代さんから息子さんに経営が代わります。 大学を出て獣医師免許を取得して会社に戻り右腕さんに師事し、農場内の仕事、鶏を見ることから学びます。 当然1年生ですから、社長の息子という目線で見られません。仕事ができる右腕は仕事を教えることを優先しており基本を教え込みます。 鶏の関わるミスは、他の従業員と同じように叱責します。仕事が円滑に進むよう、中堅と行動させてサポートも徹底しており、接し方は他の従業員と変わりません。 休憩時間も、缶コーヒーを互いに飲み世間話から先代の苦労話からここがダメななんだというグチまで聞かせます。 息子も苦笑いしているところも多いような感じでしたが、人による違う接し方をしない右腕の技量を吸収しているようでした。 そんな彼も6年程度右腕と行動して、一人前まで育ち先代が70歳になった節目で経営を引き継ぎして新社長となります。 農場従事者も叱責され育った新社長に異論を唱える者はいませんし、右腕も満足しています。 「あんな鼻たれ小僧が社長だとさ」相変わらず本音なのかわかりませんが、聞かせていますが満足しているようでした。 時代は高床式からウインドレス鶏舎へ時代が変わる平成のことでした。 ウインドレス鶏舎は自動環境維持システムで、高床式と違い技術はいらないとされました。 ですがこの農場は環境を作るには技術がないとただ機械が動くだけになる無用の長物になりかねないという考えがありました。 これは右腕の技術に触れた新社長のしっかりとした意識が感じられます。 設定を確認し、風の流れを見て、環境の出来不出来を見たうえで鶏を入れていきます。 当然微調整は必要になりましたが、食下量、動力費、不要な雇用を防ぐことができた稼働諸費それぞれ高床式鶏舎とは大きく異なる費用の削減ができました。 また、しっかりとした環境設定ができたことで生産量も向上していきます。 このような農場では、右腕が部下にしっかり教え込むことで、部下は右腕とは違う柔軟な発想力と想像力を発揮して、右腕に立案し右腕が経験から修正させて実行するという農場になります。 恐らくこれが、社内風土になり話して・考え・行動して・微調整して・農場の力量が向上したという、先ほどの「活気ある農場」となったのではないかと思います。 活気ある農場では、議論や考えを大事にしています。 これは発表することで上司へのアピールでしているわけではありません。 この点をこのように改善した方が絶対に良い、鶏を飼養する温度はこの程度まで上げても良い等さらにできることを疑問として感じ、聞いているという感じです。 ですから議論していると見られがちですが、本当は疑問を聞いているという感じのように見えます。 その疑問にしっかり答えられる右腕や中堅がいる農場なのだと思います。 活気ある農場にするには、魚河岸になるのではなく「考えられる中堅と右腕がいる」ということが必須です。 そして、経営者も考えることを率先していなければ風土も変えられません。 そのような風土もなく、活気ある農場をするといってもまず無理でしょう。 まず、風土、そして応えられる中堅と右腕が存在しているという順序がなければできません。 形から入るではなく、形がなければ展開できないのです。 形がないのであれば、作ってから入るのです。 ない状態で形から入ってもできません。その点に気づけないといつまでたっても何も変わらず時間と年月が過ぎるだけで成果もありません。 ここまで見ていただいて感じたと思います。 活気ある農場の能力差はあるのかという点ですが、答えは差はあるということになります。 それは魚河岸だからではありません。 そのような風土だからです。 考えて前に進んでいく姿勢が随所に見られ、それが活気あるように見えるのです。 良くしよう、生産を向上させようという前向きな姿勢が思考力を鍛え、粗削りした答えが見つかり、それを右腕が修正させて具体化させていきます。 これによりある程度の失敗が事前に回避でき成功への精度が高まります。 これが自信になり、さらなる改善を求めるのです。 人が育つには、考えるきっかけから始まりそれを修正できる人材が助言し、それが知識になります。そして実行して、成果を確認して、次の思考が発生していくのです。 これが人材サイクルなのですが、活気ある農場はこれができているのです。 そうなると活気を求めるのであれば何が必要なのかわかると思います。 形があるのか、なにのか。 風土はどうか、様々な視点で見てください。 ブログ「note」には農業景況調査から人材育成について調査した結果を掲載しました。 関連する内容になっていますのでご覧いただき、養鶏農場が感じている人材育成について、皆さんの農場と重ね合わせてください。 新しい視点がきっと生まれると思います。 鳥インフルエンザが心配する季節でもあります。でも大事なのは、どのように心配するのかということです。そのためには、農場の皆さんとどのような議論をしているのでしょうか。人の意識は何が要因で変わるのか・浸透できるのか。そんな視点で見ると活気ある農場という話題も、その風土の大切さがこのような対策にも有益になると思います。

鳥インフルエンザから被害をなくすために 養鶏場での対策を確認してください

10月も下旬になり、鳥インフルエンザ講習は防疫措置を確認する県職員向けが多くなり、被害が広がることがないような対策を再確認しているように見えます。 19日には千葉県や山梨県富山県で県職員や畜産関係団体が参加して処分の方法や防疫服の着用方法等を確認しています。 このうち富山県の講習会では、にわとりのぬいぐるみを使用して重さを感じる実践に近い研修を今年も行われているようです。 さて、その鳥インフルエンザも心配される時期になり今月4日北海道ではハシブトガラスから高病原性鳥インフルエンザの検出が確認されています。 亜型はH5N1で昨年から続く型が検出されています。 12日時点の農林水産省発表の野鳥からの検出はこの1例のみですが、既に環境省は死亡野鳥等調査を強化した対応レベルは2(早期警戒期間)として検出作業を進めています。 農場でも野鳥の糞便を見ると思います。 もしかするとウイルスが含まれているかもしれませんから、無関心ではなく、その糞便を踏み付けて作業員が歩き、どこに向かうのかと考えて農場周りの消毒(消石灰)散布をするといった、先を意識した管理をしていきましょう。 そして、農場内で野鳥の死骸を発見した場合素手で触らず密閉度の高い袋に入れて処分方法等を市町村役場に連絡してください。 北海道の担当者は「養鶏場にハシブトガラスを近づけない対策が重要」と言います。 また、道内で70万羽が殺処分された養鶏場責任者も「カラスに厳重注意する旨全農場長へ通達した」と言います。 今年は、ハシブトガラスに対した警戒対策を聞くようになりました。 昨年度の野鳥からの検出のうち、5割はハシブトカラスの感染でした。特にハシブトガラスは肉食性(雑食性)であるため、保菌し衰弱した野鳥を食べて感染したとも言われ、肉食による影響があるのではないかとされます。 渡り鳥が去った春先でもしばらくは検出され続けていることもあり、弊所の獣医師は国内で静かに感染し続けているのではないかと見ています。 実態はわかりませんが、ハシブトガラスは農場周辺で見る野鳥の1つでもあり感染リスクを持つ可能性もあることなどから今年は昨年以上に意識されています。 実際鶏舎内にハシブトガラスが侵入することはまずありません。鳥インフルエンザの多くは何らかの経路や媒介をして侵入しているとみるべきでしょう。 ねずみかもしれませんし、猫といった動物もあるでしょうが、人が媒介するのではないかと意識することも大事です。 人は鶏に一番近い場所まで関わる事ができ、ねずみや猫と違い、感染させないという信頼度も高いことから、人はあり得ないと見られがちです。 でも鶏舎に入る時、その長靴、手指消毒の有無といった大事な遮断方法を確実に守っているはずという前提での信頼度の高さなはずです。 では、本当にそうなのか、鶏舎を見て確認するしかありません。 人が多く働く養鶏場では人の意識はまちまちになりがちです。 十分にその重要性を話しても通じないということもあるでしょう。 その要因を知り、皆さんの農場の危害を再度分析してみてください。 野鳥の糞便を踏むリスク、鶏舎出入り口で遮断できているのかということ、人の行動から見えるリスク等 堆肥舎の金網の有無やそこに立ち入る作業者の靴はどこに向かうのかという意識と交差汚染。 ゾーニングとも言いますが、人の流れを可視化して検討することで危害を察知して改善するという方法もあります。 闇雲に消毒するのも良いでしょうが、人の流れから遮断できる方法を模索すると作業員の方の業務負担を小さくすることもできます。 器具にお金をかけることも良いでしょうが、大事な点は1つで「作業が簡便である」ということに尽きます。 簡単にできるような仕組みを作ることで、作業の漏れをなくし、危害を遮断できるという発想が一番の効果を持ちます。 履き替える・汚染エリアをなくす・汚染しないような歩道を作るといったことです。 是非考え検討してください。 当たり前に畜産現場上空を飛来しているハシブトガラスは、今年は危害の要因とみている農場もあります。 では皆さんの農場ではそのカラスは危害でしょうか。 その点から考えてみましょう。そしてその先の方法まで将来像を描いてみましょう。 きっと農場で出来る方法を思いつくはずです。

鶏卵供給が戻りつつあるようです 相場はどうでしょうか

全農鶏卵相場は10日3連休明けの相場発表を行い、東京、大阪、福岡の各市場で5円安い相場になりました。 東京ではM規準値を290円としており、13日までこの取引値になった持ち合いになっています。 10月に入り上昇する時期でもある中、久しぶりの珍しい現象になっています。 過去を見ますと、令和3年の10月も同じような下降相場になりました。この時期は令和2年度の大流行期から回復が進んでいた時期です。 2021年10月1日の相場は東京M規準値は220円で始まります。しばらくは持ち合いとなりますが、約半月後の14日に10円落ちとなります。その後26日に5円落ちとなり、 2021年10月最後の取引日29日は15円落ちの205円となりました。 回復が続き供給が上向いていた時期と新型コロナウイルスによる需要側の弱さがあったとはいえ、年末に向けて相場低下は驚くものでした。 現在は、新型コロナが5類移行になり隔離といった制限をするものはなく日常に近い生活をする時期になり、外食、旅行、インバウンド、流通店やコンビニ店、ドラックストアそれぞれは来客が多くなり企業業績も良いものでしたから、 一概に同じ状況とは言えませんが、回復が順調に進んでいるという現実には変わりありません。 供給の産出基準とされる餌付け羽数を見ますと、全農7月の餌付け状況では前年比103.4%と昨年を超える餌付けが5月以降続いています。今年度は昨年より多い数字で推移しており、供給は順調に進んでいます。 この先も前年を上回る餌付けが続いていくと見込まれますので、供給は更に改善されていくと推察され、消費者の皆さんには欠品を生じさせない安心した供給が予測されます。 今年は猛暑が多い夏でしたが、例年通り大玉は減少傾向が見られましたが、猛暑が終わった9月下旬以降は鶏に対して過ごしやすくなる日が多くなり回復も見られ、サイズ別の供給過不足は見られませんので、全サイズ安定した状態になりました。 テーブルエッグ向け供給は更に改善が進んでいきます。 また鶏卵の輸入も7月実績を見ますと、4262トンで前年比166%と大きく上回ります。 ブラジル産殻付き鶏卵1821トンで先月より少ない状況ですが、これは輸入して消費していく時間にずれがあり、一般的に通関してから2か月から3か月先に使用するものと言われますので、7月通関分は9月から10月頃国内で何らかの形で消費されていくという状況です。 そうなると、9月通関分で11月か12月となると推察され、10月以降は国内消費が一段落する1月頃以降の消費と見込まれることで輸入は10月以降更に少なくなると予想されます。 年間通関実績を見ますと令和4年の殻付き卵は59トン程度(前年比6%)と令和3年の反動減でしたが、今年は8月までの累計で4550トンとなり規模の大きさに違いがあることがわかります。報道があったように今年は国内供給に不安定要素があることで大手加工メーカー等は輸入量を大きく増やしたことが数字に表れています。 加工向け供給も不足分を輸入で補うことで国内での製品不足はだいぶ改善された夏であったと言われます。この先も不足なく供給されていくことで、鶏卵加工は安心した商品製造が可能になるでしょう。 では、この先鶏卵相場どのように進んでいくのでしょうか。 現在290円の鶏卵相場は急激な低下はないでしょう。これは供給が増えていっても需要側も例年通りの消費が期待できるからと予測できます。 しかしながら需要は今の状況で供給が釣り合うような感じになっているように見えます。 参考になるのは令和3年の相場推移になるのかもしれません。 令和3年10月の月平均相場値は9月と同じ213円でした。これは10月に15円下がったことで9月の平均値を同じになったということです。 では11月はと言えば平均207円と5円下がります。12月は3円上げた210円で終わるというものでした。 今の相場を見ると9月の月平均値は292円で、10月本日時点292円と5円下げたことで同額となります。 鳥インフルエンザの影響も令和3年もありましたから、今年はわかりませんが加味してもどのようになるのでしょうか。 大事な点は、相場の推移を見て予測するのではなく、供給が増えていくことで相場がどう変わるのかという視点です。 先ほど話しましたが、餌付け羽数は順調に増えていきます。つまり6か月後は成鶏舎で最高のパフォーマンスで農場を盛り上げてくれるわけです。 そう考えると、年明け以降は需要低下から相場は落ち着き、通常の養鶏時代が訪れる可能性があるということです。 つまり、供給が安定しやや過剰になる時期が来年にはある可能性が否定できないということです。 今の相場290円は通常ない値段です。さらに言えば今年の相場も通常あり得ない値動きです。 特殊な1年であると考えると、皆さんの農場はこの先通常運転になる時期に何をする必要があるのでしょうか。 お金が潤沢に入るから、要らない物を買い込み経費として計上したい、今は不要だが新車を入れて農場に箔をつけたい、人をもっと潤沢に入れて規模が大きいことを示したい等思惑があるかもしれません。 でも大事なことはそこでしょうか。 これから養鶏の秋から冬の時代が来るのであれば蓄えて(必要な物にお金を投下する)、やがて来る春を迎えるための時期と考えることが出来るのではないでしょうか。 皆さんや先代さんはそのような養鶏の四季を見てきているはずです。 長い春が続いているのであれば季節はやがて変わるということを知ってはいるのでしょうが、忘れてしまうというところもあります。 明日も、来年も春は続くと考えてしまうところもあるでしょう。 鳥インフルエンザへの対策も急務になりました。今は両輪で取り組む時期になります。 どちらかのみを考え実行するような時期を超えています。両方を見ながら農場を運営していくことになります。季節は秋になりました。養鶏の四季は何でしょうか。 皆さんの農場はまず何をしていきますか。 相場はこの先も安泰ですか。

人の意識と農場衛生対策 通り一遍な話で通じる時代ではないということ

10月になりました。鳥インフルエンザへの心配、消毒の方針といった農場対策が話題になります。 9月から今月にかけて鶏舎への取り組みを強化している研修も多くなっています。 それは県単位、畜産団体単位、個別農場単位と大きさ様々ですが皆さんの意識を切り替えていただくそんな研修なのだと感じます。 さて、農場を見てお話しする個別農場研修では鶏舎敷地から鶏舎内部までを歩きながら問題点と課題を見つけながらのロールプレイング形式で一緒に考え対策を共有しながら意識を向かせていく研修をしていきます。 農場入り口を見て、どこかに問題点があるのか、柵があるならばこの柵でどの程度の野生動物が侵入防止期待できるのか、それでよいのか。 消毒設備はどうか、自動噴霧器(ゲート式か手動式か)があり人が対応しやすいのか、それとも消石灰帯を作る方が利便性が良いのか。 鶏舎敷地内では水はけの悪い箇所があるならばそれは野鳥が羽休めしやすい場所になるのか。その穴はどうするのか。 金網はあるのか、目の大きさ・穴あき、材質から見て劣化しやすいものか、そして補修しやすいかという視点。 手指足の消毒設備があり、動作を行いやすい位置に配置されているのか、交差汚染のリスクはあるのか。 等約3~4時間かけての研修を行っていますが、農場によっては活発な議論をする農場もあれば、交差汚染?そんなの気にしたら人が歩けないという方、意識というがそんなのできるわけがないという方等様々な反応があります。 鳥インフルエンザを業界が意識する10月ですが多くはまだ警戒する領域に至るところはほとんどないというのが個人的な感想です。 これは、自農場にウイルスが入るわけはないという過信や昨年まで被害がないという経験則もあるでしょう。 だから今は警戒する時期ではないという結論なのかもしれません。でも研修は発生話題がある前には終えなければなりません。それは発生真っ盛りの時に農場に来て研修やどこかの会場で皆さん集めて研修するということはできません。 そもそもそんな時期に行って集まるような暇はないはずです。また農場に部外者を入れたいと思うところもないでしょう。 だから発生がない今しかないのです。 今ではないという農場と今しかできない研修。両社の思惑がズレていることはお互い分かりますが、でもそうしなければならないのもまたジレンマでもあります。 だからこそズレているとわかっていても大事な鶏を守るために両者時間を割いて研修をしていますので、互いに実りある内容としたいと思うはずです。 最近は、衛生対策に基本やネズミ対策といった通り一遍の話だけで、侵入防止をするとかどのような方法を模索するかというところまで至らないという話も聞きます。衛生対策の多くは弊所ではなく管理獣医師や県単位の研修から受けると思います。 対策箇所の範囲が広すぎたり、具体策が十分示されないという内容が浸透しないという話も聞き、農場展開する際に従事者に説明できず浸透しない、意識が高まらないということもあるようで、お客様からは更に深堀して説明したり、ロールプレイングしてより具体的・体感的に意識したりと工夫を求めることが多いと感じます。 集団研修は座学が基本になるため体感的に理解を深めることはできません。知識を得る習得場所になるため、受講者の理解度でその農場への展開度が変わります。このため農場への理解度が十分に深まらない・理解が浸透しない・意識改善が進まないという流れになると感じます。 人を介して展開する課題の1つでもあります。 今日は人の意識と農場衛生対策という話をしますが、先ほどのように人を介しての農場衛生対策はその教え手次第で変わるということを知っておくと展開方法がわかります。その視点でご覧ください。 鳥インフルエンザに限らず農場へ鶏病を入れないという対策には、全ての方がすぐにできる飼養衛生管理基準があります。30項目以上ありますがそんな難しいものではありません。一番の難点はそんなものできるか・すべて網羅してやるかという意識の在り方だけです。 農場HACCP認証をお持ちの方はわかると思いますが、飼養衛生管理基準をすべて適合させるためにこの法令にはこの作業が該当すると言ったリストを作成すると思います。これにより基準をすべて満たすことを自身で確認でき漏れがないことを知るわけですが、認証を持っていない農場の場合、多くは家畜保健衛生所からの自己点検シートから探していき漏れを見つけるだけになります。そして、そうでない場合なぜそうしなければならないのかという理由や目的、知識がないため無理だ・無駄だと自己解釈をしてしまうという場合があるという点です。 ここで意識が求める基準よりまだ到達していないということになるのですが、多くはその通りの理解はしてくれません。 その理由に鳥インフルエンザは心配だが、うちは大丈夫という過信があります。それは昨年まで感染していないからという自負があるからです。 だから意識が高まらないわけですが、発生するかどうかは過去の例で解決はできません。昨年まで対策をして発生した例はいくつもあります。そして十分と思っていても疫学調査からここに課題がある、金網が壊れている、そもそもない、堆肥舎の共用があるといった指摘を受けて初めて課題があることを知ります。発生がないから安泰ではなく、たまたま感染がなかったということもあります。そして安全対策の漏れは誰も指摘はしません。それは指摘できる人がいないからです。法令に満たない時はチェックシートで確認できますが、施設の漏れは目視や客観的に見ることが出来る人でないと、農場作業の方やその管理者と同じ視点になりおかしいをおかしいと気づけないのです。 だから第三者の視点で指摘するわけですが、農場内でそれをするという場合、まずは知識が必要になるということです。つまり知識が十分なければおかしいという箇所を見つけることはまずできません。多くはまあそんなものでしょうとか、そもそもおかしいとわからないと言うことにもなります。 知識は自分で情報を得るか、研修に参加して得るという方法が一般的です。恐らく弊所のブログから得るという方もいるでしょう。 研修やブログの場合座学が基本になっていると知ると、自身がどれだけ理解したか測ることが出来ないということを知っておくと良いでしょう。 鶏を飼育する問題集があるわけではありません。自身で知りそれを理解できてそれを磨くという工程が必要です。人に教える時知っているから教えるではなく、教えるその内容まで十分知っていなければただの説明になり要点が見つからず、相手は聞きません。 そうなると意識を高めたいと思っても相手に伝わらないのです。 最近通り一遍の話で通じないという点はここに課題があると感じます。聞き手の理解が高まっていないということです。その状態で無理に広げるので広がらないと感じます。 最初の話になるロールプレイングで話すとどうでしょうか。 自身の農場の話題です。身近な話ですから分かりやすいはずです。 後は教えての腕次第になるわけです。 鳥インフルエンザの季節だからこのような話もしますが、でも皆さんの農場への展開話はこれ以外にもあるはずです。 ねずみの対策、生産量改善の方法と検討、飼養管理の見直しと様々な問題にただ説明し理解していると思っていたら何もできていないと感じることもあるでしょう。 その要因には意識が高まらないからと結論付ける人もいますが、そもそもそのような作りや風土にしているのか。発信側がそもそもどうなのかという視点で見直してみてください。 鳥インフルエンザの季節だからこそ、農場の展開方法にかけている視点を見つける良い機会でもあります。 今年も大きな被害が想定されるというようなニュース記事も散見されますが、私は皆さんの衛生意識は昨年より格段に向上していると研修を通じて感じています。 恐らくひどくなるような年にはならないと思っていますが、油断はできません。 不安が始まる年末から早春までご苦労が続くことと思います。 消費者の皆さんに国産鶏卵を安心して食べてもらうためにも私たち生産者は今年も万全な対策でこの季節を乗り越えていきましょう。 買ってくださる方はいつもの店舗に鶏卵が十分にあることを期待しているはずです。 その10月は、消費者の皆さんが楽しみにしている「たまごフェスin池袋2023」が昨年に続き行われます。卵かけご飯の食べ放題が人気で昨年も大盛況でした。 たまごが高いから買い控える、高いのは困るという話も聞きますが、でも根底は卵が好きな皆さんだからこそ、このようなイベントを待っているのだと思います。私たち生産者も鳥インフルエンザで被害にあって被害者だと思うでしょうが、生産したその先には待っている消費者の方がいるということをフェスで感じていただきたいと思います。たかが生卵4,5個食べているだけでしょう。と思うでしょう。でもその4,5個を美味しく頬張る皆さん方の姿は生産者から見ると確かによその鶏卵ではあり関係はないかもしれませんが、鶏卵を好きでいてくれる方々と見ると、どこかの店舗で自社の鶏卵を見つけてくれて自宅やお弁当になってオフィスで食べてくれるのだろうと想像してしまう、そんな消費者との接点が見られるフェスです。10月20日金曜日から22日までの3日間池袋サンシャインシティ アネックスB1催事場で入場無料で食べ放題は2時間1000円の入れ替え制です。きっとたくさん食べてみようという方々で熱気あるイベントになるでしょう。 消費者のワクワクを見に来て生産活動の原動力にしていただければと思います。

秋になり防疫対策も意識した飼養管理をしましょう

昨年は下旬に野鳥から鳥インフルエンザ発生が報じられいつもの季節なのか程度で秋を迎えていた農場も多かったと思います。 ですが、実際の被害は1700万羽と過去最大の被害となり毎日のように○○県の農場で何万羽が陽性となり殺処分されたという報道がありました。 最終発生は4月7日で約6か月が経過します。 もう心配する時期になります。 養鶏が盛んな県では秋に向けての養鶏研修が開催されていると思います。 今年はどのような年になるのか。 とても心配です。 さて本年度の鳥インフルエンザでは、2年連続発生した農場や、採卵鶏や肉養鶏ではない家きんからの発生もあり、猛威を振るう年でもありました。 ただ運が悪いだけでは防ぐことはできないため、出来るだけでの対策を講じていく必要があります。 他人事としてとらえることないように皆さんも準備を始めてください。 弊所でも今年度の発生を踏まえて農場へどのように防疫対策を進めていくのかというテーマの研修を例年以上に行いました。すでに8月から秋に向けての準備を進めている農場もあります。 県単位での研修もあるでしょうから、農場の方々は是非ご参加いただき皆さんの農場へ展開していただきたいと思います。 今年度の課題として埋却地の不適切を指摘する事例が多く見られました。 今年度では12の県で埋却が円滑に進めることが出来なかった事例が発生したと報道されています。 その要因には、埋却地の面積不足や埋却不適切の地であったとされます。 農林水産省は今年度の予算から埋却地の試掘に費用の半額を負担するという制度を行っています。 出来るだけ試掘いただき万が一の際には円滑な埋却ができるように農場側も準備をしておくと良いでしょう。 その埋却地ですが、意見として多かったのが不適切な地かどうかを実行する直前までわからなかったという話やそもそも広い土地を農場経営者が用意すること自体不可能であるという財布事情の話が多かったと感じます。 いずれも農場側の努力が足りていない事例ではありますが、現在の法令からはいかなる理由があったとしても農場側の準備が必須であることに変わりはありません。 つまり法令を反してでも埋却の用地を用意しない、できない、やりたくないという声にしか聞こえないのです。 報道側も被害があった農場に寄り添った内容を全国に届けます。これはあまり良いことではありません。 確かに殺処分されて無収入になることは経営にとって死活問題にはなります。 そして不可抗力での感染であり被害を受けているという認識になります。 確かにその通りだとは思います。 ですが発生したということは「なぜ鶏がいる鶏舎まで侵入してしまったのか」という視点で分析し報道をしている内容は見たことはありません。 空気感染している、ウイルスを運ぶ宿主が斃死しないことで広げる等話題はあります。 でもその被害農場から道幅数メートルの農場でも発生していないという事例もあります。 つまりすべてが空気感染し広範囲に広がり被害が広がるというわけではないという事例もあります。これは運のよい悪いで片付けることが出来るのでしょうか。 大事な点は、当事者はどうしたいのかという視点があるのか、ないのかということです。 鳥インフルエンザの事例では、被害があった場合はある土地の地主さんに話をして、畑を借地として準備し、万一の際に作物の補償もするので埋却させてもらうという農場もあります。必ず購入し放棄地にしておくだけが方法ではありません。 土地を買うというその発想の多くは、使わない地だからこそ、どうでも良い荒れ果てた地を破格で仕入れるというところに至り、結局埋却できず無駄な地を二束三文で購入し、恐らく売却もできない土地になっているでしょう。 そのような事例もあったと感じます。 ある県では昨年末に埋却した土地から異臭と周辺水源の汚染がありました。水が吹きやすい土地であったとされます。埋却のやり直しがこの9月からやっと行われるが延期になったという報道もあります。 その再埋却地も竹が茂る土地で開拓して、竹の根を切るような準備が必要になるはずです。 竹の根がフレコンバック等埋却用具に貫通したとき新しい問題に至ります。あまり良い土地ではありませんがこれ以外選択肢がなかったのかもしれません。 現在の法令から言えることは埋却地が用意できない場合の方法が明確化されていないことが一番の問題です。 県に任せるというスタンスでは今回のような膨大な埋却には手に負えないという現状があります。 一番手っ取り早いのは埋却地が不足しているのであれば農場内に埋却すべきであると言えます。鶏舎を壊し、基礎を破壊し掘り進めるというのも良いでしょう。 それは困るのであれば熱心に土地を探すと思います。 それができないのであれば借地を探し近隣との関係改善を作るはずです。 でもそれは手間であるから、二束三文の地を買う方が良いというところになるのかもしれません。 養鶏は規模拡大が進んだ産業です。 お金があればだれでも拡大ができますので、拡大した農場は信用された農場というわけではありません。 そのような農場でも100万羽規模で発生したというところもありますし、数十万羽規模では2年連続発生という農場もあります。 だから分割管理を推奨しているところもあるのですが、これも大金がかかり皆さん全てがクリアできるものではないでしょう。 そしてコストを削減した政策から見ても逆を行く政策でもあり今以上の維持費、購入費用がかかり100万羽規模農場がこれを採用しても採算悪化は避けられません。 でも土地が用意できないのであればこれを行うのも選択肢になります。 このように自身の財布事情で考えると、無理な物はできないという結論に至り最終的には国が、県がという責任転嫁の話になってしまいます。 繰り返しますが、土地の確保は養鶏家側の義務です。 でもその方法は、購入以外にもあるというところまで知っているでしょうか。 金で解決といった無駄を買うという意識では、近隣関係悪化もあるでしょうし、再開時いい顔をされないことは目に見えています。 土地の確保はとても大変なことです。 まとまった地を見つけること自体奇跡に近いものと言えます。 そして近隣との関係を薄くしていたという農場もあるでしょう。 そういう農場ほど臭いから迷惑、においや羽の飛散、ハエが迷惑と煙たがれるような農場もあります。 そんな状況では近隣に埋却地を探すということも困難でしょう。 近隣に対し理解を求めるという農場もあるでしょうが、恐らく難しく看板が掲げられて「養鶏場反対」「処理場反対」「埋却地反対」と言われるでしょう。 それを強行に推し進めた農場は残念ながら近隣との関係は今より良くなることは期待できません。 それでも理解を求めるはどういう方法なのか。 個人的には関心はあります。 養鶏は大規模化し個別の販路を見つけるような大手と遜色ない時代になりました。 だからうちは偉いのだ、だからそんな苦労すら知らない近隣とは仲良くなれるわけがないという認識では、この先も些細なことで揉めることになるでしょう。 いつもお話ししていますが、養鶏は近隣との関係が悪化した場合は高確率で更なる悪化に至ると感じます。 例外はなく、現状維持できていれば大したものと感じます。 だから京都府のような事例、栃木県のような事例が報道されます。それ以外にも地方紙レベルのいざこざはあると感じます。 今年の鳥インフルエンザはどうなるのかは誰にもわかりません。 昨年の被害のように流行が終わる時、大変なものであったと振り返ることができます。 でもそんな悠長なことを言っていては経営している側から見ても少し残念なことに思います。 だからこそ、今から農場に入れないという覚悟と、そのための方策を検討し秋から実行に移るのです。 交差汚染を知り交差汚染とは何かと考えることも大事でしょう。 先行く農場は既に勉強を終えて実行に移ります。 でも多くの農場はまだ季節ではないという意識が多いのかもしれません。 でも発生の話題が聞くようになった昨年は広い範囲に急激に広がりました。 そこから手を打っても回避できないという事例があったのかもしれませんし、その方法が構築できずとりあえず石灰散布程度だったのかもしれません。 人の意識とその方策の共有する組織と覚悟、今年も被害がない農場のはずと漠然とした意識でとりあえず迎える10月を過ごしてみるのでしょうか。 先行く農場は出来る方法を既に入手しているようです。