2月に入り、鳥インフルエンザは小康状態が続いています。
1月の鳥インフルエンザ発生は全国で34事例となり、被害が大きい令和4年の19事例と比較しても約2倍の発生という傾向がありました。
農林水産省鳥インフルエンザ情報では、1月の発生を大流行時と比較した図を掲載し今年1月は普段とは異なる時期であることを示しています。
殺処分数も深刻で本年1月は650万羽、大流行の令和4年463万羽、令和2年は149万羽であったとしています。
ただシーズンの処分数は現時点本年934万羽と歴代3位という深刻な状況です。
令和4年度は1771万羽、令和2年度は987万羽、本年は934万羽となり令和偶数年は深刻になる傾向は続いています。
少し分解してみますと、本年1月の発生事例は34事例ですが、内訳は愛知県13事例、千葉県14事例(関連農場2農場あり)、岩手県5例、宮崎・鹿児島県各1事例となります。
では大流行の令和4年1月はどうでしょうか。
令和4年1月は19事例で、内訳は千葉県は4事例、群馬県は3事例、新潟・広島・滋賀県は各2事例、福岡・茨城・宮崎・大分(関連農場2農場あり)・埼玉・宮城県各1事例です。
全国広い範囲で発生していることがわかります。
しかし、今年は連続発生地域が顕著に表れ、千葉県は14事例(令和4年比較で3倍)、愛知県13事例(令和4年は0件)と過去にない数になります。
このため狭い地域での発生が連続していることは、いかに殺処分数を増やし、地域の養鶏産業が甚大な被害が発生していることがわかります。
防疫措置にあたる人員も疲弊しており、発生農場の全処分の是非についても聞かれますが、根本は農場に部外者入れず管理できて、万一の場合でも最小限にとどめる管理(分割管理)も検討する必要があります。
弊所の調査でも、被害が発生した農場の多くは複数建築を採用しており、1農場6棟、9棟と分散しています。
そして、風向きで風下に近い鶏舎から発生しているとは限らないという傾向もあります。
そして被害鶏舎の両隣やそれ以外の鶏舎では斃死の数の急上昇は見られず、該当鶏舎に集中している傾向が見られます。
皆さんの農場に置き換えるならば、北風が多く吹いているので、風下北側の風を多く受ける鶏舎が被害にあうはずという論理ではないのです。
多くは一番風を受ける側の鶏舎ではなく、その隣、又はさらに隣と離れており、一見風の流れが悪い鶏舎からの被害を受けたという声が多いという傾向もあります。
ということは、農場は風下にあったという事実は正しいのですが、浮遊したウイルスが一番近い鶏舎に侵入し被害が発生するというわけではなく、むしろその隣やさらに隣といった離れている鶏舎であり、
良く見るとその鶏舎は例えば農場特有の気管支炎が良く発生する鶏舎であるとか、強制換羽を行うと再立ち上げの時成績が芳しくない傾向がある等、ワクモが良く発生して殺虫しているものの他の鶏舎より再発度が高く成績も悪く、食下量も低いという傾向があるといった何らかのトラブルがある鶏舎で発生したという声もあります。
また立ち上がりの成鶏若鶏で発生したという農場もあり、鶏のコンディション(産卵ストレスを感じやすい日齢)による影響を推測する事例もありますし、立ち上がりだからこそ管理者やその統括が頻繁に出入りしていることで、人による遮断不足が生じたと推測した農場もあります。
つまり、被害が発生する農場にはウイルスが侵入したから被害が発生するという思考もありますが、もう少し深堀していくと、その根底には農場特有の鶏病を抱えやすい鶏舎があったり、出入りすることのリスクを想定できず、目先のことだけを考え結果人的被害ではないかと想像した農場もありました。
ということは、鳥インフルエンザウイルスは発生したエリアには相応に飛んでいて風に流れ、千葉の事例のように広がるということもあるでしょうが、今回も発生農場から約1キロ先の風下農場は発生したという事例もあれば、僅か500メートル離れた別会社の農場では被害はないという実情もありますから、飛来しても直ちに異常な斃死が発生するとは考えづらく、むしろ風下の農場ではどのような管理をされ、鶏舎特有又は農場特有の問題点があり、その問題の鶏舎から発生したのではないかという視点も必要になりそうです。
でも国の調査からはそのような視点調査はないように見えます。
確かに侵入経路を探すなら、風もあるでしょうが、王道の鶏舎でのネズミ、猫等動物侵入、野鳥の飛来と糞といったわかりやすいものを探して媒介者だからとまとめることもあるでしょう。
でも健康に飼育されている鶏であれば、人と同じくワクチンを定期的に接種しているはずで、ND等といった定番ワクチンは成鶏期でも必須です。
それで防げるという意味ではありませんが、健康な体を維持できる仕組みがあることで鶏も相応の免疫力があり、浮遊したウイルスがあってもすぐに発生至るわけではないと広く考える必要があります。
でも折からのコスト高から定期接種を見直しして簡略化しているところもあると聞きます。
それが悪いとは言いませんが、定期発注して業者が納品したら期限切れワクチンがゴロゴロありますけどという話も聞いたことがあります。
人のインフルエンザも猛威を振るうと報道も良く見ますが、日本中咳き込み、企業活動に影響を及ぼすというほどではありません。
確かに教育期間は学級閉鎖も聞きますが、隣の学校ではそのような状況でもないということです。
そしてすべての人がワクチンを接種しているわけではなく、健康であっても感染した人もいれば、そうでなく感染しない人もいて、体調管理が難しい人が感染しているわけでもなく、マスクをしている人ほど健康維持を大事に考えている人もいれば、マスクせず同僚と狭い控室で談笑し感染が広がるということもあるでしょう。
つまりは、インフルエンザだから全てが感染するという思考では、あらゆる方法に対し防止策を講じる必要がありその結果、効果を実感できず意味がない、仕方ない、運だけの話という思考になり、できうる対策を見つける事ができず発生すると言うことにもなりかねません。
そして抽象的に、ネズミがいる鶏舎と指摘されているだから殺鼠剤を設置する、
金網が壊れていると指摘される、だから金網を月1回補修する、
農場周辺に野鳥がいると指摘されるだから、糞の飛来が心配だから2週間に1回の消石灰を散布する。
といったどの農場でもあり得るまとめになり、対策は消石灰で十分、それなりの足ふみ消毒槽を設置すればよい、手指消毒しているシステムを作るといった見える部分の対策をしてできうる方法を全て取っていると考えてしまいます。
でもそれだけでは根本になっているのか検証する人はいません。
それは、よくやっていると考えている人たちが検証してしまうので「十分である、後は運次第である」とまとめるはずです。
でも、よくお話ししていますが「手指消毒は忘れることが多い」「外部者(特に改築、新築中の工事業者の配管確認のために稼働鶏舎に招き入れる際の遮断方法の課題)の侵入」「管理側の遮断意識の低下(面倒だから・数メートル先の操作盤を触るだけだから足や手指の消毒等の簡略化」によるその時はそんなことで大ごとになるとは考えていないが結果思い当たる節があるという事例もあります。
人は汚染源であるとお話ししています。
特に外部者(この場合は自社従業員であっても農場所属でない人すべてを指します)には汚染リスクは高く、招き入れること自体が異常と捉えるべきです。
だって農場所属の人は立ち入る前の段階でどこにいたのでしょうか、自社堆肥場ですか、別の農場ですか、まさか買い物に行った服で農場に来ていませんよね。
この視点です。
でもよく聞く例として、シャワーリングしているから大丈夫と言います。
その方法を伺うと、シャワーして鶏舎用のツナギを着用させているとよく聞きます。
でもそのツナギの下の服は農場のために用意した服ではありません。
通勤の服ではないですが、他の農場で作業したときの服の上にツナギになるというものです。
シャワーリングして髪の毛の汚れを落とし、肌に付着した汚れを落としたのに、
下着は農場で作業したものそのまま着用、服も同じもので良い。
でも地肌は清潔。
でもツナギで防御できると言います。
恐らく自社一貫経営の方であれば本当に?となるでしょう。
育すうのような防御を最大限にするような農場で、そんなことをさせるところはあるでしょうか。
複数棟であれば、若い日齢の鶏舎を作業して、日齢が上がる鶏舎に向けて作業させる。
逆の作業は絶対にさせない又はそれぞれ選任を入れて掛け持ちさせないという所が多いはずです。
もし複数鶏舎を見るならば、日齢が進んだ鶏舎から若い日齢に戻るならもう一度シャワーリングして下着から全て交換させているはずです。
ツナギだけで大丈夫という怪しい遮断方法を採用していません。
それだけ日齢が小さいからこそ温度・湿度管理も大事でしょうが、防疫も大事にしているのです。
むしろ、外部者(この場合は農場に立ち入る第三者を言います)の方が、万一があると責任問題もあるからこそ万全に支度をして訪問しており、遮断意識は高めであることが多いはずです。
でも自社従事者は衛生的であるという思い込みによる隙を作ることもあります。(これもブログでお話ししています)
今回の狭い地域でも連続発生は1日以降新規発生は止まりました。
千葉県ではすべての被害農場での殺処分は終わりました。
報道では、この作業に従事した県職員の方に2000円に満たない特別手当を支給するそうです。
もしかすると、他県の事例のように作業をはしごせざるを得ないということもあったでしょうから積上げればそれなりになるかもしれませんが、
そんな手当いらないからこの業務を免除してくれという声もあるでしょう。
ごく一部の方は気落ちした人もいるかもしれません。
でもこのような作業をしていただくことで被害を最小化していただくことに大きな効果をもたらしていただいていることは間違いはありません。
現実的に全処分は原則であり、多くの国は殺処分を前提にしていることで、日本だけ一部だけ、被害鶏舎だけということはできません。
ですから、本当にありがたいことです。
筆者も知っていますが本当に捕鳥する、殺仕事は大変です。
ボリスのように暴れてツメを立ててゴム手が破れのかという力がある鶏もいるでしょうし、ジュリアのように比較的穏やかな鶏で補鳥が容易な鶏もいます。
鶏舎内は鶏の悲鳴と、バケツに入れて暴れる音、容器に入れて暗闇になり、静かになりガスを充てんして開けた時の元気だった鶏が生き物ではなく物に見える図等。
やむを得ないことですが、本当に心が折れるとお察しします。
農場側は、やれ と殺が遅い、方法が悪い、そもそも全処分は悪いという当てつけとは言いませんが、今の現状を理解したいと思う余裕はないでしょう。
野鳥がばらまいているという思考も大事ですが、でもそれでは防ぐ手立てはありません。
少し考えてみてください。
1羽1800円はしたであろう大びなが8羽袋に入れてガスを充てんして物に変化した時約15000円が物に変わります。
それが、1万羽なら、10万羽なら、50万羽なら、被害額はいくらになるのでしょうか。
そしてあと何日卵を生んでくれて収入として貢献してくれたのでしょうか。
それを物に変換し埋却し処分数を通知された時、その甚大さが初めてわかると思います。
ですから、入れないための仕組み(フィルター設置や消毒液の散布、石灰の散布)も大事ですし、鶏舎に入れるリスクを考えるからこそ人の意識と遮断方法の再点検も必要です。
そして、病弱とは言いませんが問題がある鶏舎があるならばそこの対策に本気で取り組むという考えも必要です。
どれもインフル対策とは無縁に見えるでしょう。
でも鳥インフルエンザはどのように侵入し被害を生むのか。
そのメカニズムは十分に明らかになってはいませんが、ウイルス1個が鶏体内に入り分裂して致死に至るという話ではなく、相応に体内に入り分裂して致死に至るという考えが浸透しているようです。
でも侵入経路は不明であるとよく言われます。
だから農林水産省は「入気口にフィルター設置の推奨」「加湿器等水分を散布してウイルス浮遊を阻止する」
「入気口に消毒剤を注入して入気からの侵入防止措置」等を勧めています。
農場敷地の消石灰散布だけではなく、空気中の対策も大事であることを推奨しており、例年と同じ石灰消毒で対応するだけではまだ不安要素があるという農場側の思考力もアップデートする必要がありそうです。
そして、人の意識です。
そして問題のある鶏舎は病気を呼びやすいという思考です。
もう一度再確認してみてください。
たかが気管支炎、たかがワクモ、たかがちょっとの出入りの作業簡略化、
たかが作業効率化を上げて作業はしごさせて複数の農場に出入りさせる。
その「たかが」
本当に「たかが」で片付けることができるほど容易なものなのでしょうか。
2月は1月より被害件数は少ない傾向があると言います。渡り鳥はもう少しでそれぞれの国戻り平穏も戻ります。
もう少し、あと少しの後悔のない飼養管理をお続けください。