nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

肉養鶏農場で鳥インフルエンザの疑い 農場の対策を考えて見ませんか

岩手県によれば11日、久慈市の肉養鶏場(45000羽飼養)において簡易検査の結果高病原性鳥インフルエンザの疑いがあると発表しました。
現在、県家畜保健衛生所で検査を進めており早いうちに結果が出るものと見られ、その後正式発表される見込みです。
また確定次第殺処分が開始されます。


報道によれば、10日に農場で76羽の斃死、11日に236羽の斃死があると通報を受け簡易検査を行った結果、検体13羽中12羽から鳥インフルエンザ陽性と判定し、確定検査へと進めています。
県は周辺の養鶏場の状況も調べており、拡大しないよう対応していくとしています。


確定した場合岩手県での鳥インフルエンザは初めてなり、地域を問わず発生している状況になります。


令和3年11月から本日までの被害は107万羽(今回の農場も含む)となり、昨年の大流行とは異なりますが、依然多い発生になっています。
また、東北地方での発生が例年と異なり、渡り鳥等の飛来に変化があるのかもしれません。
青森県(12月肉養鶏)、秋田県(11月採卵鶏)、岩手県(今回肉養鶏(見込み))となります。


千葉県では大規模農場での被害は現在までなく八街市(1月肉養鶏)、匝瑳市(1月あひる)、市川市(12月合鴨)となり主要鶏卵生産地での被害はありません。


しかし、平成に入ってからは平成15年にH5N1亜型の西日本でおよそ90年ぶりの国内発生から始まり、17年のH5N2亜型の関東地方、18年のH5N1亜型の九州地方、20年のH7N6亜型の中部地方、26年のH5N8亜型の九州、西日本地域、28年のH5N6亜型の東北地方から関東信越地域、九州地方、29年のH5N6亜型の四国地方と続き、令和に入り昨年の大流行と発生が散発とはいえ多く見られるようになりました。

また農場従事者10名程度の感染も確認されており、鳥インフルエンザは周辺国の影響を受けながら確実に鶏のみならず人へも被害を受ける伝染病となりました。


確実に防ぐことは困難とも言われますが、被害を出さないためにも出来ること、守ることを今一度再確認していただきたいと思います。


少しづつ、鳥インフルエンザ報道に慣れを感じてしまう方もいるかもしれません。

その要因に昨年の大流行とは違い散発発生だからという声もあります。
ですが、本来は散発発生がこの伝染病の特徴です。

県内で複数発生したり、同一地域で発生したりする昨年は明らかに異常事態のことで、これが標準ではありません。
ですから、昨年と違うから関心が薄れるではとても危険なことです。平成時代は発生を見聞きしただけでも防疫意識が高くなっていたと思います。


農場施設も近代化しました。

ウインドレス鶏舎へと変わり、人の出入りも厳しくなり、古い昭和時代の開放鶏舎の金網破れが主因とは違うのでしょうが、ウインドレスでも普通に被害にあう光景を見る時代になっています。
ウインドレス鶏舎であっても人の出入り、消毒の不備、ねずみ等小中動物の侵入対策がおろそかになれば、施設は新しくても昭和の開放鶏舎と何ら変わりません。


確かに古い鶏舎は侵入が容易です。

ですから管理していた先人たちは侵入は防げなくても、侵入後の対策は強化していました。

殺鼠作業、集糞作業、不要な物を置かないこと等です。


良く見れば、施設が狭いからという理由もありましょうが、整理整頓も今よりできていたはずです。
つまり、媒介する動物が身を隠す場所を出来るだけなくしていて、殺鼠作業も確実に行い、今と違い垂木や筋交いを多用していない構造でもあり、ねずみコントロールしやすい環境もありました。
中動物が侵入すれば捕獲機を使用し捕まえていました。
細かいところまで目が行き届いたというのが実情でしょう。


では今は?
と言われれば、最低限の管理で機械が環境を作りそれに必要なエサを配餌したりと、自動化したことで人の作業は本来は楽になりました。


ですが、楽になった時間を何に使うのか。


人は時間を持て余すとき、大抵は無駄なことをするとも言います。


仕事だからゲーム、スマホ動画鑑賞とは言いませんが、その仕事に意味があるのかという作業も散見されます。


本当に大事な仕事とは何でしょうか。


殺鼠作業は利益に貢献しないことでしょうか。

農場内を歩かせて見つける時間も無駄なことでしょうか。
でも目的意識がなければ先ほどのように、これも無駄な時間で無意味です。
ただ意味もなく薬剤もまき散らすことも意味はありません。

だってねずみはそこを通らず鶏の餌をたべるのですから。


歩くだけも意味はありません。

健康のために歩くことはいいことですが時給を支払い歩かせることに意味はありません。それは仕事が終われば済むことです。


では?
ここに気づきを見いだせない農場は、この先も進化はしません。
このように人の意識に頼らなければ農場は動き続けることはできません。


人がいないから、お金がないから、めんどくさいから。
そんな、ないないが理由では病気を入れないという意識は生まれません。


気になれば、農林水産省が公表している鳥インフルエンザ発生農場の疫学調査概要を見ると、自農場に当てはめてみると気づく何かを得るはずです。
皆さん農場も多くはうちもあることだと見ることでしょう。


でも指摘されていると言うことは、認識が甘いということでもあります。
考えや実行がまだ改善の余地があるということでもあります。


課題や問題点を自ら公表する農場はありません。
ですから、課題を見つけることができない農場は、問題と認識できないのです。
問題ではないから、惰性で管理を続ける。


そしてある日被害にあう。

という流れもあるのではないでしょうか。


ですが、鳥インフルエンザの被害にあう農場全てに100%の非があるとは言えません。
それは、先ほどのように問題を見つける力、課題を解決する力が万全ではなかったことも要因にあると思います。


ですが、それは普通のどの農場でもある日常でもあります。


被害にあうのか、運よく合わずに済んだのか。
そのわずかの差が大きく分かれただけとも思います。


この先も油断できない時期が続きます。
皆さんの農場を今一度確認されはいかがでしょうか。