nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

ビークトリミング 養鶏の未来

養鶏に携る方にとって検討している課題の一つと思います「ビークトリミング」ですが、作業者が少なくなり外部委託をしている方も多いのが現状で、近年は「レーザーでのビークトリミング」が少しづつ普及していると感じます。


今回は、ビークトリミングについて考えて見ます。


まず、なぜビークトリミングするのでしょうか。簡単に説明しますと、
鶏がゲージ等に群で飼養されていると、鶏が尻近辺をつつき、いわゆる「尻つつき」をして、出血させさらにつつくことで、腸などを引き出だし死亡に至ることから、嘴を切ることでそのようなことを防ぐ目的で行うものです。


しかし、鶏種が改良されており、育成中にこのような行為を行う鶏は少なく最近では餌の無駄を省く目的で行うことが一般的でしょう。
無駄とは、先端がとがる嘴で餌を食べるとうまく口に入れられずむしろ、こぼしてしまうことから先端を平たくして、うまく口に入れることが出来るようにする経済的な目的が主な理由といえるのです。


さて、そのビークトリミングの方法ですが、
嘴を先端から数センチ程度垂直に切り落とし上嘴と下嘴を揃えます。この時、上嘴を長く切り残してはいけません。


人間が、熱で嘴を焼き切る方法が主流で、600℃程度の加熱した刃で焼き切ります。(一般的にチェリーレッドの刃色といわれ、色で温度の目安にするのです)
刃が嘴を切り落とした際に数秒(一呼吸程度)刃の熱で止血をしますが、
低い温度で焼き切りますと、出血が止まらず成長不良となる原因を作ります。逆に高すぎる場合は、嘴が火ぶくれた様なこぶを作り餌を食べることが上手に出来ずやはり成長不良になります。このためにも温度調整は必要なのです。

人によりますが、切り落とす際の手の感覚で、温度が高いのか低すぎるのかがわかります。
ですので、作業者は常に切り落とす嘴の状況と過熱している羽の色で温度を確認しながら作業することが重要です。


ですが、この感覚を身につけるには慎重さと几帳面でないと会得できないことから、近年は従業員に教える養鶏家は少なくその技術は養鶏場から姿を消しつつあるように感じます。

 

代わりに「レーザービークトリミング」が普及しつつあり、初生雛の時にくちばしの先端にレーザー照射することで、ある程度の日齢で嘴の先端が取れていくもので、農場での手間がかからずまた、特別なことをしないため普及しつつあります。


これもまだ課題が残っていると言われます。餌付け開始から数日後ある程度の数死亡が見られるというもので、レーザービークトリミングが原因とされています。ですので、手間はかからないがヒヨコを餌付けて最初の4~5日間の死亡数(初期落ち)は人による作業と変わらない程度の死亡が発生する傾向が多くまた、レーザーの場合1羽数円でしょうが、切るための手間賃を支払います。(羽数が多いので結果手間賃が高額になり魅力を感じないことが原因とされます)

切り口は人による作業以上の出来で好評な場合もあれば、捕定の仕方が悪く、下嘴が短く上嘴が長い斜め切りとなるような事例もあります。


人によりますが、人で切ったほうがコストが低く、初期落ちに変わりがないことで導入をしないとする方も多いのです。
他方、ビークトリミングは不要であると考える養鶏家もいて今後アニマルウェルフェアの考え方次第でしょうが、EUのように実施しないということもあるかもしれません。

 

さて、ビークトリミングを自社で行いたいという養鶏家もいます。これは、外部委託先の人員が少ないため短期間で作業を終えることが出来ない又は人手がないことで廃業する等環境が変化していることがあげられます。


また、コスト削減として自社で行うことで外注費を節減できる狙いがあるようで導入する方もいるのです。
しかし、先ほど述べましたがその技術は高いもので、では明日からやりなさいとは言えないのです。


切り口の出来栄えでその鶏の将来が決まるとはいいませんが、鶏が小さくなって鶏卵を生産しないことや、死亡してしまう等経済性にマイナス効果があるため、よほどの裕福な養鶏家でない場合以外、一度やめた技術を復活することはコスト削減につながらず逆の展開に至ることも珍しくありません。


また、この技術を教える方もいないというのも現実あります。このため高度な技術をもつ社員を育成することは大変な苦労があるのです。


ビークトリミングをテーマにお話をしましたが、大事なのは一度失った技術は再度社内に持ち帰れないということです。


真似事はできますが、同じコピーすらできないと断言できます。
それは、教える者が十分な指導力を持っていないことやそもそも技術を有していないことで、真似事はできるがコピーはできないのです。

人材がいないということで、外国人技能実習生に頼るビークトリミングする会社もありましょうが、予後の良しあしはその時に決まるわけでなく、あと4カ月先等で明らかになります。

切ることは誰でもできますが、その切ることに技術があることを理解してい頂きたいと思います。

ビークトリミングをテーマにしてお話をしましたが、近年の養鶏家の一部は、コストに趣を置いてしまうことから、目先のコストは改善できても少しづづ生産性等違う角度から減収になるような問題が発生しているように感じます。

いずれも、人材の理解度が低いことが原因であることが多いように感じます。


本当に将来を心配される養鶏家は4月からの外国人技能実習生受け入れ拡大に期待をしていません。
今の人材を最大限発揮できるように教育に投資をしています。そこの重要性を見いだせないと少しづつ変化に対応できず競争の波にのまれてしまうかもしれません。

 

軽作業が多い畜産業と言われますが、内容を見ますと必ずしもそうではないのです。
その技術を失ったとき、スポットで入る人で用が足りるとは言えない現実が目の前にあるのです。

GAPの認知度と課題 データから見る実情

日本政策金融公庫農林水産事業は、平成30 年1月に実施した「平成29 年 下半期食品産業動向調査」において、食品関係企業に対してGAP認証を受けた農場などで 生産された農産物の取扱い状況を調査しました。


その結果、食品関連企業の約5割が「GAPを知らない」と回答しました。
今回のデータは平成30年3月28日に発表されたものです。


また、消費者側のアンケートを農林水産省が平成30年3月30日 農林水産省生産局農業環境対策課 がまとめた資料も併せて検討してみます。(アンケート調査時期:平成 30年2月8日から2月12日調査地域:全国 インターネットで回答)


1、消費者からみたGAPの認知度と考え方及び予想される消費行動
①消費者のGAPの認知度

知らなかった」と回答した割合が 72.7%と最も高い結果となり、

次いで、「名前を聞いたことはあるが、内容までは知らなかった」と回答した割合は 22.0%、
「知っていた」と回答した割合は 5.4%となっています。


GAP」について認知している人の割合は合計 27.4%となっています。

 

②企業に求めるGAPの取り組み姿勢
「取組が可能な農業者は取り組む必要がある」と回答した割合は 62.5%、

「すべての農業者が取り組む必要がある」と回答した割合は 30.0%となっています。


③国内の食品関係企業(食品製造・卸売・小売・外食等)が、農畜産物の取引にあたって、GAP認証を取引の要件としたり優先的に取引することについて評価しますか。「評価する」と回答した割合は 56.4%、
「わからない、どちらともいえない」と回答した割合は38.3% でした。


評価する方が多いのですが、分からないという決めきれない方もいて、GAPを知らない方が多いことから評価する決め手に欠けているといえます。
ただ、内容は分からなくとも何となく良いものは分かるため評価しないという回答をする方はいないのだと思われます。

 

では、評価すると答えた方のその理由を尋ねると、
「企業の社会的責任だと思うから」と回答した割合が 47.9%、
「信頼できる企業だと思うから」と回答した割合が 45.8%となっています。


消費者は取り組むことを当然と考えており、取り組むことで信頼を得ることが出来ると認識しています。

 

逆にGAP認証を「評価しない」と回答した理由をみると、
あまり必要性を感じないから」と回答した割合が 42.1%と最も高く、
認証の有無よりも価格や鮮度、味などを重視するから」と回答した割合は 38.3%、
「認証がなくても安全・安心な農畜産物が手に入れられるから」と回答した割合は 13.1%となっています。

 

消費者は、GAPに取り組む必要があり食品関係企業が優先して取り組むことに理解を示す方が多く、そして信頼できる生産元と回答しており、積極的に商品を購入してくれそうな回答ですが、購入する条件について質問すると以下の通りの状況でした。
同程度の価格であれば購入したい」と回答した割合は 71.8%、
「割高になっても、購入したい」と回答した割合は 18.5%となっています。


では、購入したいと思わない理由を尋ねると、
GAP認証を「評価しない」と回答した理由をみると、
「あまり必要性を感じないから」
「認証の有無よりも価格や鮮度、味などを重視するから」
「認証がなくても安全・安心な農畜産物が手に入れられるから」
という回答のように、GAPの取り組み理解がまだ十分でないことから、割高な商品では購入を躊躇してしまう現実があります。


現在の価格と同程度であれば手に取ることに抵抗はないことから、「認証がなくても安全・安心な農畜産物が手に入れられるから」
の回答のようにそもそも現在の品質に不安を感じていないことから付加価値を見いだすことが出来ていないことが原因と推察されます。

 

消費者は、GAPを知っている方5.4%ですが、GAPに取り組む必要があると考えています。(92%の方は必要としています)
また、商品を食品関係企業が取引要件にしたり優先して取り組むことに50%超える方は賛成しており消費者にはGAPを取り入れた製品にある程度期待していることをうかがわせています。


しかし、商品価格は割高になることに抵抗を示しており、その理由として「認証なくても安全安心な製品を購入できるから」と回答しており認証があることによる付加価値分の支払いに違和感があるという考えです。


このことから、認証のない商品と差別するすることに要したコストは認証を取得した企業が負うことが望ましいといえます。つまり認証取得がある製品が認証ない商品と同額であれば「認証品」を購入するといえます。
商品へのコスト転嫁は現在ではできないと考えられます。


では食品関係企業はGAP認証を受けた農場などで 生産された農産物の取扱い状況等をどう見ているのでしょう。

 

2、食品関係企業からみたGAPの認知度と考え方及び予想される行動
食品関連企業の約5割が「GAPを知らない」と回答
現在、食品関連企業はGAPはなにか認識されておらず認証品のあるなしによる差別を考えていないといえます。


GAP関連農産物の取扱いの拡大に向けて、まずは食品関連企業に対してGAP認証制度とそのメリットを周知し、GAPの認知度を高めることが重要であると考えられます。と報告しています。


②GAP農産物の取り扱うことについて
GAP関連農産物を「取扱う予定はない (28.6%)」と回答し、
「取扱っている(6.4%)」、
「今後取扱う予定である(14.5%)」を合わせての 20.9%を上回り、
GAP認証を認知していてもGAP関連農産物の取扱いには積極的 ではないとの考えが優勢であることがうかがえます。
業種別に見ると、小売業のみ、GAP関連農産物を「取扱っている」または「今後取扱う 予定」との回答が「取扱う予定はない」を上回り、
小売業は他業種に比べGAP関連農産物 を積極的に取扱う姿勢がうかがえます。


では、GAP関連農産物を扱う予定がないと回答した企業はどのような理由なのでしょうか。
「取扱う予定はない」と回答した食品関連企業(593 社)を対象に、GAP関連農産物を取扱うえでの課題を聞いたところ、
現在の流通において、必要性を感じない42.3%)が最も多く、
次いで「コストの増加が見込まれる41.1%)」、
GAPの概念が消費者に浸透していない(37.8%)」、
GAP認証を取得した生産者が少ない(35.2%)」
の順となりました。

これらの結果から、GAP関連農産物の取扱いを拡大させるためには、食品関連企業に対しGAP関連農産物を取扱うことで得られるメリットを正しく周知していくことが重要と言えそうです。
また、GAP関連農産物の取扱いに伴う食品関連企業の仕入れコストの増化が見込まれることや、消費者のGAPに対する認知不足、GAP認証取得の生産者の不足 など、今後解決していかなければならない課題が複数存在することがわかりました。
(報告書から引用)

 

食品関係企業と消費者はGAPが理解されていないことにより「必要性を感じていない」ことで消費者は現状の価格より高いことに拒絶感があり、企業もコスト増加が見込まれているが転嫁しにくいと考えていることが推察されます。
不必要な費用負担を望んでいないのが現状となっています。
両者ともGAPの必要性はある程度理解を示していますが十分に理解していただくよう引き続き説明を続けていくことが重要なのでしょう。

 

しかし、一部大手の販売店は自社ブランドにこの認証制度を取り入れることを表明し実行しています。

2020年オリパラに向けての対応もありましょうが、自社製品の付加価値化を意識した対策でもあるように感じます。

製品の安全と労働者の安全、地球環境の保護と、GAPの基本部分をアピールできるため他社製品との差別化ができると判断されてると推察されます。

今後、販売業界でも差別化(商品の付加価値化を前面に出すことのPRで自社と自社ブランドの価値向上)する、しない(消費者への訴求力がないことで特に対応しない)がさらにはっきりと進むのでしょう。

その時、消費者は何を基準に選んでいくのでしょうか。


コスト増加がない認証製品が流通できるよう、どこかが努力(企業または生産者がコストを吸収し価格に転嫁しない)してもらうことで認証品が流通でき少しづつ流通・消費量が増えることが出来るでしょう。
それは現実的かは分かりません。

 

しかし、それ以前の問題で本当にコストが増大するのでしょうか。

私が見る限り、確かに構築・認証審査・維持更新には費用が掛かります。

かかった分転嫁したいのはそうですが、転嫁しなければならないほどの金額でないとも感じます。ですから、普通の製品と認証がある製品でどちらが販売店が好むのか?

という基準で生産することでいずれお客様は認証品を選んでいただけることで結果、認証して良かったと考える程度で良いのではないでしょうか。

 

認証農場次第でしょうが、差別するためのツールでこの認証で付加価値つけて、値上げて販売することをねらう方々にはまだ早い取り組みでしょう。(消費者は値上げを希望していません)

 

認知度がなくコストが上昇するだけで認証品とそうでない品の差がはっきりしない場合どこもコストアップには理解を示すことはできないのです。

現在の安全安心な製品で見える化されているといわれているだけでは納得できていないのでしょう。


購入者(消費者・食品関係企業とも)は意味のない不必要な出費を好んでいないのです。


生産者は本認証により増収増益につながると考えるより、認証のない製品と取引値は同じであってもシェアを広げることで、結果増収増益に結び付くという考えが正解なのかもしれません。


それでいいとは言えませんので、結局はGAPの理解に国や地方自治体が広報活動することで広く浸透することで製品の価値を見つける知識を植えることが近道なのです。


東京オリンピックパラリンピック選定食材に向けての認証取得ブームはまもなく終了します。真のGAPの存在価値はそのあとが本番です。


ゆくゆくは国内消費では不安になる農畜産物。輸出も視野に入れなければならないためにもGAPは必要不可欠な制度です。

ですから、他人事でなく生産者や購入者の方々ともに考えていくのが数年先・10年先に未来に大きな変革をもたらすことでしょう。

農業景況調査から見た採卵鶏と畜産業

日本政策金融公庫が2019年3月18日に公表した農業景況調査(1月調査)が発表されました。
この調査は公庫が長期・低利の「スーパーL資金」の融資を行っている認定農業者の方々に対し、毎年近況を調査し、その結果を動向指数(DI)として公表しています。(年2回程度)
今回はこの指数からみた採卵鶏の近況と畜産分野について現場の動向を含めて考えてみます。

1、景気が良いのか
畜産業の1月調査時点での回答は以下の通りでした。
養豚、採卵鶏などの業種を中心に販売単価が大幅に低下(販売単価 DI:24.3→ 2.1)し、さらに、生産コストの上昇(生産コスト DI:▲25.2→▲37.1)も加わり、
収支 (収支 DI:14.7→▲20.1)・資金繰り(資金繰り DI:15.5→▲4.7)
が悪化したことが景 況 DI の押下げ要因。景気が良いかという指数は(景況DI:▲72.9(採卵鶏) 昨年は▲61.2)でした。(農業景況調査から引用したデータ)


1月の採卵鶏農家の動きとして、1月鶏卵相場初市は東京M基準値は100円で低価格で始まりました。
当然基準値では取引されませんので(安値が引き取り指標となりますので実質94円)この価格では採算は合いません。
その後相場は急伸したこともあり1月の平均価格は121円となりました。1月最後の相場はM145円(45円高)で終了しました。
経営スタイルによりましょうが145円の相場で採算が合う方はほとんどいないはずです。このため農業景況調査のあった1月での評価はその通りであったといえます。

この結果を見れば分かりますが飼料代が売り上げから差し引ききれない赤字となり
生産コストが上昇(2019年1~3月の配合飼料引き渡し価格も昨年夏に比べて下がっていますが高い状況が続いています)し収支も悪化、結果資金繰りに心配が生ずるというスパイラルになったといえます。


鶏卵相場は昨年から価格低下が見られ春先は相場が安く先行きが危惧されており、生産量の多い東日本地域は供給過剰から相場安で、いわゆる西高東低相場でした。12月の最需要期も14年ぶりの低下市場であったことから本年1月の相場は大変不安であることが昨年から報じられていました。


参考までに2月最後の相場はM165円(20円高)で終了しています。まだ採算が合う養鶏家はまだ多くないといえますが、
一息付け始める相場でありました。しかし赤字は回収できるか微妙でしょう。3月は本日時点で170円(5円高)で横這いです。
もう一声ほしいところですが、需要が夏にかけて減退するといわれます。減羽が大きく進まない限り相場軟調も予測されますことから景気が良いと答えられる方は今後も大変少ないと思われます。
このことから、採卵鶏は今年度も厳しい展開になるのでないかと心配される方が多く結果として現れた指標と思われます。

 

2、人手不足(雇用環境)や設備投資について
畜産業の人手不足は引き続き深刻であることが報告されています。(雇用状況 DI:▲41.1採卵鶏)
直近2年のDI値からみれば横這いとも言えます。現場から見える状況として、日本人雇用にこだわらない経営者が多くなり外国人技能実習生を積極的に受け入れることで人手不足を補う行動が見られます。

このことから、本心は日本人雇用(安定した人員確保)を希望しているが人材が集まらないことが現実にあり、最低限の作業をするためにも外国人を雇い入れなければ成り立たないのが実情で今後もこの流れが続くと思われます。

また畜産業は業種によりますが、作業の外注化が進み多くに人手をかける作業が少なくなっているのも現実あります。このことから人手不足はその通りですが数値はあくまでも安定した人手がいないことを指していると推察されます。
養鶏(採卵鶏)の規模は年々大きくなっており飼養羽数が少ない養鶏家は経営を取りやめる方も続いています。(養鶏の70%は10万羽以上の飼養羽数がある方々の世界になりつつあります)


採卵鶏で設備投資を検討されている方は高鶏卵相場であった時期に比べて少なくなっています。(設備投資ありの比率:44.2 昨年は61.2)ここ4年では少ない値でした。

お金があればいくらでも設備更新や新築や改造をしたというのが本音でしょう。しかしすでに更新等を行った養鶏家も多く低鶏卵相場では積極的に行いたいとする方が少なくなるのも頷けます。

しかし設備スケジュールから低価格であっても行う養鶏家もいます。相場次第で売り上げが高低することから景気が良いと感じる方は心理的に見て少なくなるのではないでしょうか。

 

畜産業の2019年見込み(農業景況調査)では、養豚と養鶏は悪化するというデータが示されています。肉牛やブロイラーは改善が進むといわれており明暗が分かれる1年になると予測されます。


ブロイラーは昨年から相場安が進みましたが今年はやや改善しております。しかし生産量は依然多く本格的な回復までにはまだ時間がかかりそうです。


養豚は輸入による相場安が予測されており、長期化されなければと思います。国はTPPやEPAによる養豚の影響を2月に試算しており千葉県で10億円程度(以上と推定されていますが)で、全国ではさらに大きい金額を試算しており生産量が多い千葉県でもこのような試算があることから影響はある程度避けられないと思います。

また生産側としても相場以外にも豚コレラ発生による心理的不安や地域によりますが豚流行性下痢(PED)も発生していることから現金収入以外にも生体の出荷減少も予測され不安定な動向が続きそうです。


採卵鶏も生産過剰が続き、大産地(茨城や千葉)が餌付け数を少なくしていますが、他県では増羽が続いており結果生産過剰が解消されない構図が続いています。
TPPやEPAによる影響はほぼないと国・千葉県は試算していますから国内需要と供給に対応すれば改善が見込むことが出来ます。(千葉県試算では影響は最大0.6億円程度)


しかしながら、数年で解消することは困難と思われ長期化しないことを願うばかりです。生産過剰が解消されると同時に消費拡大に積極的に打って出なければ過剰の解消につながらないとも言えます。

農業景況調査から見える畜産業は他人事でなく、地域によっては大きく影響を受ける可能性を示す良い指標となっているのです。


次回はGAPの認知度や問題点・課題についてご報告いたします。

ベトナムで初めて生食用鶏卵の生産を開始 品質向上が世界から始まる

ベトナムで生食用鶏卵の生産を行うと報道がありました。1日当たりの生産量は1万個程度で、日本食レストラン、日系スーパー等に出荷されるといいます。


日本の輸出先では、最近ではアメリカへの鶏卵輸出や香港・シンガポール等が主流です。
日本の鶏卵はご存知の通り、生食が可能な位の衛生管理が行われていることで成り立っており日系スーパーやホテル等での引き合いがあるわけです。


しかし、鶏卵を生で食する国は多くなく、生で食べることに意義があるという考えもありますが、品質面で日本産鶏卵に信用があるというバロメーターになるのです。


さて、今回の報道で思うことは外国で生食用鶏卵の生産が開始されたことは、日本の衛生管理技術を取り入れることによって可能であるということです。

日本では当たり前の技術ですので、その技術は外国からみれば「価値」のある技術なのかもしれません。その昔日本の鶏卵も食中毒リスクがある鶏卵があり報道も盛んに行われていたことから、古い人によっては生で食することに抵抗を感じる方もいます。

 

最近の国内情報として、サルモネラ中毒(サルモネラO9群が検出)が平成29年9月山形県で発生しました。県内18の養鶏場の2養鶏場で(いわゆるS.Eが検出)検出され該当鶏群の廃用処分と清浄化対策が講じられました。卵か特定できませんが中毒者が発生しています。

 

加熱しないと食することに不安がある外国に、鶏卵が生食(半熟)できることが可能であるという「品質が高い」ことを国内外に示すことができます。
実際日本の鶏卵は「衛生基準が高く、サルモネラ等食中毒リスクが大変少ない鶏卵」といわれます。


ベトナムも将来日本と同じく輸出も可能になることでしょう。


鶏卵の輸出に積極的な日本ですが、少しづつ国際的にも変化が現れる時代に入るのかもしれません。


今は、輸出できることが普通と考えていても、外国は静かに衛生管理が向上することで「品質向上でき安全安心な鶏卵が生産でき輸出できます」と発信されることで、輸出の分野も競争になると思われます。


その時、他に何で勝負できるのか。国内消費の頭打ちで加工や輸出に挑む養鶏家も多い中、アリとキリギリスではないですが、輸出おう歌していて、冬の時代ではありませんが「激変が訪れた時にわが社は何が出来るか」と考え始めても遅いのかもしれません。


ただ、卵があればよい時代は終わり、付加価値を必要とする時代になりましたが、輸出も「ただ卵があればよい時代が終わる」のかもしれません。


常に一歩先を見据えていくことが国内消費対策をはじめ、海外輸出を目指す方々に何かを考えて頂くきっかけになればと思います。

養鶏の仕事 プロであるべき姿とは

まもなく4月。新卒採用者が入社する時期でもあります。研修の依頼が多くなる時期となり、多くの方とお会いするとても楽しみな春となりました。


最近思うのは、ご依頼いただく企業の多くは社員の定着化を求めていることで「仕事の楽しさを伝えてほしい」や「やりがいを感じさせるような研修をお願いしたい」等このような依頼を織り交ぜて研修を開催する機会が増えたというものです。


以前にも書きましたが、「来るもの拒まず 去る者追わず」このような原則で採用を行っていた養鶏家の中にも外国人技能実習生中心の組織運用に心配をしている経営者がいることを肌で感じるようになりました。(詳しくは「ライブドアブログ」nogutikusanの畜産ブログをご覧ください。)


本日は、私の専門である養鶏の仕事とはなにかについて考えてみます。
「養鶏はプロフェッショナル集団であるということ」私が研修の中で必ずお話する言葉です。

プロである以上

「鶏の見立てのプロである」

「環境変化を感じ取れるプロである」

「自己研鑽し昨日と違う自分を作り鶏へ貢献するプロである(いつでも考えていること)」


なんだか堅苦しい言葉ですが、その昔私の師が唱えていた言葉です。


「鶏が分かるのには5年はかかるのだよ」

その師はいつも説いていました。

入社したばかりの私には当時の言葉の意味は分かりません。それが分かるには10年とは言いませんが長い時間がかかりました。(正直もう少し早く理解したかったと心残りでもあります)


「四季があり、鶏の状況を見る目を養う。そして考えて「最適」を見つける。結果生産性に現れ自身に還元される」というもので入社後のわずかな期間でどれだけ目を養うヒントを与えられるかがカギとなり、師のような上司が指導してくれたおかげで今の私があるのだとこの時期つくづく感じているのです。


さて、養鶏の仕事も時代と共に変わりました。かつての高床式鶏舎が少なくなり、四季により換気・保温等環境変化を感じ取る時代が終わり、近代建物である「ウインドレス鶏舎」に代わり、四季がない自動調整する換気・保温システムと主な仕事は数値読み取りが主流になります。


数値から適正かどうか判断するのですが、最近はその適正はわかるのですが応用できない人材が多いことに気が付きます。
つまり、通常の作業はできるが「攻めの管理が出来ない」ということです。
鶏舎環境は人為的に変化でき生産性向上に寄与できると鶏卵相場が良い時代に盛んに建て替えが進みましたが、管理者の教育がなかったため十分な恩恵が受けられない養鶏家もいます。


しかし、基本操作は建てメーカーが説明し、試行錯誤で温度・換気調整ができますが、無駄を削り利益をだす可能性が無限大であるにも関わらずその機能を使い切れていない。ですので些細な(十分に考えることなく実行)実行で生産性を崩し、鶏病を誘発させ結果廃鶏まで採算が取れない等、人の失敗に対応できる教育に重点を置く企業が増えたのだと感じています。
技術を教える会社もあります。その典型的な例として「テクニックはあるが操作できる人がいない」という相談も受けます。


私は「技術指導も行いますが、基本人材育成(教育)」をすることで、テクニックを駆使する前に基本を教えてから実践に入る形式をとっています。
いきなり免許がない状況で車に乗り時速150キロで走破せよとは言えないはずです。(基本がないと応用はありえないのです)
つまり、アクセルだけ吹かせば良いのだという話ではないのです。


多くの経営者とは言いませんが、この技術にこだわるがために「基本を忘れている」と感じるのです。
そのような養鶏家からご依頼いただく際によく言われるのは「テクはある。重要なのはそのテクを駆使できるよう指導してほしい」という言葉です。


私は、そのテクはそのコンサルタントの方が出来る技であり、御社の従業員には駆使できないのではないかとその中身を見て思うことがしばしばあります。
大事なのは身の丈にあった技術取得から始まり、応用できる力を身につけ先ほどの「テク」を駆使するのが王道であろうと。


人の育成には時間とお金がかかるのは事実です。

 

しかし、10数年前までの昔、古い建物の時代は体で自然に会得できた技術や師がいたはずです。
その当時の流れを大事にすれば技術や先ほどの「鶏の見立てのプロ」「環境変化を感じ取れるプロ」が育成されていたのだろうと感じます。


しかし、養鶏は外注化が進んだ分野でもあります。「鶏の移動業務」「ワクチン投与作業」「水洗業務」「鶏舎管理作業」等は外部委託が進みました。


ですので、この分野(人材教育)も外部委託になるのだろうと感じています。(実際ご依頼頂かないと私が困るのですが・・)

 

時代と共に変化したことにより、十分に教える機会がなかったことで「技術伝承」が途絶え、補う予定であった「近代建物」の技術が、実は管理者の技術により明暗を分けるとは誰も思わなかったのでしょう。

また、技能ある従業員の定着が進まず、簡単に採用できる外国人技能実習生にシフトし日常作業中心の管理に変化が進み更なる変化を遂げています。


ある経営者は言います「技術なんかいらないよ。だってウインドレス鶏舎建てるから」という言葉を思い出します。


その会社は、その後ウインドレス鶏舎を立て、技術会社からテクニックを得て生産性向上さるような話でしたが実際は「○○さんとこ大金はたいて鶏舎新築したけど散々みたいだよ。生産性はうち以下だし費用だけ掛かった感じだよね」という噂も聞きます。


人は、自分が正しいことは絶対正しいと思いがちです。反論に耳を傾けることが出来ない方もいるのも事実です。また、右腕になる方の良しあしで会社が変わることも珍しいことではありません。

 

それが正しい・間違いという議論はしませんが養鶏を志し入社してくれた従業員の皆さんにぜひ「仕事の楽しさ」をお伝え頂きたいと思います。(数値読み取りが仕事ではありません)

今時、新卒採用ができることは大変幸せな会社でもあります。中途採用でも苦労する会社が多く、ましては技術(「テク」というのでしょうか)を有する人材に巡り合えることもまれな時代に人が採用できることは大変すばらしいことです。

多くは、コスト等もあるでしょうが、外国人技能実習生という一時しのぎとは言いませんが、根本の対策を後回しにして急場をしのぐような状況を常とする考えが広がる中で4月を迎え新たな一歩を踏まれることでしょう。


技術は数年で会得できないのは今の流れからしてやむを得ないことです。(最低5年はかかることでもあるのです)


促成栽培ではありませんが時短として「コンサルタント」にご依頼するのも一つの手でしょう。しかし、テクニック重視では心配もあります。


しかし、突然に変革を起こしてもすでにいる従業員には理解を得ることが出来ません。それは「その作業や考え方が社内の考え方であり当然として過ごしたため変改する理由がなく戸惑うのです」


「基本がなくて応用できるのか」

「いつも考えて行動できる人材がいるのか」

「テクニックが先か 操作できる人がいることが先か」

自問自答して良い答えを見つけて頂きたいと思います。

まもなく4月桜の開花も聞こえる今日。新たな年度に向けて養鶏が発展していくことを念じております。

アニマルウェルフェアと養鶏

JGAPの取得を目指す養鶏家の皆さんには大変関心があると思います「アニマルウェルフェア」今後定着するといわれるこの制度について考えます。


国際獣疫事務局(OIE)のアニマルウェルフェアに関する勧告の序論では、
「アニマルウェルフェアとは、動物が生活及び死亡する環境と関連する 動物の身体的及び心理的状態をいう。」と定義されています。


「5つの自由」は、アニマルウェルフェアの状況を把握する上で役立つ 指針とされています。

この「5つの自由」とは、

① 飢え、渇き及び栄養不良からの自由、

② 恐怖及び苦悩からの自由、

③ 物理的及び熱の不快からの自由、

④ 苦痛、傷害及び疾病からの自由、

⑤ 通常の行動様式を発現する自由
からの構成になっています。


5つの自由に基づき鶏が健康で自由な活動をし家畜本来の能力を発揮し人間にも貢献できるというもので、具体的には
①餌・水を適切に与えること、②家畜の取り扱いが乱暴でないこと、③暑熱や寒さの対策を講じること、④病気予防や適切に治療すること、⑤行動に制限を与えなこと、となります。


EPAが発効したEUはこれにより、ゲージに止まり木を設置し、砂浴びができ、暗い場所で産卵できるようなスペースを設ける等経済性より家畜の自由に主眼を置いてます。
このため、経済性を考える国からは、現実的でない・そこまでの自由を求めると生産活動ができないためその分のコストを消費者が負担するのか等疑問が出てしまいます。


現実、日本では経済性も考慮したアニマルウェルフェアを示しており、必ずしも設備を第一に考えることを求めていません。(蜜飼いは禁止です)
このことから、アニマルウェルフェアの考えに対応した採卵鶏(畜種全て)の飼養管理指針に関するチェックリストに従い適合するか確認してどこまで対策を講じているか
確認することが出来ます。


注意したいのは、EUの基準と異なるためEU向け輸出に適合しているかは別の問題です。


アメリカやアジア諸国への輸出には現在影響がないように感じますが、世界の流れが変わり始める可能性もあり、今のアニマルウェルフェアの考え方が主流になるかは不透明です。

では、現状を加味してこの考え方の取入れ状況を示します。


① 飢え、渇き及び栄養不良からの自由(餌や水を適切に与えることを指します)

養鶏に携る方には当たり前かもしれませんが、成鶏では水を切ることは生産性低下に直結することから実行する方はほとんどいないと言えます。
餌に関しては、栄養レベル高低は体重調整で良く実施されると思います。体重や卵重調整をさせる際一部の栄養分摂取を下げるため食下量を減らす行為をします。

よく見られるのは、経験不足や減量の適量を見誤ることによる生産性の低下や場合により骨軟化症を発症させるという作業ミスが原因で誘発することが良く見られます。このことから、育種の改良次第ですが、卵重や体重抑制のための取り組みをなくすことが必要であろと思います。


②恐怖及び苦悩からの自由

作業従事者に教育することが重要ですが、最近は外国人技能実習生に管理の基本を十分教えることが出来ていないと感じます。教える日本人(先輩)も適切な鶏の取り扱いが出来ていないようにも見えます。捕鶏の方法や大声で鶏舎内を歩き回る等「鶏」を中心とした考えが薄くなっており「伝承されていない」ところが多いので再度確認する必要があると思います。


③物理的及び熱の不快からの自由

多くの養鶏家が実行しているもので、暑熱対策は特に鶏の死亡にもつながることから対策を講じているのです。(寒冷対策も同じです)


④ 苦痛、傷害及び疾病からの自由

適切な治療をして、鶏に苦痛を与えないこと、ケガをしないよう配慮すること、病気予防のための鶏舎環境やワクチン対策を行うことを指しています。
現在の状況から見えるのは病気予防のワクチン対応は概ねどこの養鶏家もされていると思います。ゲージもよほどのメーカー製品でない限り突起物がある等はありえないのが現実でしょう。
ただ治療の場合は少し違うはずです。治療をする場合多くの理由として、鶏卵出荷に影響が出る場合があり、安易に実施できないことがあります。例えば近年見る機会が増えていますコクシジウム・クロストリジウム対策の場合多くは抗生剤を投与しなければ治療はできません。しかも状況が悪い場合鶏の死亡につながり生産性も落とします。
しかし薬剤投与は鶏卵へ移行するため廃棄処分が長く続く経営的なデメリットが生じます。ですので使用に躊躇する方が多く簡単に治療をするとは言えないのが現実でしょう。

このことから、衛生管理の向上に力を入れ、鶏舎内で増やさないようシステム鶏舎の改造や十分な水洗と消毒を行う等農家さんの意識が必要になるのではないでしょうか。


⑤ 通常の行動様式を発現する自由
日本のゲージは鶏が並んで食すれば良いという考えで省スペースで飼育する考えが根底にあります。ですので身動きは自由といえば自由でしょうが他の鶏をよけながら入れ替わりをしたり等制限があるのが現実です。
現在、日本版アニマルウェルフェアの考え方は立ち上がれないほど狭い等でなければよいという考えですので問題になる鶏舎は少ないのではないでしょうか。

しかし動物の自由に感心ある国ではこの考え方が通用するか疑問です。恐らくそれらの国とは取引はできないと言えるでしょう。(自国基準を満たさない場合、自国の養鶏を守れないと同時に世論が許さないと考えられます)


では、アニマルウェルフェアを受け入れる日本の養鶏家の方はどうするのでしょうか。


まず言えることは、経済性だけでは難しい可能性が高いということです。最も厳しいであろうEU基準である必要がないといえば「EU」向けの鶏卵を輸出しなければ問題ないと言えます。しかし、アメリカも経済主義の考えですがゲージ飼育の鶏に関して日本と同じ考えでないことに留意する必要があります。グアムへ350㎏の鶏卵が輸出しましたが、大きく伸びるかは今後の考え方次第です。


当分の間、アジア向けは問題ないでしょう。しかし時代と共に動物愛護の考え方が浸透してくる可能性もあり、自国の考えで商売することはとても心配です。


世の中は「数の世界」です。EU基準が良いという風潮であればそれに従うのが経済の考えです。我が道行くのも良いでしょうが世界相手の商売になるか「生で食べられるから絶対の品質があり日本の鶏卵が最高」というのは恐らく日本人だけです。

生で食べられる程の品質が高いのは日本の他EUアメリカも十分可能です。ただ生で食べる習慣がないだけで世の中生食が主流ではないのです。


ですから、日本版アニマルウェルフェアの考え方はここ10年20年は良いとしてもその後は恐らく違う道を模索しなければならないと思います。


今の考えをいくつか紹介しましょう。
「アニマルウェルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針 チェックリストに関するアンケート調査結果 」
公益社団法人畜産技術協会発行した平成29年の資料からです。


(問1)けがや病気の鶏、病気の兆候が見られる鶏がいる場合は、可能な限り迅速に治療を行っていますか?
は い264件(93.28%)、いいえ11件(3.89%)、無回答8件(2.83%)と答えました。
皆さん「はい」が多いと感じるでしょう。しかし問題なのは安易に治療が出来ないのが現実なはずです。まがった解釈として「病気の兆候が見られるので強いワクチンを投与することを治療と解釈する」というのも現実あります。ある意味治療ですが前述の通り抗菌剤や抗生剤の使用までの治療をするのかという問いにした場合どれくらいの方が「はい」と答えるのでしょう。経済的損失を算出したとき決断できるのかということです。
十分に対応できない場合ポジティブリストに違反する等社会問題化することもあります。(県の買い上げ検査で検出される場合、市場に流通している物を買い上げて検査しているため回収と実名公表のペナルティーを科されます。)

 

さらに、鶏舎構造も経営コストを意識したウインドレス鶏舎が主流になっています。

 

(問2)ケージを使用している場合、上段の鶏の排せつ物が下段の鶏の上に落ちないような構造になっていますか?
は い264件(93.28%)、いいえ5件(1.77%)、無回答14件(4.95%)と答えます。
前述のコクシジウム等の問題の答えとも言えます。ニワトリの習性からすれば当たり前ですが、動く物や珍しいものに鶏は興味を示しますので、ついばむことは普通の事です。
狭いスペースに効率よくゲージを配置するとこのような問題が出てしまうのはやむをえません。ですので、はっきり「いいえ」と答えられず「無回答」を選ばれたのかなと推察される結果に見えます。

 

また、ビークトリミング(デビーク)についても質問しています。ビークトリミングは日齢が早いほど鶏への負担(嘴からの出血しにくい部分で切除できる等)が小さいことから7日齢近辺での作業が多いと言われます。最近は初生雛に対しレーザービークトリミングも主流になりつつありますので作業員が手で切る作業より費用は掛かりますが正確に作業が出来出血しない等鶏への負担が小さいと言われる技術も普及しています。

 

ビークトリミング(実施している場合はお答え下さい) (問3)ビークトリミングは、餌付け後 10 日以内の鶏に実施していますか
は い171件(60.42%)、いいえ12件(4.24%)、無回答100件(35.34%)と答えます。

ここで見えることは、ビークトリミングを実施する40%程度の養鶏家は育雛期には作業していないことが分かります。先ほどの通り、早い期間で実施することが鶏への負担が小さいことを説明しました。正確な作業が出来ないと小さい雛であっても出血による死亡や成長不良による淘汰鶏の増加に直結します。ですのであえてこの期間を避ける養鶏家もいます。育成期での作業を実施することがあるのでしょう。(捕鶏しやすい等のメリット)
鶏を考えれば早いほうが良いというのは、育種メーカーのマニュアルにもあります。しかし作業性を考えると実施できない。ですので鶏を基準に考えて遅くなって作業するのであれば費用は掛かるでしょうがレーザービークトリミングを実施することを検討できれば考え方も変わるのではないでしょうか。

 

まとめとして、アニマルウェルフェアを考えるには


①動物の自由を尊重するためには経済性だけで解決できるか再考しなければなりません。(日本国内であれば消費者からの理解があれば問題ないと言えます)


②外国向けの販売を予定されている方は、日本版アニマルウェルフェアの考え方が国により理解が得られない可能性があることに留意します。(動物愛護の考えが強い国からは理解が得られない可能性が高い)


③いずれアニマルウェルフェアを導入することは避けて通れません。ですので先ほどの質問のようにできるところから改善を始めていくとこの流れに遅れず乗ることが出来ると思います。(動かなければ何も変わらないということです)
(OIE(国際獣疫事務局)が公表した「巣箱」や「止まり木」が必須となる採卵鶏 のAW条項の修正 2 次案ではなく、日本の気候風土や生産システムを踏まえたいわば日本型アニマルウェルフェアの策定を求めて、昨年 12 月 20 日に農林水産省に 要望書を提出して審議してもらうわけですがこの陳情が強く影響を与えるものでないことに留意します)

 

時代の変化が大きく動く平成最後の年、皆さんの考え一つで養鶏の未来が大きく変わり次の時代へと流れていくのでしょう。明るい養鶏時代であるよう頑張ってまいりましょう。

鶏卵供給過剰による養鶏経営受難な時代

3月に入り年始から叫ばれています鶏卵相場の低迷が続いています。
生産量が多いことによる消費量とのバランスが崩壊していることが原因ですが、「需要に見合った生産体制構築のお願い」が生産者等に再度配布されました。(2月19日)


生産量を抑制することは大変な痛みを伴うことがあり、中々手を挙げることが難しいのだろうと思います。
できれば、「生産調整は他所にお願いしてうちは、当初計画通り進めたい」

「2019年の餌付けは既に決定しており、今さら変更はできないし、しない」

「設備更新が完了しており支払いに入っている。今さら変更はできない」等
様々な意見が出そうです。


2019年の鶏卵相場は、低調に推移しているのはご承知の通りです。
昨年の相場傾向はすでに供給過剰現象が起きており、春先は今年よりはよかったでしょうが「低価格」となり夏以降からの上昇となりました。
これは西日本地区の災害や猛暑による生産量減少が要因で、毎年災害が起きるわけでないため夏季から鶏卵相場が盛り上がると考えるのは危険です。

猛暑による生産減少は毎年あることですが、正直大規模まで猛暑による影響はあまり考えることは現実ではありません。


東から西への供給移動のおかげで東地域は過剰な鶏卵を移動することが出来相場が維持できたと考えるべきです。


ちなみに、昨年12月は14年ぶりの相場低下を示しました。

 

さて、鶏卵供給過剰の影響はいつまで続くのでしょうか。
先ほどの通り、今大規模養鶏家(10万羽以上飼育している養鶏家を指します)は全体の70%からの世界です。
今の時代10万羽以下の小規模養鶏家は年々減少しており、その方が市場から退場しても、その施設を他が買取し経営を続ける構図は今後も変わらないと感じます。
つまり、小規模の経営者の代わりに中規模以上の大きい養鶏家が生産シェアを取るだけで、今後は大規模が中規模養鶏家の生産シェアを取ることになるのではと危惧しています。


現実規模が大きいところほど有利と言えます。
餌付け羽数は昨年暮れから前年比割れを示すようになりました。しかしそれでも鶏卵相場が回復できるか見通しは、はっきりしません。

 

この5年程度の鶏卵相場が良い時期、設備更新に投資した方や増羽のため鶏舎新築や改造等に投資した方様々と思います。
心配なのは増羽したことで、販売先に異変が起きないことを願っています。
久しぶりに販路調査をしました。大手販売店の鶏卵陳列ケースに今までと異なる会社の鶏卵が入りました。以前からのメーカーが姿を消したのです。
この店舗は系列店でも同様に入れ替えを行っています。何らかの理由により入れ替わったのでしょうが、それは当事者でしか分かりませんので推測ですから真相は不明です。


心配なのは、消費者は何を基準に鶏卵を選ぶかです。鮮度や安全安心では当たり前で競争になりません。では価格となるのか、
正直そうでないことを願っています。

価格競争が発生した場合大規模・中規模・小規模の各養鶏家のうち悪影響が強く出るのはどの分野でしょうか。


ほとんどの事業者は大手と言えるか分かりませんが、中規模の養鶏家と思われるのであれば、増羽して勝利を得られるか
もう一度考え直すのもありかもしれません。
大手は、これから大手となる方よりも前から大手として君臨しています。新参者が隙いる余地があるのか分かりません。
大事なのは規模拡大もあると思いますが、自社製品の差別化が出来れば新たな活路を見いだされるかもしれません。


その方法は何か、経営受難な時代と割り切る前に、皆さんの考えや気づきが養鶏の新しい時代への道を切り開くかもしれません。