nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。

農業景況調査から見た採卵鶏と畜産業

日本政策金融公庫が2019年3月18日に公表した農業景況調査(1月調査)が発表されました。
この調査は公庫が長期・低利の「スーパーL資金」の融資を行っている認定農業者の方々に対し、毎年近況を調査し、その結果を動向指数(DI)として公表しています。(年2回程度)
今回はこの指数からみた採卵鶏の近況と畜産分野について現場の動向を含めて考えてみます。

1、景気が良いのか
畜産業の1月調査時点での回答は以下の通りでした。
養豚、採卵鶏などの業種を中心に販売単価が大幅に低下(販売単価 DI:24.3→ 2.1)し、さらに、生産コストの上昇(生産コスト DI:▲25.2→▲37.1)も加わり、
収支 (収支 DI:14.7→▲20.1)・資金繰り(資金繰り DI:15.5→▲4.7)
が悪化したことが景 況 DI の押下げ要因。景気が良いかという指数は(景況DI:▲72.9(採卵鶏) 昨年は▲61.2)でした。(農業景況調査から引用したデータ)


1月の採卵鶏農家の動きとして、1月鶏卵相場初市は東京M基準値は100円で低価格で始まりました。
当然基準値では取引されませんので(安値が引き取り指標となりますので実質94円)この価格では採算は合いません。
その後相場は急伸したこともあり1月の平均価格は121円となりました。1月最後の相場はM145円(45円高)で終了しました。
経営スタイルによりましょうが145円の相場で採算が合う方はほとんどいないはずです。このため農業景況調査のあった1月での評価はその通りであったといえます。

この結果を見れば分かりますが飼料代が売り上げから差し引ききれない赤字となり
生産コストが上昇(2019年1~3月の配合飼料引き渡し価格も昨年夏に比べて下がっていますが高い状況が続いています)し収支も悪化、結果資金繰りに心配が生ずるというスパイラルになったといえます。


鶏卵相場は昨年から価格低下が見られ春先は相場が安く先行きが危惧されており、生産量の多い東日本地域は供給過剰から相場安で、いわゆる西高東低相場でした。12月の最需要期も14年ぶりの低下市場であったことから本年1月の相場は大変不安であることが昨年から報じられていました。


参考までに2月最後の相場はM165円(20円高)で終了しています。まだ採算が合う養鶏家はまだ多くないといえますが、
一息付け始める相場でありました。しかし赤字は回収できるか微妙でしょう。3月は本日時点で170円(5円高)で横這いです。
もう一声ほしいところですが、需要が夏にかけて減退するといわれます。減羽が大きく進まない限り相場軟調も予測されますことから景気が良いと答えられる方は今後も大変少ないと思われます。
このことから、採卵鶏は今年度も厳しい展開になるのでないかと心配される方が多く結果として現れた指標と思われます。

 

2、人手不足(雇用環境)や設備投資について
畜産業の人手不足は引き続き深刻であることが報告されています。(雇用状況 DI:▲41.1採卵鶏)
直近2年のDI値からみれば横這いとも言えます。現場から見える状況として、日本人雇用にこだわらない経営者が多くなり外国人技能実習生を積極的に受け入れることで人手不足を補う行動が見られます。

このことから、本心は日本人雇用(安定した人員確保)を希望しているが人材が集まらないことが現実にあり、最低限の作業をするためにも外国人を雇い入れなければ成り立たないのが実情で今後もこの流れが続くと思われます。

また畜産業は業種によりますが、作業の外注化が進み多くに人手をかける作業が少なくなっているのも現実あります。このことから人手不足はその通りですが数値はあくまでも安定した人手がいないことを指していると推察されます。
養鶏(採卵鶏)の規模は年々大きくなっており飼養羽数が少ない養鶏家は経営を取りやめる方も続いています。(養鶏の70%は10万羽以上の飼養羽数がある方々の世界になりつつあります)


採卵鶏で設備投資を検討されている方は高鶏卵相場であった時期に比べて少なくなっています。(設備投資ありの比率:44.2 昨年は61.2)ここ4年では少ない値でした。

お金があればいくらでも設備更新や新築や改造をしたというのが本音でしょう。しかしすでに更新等を行った養鶏家も多く低鶏卵相場では積極的に行いたいとする方が少なくなるのも頷けます。

しかし設備スケジュールから低価格であっても行う養鶏家もいます。相場次第で売り上げが高低することから景気が良いと感じる方は心理的に見て少なくなるのではないでしょうか。

 

畜産業の2019年見込み(農業景況調査)では、養豚と養鶏は悪化するというデータが示されています。肉牛やブロイラーは改善が進むといわれており明暗が分かれる1年になると予測されます。


ブロイラーは昨年から相場安が進みましたが今年はやや改善しております。しかし生産量は依然多く本格的な回復までにはまだ時間がかかりそうです。


養豚は輸入による相場安が予測されており、長期化されなければと思います。国はTPPやEPAによる養豚の影響を2月に試算しており千葉県で10億円程度(以上と推定されていますが)で、全国ではさらに大きい金額を試算しており生産量が多い千葉県でもこのような試算があることから影響はある程度避けられないと思います。

また生産側としても相場以外にも豚コレラ発生による心理的不安や地域によりますが豚流行性下痢(PED)も発生していることから現金収入以外にも生体の出荷減少も予測され不安定な動向が続きそうです。


採卵鶏も生産過剰が続き、大産地(茨城や千葉)が餌付け数を少なくしていますが、他県では増羽が続いており結果生産過剰が解消されない構図が続いています。
TPPやEPAによる影響はほぼないと国・千葉県は試算していますから国内需要と供給に対応すれば改善が見込むことが出来ます。(千葉県試算では影響は最大0.6億円程度)


しかしながら、数年で解消することは困難と思われ長期化しないことを願うばかりです。生産過剰が解消されると同時に消費拡大に積極的に打って出なければ過剰の解消につながらないとも言えます。

農業景況調査から見える畜産業は他人事でなく、地域によっては大きく影響を受ける可能性を示す良い指標となっているのです。


次回はGAPの認知度や問題点・課題についてご報告いたします。